Business Challenge

顧客との日常的な接点や事務などにおけるデジタル化の推進を目指す伊予銀行は、SoE(Systems of Engagement:協働のための情報活用システム)用途の分散システムを作成して、メインフレームにある勘定系システムのデータを活用したサービスの新規創出や、非対面チャネルの拡充といった各種施策を展開してきました。一方で、勘定系システムとSoEとのデータ連携の開発には多大な時間とコストがかかる、という課題を抱えていました。

Transformation

伊予銀行は、インターネット標準の技術であるRESTful APIによって勘定系システムとSoEをつなぐ「Web連携」の基盤を構築。それにより、勘定系システムと連携するシステムの開発効率化と開発コストの削減を実現するとともに、勘定系システムのデータをオープンな環境から参照、更新可能にしました。さらに、新しいアプリケーションの開発にJavaを採用し、Javaアプリケーション基盤をメインフレーム上で構築することで、システムをシンプル化し、メンテナンス性を高めました。

Results

情報をリアルタイムに提供

IMS Connectによって新規を含む各チャネルへのリアルタイムな情報提供を実現

利便性の向上

Javaで開発した名寄せ機能によって業務を効率化することで、顧客の利便性を向上

メンテナンスが容易

IBM Z上にJavaアプリケーション基盤を構築することで、勘定系システムとSoEを単一システム上で実現

「瀬戸内圏域お客さま満足度No.1の金融サービスグループ」の実現に向けて

伊予銀行は「瀬戸内圏域お客さま満足度No.1の金融サービスグループ」の実現に向けて、2015年4月から始まる「10年ビジョン」を策定しました。そして、そのセカンドステージである2018年度中期経営計画(2018年4月1日〜2021年3月31日)の下、「Digital-Human-Digital Bank −いつでもどこでも、もっとあなたのそばにー」を新たなビジネス・モデルに掲げて、成長トレンドへの転換を推進しています。

「デジタルタッチポイント」「ヒューマンコンサルティング」「デジタルオペレーション」の3つのサイクルを回す「Digital-Human-Digital Bank」は、同行の顧客が使いやすい日常的な接点の確立や事務手続きのデジタル化を推進して、行員が顧客からの相談対する情報提供や助言と顧客本位の提案を行えるようになることを目的としています。 このビジネス・モデルの実現に向けて、デジタル技術を活用した新たなサービスやチャネルを創造するにあたり、伊予銀行は開発に長い期間と多大なコストがかかるという課題を抱えていました。

既存の勘定系システムはレガシー言語で開発していますが、将来を見据えて、新しいアプリケーション基盤にはJavaを採用すべきだと考えたのです

株式会社伊予銀行 システム部長, 稲田 保実氏

システムの開発効率化とコスト削減を目指して、RESTful APIで勘定系システムとSoEをつなぐ「Web連携」基盤を構築

伊予銀行は、金融専用端末、ATM、コールセンター、個人ローンといったチャネルと、Webページ、スマホアプリといった非対面チャネルが、メインフレームの勘定系システムと連携するための基盤として、新たにWeb連携ゲートウェイを構築しました。

非対面チャネルは、伊予銀行のビジネスモデル「Digital-Human-Digital Bank」における「デジタルタッチポイント」であり、イノベーションを創出するためのシステムであるSoEに該当します。そして、Web連携ゲートウェイによって、オープンな環境にあるSoEから、勘定系システムのデータの参照や更新が可能になりました。同行 システム部長の稲田保実氏は、次のように話します。

「ここ数年で、勘定系システムのデータを活用する小型分散システムが増加してきました。しかし、メインフレームにある勘定系システムとSoEとのデータ連携は容易ではなく、開発には長い期間と多大なコストがかかるという課題を抱えていました。これらの課題を解決し、勘定系システムと連携するシステムの開発効率化とコスト削減を図るべく、Webで連携するゲートウェイの構築に着手しました」

Web連携ゲートウェイの開発にあたり、「IBM 情報管理システム」(IMS)の標準機能である「IMS Connect」を勘定系に適用することで、勘定系のデータをオープンな環境で参照、更新できるようにしました。これにより、ビジネスに役立つリアルタイムな情報を、営業店のみならずコールセンターや個人ローン自動審査などの新規チャネルに提供可能となりました。また、SoEとの接続にRESTful APIを採用することで基盤の制約が少なくなるため、新規チャネルの開発生産性の向上も期待できます。そのいきさつについて、同行システム部課長の井上浩一氏は次のように話します。

 「勘定系システムとSoEを連携させるために、ゲートウェイの役割を果たす『メッセージブローカー』や『ESB』(Enterprise Service Bus)も検討しました。ただ、メッセージブローカーは接続に手間が掛かり、ESBは中央集権型で接続するため可用性に不安が残ります。そこで、Web系システムとのつなぎ込みが容易で、インターネット標準の技術であるRESTful APIに着目しました。ただ、当時の伊予銀行では『API』はなじみのない技術だったため、理解しやすいように、あえて『API』という言葉は使わず『Web連携』として開発を進めました」

 

名寄せのための「全店CIF機能」をJavaアプリケーション基盤上でアジャイル開発

伊予銀行は、顧客情報ファイル(Customer's Information Files。以下、CIF)を活用した名寄せのための「全店CIF機能」をJavaで新規に開発し、チャネル側の業務効率化を図っています。従来から、マーケティング用の名寄せ機能は持っていましたが、「全店CIF機能」は一般事務でも活用できるように精度を高めることを目指しました。

この「全店CIF機能」によって、各営業店は全ての顧客情報が把握できるため、業務を効率的に進められるようになります。その結果、どの営業店でもスムーズにさまざまな手続きができるため、同行の顧客にとっても利便性が向上します。

同行にとって「攻めのシステム」にあたる「全店CIF機能」をJavaで開発した意図について、 「既存の勘定系システムは、レガシー言語(マクロ化したアセンブラー)で開発していますが、アセンブラーのエンジニアは人材調達が難しくなってきています。そこで、将来を見据えて、新しいアプリケーション基盤にはJavaを採用すべきだと考えたのです」と稲田氏は話します。

今回、伊予銀行はJavaアプリケーションのためのサーバーを物理的に新規に用意するのではなく、「IBM WebSphere Application Server for z/OS」(以下、WAS)を採用して、同行の勘定系システムが稼働するメインフレーム(IBM Z)上にJavaアプリケーション基盤を構築しました。既存システムであるIBM Z上にアプリケーション・サーバーを構築することで、システムをシンプル化し、メンテナンス性を高めています。

当初、IBM Z上でオープン系の基盤を動かすことにより、セキュリティー、パフォーマンス、コストの面で、勘定系システムの運用に影響が生じることが懸念されました。セキュリティー面の懸念については、勘定系と同等の高いセキュリティー・レベルを実現できるIBM Zの「RACF(Resource Access Control Facility:リソース・アクセス管理機能)」が払拭し、パフォーマンスとコストに関する懸念については、IBM Zの汎用プロセッサーである「CP」から独立して動作する特定処理(Javaなど)専用プロセッサーである「zIIP」によって解決されました。「IBM Zが、これらの懸念を一掃してくれました。WASを利用することでIBM Z上にJavaアプリケーション基盤を構築できることが分かり、WASがベスト・プラクティスであると判断しました」と井上氏は明かします。

Javaアプリケーション基盤の開発にあたり、伊予銀行はアジャイル開発に挑みました。これまでのウオーター・フォール型と異なるアジャイル開発により、開発生産性の向上とともにビジネスへの即応性を高め、伊予銀行全体のさらなるサービス提供スピードの向上を目指しています。アジャイル開発に挑戦して苦労した点として、井上氏は「まず、要件が確定している共通機能の開発からアジャイルを適用していきました。ただ、当初はスプリントの粒度がよく分からず、1カ月サイクルで回していました。しかし、1カ月サイクルでは粒度が大き過ぎて開発効率が上がらなかったため、粒度を再検討して1~2週間のサイクルに調整しました」と、開発サイクルである「スプリント」の調整が難しかったと振り返ります。

大規模なエンタープライズ開発にアジャイルを適用する際のポイントについて、井上氏は、「全ての開発プロセスをアジャイルにするのではなく、ウオーターフォールとアジャイルをハイブリッドで適用することが重要になります。例えば、伊予銀行では、要件定義のフェーズはウオーターフォールできっちり固めます。一方、アプリケーション開発とユニット・テストのフェーズは、アジャイルで進めています。そして、ウオーターフォール型で開発した他のシステムとの結合テスト以降は、ウオーターフォールに戻して完成させるといった開発プロセスが必要になりました」と説明します。

今後もレガシーの勘定系システムを維持しながら、オープン技術をうまく取り入れてSoE側の新たなサービスの開発、提供に力を注ぎます。このような当行の取り組みが銀行ICTの新しいモデルの一つになればと考えています

株式会社伊予銀行 システム部 課長, 井上 浩一氏

Javaアプリケーション基盤の評価と、今後の展望

Javaアプリケーション基盤の稼働後に、課題の一つとして浮上したのがパフォーマンスでした。当初は、Javaアプリケーション基盤の全ての処理を「zIIP」で実行せず、一部の処理に「CP」を使用していたため、期待通りのパフォーマンスが出ませんでした。

 「パフォーマンスを改善するためには、遅延の原因を切り分け、プロセッサーの使用バランスをチューニングする必要があります。ただ、行内のエンジニアにはそのノウハウがないため、対応に苦労していました。そこで、日本アイ・ビー・エムのサポートを受け、二人三脚でチューニングを行い、パフォーマンスを大幅に高めることができました」と、井上氏は振り返ります。

Javaアプリケーション基盤の今後の展開について、井上氏は「Javaアプリケーション基盤の可能性は未知数だと感じています。特に、WASはさまざまなプラットフォームに対応しており、今後はIBM Zだけではなく、OSがAIXのサーバー(IBM Power Systems)やクラウドなどにも展開できると考えています。顧客のニーズに応じて、適材適所で活用していきたいですね」との考えを示します。

事実、伊予銀行が「TSUBASA FinTech共通基盤」(注1)の構築に参加した際には、外部WebサービスとのAPI連携基盤としてAIXサーバーとWASを採用しました。そして、IBM Z用に開発したJavaアプリケーションをそのまま再利用することで、構築工数を抑えられました。

注1:伊予銀行を始めとした地方銀行が参加する「TSUBASAアライアンス」とT&Iイノベーションセンターが共同で構築した、任意のFinTech企業とのAPI接続を同一環境内で可能にするマルチ・テナント型の共通基盤

今回、伊予銀行が構築した勘定系システムとSoEをつなぐ「Web連携」は、既に、店舗のタブレットと勘定系との接続に使われており、デジタルテクノロジー活用の要としての運用が始まっています。今後のICT戦略の取り組みについて、井上氏は「勘定系システムを自ら運用している銀行はほとんどないのが実情です。当行は、今後もレガシーの勘定系システムを維持しながら、オープン技術をうまく取り入れてSoE側の新たなサービスの開発、提供に力を注ぎます。このような当行の取り組みが銀行ICTの新しいモデルの一つになればと考えています」と将来を見据えます。

一方、稲田氏は同行が目指す姿である「Digital-Human-Digital Bank」を念頭に、次のように意欲を語ります。

「デジタル・テクノロジーの活用によって、各営業店の事務処理負担をさらに軽減していきます。例えば、窓口での書類の手続きをデジタル化し、ペーパーレス化します。そして、人手を要する事務処理を減らすことで、事務担当スタッフを顧客サポート対応に振り向けられるようになります。今まで以上に手厚いサポートを提供することで、さらなる顧客満足度向上につなげていきます」

About 株式会社伊予銀行

株式会社伊予銀行
〒790-0006 愛媛県松山市南堀端町1番地
https://www.iyobank.co.jp/

「潤いと活力ある地域の明日を創る」という企業理念のもと、「10年先も必要とおっしゃっていただける銀行」となるべく、ビジネスモデルの変革に取り組んでいます。

Take a Next Step

IBM Zに関する詳しい情報はIBMの営業担当員、または IBM ビジネスパートナーにお問い合わせいただくか、ウェブサイト https://www.ibm.com/jp-ja/it-infrastructure/z をご覧ください。

 

Solution Component

IMS Connect Extensions for z/OS

IBM WebShpere Application Server for z/OS

IBM Resource Access Control Facility (RACF) 

IBM z Systems Integrated Information Processor (zIIP)