Business Challenge story

独自要件に対応できる柔軟性をもったシステムで電子カルテシステム、医事会計システムを中心にした院内のIT環境を強化したい

京都市郊外の緑豊かな環境に位置する、いわくら病院。同病院の設立は1952年ですが、岩倉は平安時代から心の病の治療とゆかりが深い土地です。いわくら病院はそのような伝統を背景に持ちつつ、全国に先駆けて取り組んできた開放医療に象徴される地域に目を向けた医療を実践している先進性を今に伝える、精神科446床、介護療養型医療施設60床を有する病院です。

いわくら病院では医事会計システムを中心に、90年代からシステム化による業務の効率化に取り組んできました。しかし従来のシステムでは、いわくら病院独自の要件へのカスタマイズに対応しきれず、システム不具合や入力の二度手間による生産性の低下を招いていました。副院長の蓑島豪智氏は「医事の負担が高過ぎることは、病院運営の観点でも改善すべきテーマでした。また、書類の量が非常に多いなど精神科特有の課題解決もITに期待していました。

医事の現場で、日々こうした課題に直面していた医事課主任の佐々木良太氏は、当時発生していたシステムの問題について、次のような具体例を挙げます。「以前利用していた医事会計システムは、いわくら病院の独自性に合わせるために、多大なカスタマイズをして導入しました。その結果、診療費計算のプロセスなどに不具合が多く残ってしまい、システムで計算したものを改めて人力で計算して確認するという手間がかかっていました。また、診療報酬制度の改変が発生した場合、当然システムにもそれが反映されなければいけません。しかし従来のシステムはシステム会社の対応力の限界もあって業務に支障が出るなど、運用は限界に達していました」。

Transformation

病院独自要件への対応力を高評価。現場への普及促進も支援

いわくら病院がシステムを刷新するにあたり、最も重視したのはこれまで培ってきたサービスを維持・発展できること。つまり、現在の業務に対してシステム側を合わせることができる上で、より付加価値の高いシステムを探していたのです。

「今回は医事会計だけでなく、オーダリングやカルテの電子化といった病院全体のIT化計画になりました。当院では医師、看護師、事務、薬局、相談室、給食、作業療法室などの各部門の代表者によるシステム委員会を設置し、検討しました」(佐々木氏)と病院全体をITネットワークでスマート化する方法を検討していたのだといえます。

そのため、医事会計システム検討のためのRFP(提案依頼書)の項目は300以上に及び、比較検討は1年にわたりました。柔軟な要件対応を持ち、電子カルテシステムへのスムーズな移行が実現可能な製品を絞り込んでいった結果選ばれたのが、IBM DB2 V9.7上で稼働する医事会計システム「Medical Leader-Account(以下、ML-A)」と精神科向け電子カルテシステム「Medical Leader-Record Nozomi(のぞみ)」(いずれも、株式会社ナイスが開発)。ML-Aについては、IBM Cognos PowerPlayと連携させて統計分析サブシステムも実装しました。また、ハードウェアにはコストパフォーマンスや安定性などに優れるIBM System xが導入されました。

2008年の医事会計システム移行では、ナイスが常駐して研修を実施。翌年の電子カルテの導入ではスタッフのPCスキル向上にも配慮して、移行のために約3カ月間の紙カルテとの併存期間を設けました。看護主任の本城達也氏は「期間中は入力したデータをタックシールにプリントして紙カルテに貼って同期を取る手法をとりました。一見アナログですが、年配のスタッフにも読みやすいと評判がよく、PC操作習得のモチベーションを高める結果となりました」と段階的移行が成功した要因を語ります。

Benefits

書類作成時間が5分の1程度になるなど業務効率改善によってサービスの質も向上

ML-Aの導入によって医事会計は正確でスピーディーになり、患者や家族は長時間の精算待ちのストレスから解放されました。「公費併用が適用される患者様の自己負担額の計算は、所得や調剤・訪問看護などの有無や金額によって非常に複雑に変化しますが、ML-Aによって会計処理は即座に完了できるようになりました。また、医療費制度は2年に1回のペースで改訂されますので、システムのアップデートが必要になりますが、ナイスから提供される修正プログラムをインストールするだけなので、4月1日に現場が混乱することもありません。医事課ではML-Aを高く評価しています」と佐々木氏は話します。

期日管理機能なども「書類の準備などに、十分な時間を配分することができるようになりました」(蓑島氏)と言うように業務効率の向上に貢献しています。また、IBM Cognos PowerPlayを活用した分析・レポーティングについても、佐々木氏は「京都府や市、省庁に提出する調査報告書の作成も従来はExcelを使って手作業で集計していました。他の業務と並行して行っていたため1~2週間かかっていたこの業務も自動化されたので、数日で提出できるようになりました」とメリットを強調します。さらに、病床の空き状況なども正確に把握できるためフレキシブルに病床を移動させることができたり、入院患者の傾向を分析することにも役立てています。

オーダリングが自動化されたことで、診療の現場など発信元で入力されたデータは関連する各部署へ自動的に配信されます。このため伝票の回覧によるタイムラグや月末の業務の集中が軽減されました。また、患者家族への自己負担金軽減制度などの説明に十分な時間を使うことができるようになり、サービスレベルも向上。患者家族とのコミュニケーションは密になり、信頼もより高まったといえます。

電子カルテシステムによって、医師、看護師、事務やその他スタッフの連携はより精度が上がりました。蓑島氏は「電子カルテシステムによって書類作成の業務が効率化でき、各スタッフへの指示伝達がより正確になりました。例えば作成に20分かかっていた書類は4~5分で完成できますし、血液検査結果を時系列に沿って参照できるので、データをより深く分析できるようになりました」とメリットを話します。

看護師にとっても治療の質の向上が実感できているようです。「患者様の変化をより細かく記載するドクターが増えました。院内のどの端末からでも患者様の全履歴が集約された電子カルテシステムにアクセスできますので、診察内容はもちろん、従来は分冊になっていた作業療法士やケースワーカーの意見なども参照でき、より看護の質が高まりました」と本城氏は説明します。

将来の展望

蓄積されていくデータのナレッジ活用の模索、モバイル活用で往診などを強化していきたい

精神科では患者一人一人の病状、薬との関連性などの情報の大部分がテキストデータとして保存されており、そのデータ量は膨大になります。この蓄積したナレッジを今後どのように活用していくかについて、蓑島氏は検討していると話します。

「患者様は回復して退院後、再び症状が悪化して再入院なさる場合もあります。どのような言動があって影響していたのか、患者様をとりまく環境に関する情報、薬との関係などその患者様にかかわるいろいろな部署・スタッフからの生データを整理・分析し、それらの情報を多職種でチームとして共有化できる環境の実現は検討する価値があると考えています」(蓑島氏)。

また、モバイルの活用などによって病院の外に出て患者と触れ合う機会を作り出すことも視野に入れています。蓑島氏や本城氏は「病院に閉じこもるのではなく、往診や訪問看護など在宅医療の機会を増やしたいと思います。モバイルPCとシステムをリンクさせて二重入力の手間を削減するなどしつつ、電子カルテシステムによって訪問看護など地域に出て活動するスタッフとの連携を強化していきたいです」と現在のシステムの発展的利用に期待を寄せています。

蓄積されたデータは、データウェアハウス(DWH)や分析ツールを用いることで新たな発見や気づきが得られます。いわくら病院ではこうしたITシステムの可能性にも着目しつつ、よりきめ細かな医療ニーズに応えていくことを目指しています。

お客様情報

京都市郊外の緑豊かな環境に位置する、いわくら病院。設立は1952年。精神科446床、介護療養型医療施設60床を有しています。伝統を背景に持ちつつ、全国に先駆けて取り組んできた開放医療に象徴される、患者様の目線に立った病院だけにとらわれず、地域に目を向けた医療を実践している先進性を有しています

パートナー情報

1973年に株式会社名古屋インフォメーションシステムズとして設立。1990年に略称だった「ナイス」を社名に採用しました。同社の医療機関向け各種パッケージソフトウェアは全国的に高い評価を受けているほか、電子帳票システム、水産卸売業向け流通システム、物流・生産管理システムなど、幅広い業種に対応したソフトウェアをご提供しています。

テクノロジープラットフォーム

ハードウェア

  • IBM System x

ソフトウェア

ソリューション

  • 医事会計システム「Medical Leader-Account」
  • 精神科向け電子カルテシステム「Medical Leader-Record Nozomi」

Solution Category

  • IBM Hybrid Cloud