Business Challenge story

ドキュメントを構造化して、再利用性とトレーサビリティーを上げる

オリンパスの医療事業では、設計、開発、品質保証、薬事など開発部門の各部署で、それぞれの標準作業手順(以下、SOP: Standard Operating Procedure)に従ってさまざまなドキュメントが作成され、業務が進められてきました。また、作成されたドキュメントは、製造部門を含めた関係部署に渡され、その部署の業務を進めるためにSOPに従い新たなドキュメント作成に使用されていました。このとき、それぞれの部署が作成するドキュメントには、他の部署から受け取ったドキュメント(インプット)と共通の要素が数多く含まれますが、それらは都度繰り返し入力されたり、元のドキュメントからコピーされたりしていました。 オリンパス 医療開発エンジニアリング部 副部長 辻潔氏は、次のように話します。「ドキュメントを作成する際には、Officeツールが多用されます。ある部署で作成したドキュメントが別の部署に渡されると、その部署でも同じ様にツールを使ってドキュメントが再構築されます。ただし、書式を変更する必要があったり、必要とされる要件が異なっていたりするので、受け取ったドキュメントの項目や内容のうちどの部分が該当するかをその都度精査して入力しなければなりませんでした」。このような人手に頼った作業がそれぞれの部署で繰り返されるため、製品の開発や製造に関係する部署が増えるにしたがって、ドキュメントの内容を精査する手間も増えていきました。また、オリンパスが製造する医療機器では、法規制に対する提出文書のドキュメントも、その書式体裁を整える手間が必要でした。このようにそれぞれの部署は、その都度ドキュメント作成のために精査と再入力の重複作業、不効率がありました。 さらに、アメリカ食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)などで医療機器の基準となっている国際標準化機構(以下、ISO: International Organization for Standardization)では、ドキュメント内の各要素に対するトレーサビリティーが求められてきています。「ドキュメントを構成する各要素をオブジェクトと呼び、あるオブジェクトをインプットとして別のオブジェクトが生成されるオブジェクト連鎖のトレーサビリティーが求められます。あるドキュメントを作り、それをもとに関連する別ドキュメントを作ったが、それぞれのドキュメントの関係性は個々のドキュメントの内容を基に説明するという対応ではなく、一方のドキュメント内の要求によって、もう一方のドキュメント内の設計要件が生じたという相互の関係性を示す要素(オブジェクト)単位でのトレーサビリティーが求められています。医療機器に関する設計の妥当性を論理的に証明する必要性が高まってきています」(辻氏。) オリンパスの医療事業は、各部署のそれぞれのドキュメントの記載内容や作業における重複を極力軽減し文書作成、文書管理を合理化したいと考えました。また、個々のドキュメントをファイル単位で管理するだけでなく、ドキュメントを構成する「オブジェクト」の粒度を定義した上で、それによってトレーサビリティーを確保しようと考えました。このためにドキュメントを構造化する必要がありました。

Transformation

何回にも及ぶIBMとの検討で、実現の可能性の高い課題解決方法を見い出す

オリンパスは、技術情報を構造化するためのアーキテクチャー、Darwin Information Typing Architecture(DITA)にも注目しました。そして、医療事業の各部署で受け渡されているドキュメント内に共通化できるオブジェクトがどの程度含まれているかを検証しました。このような検討や検証に1年近くの期間を費やし、ドキュメントを構造化して取り扱うためのツールも検討しました。「文書を構造化記述するツールとしてさまざまなものが世の中に存在しますが、企業内での業務に使うためには、かなりのカスタマイズが必要でした。最終ゴールは、構造化したドキュメントを事業部門内の数千人の社員全員が長期にわたり共有することでしたので、カスタマイズにはリスクがありました」(辻氏)。 オリンパスは、課題解決のための方策の検討を重ねました。「IBMとの協議では、弊社の要求が何かを一緒になって模造紙の上に書き込んで要求分析する作業をしていきました。世の中にはこのような技術があるので、こんなことができるのではないかといったことを、IBMは共に考えてくれました。また、2009年から2010年に社内で起案したプロジェクトの計画資料を見返してみると、現在実現していることのほとんどが当時立案したものばかりだということがわかりました。つまり、当時IBMと共に考えたことが正しく、実現の可能性が高いものであったということです」(辻氏)。 オリンパスは、ドキュメントの構造化を中心に据えた業務改革をIBM Rational DOORSやIBM Rational Engineering Lifecycle ManagerなどのIBM製品で構築してきました。例えば、商品規格書はRational DOORSで作成することにしました。「Rational DOORSは、社内のモノ作りでの構造化連携すべきドキュメント作成に使用していきます。IBM製品には設定によって機能化できるものが多いため、それらセッティング等によって、さまざまなニーズに対応できます」(辻氏)。

Benefits

現場の合意を得た上で、手厚いサポートによりソリューションの普及を図る

課題解決のための方策と、その実現のためにオリンパスは、実際に業務を進める開発部門や製造部門の各部署に検討結果を示し、業務改革を進めることへの合意を得ることにしました。「あるべき姿として考えた内容と、それを実現するために選んだ方法や試作モデルによる展開例を示し、現場の方々にも試行してもらうトライアルを実施しました」(辻氏)。関係部署では、示されたコンセプトの多くが受け入れられました。オリンパスは、実際にツールを使った改善への試行にプロジェクトの段階を進めました。 しかし、実際に構造化したドキュメントやツールを使って現場で業務を進めてみると、それまで使っていたOfficeツールとの違いなどから、多くの問合せや要望が出てきました。「使用方法に関する対応のためのサポートデスクを開いたり、動画マニュアルやQ&A集を作ったりして対応しました。新しいツールには当然慣れが必要です。利用者がツールに習熟するまでの期間は、データ入力等も含めてすべてサポートするという考えでプロジェクトを進めました」(辻氏)。また、開発や製造の各部署が管理する変更内容をツール内で管理できるようにし、さらに、最終段階で原本となるドキュメントの書式を、既存と同じスタイルのものを自動生成できるようにしました。これによって、各部署による変更内容の管理の手間を大幅に減らし、また、段階的で柔軟な移行も対応できるよう考慮しました。

 

将来の展望

さらに適用範囲を広げ、より大きな効果に期待

今回の業務改革によって、1製品あたり1,000件近く作成され部署間で受け渡されていたドキュメントが連鎖するドキュメントチェーンとして連携できます。「すでに一部の業務でドキュメントを構造化して関係部署で共有することで、ツールへの投資を2年弱で回収できるという試算も出ています。また、製品のライフサイクル管理に必要な部品変更の情報も開発部門と製造部門間で連携し、医療事業全体で統合されたものに変えていきたい」と辻氏は話します。これによって、開発から製造、サービスまでの各部署、各ドキュメントが的確に連携され、ドキュメントやオブジェクトの重複がなく、法規制にも準拠して最適なプロセスで業務を進めます。この業務改革が全体レベルに広がったときの効果は多大です。オリンパスは、ドキュメントの構造化を中心とした業務改革の適用範囲をさらに積極的に広げていこうと考えています。

 

お客様情報

オリンパス株式会社では、事業ユニットと機能部門をバランスよく融合して全社経営資源の最大活用を目指すマトリックス型の事業運営を採用しています。このうち医療事業は、医療用内視鏡などの医療機器の製造・開発と販売を担っています。

→オリンパス株式会社(外部サイトへリンク)

 

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