Business Challenge story

サーバー標準化のため、高いサービス・レベルを安定して提供できるUNIX環境が必要に

ヤマハ発動機のプロセス・IT部は、国内だけでなく同社のグローバル全体におけるITインフラ全般を担当している部門です。同部では、10年後を見据えたヤマハ発動機のITインフラのあるべき姿について、2006年に検討を始めました。

「最初に考えたのは、ITシステムが経営にどう貢献していけばよいかという観点です。弊社ではもともとアジア市場の売上比率が高いのですが、今後BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)などの新興経済発展国が増えてくるに従って、ますます事業エリアも拡大することが予想されます。また、現在の主力製品はモーター・サイクルですが、今後はライフサイエンス等の新たな事業分野が拡大していく可能性もあります。そういった経営の変化に迅速に追従し、安心かつ安定した環境を提供する。それが今後のITインフラのあるべき姿と考えました」と、ヤマハ発動機 プロセス・IT部 IT技術戦略グループ グループリーダー 主管 山下 雄三氏は話します。

こうして策定したのが「ITインフラ・グランドデザイン」です。その範囲はサーバー集約やデータセンター集約、シンクライアント化など多岐にわたります。現在それぞれの分野で「ITインフラ・グランドデザイン」に基づいた実装が進められています。

サーバー集約の領域では、IAサーバーやUNIXサーバーなど300台余りがその対象となりました。2007年の基本設計の際に検討したのが、「サービス・レベルの最適化」でした。その詳細について、ヤマハ発動機 プロセス・IT部 IT技術戦略グループ IT技術担当 主査 和田 秀昭氏は以下のように解説します。「サーバー集約といっても、複数のサーバーで稼働しているアプリケーションを単純に1台に集約すればよいというものではありません。全体のコストパフォーマンスを最適化するためには、業務ごとの重要度や運用要件に基づいて適材適所のサーバー・プラットフォームを選択する必要があります。例えば、弊社のケースでは重要なアプリケーションがクラスター構成のないサーバーで稼働しているというケースもありました」

そこでヤマハ発動機ではまずアプリケーションごとに必要な信頼性や稼働率を見直した上で、重要度に応じて「SA24」「SA」「A」「B」という四つのクラスを定義し分類しました。そして、それぞれのサービス・レベルの要件を満たすプラットフォームに移行する方針としました。

また、サービス・レベルの設定の中で、最高クラスのSA24に分類された「統合認証システム」は個別の課題も抱えていたと山下氏は話します。「弊社では、以前より統合認証システムを導入し、主要業務システムの認証一元化を推進しておりましたが、2006年に内部統制対応のため、すべての業務システムの認証を統合認証システムに統一しました。これによって、2007年にこの統合認証システムがパフォーマンス不足でログインできないという事象が発生したのです。人事管理系で目標設定やキャリアサーベイなどをイントラネットで構築されたシステムに入力するため、提出期限の前後で一万人近い社員が一斉にアクセスしたことが原因でした。そのときは10秒、20秒と待ってもログインできませんでした」(山下氏)。その時点で、すでに100以上のアプリケーションがこの統合認証システムを使うように変更されていましたが、そのすべてのシステムが利用できない状況が発生したのです。

Transformation

先進機能の組み合わせで、高信頼性と負荷分散を両立する構成を採用し移行リスクも低減

四つのサービス・レベルのうち、最重要であるSA24クラスとSAクラスの標準機として採用されたのがIBMのUNIXサーバー、IBM Power Systems(IBM Power 570とIBM Power 550)です。その選定理由をヤマハ発動機 プロセス・IT部 IT技術戦略グループ 主務 原子 拓氏は次のように話します。

「IBM Power SystemsのPowerHA(旧称HACMP)と仮想化機能(PowerVM)のLive Partition Mobility機能によって、計画停止を最小にし、リソース効率の高いクラスター構成を実現できると考えたからです」

一般的なアクティブ-スタンバイ型の構成の場合、通常スタンバイ機は稼働していません。同社が採用したクラスター構成は、2台の物理サーバーをPowerVM のLPAR(Logical PARtition:論理パーティション)機能で仮想化した上で、高可用性機能PowerHAによりアクティブ機とスタンバイ機を2台に分散して構成。2台の物理サーバーがどちらも常にアクティブ構成で稼働するようにしています。

さらに、稼働中の各仮想マシンに対応して仮想サーバーをダウンタイム無しで別の物理サーバーへと一時的に移動できるLive Partition Mobilityの活用で、計画停止も最小化することが可能となりました。例えば、サーバーの保守作業等でサーバーのリブートが必要な場合も、動的に仮想マシンを移動させることで、業務を止めることなく作業可能となります。

データベース・ソフトウェアとしては、同社で実績豊富な Informixを長年にわたり継続採用していますが、SA24クラス、SAクラスの中でも特に重要なデータベース・サーバーには、Informixが持つミドルウェア・レベルでのクラスタリング機能「High-availability Data Replication(以下、HDR:高可用性データ・レプリケーション)」の最新機能を採用。3台のサーバーでアクティブ-アクティブ-アクティブ構成とすることで、障害時のさらなるダウンタイム縮小に加えて、ロードバランシングをも実現しています。

「このDBサーバー3台構成の負荷分散に加えて、パフォーマンス不足という観点では実はもう一つ保険をかけています。各サーバーには予備のプロセッサーを積んでいて、いざという時にはそれを使うことができるようになっているのです。物理的に手配していては間に合いませんから」(山下氏)。

同社が採用したCoD(Capacity on Demand)は、追加のプロセッサーやメモリーをあらかじめ搭載しておき、活動化した分のみ支払うというソリューションです。初期投資を抑えながら急激なトランザクションの増加に対応できるようにしています。

また、他社UNIXからの移行に関しては、IBMのUNIX 移行技術センター(UMCoC、現Japan Migration Factory Program)のツールを活用し、事前にリスクを把握した上で実施できたので、不安を低減できたといいます。

Benefits

導入効果

20秒かかっていたログインも0.2秒に。最重要システムに安定したパフォーマンスを提供

2009年4月に導入された3台のIBM Power Systemsには、第1陣として、統合認証システム、伝送システム、製品マスターなどの共通基盤系と、一部の業務システムが移行しました。以前アクセスが集中してログインができなくなることもあった統合認証システムも、新環境移行後はPower Systems の高い処理性能に加え、Informixの負荷分散機能により3台でバランシングしている効果により、問題はまったく発生していないと山下氏は語ります。「私も時々確認してみるのですが、以前は10秒、20秒かかることもあったログイン処理は、現在は0.2秒以下で安定しています。以前は、人事系の目標設定などの期限がある一日に集中していた場合は、人事部に少しずつずらしてもらうような依頼もしていましたが、そういったこともすっかりなくなりました」

2009年12月には追加でもう3台の環境構築が完了し、こちらは2010年8月を目処に順次業務アプリケーションをさらに移行していく予定です。このサービス・レベル最適化を推進する上でも、Informixは最適だったといいます。「Informixは、UNIXサーバーや、Linuxサーバー、IAサーバーなど幅広いプラットフォームをサポートしているので、サービス・レベルごとに適材適所のプラットフォームで稼働でき、移行もほとんどワークロードはかかりません。また、新機能がありながらバージョンアップも非常にスムーズだったのも評価のポイントです」(原子氏)。

同社ではInformixを1992年から採用しています。その理由としてコストパフォーマンスの高さなどいくつか挙げられますが、最大のポイントは最小限の要員で運用可能なことであったと話します。「弊社の場合、海外にいくつもの拠点があり、そこにも日本で開発した生産管理などのシステムを展開しています。しかし、そういった個々の拠点に専任のDBアーキテクトを抱えておくわけにはいきません。その点、Informixは現地にDBに詳しい人間がいないような海外拠点であっても、リモートからの監視で十分運用が可能なので助かっています。あと、優れた開発言語(4GL)の存在も大きいですね」(原子氏)。

さらに、InformixがIBMソフトウエアの一員となった現在について、山下氏は、品質もより安定し、サポート面でも非常に満足していると続けます。「Informixは非常に安定しています。実際、ここ数年DBバックアップからリストアしなければならないような事態は発生していません。『これならバックアップとる必要ないね』と話しているぐらいです。そのぐらい安定しているということです」(山下氏)。

また、今回の移行プロジェクトに関して、IBMを選択した理由は、ハードウェアだけでなく、データベースも含めたトータル・ソリューションであった点だといいます。「ユーザーの立場からすると、『サーバーはわかりますが、データベースはわかりません』というベンダーでは困ってしまいます。その点、IBMの提案は、移行も含めてサポートしますよというご提案を頂きましたので、その点は評価できました。今回、移行の前にわれわれが持っていた問題点をすべてIBMに投げかけましたが、IBMはそれにすべて応えてくれましたので非常に満足しています。その結果として、IBMからは『ITインフラ・グランドデザイン』を意識した、期待を上回る良い提案をいただいたと思っています」(山下氏)。

IBMは次世代企業基盤構想として提唱するダイナミック・インフラストラクチャーに基づき提案をしましたが、それが『ITインフラ・グランドデザイン』を実現するものであるという点をヤマハ発動機は評価したのです。

 

将来の展望

経営に貢献する企業基盤を目指し、グローバル・レベルのデータセンター集約を目指す

ヤマハ発動機は、既存サーバーのリースアップのタイミングで順次IBM Power SystemsとInformixによる新環境に切り替えていく予定で、全体の完了は2012年を予定しています。サーバー集約に目処をつけつつあるヤマハ発動機にとって、次なる目標はグローバルでのデータセンター集約です。

「現在、Informixサーバーはインドネシア、タイ、ブラジル、ベトナムなど拠点ごとに設置しています。それを各拠点がリプレイスするタイミングで地域ごとにサーバーを集約化していこうとしており、アジアでは2012年までにシンガポールのデータセンターに集約することを考えています」(山下氏)。

その過程として、Informix に標準搭載されているレプリケーション機能のEnterprise Replication(以下、ER)によるデータ同期を行うことを目指しています。「例えば、統合認証システムのデータ連携はファイル転送で行っていますが、この方式だとどうしてもタイムラグや人的ミスなどが発生してしまいます。ミドルウェアの機能であるERで実現すれば、そういった課題も解決するものと期待しています。そうなれば、世界中どの拠点からログインしても、サーバーの物理的な場所を意識することなくシステムが使えるようになることになるでしょう。それはまさに『ITインフラ・グランドデザイン』でわれわれが目指しているITインフラの将来像なのです」(山下氏)。

IBM Power SystemsとInformixの組み合わせで、グローバル市場でさらなる躍進を可能とする強固な基盤を構築したヤマハ発動機は、2020年の最終ビジョンに向けて、今後も先進的なチャレンジを続けていく予定です。

 

お客様情報

1955年、ヤマハ株式会社の自動車部門が独立する形で創立。以来、小型エンジン技術やFRP加工技術、さらには制御技術やコンポーネント技術の開発に取組みながら、常に「高品質・高性能」や「軽量・コンパクト」をコンセプトとした製品を追求。現在、国内29社および海外79社の子会社と共に、モーター・サイクルや自動車用エンジンの製造・販売、バイオテクノロジー関連事業などを世界各国で展開しています。

 

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