Business Challenge story

将来を見据えたITチャレンジ

このシステム統合の検討は、2003年度に開始されました。 「新しいITを積極的に取り入れるべく企画管理部署が主導していた新技術動向調査の課題として、TCOの削減を掲げました」と加藤昌彦氏(みずほ銀行 IT・システム統括部プロジェクト推進第二チーム次長)は語ります。

開発の総責任者であった、みずほ情報総研株式会社(以下、みずほ情報総研)信氏岳氏(執行役員銀行システムグループ第2事業部事業部長)は、 「経営の要請であるTCO削減に応える一方で、勘定系システムにふさわしい信頼性の向上を図りつつ、 Linuxというオープンな技術を導入するという一段階高いITチャレンジが必要でした」と続けます。

そのITチャレンジの具体策として、サーバーやストレージの統合とそのオンデマンドな活用も盛り込まれました。 周到な調査・検討を踏まえ、みずほ銀行は大手ベンダー数社に提案を依頼。 その一つとして、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)が提案した「周辺チャネル系サーバー統合システム」が採用されました。 これは、インターネット・バンキング、テレホン・バンキング、マルチペイメントほか、 顧客へ直接サービスを提供する全7業務、約100台のUNIXサーバーの基盤統合を目指したもので、 そのうちインターネット・バンキングや、データベース処理等の主要業務の統合サーバーにIBM System zが採用されました。 プロジェクト全体の狙いと具体策は次のようになります。

(1)TCOの削減:システムごとの個別更改と比べて投資を約15億円、保守料を20%以上削減

(2)信頼性の向上:高い可用性要件に対応するためSystem zを採用、障害時は迅速な切り替えによる連続稼働を目指す

(3)リソースの有効利用:CPU資源を共有して柔軟に割り当てるため、z/VM、LPARなどの仮想化技術の採用

(4)センター・スペースの削減:約40%削減

(5)特定のベンダーに依存しないソフトウェア技術の採用:Linuxの採用

(6)人材の育成:ミッション・クリティカルな勘定系システムへのLinux導入を通じた人材育成とノウハウの蓄積

Transformation

今回、日本IBMの提案が採用された理由の一つは、Linuxに対する実績とサポート体制にありました。 「基幹系システムへのLinuxの採用は時期尚早とも言われましたが、当時からIBMはミッション・クリティカルなアプリケーション稼働に向けたLinuxの機能強化をリードしていました。 将来のITインフラストラクチャーはオープンなだけでなく、堅牢であるべきと考え、IBMのこの取り組みを評価しました」と加藤氏。 「本格稼働前には、IBMコーポレーションの技術拠点でLinuxコミュニティーへの参画状況と支援体制を視察し、LinuxとIBMを選択したことは正しかったと確信しました」

小さく生んで大きく育てる

TCOの削減対象には、経営課題にかかわるコストも含まれました。「システム・ダウンやパフォーマンス低下による業務や利用者への影響、 信頼感の低下による損失の回避を含め、“確実性”を踏まえた本質的な総所有コストの削減を目指しました」と加藤氏は語ります。 「新しいOSを採用することもあり、慎重に調査とトライアルを重ね、2005年12月になって開発に着手しました」 と振り返るのは松木祥博氏(みずほ銀行 IT・システム統括部プロジェクト推進第二チーム参事役)。 「確実性を重視してリスクをミニマイズするため、まずは小さく作って稼働実績を確立し、それから大きく育てるという実績の積み上げを徹底しました」。 例えば、先行した非勘定系業務の「オンライン監視システム」でSystem z上でのLinuxの稼働実績を確立し、 また、IBMの幕張センターで「周辺チャネル系システム」の擬似本番環境を構築し、 Oracle DatabaseやIBM WebSphereなどソフトウェアの動作確認とシステム移行の検証を実施しています。

「24時間サービスを提供しているミッション・クリティカルな業務を預かっているものとして、 プロジェクトを推進する上で常にシステム移行時のリスク軽減を意識しながら、プロジェクトのフェーズ分けや移行リハーサルなどを進めてきました」と信氏氏は語ります。

開発全体のマスター・スケジュールは、最終形態から逆引きして確定され、さらに移行リスクの軽い順に次の三つのグループに分け、並行して進められました。

(1)サーバー移行のみのチャネル系システム…MMK、ナンバーズ、Mizuho International Cash Card(MICC)

(2)DB移行を伴うダイレクト・システム…インターネット・バンキング、マルチペイメント

(3)端末(コール・センター)の移行を伴うテレホン・バンキング・システム

移行リリースも段階的に行われ、冗長構成サーバーは片系ずつでリリース、行内関係者向けへの先行リリース、 DB移行では本番環境を利用したリハーサルを実施するなど、リスク軽減のため、移行だけで6カ月以上を費やしています。

今回のプロジェクトの成功要因について、開発を担当した橋本昌典氏(みずほ情報総研 銀行システムグループ第2事業部第2部部長)は、次のように語ります。

「リスクの少ないシステムから順次安定稼働を見極めて新規インフラへ移行するという適正なフェージングが大きかったと思います。 それによって要員推移も平準化され、無理のないプロジェクト運営ができました」。 また、櫻井正明氏(同次長)は、「先行グループで発生した障害を後続グループに横展開し、類似見直しを徹底したことでシステム品質が強化されました。 基盤更改案件ではありましたが、アプリケーション担当によるブラック・ボックス・テストを徹底したことも高品質につながりました」と語ります。

Benefits

ミッション・クリティカルなシステムで確かな成果

今回のプロジェクトのうち、インターネット・バンキングなどの統合システムにSystem zを活用した メリットは、以下のようになります。

まず、System zの採用により、サーバー・レベル での信頼性を確保しました。仮想化技術で41台 のUNIXサーバーが2台のSystem z筺体に集約 され、CPU/メモリーやI/Oアダプターなどを共 有化した効率的なリソース配分が実現されてい ます。また、統合により保守部材交換も減らせま すので、システム縮退運用の時間も短縮されサー ビスの安定化に寄与しています。「七つの業務 システムを統合するた めに仮想化技術は欠か せませんでした。この System zの仮想化に より、統合システムは高 い信頼性に加えて、柔軟 性を兼ね備えることに なったといえるでしょう」 と加藤氏は語ります。 Linux OSとしては SLES9を採用し、カーネル2.6による安定性と64bit化によるメモリー空間の拡大を享受してい ます。ストレージも現在は2台のESSに統合さ れ、遠隔コピー機能(PPRC)によるデータ同期化 機能と合わせ連続稼働に向けた冗長化を実現し ています。さらにソフトウェア面では、データベー スの対障害性と可用性の向上に向けクラスター 化したことで(Oracle Real Application Clusters 10gの採用)、障害時の復旧時間が大 幅に短縮されています。このデータベースとアプ リケーション間は、z/VMの仮想スイッチ経由で 筐体内通信を行っており、遅延が極小化されるこ とで、通常時の安定したパフォーマンスが確保さ れています。

 

将来の展望

現在、周辺チャネル系サーバー統合システムは当 初の狙い通り安定稼働しています。 「今回のプロジェクトは、企業経営に貢献しなが ら、IT部門として新しい技術にチャレンジしていく という一つの雛形になったと思います」と信氏氏 はプロジェクトを振り返ります。

「2年にわたる大規模なシステム基盤更改プロ ジェクトでしたが、スケジュール、開発費用とも 当初の計画通りに推移できました。銀行第三次 オンライン以降となるミッション・クリティカルで 大規模なシステムへのLinux導入となりました が、ノウハウの蓄積と人材育成を含め、確かな成 果が得られています」と加藤氏は結びました。

 

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