画期的なWebサイト・エクスペリエンスで、高速化とトラフィック増大を達成

FAW-VOLKSWAGEN社とIBM
高速道路で列を成す車
躍動的なエクスペリエンスに対するユーザーの期待を高めることで、イノベーションを推進

今や自動車は、「輸送手段」という単純な枠組みでは語れません。個人的な好み、スマート・デバイスの利用傾向、移動パターン、ライフスタイルを表現する拡張的概念へと進化しています。この流れを受け、自動車メーカーは主要戦略をユーザー・エクスペリエンスという過去に経験したことがないほど躍動的な、未曾有の課題に取り組んでいます。

FAW-VOLKSWAGEN社は、企業Webサイトにおける主な顧客体験を大幅に刷新するために、IBM Consulting過去の協力関係を基盤にしたプロジェクトを進行させました。両社の努力の末、多様性のある公式Webサイトが2024年3月27日にベールを脱ぎました。ユーザー・エクスペリエンスはよりパーソナル感の高い対話式となり、訪問者数の急増につながっています。

成功の3本柱をテーマにWebサイトを刷新

FAW-VOLKSWAGEN社公式Webサイト刷新プロジェクトの指揮を執るGuan Haihe氏は次のように語ります。「新公式Webサイトの成功の鍵は3点に集約されます。1つ目は製品デザイン・モデルが革新的である点、2つ目は情報とデータのやり取りが可能な点、3つ目は製品別に運用をアレンジできる点です」

成功の3本柱

  1. 新しいWebサイトの設計段階では、IBMデザイン思考法を採用して、さまざまなタイプのWebサイトユーザー(利用者、潜在顧客、訪問者、求職者、メディア・パートナー)から必要な点と欠点に関する意見を収集し、エンゲージメントを向上させるための主軸を定めるとともに、細かな点を浮き彫りにしました。この思考法は、企業ブランド、テクノロジー、サービスなど、FAW-VOLKSWAGEN社の中核をなす情報をユーザーの視点に立って、明確に理解できるような言い回しを考案するのに役立ちます。このプロセスではAI設計ツールも導入し、創造的なデザインの構想と創出を加速させました。完成した新しいレイアウトは、ブランド、製品、テクノロジー、サービスの4つの主要セクションに分割されました。この新デザインは、厳格な実験からインテリジェントな製造工程、工場生産から路上運転まで、多彩な段階から得られた質の高い車両情報をわかりやすくユーザーに提示します。また、実際の運転時に直面する状況にもスポットライトを当てています。このように車両のライフサイクル全体でユーザーのニーズに応えることで、価値ある情報を顧客に提供します。

  2. 同社は、「ユーザー重視」という概念を、親しみやすいスローガンから、シンプルで直感的なユーザーが使いやすいエクスペリエンスに変えるため、さまざまな側面から対話能力の向上に着手することにしました。この趣旨を踏まえ、FAW-VOLKSWAGEN社が公式Webサイトの新しいスローガンとして利用者に提案したのが、「Simple, @FAW-VOLKSWAGEN」でした。同社はこの原案を指針として、Volkswagen、Audi、Jettaの3ブランドのWebサイト、および求人などの社内Webサイトとのコンテンツ統合、情報共有、活発なデータ交換を公式サイトで実現させました。複数サイトをまたいだ検索機能を例に挙げましょう。ユーザーは「一元的な」インテリジェント検索エンジンを通じて需要情報を取得できます。また、データの交換と分析機能を活用すれば、必要なコンテンツや製品推奨情報に的を絞って情報を取得できます。アクセスされるデータが徐々に増えていくほど、提示されるパーソナライズ機能も増えていきます。

  3. 公式サイト運営の公開性とアジャイルな反復能力を改善するため、サイトの設計・開発では担当者の視点を重視するアプローチを採用し、サイトの運営とリリースを「ノーコード」で実行可能にしました。このモデルでは、担当チームは新しいコンテンツを迅速に作成し、ビジネス・ニーズにすぐ対応できるようになります。

このプロジェクトでは新しいWebサイト向けに、包括的かつシームレスな顧客体験を構築することと、オンライン機能とオフラインの機能を統合することも重要な点でした。「クオリティ・ツアー」というサービス製品を例に挙げましょう。ユーザーは新サイトにログインしてこのツアーを予約すると、FAW-VOLKSWAGEN社の5つのR&D拠点、製造、品質保証ラボなどを訪問して、あらゆる細部を直接体験できます。このツアーの体験後は、車両について詳しくなるだけでなく、関与する人々を知り、業界の優れた点を理解し、自然とブランドへの信頼を高めることになります。

トラフィック増大と対応時間短縮を両立

新サイト公開当日、訪問ユーザー数は8万4,000人と18倍に、平均訪問時間は136秒と40倍に急増しました(いずれも刷新前の同社公式Webサイト比)。「多数の同僚が、新サイトはビジュアルが素晴らしいだけでなく、対話式操作が驚くほどスムーズだという感想を伝えにやってきました」と、FAW-VOLKSWAGEN社公式Webサイト刷新プロジェクトを担当したGuan Haihe氏は振り返ります。

AI時代では、人と車のパートナー関係はより密度の濃いものとなります。今後のプロジェクトは、デジタル化とインテリジェンスが主要テーマになるでしょう。企業の公式Webサイトでは、使用状況を参考にしてユーザー・エクスペリエンスを強化するためのAIモデルの利用が活発になることが予想されます。その結果、データ駆動型機能を備えるプラットフォームの運用効率が向上し、次の2領域でAIを活用したビジネス・イノベーションが進むことになります。

  1. AIとデータを利用した新しいユーザー重視エクスペリエンスを提供

    ビジネス目的での使用例:
    新しい公式Webサイトでは、FAW-VOLKSWAGEN社が大量に抱えるユーザーとの接触点と累積データに全面的にアクセスし、活用することで、エクスペリエンスのパーソナライズを図ることができます。今後、より多くの利用者データにアクセスして累積された運用データと結びつけることで、オンラインでの利便性の高い使用例が考案されます。また、公式Webサイトの「パーソナル・センター」は、注文、アフター・サービス、車両ターミナルといったデータにアクセスするようになります。サイトではAIテクノロジーを利用してさまざまなパーソナライズ・サービスや規定外のカスタマー・サービスをユーザーに提供し、対応やサポートのスピード、精度、自律性を向上します。

    マーケティングでの使用例:
    ユーザーはAIを活用して、リードの質を改善できるようになります。リードは選別・評価され、購買可能性の高い案件を集中的に追跡し、製品マーケティング用コミュニケーションの最適化に利用されます。こうしたフィードバックは企業の公式Webサイトに取り込まれます。その結果、購入前に車両を選別する際、顧客の選択肢が絞り込まれるようになり、成約率の上昇に貢献します。

    フィードバック目的での使用例:
    ユーザーはサイトで多彩な経路と方法で意見を表明できるようになるため、公式サイトはユーザーからフィードバック情報を大量に収集するための重要な架け橋となります。この大量の構造化・非構造化情報には、顧客の心理や要望が含まれており、企業はこうした情報を抽出、分析して、顧客体験改善策の範囲を絞り、カスタマイズできるようになります。

    販売後の使用例:
    顧客から承認が得られた場合、整備と運転習慣に関するデータを分析して、資金力のある顧客を特定し、対象者の属性に合わせたマーケティング戦略、顧客維持戦略を練り上げることができます。上記フィードバックは研究開発や製造活動にも取り込むことができます。車両のライフサイクル全体におけるエクスペリエンスの最適化にAIを使用することで、循環的なシナジーが確立されます。


  2. 公式Webサイトのトラフィックをプラットフォームの運用効率化で管理

    新サイトでは、ページ・ビュー(PV)、ユニーク訪問者(UV)、登録件数、トラフィック・コンバージョン率などの重要なメトリクスを追跡して、分析精度を高め、顧客エンゲージメントを強化できます。

    また、コミュニケーションとマーケティング機能をオンラインとオフラインで統一することで、オンライン・コンテンツを最適化できるようになります。その結果、公式Webサイト向けコンテンツ、ビジュアル、対話機能を短時間で作成して、ユーザーとの交流を促進できます。オペレーターは、コンテンツの設計、実行、最適化にAIツールを使用することで、こうした作業に取り組む時間を1か月から数日に短縮できます。これによりビジネス目標の達成と創造的な業務により多くの時間を充てる余地が生まれます。パーソナル感の高いコンテンツは訪問者の増大につながり、公式Webサイト運営のパフォーマンスを全般的に向上させます。同時に、企業ブランド支援型AIアシスタントを使用すれば、生成コンテンツが企業ブランドの指定条件に準拠するよう徹底することもでき、業務効率の質改善に役立ちます。

デジタル・トランスフォーメーションは複数のシステムを並行して進行させるプロセスです。公式Webサイトの刷新を成功させたことで、FAW-VOLKSWAGEN社はユーザー・エクスペリエンスの点で大きな飛躍を遂げたことになります。今後、同社とIBMは別の分野でのデジタル・トランスフォーメーションで、協力して成功の実現に取り組む予定です。IBM Consultingで大中華圏の顧客トランスフォーメーション・サービス事業ゼネラル・マネージャーを務めるYan Ningは次のように締めくくります。「数年にわたる両社の密接な協力関係のなかで、IBMが力を注いできた点は2つあります。1つ目は、コンセプト考案から技術的枠組みまで、常に良きパートナーとしてFAW-VOLKSWAGEN社を支え続けること。2つ目は、生産性向上の新たな方策の開拓と持続可能な事業開発の促進につながる質の高いイノベーション・プロジェクトをお客様と共に構築することです」

FAW-Volkswagen社のロゴ
FAW-VOLKSWAGEN社について

FAW-VOLKSWAGEN Co., Ltd.(ibm.com外部へのリンク)は、China FAW Co., Ltd., Volkswagen AG社、Audi AG社、Volkswagen (China) Investment Co., Ltd社が共同で運営する1991年2月6日に設立された大手乗用車メーカーです。同社にはVolkswagen、Audi、Jettaの3つのブランドがあり、一般および高級乗用車市場を販売ターゲットにしています。

急成長過程で、技術面での優れた研究開発能力を常に強化し続け、現在、同社の研究開発試験施設は業界トップクラスに成長しており、自動車試験場、新技術開発センター、新エネルギーセンター、ベンチ・テスト、音響試験などの試験施設では、部品から車両に至る全工程を試験する能力を備えています。これにより同社は、今後の技術イノベーション分野での優位をさらに強固にしています。

現在、FAW-VOLKSWAGEN社は2,400件を超えるティア1サプライヤーと相互に利益をもたらす提携関係にあり、優れたサプライチェーン・システムを共同で確立しています。また、1,700件を超えるディーラーと協力して、質の高く便利な車両サービスを消費者に提供しています。

設立から30年を超え、同社の国内車両製造基盤は、中国北東部の長春、南西部の成都、南部の仏山、東部の青島、北部の天津にまで広がっています。

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引用または説明されているすべての事例は、一部のクライアントがIBMの製品を使用し、達成した結果の例として提示されています。他の運用環境における実際のパフォーマンス、コスト、節約、またはその他の成果は異なる場合があります。