国立スポーツ科学センター

卓球の試合映像分析をAIで効率化。ラリーシーンの自動検出アルゴリズムを共同開発し、日本代表選手のサポート体制の強化を支援
A young person in a blue and black sports shirt is shown preparing to serve in a table tennis game. The scene captures the player holding a red paddle and a ball over a green table with a net. The setting appears to be an indoor sports facility, with focus on the player's hands and equipment. The image conveys concentration and athletic activity, with no visible text or numbers.

国立スポーツ科学センター(JISS)は、日本代表チームの国際競技力向上を担う公益財団法人日本卓球協会より、卓球の試合映像の分析におけるAIの活用について相談を受けます。協会では日本代表選手のライバルとなる各国選手の試合映像を収集して分析を行い、大会中に多忙な選手が効率良く映像を確認して対戦時の対策を立てられるようサポートしています。しかし、試合分析が行えるアナリストの人数は限られており、近年は分析ニーズの高まりや収集映像の増加に伴い、試合分析の効率化が求められていました。JISSはIBMと共同でAIを活用した卓球の試合分析方法の研究を行いました。新しく開発されたアルゴリズムにより映像分析は大きく効率化され、スポーツアナリストはより高度な試合分析への注力が可能となりました。

ビジネス上の課題

JISSは2017年、公益財団法人日本卓球協会(以下、日本卓球協会)より、「国際大会の試合映像の分析をAIによって効率化できないか」との相談を受けます。協会では、各国の強豪選手の試合映像を収集し、スポーツ・アナリストらが映像の編集やスタッツに関する情報のタグ付けを行ってJISSのスポーツ映像データベース「JISS nx」に登録しています。大会中、ナショナルチームの選手やコーチは試合の合間にそれらの映像を見ることでライバル選手の戦いぶりを確認し、対戦時の作戦を練るのです。しかし、近年は日本選手の活躍や分析ニーズの高まりから、分析作業が追いつかないという悩みを抱えていました。JISSはAIがラリーシーンやスコアボードを認識してある程度のタグ付けを行い、必要に応じて人が修正・追加するというアプローチでこの課題を解消すべく、本格的な検討を開始します。

概要と経緯

プロジェクトはJISSと日本IBMの共同研究としてスタートし、「IBM Power Systems」上で人気の高いオープン・ソースのディープ・ラーニング・フレームワークを用いて卓球用AIの開発が行われます。IBM東京基礎研究所が主となってアルゴリズムを開発し、IBMラボ・サービスがシステムの実装を担当しました。2017年度内に3カ月でアルゴリズムを作り、2018年度はそれを使ったシステムを開発。ネットワークを介してアップロードされた映像データをJISSのサーバー上でバッチ処理により分析する使い方と、海外など通信環境が不安定な環境でノートPCにインストールしたAIによって現地で分析する使い方が想定されます。タグ付きの映像を専用のビューアーアプリで閲覧すると、タグを基にして各種スタッツが算出され、映像と合わせて表示されます。

効果と今後の展望

AIとシステムの開発は順調に進み、2019年度はAI以外のソフトウェアの改良と運用に関する調整が行われた後、現場での利用が徐々に始まりつつあります。AIによるタグ付けにより、試合映像の収集から分析済みの映像を選手が見られるようになるまでの時間が半分以下に短縮されるほか、主要な試合は事前に分析を済ませておくことが可能になります。また、AIに基本的なタグ付けを任せることで、アナリストはより高度な分析作業に時間を割くことができます。JISSでは、開発したAIをバドミントンをはじめとする他のラケット競技などに横展開することも検討しています。

各国の強豪選手の直近の戦いぶりを確認し、対戦時の作戦を立てるのです。
尾崎 宏樹氏 スポーツ科学部 研究員 博士(工学) 独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター

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