Business Challenge story

人事、財務などの基幹系システムに対応するミッション・クリティカルなクラウド

クラウドを利用する企業が拡大しています。ただ、その多くはグループウェアやファイル・サーバーなどの情報系システムにとどまっており、高い信頼性や可用性が要求される基幹系システムでの利用は、まだまだ限定的と言わざるをえません。

そうした中、新日鉄住金ソリューションズが2007年から提供しているのが、「absonne(アブソンヌ)」というITインフラサービスです。「企業の個別要件に応えるミッション・クリティカルなクラウド」というコンセプトのもと、ECサイト(インターネット上で商品を販売するWebサイト)や人事、財務、ERP(販売、生産、物流、財務などの企業活動全般にわたる業務を全社的に統合した企業情報システム)などの基幹系システムを支えるIaaS(Infrastructure as a Service)として進化してきました。

そして2011年6月、同社は翌2012年5月に開設予定となっていた第5データセンターへのabsonneの展開を見据え、その機能強化に乗り出しました。同社ITインフラソリューション事業本部営業本部営業企画部の部長を務めるソリューションコンサルティンググループの早瀬久雄氏は、このように振り返ります。

「既設のデータセンターで運用してきたabsonneのリソースが飽和してきたこともあり、新しいサービス提供拠点を求めていたのです。また、これを機にabsonneのアーキテクチャーそのものを全面的に見直し、ミッション・クリティカル性をさらに高めるとともに、お客様にセルフサービス型の管理ポータルを提供するなど、オペレーションの自動化による利便性を高めていこうということになりました」

背景には、激化するクラウド・サービス間の競争への対応という狙いもあります。NSSLCサービス株式会社ITサービス本部クラウドサービス部absonneグループのシニア・マネジャーである永田秀樹氏は、「常に価格競争力とサービス品質を高めていく努力を重ねていかないと、absonneはお客様から選ばれるクラウドであり続けることはできません」と話します。

こうして新日鉄住金ソリューションズは、ITIL(IT Infrastructure Library:ITインフラストラクチャー・ライブラリー)v3に準拠したITサービス・マネジメントによる99.99%以上の稼働目標の達成、運用コストの削減、ユーザー側のプライベート・クラウド環境やオンプレミス(自社運用)のシステムとシームレスに融合できるハイブリッド・クラウドの実現といった高いハードルを掲げ、absonneの刷新に着手しました。

 

採用したTivoli製品一覧カテゴリ

CMS/CMDB: Tivoli CCMDB(Tivoli Change and Configuration Management Database)

サービスデスク: TSRM(Tivoli Service Request Manager)

OSコンポーネント管理: TEM(Tivoli Endpoint Manager)、TPM(Tivoli Provisioning Manager)

キャパシティ管理: ITM(IBM Tivoli Monitoring)

監視: TNM(Tivoli Network Manager)、ITM(IBM Tivoli Monitoring)

イベント管理: Tivoli Netcool/OMNIbus、Tivoli Netcool/Impact

ミドルウェア管理: TADDM(Tivoli Application Dependency Discovery Manager)

Transformation

これまで同社はabsonneの運用管理のほとんどを、自社開発のソフトウェアによって行ってきました。しかし、absonneのアーキテクチャーの見直しにあわせて、そのフレームワークを再構築するには、膨大な工数を要します。また、第5データセンターがオープンするまでの1年に満たない短期間で、その作業を終えなければなりません。

「そこで標準化できる部分については商用の運用管理ソフトウェアを適用し、カバーできない部分だけを自社開発するという方向転換を行いました」と話すのは、同社ITインフラソリューション事業本部営業本部営業企画部の部長であり、ソリューション 企画統括グループリーダーを務める菅野孝治氏です。

こうして同社は、Tivoli Change and Configuration Management Database、Tivoli Application Dependency Discovery Manager、Tivoli Provisioning Manager、Tivoli Service Request Manager、Tivoli Endpoint Manager、Tivoli Monitoring、Tivoli Network Manager、Tivoli Netcool/OMNIbus、Tivoli Netcool/Impact といった、IBMの運用管理ソリューションを導入することを決定しました。

「ソリューション選定にあたって最も重視したのは、複数の管理機能をいかに効率よくシームレスに統合できるかという点です。そうした連携を支える、ITサービス・マネジメントの中核に位置づけたのが構成管理。どのデータセンター、どのフロアー、どのラックに、どんなサーバーがあり、その上でどのお客様のVM(仮想マシン)が稼働しているのか。また、そのVMは、どの物理ネットワークの、どのポートに接続されているのか。お客様のあらゆるシステムの運用状態を正確に把握できなければなりません。その点、Tivoliが提供するデータモデルは非常に扱いやすく、私たちが内製するツールとも比較的容易に連携できると考えました」と菅野氏は話します。

さらに、早瀬氏がこのように言葉を続けます。

「RFI(情報提供依頼書)を投げかけたいくつかのベンダーの中で、IBMは私たちの意図を最も深くくみ取った回答を返してくれ ました。今後の技術サポートを考えたとき、一番安心できたのがIBMだったのです」

同社はabsonneの設計を見直すにあたってプロトタイピング手法(試作品をユーザーが利用し、ユーザー側の要望を反映したシステムを開発する技法)を採用して、幾度もの検証を繰り返しながら、新たなアーキテクチャーを煮詰めていきました。その過程で次々に発生する問い合わせに、IBMのサポート窓口が一貫して対応。「IBMの的確なアドバイスと情報提供のおかげで、予定どおりにabsonneの稼働開始にこぎ着けることができました」と永田氏も高く評価します。

Benefits

オンプレミスのシステム運用に比べユーザー企業のTCOを30%程度削減

第5データセンターを拠点として2012年6月に稼働開始した最新版のabsonneは、現在まで重大なトラブルを起こすことなく安定した運用を続けており、目標としていた99.99%以上の稼働率を達成しています。

また、仮想サーバーのプロビジョニング(ITリソースの割り当てと配備を行うこと)やリソースの追加、ファイアーウォールの設定変更などの操作をユーザー自身で行えるセルフサービスの管理ポータルが提供され、absonneの利便性は大幅に向上しました。

さらに、absonneを利用する企業は、このパブリック・クラウドの仕組みを既存のプライベート・クラウド環境に展開することで、両クラウド間でリソースを相互活用するハイブリッド・クラウドを実現することができます。

進化したabsonneのサービスを活用することで、「オンプレミスでシステムを運用する場合に比べ、お客様はTCO(ITシステムにかかる総費用)を30%程度削減できると見込まれます」と早瀬氏は説明します。

一方、Tivoliの一連の運用管理ソリューションは、absonneの運用管理に携わるスタッフの生産性向上にも大きく貢献しています。

例えば、これまでサービス・デスクで独自に管理していたインシデント(問い合わせ)情報を、ITプロセス管理に一元化することができました。また、特殊なコマンドを入力しなければ取得できなかったストレージの稼働情報を、IBM Tivoli のインターフェースを介して容易に収集できるようになり、インフラ監視を省力化しています。

「従来のabsonneの運用体制と比較して、1人の管理者が2~3倍のリソースを監視できるようになりました」と永田氏は話します。

こうした生産性の向上が、absonneのコスト競争力の強化にも結びついていることは言うまでもありません。

 

将来の展望

ITアウトソーシングへのニーズを踏まえクラウドとデータセンターの進化を探る

企業システムを支えるミッション・クリティカル・クラウドという基本コンセプトを今後も追求すべく、同社はabsonneのさらなる機能拡張や非機能要件への対応強化を目指し、次のステップに向けた構想を描いています。

「例えば、サービス・デスクに関する機能強化の一環として、お客様自身が監視項目のKPI(Key Performance Indicator : 重要業績指標)を設定し、システムの運用状況をリアルタイムに “見える化” できるモニタリングの仕組みを提供することも検討しています」と永田氏は話します。

一方、菅野氏が視野に入れているのは、absonneのグローバル展開です。

「クラウド・サービスのグローバル展開について豊富な実績を持つIBMのナレッジや知見を聞かせていただきながら、あらためてabsonneのアーキテクチャーを見直すことも必要ではないかと考えています」と話します。 さらに早瀬氏は、近い将来にも起こると言われている大規模災害に備えたBCP(業務継続計画)やDR(災害復旧)対策の強化を進めていく考えです。

また、ユーザー側で高まっているITアウトソーシングへの広範なニーズを踏まえ、absonneのみならずプライベート・クラウドの「NSGRANDIR+(エヌエスグランディール・プラス)」、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)、次世代データセンター、ソリューション・サービスまで包括した同社の全体戦略として、あるべきクラウドの姿を模索しています。

「企業のクラウド・コンピューティングはますますハイブリッド的な利用が増えていくでしょうし、データセンター側としてもOpenStack(データセンター内にある大規模な計算リソース、ストレージ・リソース、ネットワーク・リソースのプールを制御するクラウド・オペレーティング・システム)やSDE(Software Defined Environment : ワークロードに最適なリソースを動的かつ自動的にマッピングするテクノロジー)などの技術を取り入れながら、対応を強化していかなければなりません。そうした中で新たなabsonneの発展を探っていくことになります」と早瀬氏は話します。

高度な信頼性と業務知識に裏付けられた高度なシステム運用ノウハウをベースに、さらなる価値創造を目指す同社のチャレンジが続いています。

 

お客様情報

前身は、大規模ITユーザーである新日鉄住金の情報システム部門。製鉄業のシステムは24時間365日のノンストップ稼働を大前提として おり、それを実現するためには戦略的な経営管理や精密な生産工程管理が求められる。 そうした業務経験で培われたインテグレーション力とシステム・ライフサイクル・サポートの技術・ノウハウの蓄積が、“鉄のDNA”として新日 鉄住金ソリューションズの原動力となっている。 コンサルティング、システム構築、運用・保守をワンストップで提供。将来的な技術動向やアップデートまで包含したシステム・ライフサイクル のトータル・ソリューションにより、高い費用対効果を実現。また、システム研究開発センターでは数年先を見据えた研究を行っており、その 成果をさまざまなプロジェクトに反映している。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

 

製品・サービス・技術 情報

当事例で使用されている主な製品・サービスは下記の通りです。

ソフトウェア

IBM SmartCloud Control Desk, Tivoli Provisioning Manager

ソリューション

IBM SmartCloud Control Desk, Tivoli Provisioning Manager Express, Electronics: Integrated Industry Framework

Solution Category

  • Other