Business Challenge Story

J-SOX法におけるIT監査に対応するため、より高機能なITILツールが求められた

SCSKは1969年の設立以来、各産業界を支えるシステム構築の豊富な実績を積み、業務ノウハウを蓄積してきました。そして現在、国内外のユーザー企業に向けて総合的なITソリューションを提供しています。中でも住友商事株式会社が保有する多数のシステムの40年以上に及ぶ運用や、データセンター事業を通じた運用サービスの提供は、同社のDNAとも言うべき強みを生かした主要事業となっています。

同社 SCソリューション事業部 SCサービス部の課長を務める神宮寺毅氏は、これらの事業を支えるITサービス・マネジメントへの取り組みを次のように話します。

「システム運用では常に品質向上を目指した、改善への取り組みが欠かせません。そこで当社はアプリケーション開発、インフラ構築、データセンターの3部門が共同し、2004年に運用プロセス標準化のためのプロジェクトを立ち上げました。2006年にはその基盤となるITILツールも導入し、ITサービス・マネジメントの体制強化を図ってきました」(神宮氏)

そして2008年、同社はこの取り組みをさらに進めるべく、新たなプロジェクトを開始しました。これまで使用してきたITILツールが保守期間の終了を迎えたのを機に、より高機能を備えた次期ツールの導入検討に着手したのです。

そこでの大きなテーマが、J-SOX法への対応ならびにグローバル対応の2つです。

「既存のツールはITILに準拠したプロセス管理は実現できていたものの、IT監査への対応までは想定しておらず、ワークフロー機能が未整備だったのです。2009年3月期から適用が始まったJ-SOX法に対応するためには、承認記録の保存や開示を容易に行えるようにする必要がありました。

また、ITサービス・マネジメントの体制を国内のみならず海外業務にまで広げて強化していく必要性から、言語やロケーションを問わずに利用できるツールを導入すべきという機運が高まっていきました」と神宮寺氏は話します。

Transformation

既存ツールの操作性を継承するTSRMの柔軟なカスタマイズ性に注目

J-SOX法対応で必須となるワークフロー機能を備え、海外からも利用できる多言語に対応したWebシステムであること。この2つの要件を軸として同社はRFP(提案依頼書)をまとめ、さまざまなベンダーから提案されたITILツールの比較検討を開始しました。

そうした中で同社の目にとまったのが、IBMのTSRMだったのです。

「ITILの中心に位置する変更管理を手厚くサポートするツールは他社にもありました。しかし、それだけでわれわれの要求を満たすことはできません。当社のシステム運用ポリシーでは、サービス要求からインシデント管理、問題管理、変更管理、作業指示にいたるまで、あらゆる管理プロセスにおいて、しかるべき権限を持った責任者の承認を経ることを徹底しています。例えば、サービス・デスクでマスター登録を行う際にも必ず承認を受けなければなりません。こうした管理プロセス全般にわたるワークフロー化を実現できるツールは、TSRMの他に見当たりませんでした」と神宮寺氏は話します。

また、業務機能だけではなく、ツールの保守性についても十分に考慮しておく必要がありました。

「次期ツールの導入に際して大きな問題になると考えたのは、導入から約2年間にわたって大規模に利用する中で既存ツールに実装されてきた、さまざまな機能やサービスをいかに吸収し、新しい環境に継承できるかという点でした」と振り返るのは、同社プラットフォームソリューション事業部門 IT基盤ソリューション事業部netX運用統括第2部のシニアコンサルタントである中山真希氏です。

例えば、インシデントの登録ひとつを取り上げても、ツールの操作感が大きく変わってしまったのでは、システム開発・運用の現場に無用の混乱を招きかねません。そこで同社は次期ツールに対して、既存ツールと同じイメージの画面を再現し、違和感のない操作を実現できる柔軟なカスタマイズ性を求めました。

「TSRMが特長とするテーラリング機能についてIBMよりデモを通じて説明を受け、私たちの狙いどおりの画面づくりを簡単に行えることがわかりました。まずは既存ツールと機能や操作の水準を合わせるところからスタートし、その土台の上にワークフローなどの新たな機能を実装していくことができます。TSRMは、私たちのニーズに最もマッチしたプラットフォームであると大きな安心を感じました」と中山氏は話します。

こうして同社は2009年5月、TSRMの導入を正式決定しました。

Benefits

ワークフローの自動化により障害対応や開発作業を大幅にスピードアップ

TRSMをベースとした新ITサービス管理システムの設計・構築にあたり、同社が特にこだわりを持って注力してきたポイントの1つが、複数の監視システムとの連携によるインシデント起票の効率化です。

同社プラットフォームソリューション事業部門 ITエンジニアリング事業部 サービスマネジメントソリューション部 SMS技術チームの部長付である田中秀和氏は、このように話します。

「われわれは独自開発したデータセンターの監視システムをはじめ、イベント監視を行うIBM Tivoli Enterprise Console(TEC)やIBM Netcool/OMNIbusなど、さまざまな監視ソフトウェアを導入・活用しています。これら複数の外部システムから通知されるイベントをTSRMへ自動連携させたいと考えました。リアルタイムでのメール通知やインシデントの自動起票などを実現。システム運用に携わる担当者の手作業を可能な限り排除し、効率化するというのがその狙いです」(田中氏)

当然ながら、そこにもさまざまな苦労がありました。基本的にTSRMと外部システムとの連携はIBM Maximo Enterprise Adapterを用いることで実現できます。しかし、仮に運用上でまったく支障のないイベントまでがインシデントとして扱われ、担当者に頻繁にメール通知されたのでは、かえって作業効率を悪化させてしまいます。そこでフィルターを介してイベントを分別するといった対処を行うのですが、そうした細かい制御のためには個別にプログラムを作り込まなければならないケースも出てくるのです。

「最初は手探りに近い状態でしたが、IBMのコンサルタントからの情報提供やアドバイスを受けながら壁を乗り越え、構築を進めることができました」と田中氏は話します。

こうした構築ならびに既存システムからのデータ移行といった作業を経て、同社の新ITサービス管理システムは2010年7月にカットオーバーを迎えました。

サービス開始時点における同システムの利用者数は約630名です。

「J-SOX承認フローをタイムリーに流せるようになりました」「承認者をリアルタイムに把握することができ、ユーザーの滞留が少なくなりました」「Webシステムであるため個々のPCにインストールは不要で、便利になりました」「以前よりも詳細な問い合わせ分類が可能となりました」「同一プロセス内でインシデント同士の関係づけが可能となりました」など、利用者の間からは総じて良好な反応が返ってきています。

こうした手応えを得て神宮寺氏は、「TSRMの導入は、当初の期待を上回る成果をあげることができました」と高く評価します。

「中でもワークフローの自動化は、システム運用にまつわるさまざまな業務に絶大な改善効果をもたらしました。例えば、従来では1週間以上を要することもあった承認までのプロセスが、現在ではわずか1~2日に短縮されています。このメリットは障害対応やアプリケーション開発のスピードアップに直結しており、当社ビジネスのアジリティ向上に貢献しています。また、これまでブラックボックスに近い状態にあったシステム運用業務が可視化され、一人一人のスタッフが担っている役割を、経営側からも正しく認識・評価されるようになったことは、私個人としても非常に大きな喜びです」(神宮寺氏)

 

将来の展望

ナレッジ共有やIT監査機能のさらなる強化に向けて前進

2011年5月、同社の新ITサービス管理システムはいよいよ海外業務での利用を開始し、利用者数は約800名へと拡大しました。

「これまで海外の各拠点との間では、主にメールのやりとりを通じて依頼~承認のプロセスを実施してきました。今後は日本国内と同様にツールでワークフローを自動実行することが可能となり、煩雑だったステータス管理も容易になります。期待はますます高まっており、新ITサービス管理システムの本格展開が、まさに今から始まるのです」と中山氏は話します。

もっとも、新ITサービス管理システムはこれで完成というわけではありません。利用者の拡大とともに、さらなる改善・強化を要望する声も増えています。

「今回のプロジェクトでは試行錯誤で設計・構築にあたってきたこともあり、今になって気づいた反省点も少なくありません。例えば管理者の権限や承認プロセスなどを標準定義しておき、その手順どおりに設定を行えば自動的にワークフローが生成される開発テンプレートを用意しておけば、システム構築はよりスムーズに行えたはずです。今後の拡張に向け、そうした環境整備も検討していきたいと思います」と田中氏は語ります。

一方、エンドユーザーを含めたナレッジの共有化という観点から、今後の機能強化を見据えているのは神宮寺氏です。

「システムの利用現場で発生するさまざまな問題に対して、エンドユーザー自身である程度の解決ができるFAQの仕組みを提供できればと考えています。これにより、ITサービスに対する満足度向上とサービス・デスクへの負荷軽減を両立することが可能となります」

さらに、J-SOX法対応におけるIT監査の観点から、神宮寺氏はこのように話します。

「いつ、どの部門の、どんな立場の、誰が、何について承認を行ったのか。IT監査の証憑として、ワークフロー履歴を自由に一覧表示できるようにしてほしいという要望が寄せられています。検索機能やレポーティング機能の拡充とあわせて、こうした利用者の声にも前向きに応えていきたいと考えています」(神宮寺氏)

より高品質かつ利便性にも優れたITサービス・マネジメントの実現を目指し、同社の絶え間ない取り組みが重ねられています。

 

お客様情報

2011年10月に住商情報システム株式会社と株式会社CSKが合併し、誕生。両社の各産業分野における技術力・ノウハウ・知財などを相互に活用するとともに、システム開発、ITインフラ構築、ITマネジメント、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、ITハードウェア・ソフトウェア販売を有機的に統合することで、フルラインナップのサービスを提供する。

また、住友商事株式会社をはじめとするお客様の世界各国におけるITシステム・ネットワークのサポート実績を生かし、グローバルITサービスカンパニーとして、さらなる飛躍を目指す。

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