Business Challenge story

人間系から脱却して変更証跡管理を効率化するワークフロー管理の仕組みが必要

資源・エネルギー、船舶・社会基盤・セキュリティー(国家、社会の安全・安心)、産業機械・システム、回転・量産機械、航空・宇宙の5つの領域で事業を展開するIHIは、厳しい経済環境に直面している今こそ、価値創造を通じた新たな成長に向けた変革を加速する時期にあると判断。「21世紀の環境、エネルギー、産業・社会基盤における諸問題を、ものづくり技術を中核とするエンジニアリング力によって解決し、地球と人類に豊かさと安全・安心を提供するグローバルな企業グループとなる」というビジョンを掲げています。 こうしたビジネスを支えるさまざまな業務システムの高いサービス品質を維持し、安定した運用を続けていくため同社が注力しているのが、変更管理をはじめとするIT統制の強化です。その中でも、システム変更に関わるドキュメント類の変更証跡管理を自動化されたワークフローで実現する必要がありました。

とはいえ、そうしたワークフロー化は容易なことではありません。IHI 情報システム部 プロジェクト推進グループの担当課長を務める河本拓二氏は、このように話します。

「例えば、一カ所のプログラム修正を実施するにも、修正依頼書やテスト報告書など、大量のドキュメントが発生します。しかも、これらのドキュメントは紙ベースで運用されており、管理番号の発行に始まるほとんどの管理を手作業に頼っていました。一連のドキュメントを関連付け、誰がいつ承認を行ったのかという証跡をトレースしたり、現在のステータスを確認したりするにも大変な労力を要していたのです」

さらに、IHIグループのIT会社として各システムの開発・運用・保守にあたっている株式会社IHIエスキューブ(以下、IHIエスキューブ)の第一ソリューション事業部 第三ソリューショングループのチーフを務める佐藤順一氏が、このように言葉を続けます。

「ほとんどの管理を手作業に依存した状態では、各システムの管理者や担当者の負担は増えていく一方であり、細かなミスを見逃してしまう恐れがあります。また、承認漏れによって手戻りを余儀なくされたり、承認プロセスの停滞に気付かずしばらく放置されたり、多大な時間的ロスが発生することも懸念されていました」

こうした問題を解決し、問合せ管理からインシデント管理、問題管理、変更管理にいたる変更証跡管理業務の合理化・効率化を実現すべく、IHIは2009年10月に新たなソリューション導入の検討に着手しました。

Transformation

柔軟なテーラリング機能を活用し、IHI流の考え方に沿った変更証跡管理を実現

当時、IHIでは独自開発によるヘルプデスクのシステムを運用しており、これを拡張するという考えもありました。

しかし、「世の中でITサービス管理の標準化が叫ばれている中で、もっと簡単かつ短期間で適用できるパッケージ型のソリューションがあるのではないか」(河本氏)という考えに立ち、同社は数社の製品を検討しました。

そうした中で目にとまったのが、東芝ソリューションの提案による、Tivoli Service Request Manager V7.1(以下、TSRM)ならびにTivoli Change and Configuration Management Database V7.1(以下、CCMDB)の2つのパッケージ・ソフトウェアで構成されたソリューションです。

TSRMは、インシデントが発行されてから最終的に問題が解決されてクローズされるまでの一連のワークフローを管理します。また、CCMDBがインシデントに関連するあらゆる情報を一元管理するとともに、システムの複雑な構成情報ならびに各々の依存関係を明確化し、効率的な変更管理をサポートします。

この東芝ソリューションの提案を採用するにあたって決め手となったのが、「TivoliがIBMに合併される前からTivoli製品を取り扱っている東芝ソリューションの豊富なTivoli導入実績と画面やワークフローを柔軟にカスタマイズできるテーラリング機能が充実していることです」と河本氏は話します。

「当社では、あらかじめ定められたシステム運用ルールに従って、ワークフローやドキュメント、各種管理帳票の作成などを行っており、その基本形を崩さないことが大前提となります。また、ユーザー部門に無用な混乱を起こさないためにも、画面の見た目を維持することは重要です。Tivoli製品の特性を十分に考慮したシステム導入により、こうした条件に沿ったカスタマイズを行いつつも、その影響が将来のソフトウェアのバージョンアップなどに支障を及ぼすことはないと東芝ソリューションより説明を受けました。それならば、IHI流の業務方針やシステム運用の考え方にあわせた形で変更証跡管理業務の効率化がはかられると判断しました」

こうしてIHIは、2009年12月にTSRMならびにCCMDBをベースとした東芝ソリューションのソリューションを導入。そして、「新年度までに運用に漕ぎ着けたい」(河本氏)という要望に沿い、2010年3月中旬に早くも本番稼働(フェーズ1)を開始しました。

今回のソリューション提案ならびにプロジェクトマネジメントにあたった東芝ソリューションの製造・産業・社会インフラソリューション事業部 製造ソリューション技術部 製造システム技術第一担当 主務 セールスエンジニアの金子春男氏は、このように話します。

「いかに柔軟なテーラリング機能を備えているとはいえ、歴史あるお客様の業務やさまざまな管理画面を一つひとつカスタマイズしながらワークフローに反映させていくとなると、作業量は膨大なものになります。したがって当初は、スケジュールどおりに構築を 終えるのは困難と考えられました。それを可能としたのが、『ITIL(IT Infrastructure Library:ITインフラストラクチャーライブラリ)をベースとしたこれまでのTivoli導入で培ったノウハウに基づくTivoli製品の特性を十分に考慮したシステム導入とベンダー任せにするのではなく、自分たちがスキルアップを図ってサービスデスクを運用していく』というIHIエスキューブ様の取り組み姿勢であると考えます。Tivoli製品の制約に徹底的にこだわったテーラリングやお客様の意を汲むべく技術スキルのトランスファーに重点を置いて臨んだ結果、プロジェクトの後半に差し掛かった頃には、IHIエスキューブ様自身でPDCAのサイクルを回しながら管理画面のテーラリングやワークフローの適用を行い、どんどん作業を進めていかれるようになりました。短期導入の成功はもちろんのこと、こうしてお客様が主体となることで、メンテナンスも含めた今後の安定運用や拡張につながる基礎を築けたことは、今回のプロジェクトにおける最大のポイントであると考えます」

Benefits

承認プロセスのステータス確認やドキュメントの紐づけ管理を実現

もっとも、今回のプロジェクトによってIHIにおける変更証跡管理業務のすべてが新システムに反映されたわけではありません。

同社は、「あらゆる業務プロセスやドキュメントを一気に盛り込もうとすると、混乱をきたしかねない」(河本氏)という考えから、まず(1)システムの修正依頼、(2)臨時で実施する作業、(3)トラブル発生という3つのトリガーから派生する変更管理に対象を絞り込み、新システムに実装しました。

ただ、絞り込んだとはいえ、これらのトリガーは同社における変更管理の根幹に位置するものであり、システム運用・保守にまつわる変更管理作業の80~90%をカバーすることができます。

「その意味でも、今回構築したシステムは、非常に大きな成果をもたらしたと言えます。ワークフローに沿った形で確実に業務が遂行されるようになるとともに、その過程において、どの管理者のところまで承認が進んでいるのか、あるいは停滞しているのかといったステータスもしっかり確認することができます。また、インシデントとドキュメント類の紐づけもシステムによって自動的に行われるため、各担当者が意識して洗い出す必要はありません。これまで雪だるま式に膨らんでいた管理のための管理の負荷を、大幅に軽減することができました」と河本氏は話します。

さらに、実際にヘルプデスクならびに各業務システムの運用にあたる立場から、佐藤氏はこのように話します。

「従来の人間系による変更管理の体制で特に問題となっていたのは、複数のトリガーが絡み合って作業が進行するケースです。例えば、ある業務システムにトラブルが発生し、その対処のために臨時作業を実施しなければならないとなった時、それぞれのドキュメント間の紐付け・整合性管理に労力を費やすことになります。そうした場合でもTSRMならびにCCMDBをベースに構築された今回のシステムでは、インシデントを自動的にエスカレーションしながら、派生するトリガーを含めた全体を一つの事象として管理することができます。IT統制のための変更管理を効率化・合理化するという課題の解決に向けて、大きな一歩を踏み出すことができました」

 

将来の展望

システム設計・構築フェーズへの適用も見据えつつ変更管理業務の見える化を検討

順調なスタートを切ったことを受け、IHIでは変更証跡管理業務における本システムの定着化に注力する一方、より裾野の広い業務ならびにユーザー層に向けて、適用範囲の拡大を図っていく考えです。

「今回は運用・保守フェーズにおける3つのトリガーに基づく変更証跡管理業務に適用しましたが、ベースとなっている考え方そのものは、システムのライフサイクル全般に共通するものです。そこで将来的には、設計・構築フェーズに関連する証跡管理なども、同じ仕組みのもとに巻き取っていきたいという思いを持っています」と河本氏は話します。

もちろん、システムそのものの機能強化やさらなる使い勝手の向上も大きなテーマです。

「次のステップとして検討しているのが、変更管理業務の“見える化”です。いくつかのKPI(Key Performance Indicator)を設定し、ダッシュボード上にステータスを表示する仕組みを提供することにより、ユーザーは自分の問合せが現在どこまで進捗しているのか、一目了然で確認することが可能となります。また、各業務システムの管理者も、どの担当者に負荷が集中しているのかを即座に把握することが可能となり、作業を適切に割り当て直して平準化を図るなど、運用・保守作業の効率化に向けた手を打ちやすくなるのではと考えています」と佐藤氏は話します。

適用業務の拡大とともに、TSRMやCCMDBに対して要求されるサポートレベルもますます高度化していきますが、「IBMとの更なる密な連携により、スピード感を持ってお客様の期待に応えていきます」と金子氏。 IHIとIHIエスキューブ、そして東芝ソリューションが一体となって今後を見据える中で、IT統制の強化と進化を目指したチャレンジが続いています。

 

お客様情報

2007年7月に石川島播磨重工業株式会社より現在の株式会社IHIに社名を変更。2010年度からの中期経営計画「経営方針2010」のもと、資源・エネルギー、船舶・社会基盤・セキュリティー(国家,社会の安全・安心)、産業機械・システム、回転・量産機械、航空・宇宙の5事業を新たな戦略ドメインとして経営資源を集中している。特に強みを持つ航空・宇宙分野では、国内のジェットエンジン製造、ロケットエンジンの心臓部となるターボポンプや衛星などの推進装置の開発・生産の推進役としても知られている。

 

パートナー情報

東芝グループのITソリューション分野を担う中核企業として2003年に設立され、さまざまな業界・業種にITソリューションを提供している。これまでお客様と共に培ってきたさまざまなシステム構築経験・実績、ならびに独自の技術、サポート力を基盤とし、ソリューションの販売・技術・開発を一体化し、複雑化するお客様のご要望に的確にお応えするソリューションを提供している。お客様満足度の継続的向上に努め、最も高い評価と信頼をいただけるNo.1ソリューション・パートナーを目指す。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

 

製品・サービス・技術 情報

当事例で使用されている主な製品・サービスは下記の通りです.

ソリューション

IBM CloudBurst, Ship Building: Product Lifecycle Management

Solution Category

  • IBM Cloud