環境事業本部の総合力を発揮するために、開発から実装、操炉や監視までを一貫して行い、得られたデータと知見を各部門にフィードバックして技術のブラッシュアップを図っていく――そうした好循環が生まれる組織を作り上げた点に大きな意義を感じています

日立造船株式会社 常務取締役 環境事業本部長 白木 敏之 氏

ビジネス上の課題

ごみ焼却炉の運転には経験を積んだベテラン運転員による手動操作が不可欠ですが、人材の確保は容易ではありません。また、大規模自然災害や感染症流行といったリスクに対応できる体制の整備も求められています。こうした課題を抱えるごみ焼却施設に提供すべき新たな価値として日立造船が見定めたのが、「人がいなくても自動で動かせる、世界中どこからでも遠隔監視・操作して運転を継続できる」プラントです。
同社は画像やセンサーデータを活用した「遠隔監視・運転支援サービス」の開発・提供に注力してきたほか、ビックデータ分析や、IoT、人工知能(AI)など先進技術を活用して製品・サービスの付加価値向上を図るべく「Hitz先端情報技術センター(A.I/TEC)」を開設。長年培ってきた「エンジニアリング」と「ものづくり」のノウハウを礎に、事業企画やサービス領域へとバリューチェーンを拡大してきました。

概要と経緯

そうした目標に向けて、日立造船はIBMとともにAIを活用した全自動燃焼運転システムの開発を進めてきました。ごみ焼却炉内の燃焼状態に応じて「正常維持モデル」と「異常回避モデル」という2つのAIモデルを開発し、レベル4(無人)の全自動運転を実現。導入の結果、燃焼異常時間を半減するとともに、オペレーターの手動操作も半分以下に抑えて属人性や人的ミスによるリスク削減に成功しました。
さらに日立造船は、開発した技術やシステムを製品・サービス化して世に送り出すための仕組みづくりにも着手。ごみ焼却施設の自動運転の実用化および事業化を推進する新組織として「インキュベーション推進部」を立ち上げました。IBMはこれを包括的に支援し、3カ月という短期間で新組織の設立に求められるすべての準備を整えました。

効果と今後の展望

インキュベーション推進部は、遠隔監視と遠隔操炉など、ごみ焼却施設の運用の効率化や省人化を図るサービスに加え、機器の保全や長寿命化、運転員のスキルのサポート等も含め、顧客を総合的に支援していく体制を整えました。遠隔監視では、各地のごみ焼却・発電プラントから収集したデータをA.I/TECに蓄積し、リアルタイム監視とデータ解析の2つの観点から現場をサポートします。また遠隔操炉についても、近日中のサービス提供に向けて順調に準備が進んでいます。
ごみ焼却発電施設での一連の取り組みと成果を受けて日立造船では、循環型社会実現に向けたソリューションパートナーとなるべく、顧客・市場の課題解決に全力で取り組んでいく計画です。

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