Business Challenge story

より経営に貢献する経理部門への飛躍を目指し、伝票処理業務の革新を決定

サントリーは、創業以来のチャレンジ精神のもと、常に価値のフロンティアへと挑戦し、総合酒類食品企業として成長を続けてきました。同社では2009年度、各事業会社に権限を委譲し、ビジネスのスピードを高めることでグローバルでの事業展開を積極的に進め、さらなる持続的成長とグループ全体の企業価値の向上を図るために、ホールディングス制に移行しました。新体制について、サントリーホールディングスの執行役員およびサントリービジネスエキスパートの常務取締役を務める下條泰利氏は、次のように説明します。

「特徴の1点目は、海外子会社を海外事業として束ねるのではなく、食品や酒類といった事業の下に配置していることです。その背景には、M&Aは単純な売上規模拡大を目指すのではなく、各国・各地域で強みを持つブランド力のグローバルでのシナジーがあって初めて成功するという考えがあります。2点目は、経理や総務、情報システムなどの共通機能だけでなく、SCM、品質保証、宣伝など、グループ各社に共通する機能をサントリービジネスエキスパート(以下、SBE)にすべて集約したことです。これは、グループ内のビジネスで共通する機能を横串にすることで、効率化と効果の拡大を図ることが狙いです」

経理部門についてもホールディングス制への移行を機に、機能別のチームから各事業を一貫してサポートする組織へと体制を変えました。ホールディングスに財経本部が、SBEのビジネスシステム本部にオペレーションを担当する経理センターがあり、両者が密接に連携しています。これによって、経理チームが事業会社により深く入り込み、経営に貢献することが可能になりました。一方、経理部門を取り巻く環境を見ると、急速なグローバル化の進展や、制度変更・環境変化、リスクの増大など、さまざまな課題があります。SBEには、日々のオペレーションを行いながらも、こうした課題の解決に向けて、より戦略的な分野へと業務や人材を投入していくことが求められています。

どの企業でも多数の伝票が発生しますが、サントリーの場合、その件数は年間約46万件に上ります。そこで、同社は伝票処理をはじめとした基盤プロセス業務を革新することで、戦略的な分野へリソースをシフトさせていくことにしました。そして、まず非定型で、仕訳を手動で行わなければならない伝票の処理を対象に、業務プロセスの削減を目指すことにしたのです。

「経理センターでは、これまでは100万円以上の取引に限って精査してきました。それでも経理の負担は大きく、現場での伝票入力負担も非常に大きなものがありました。加えて、全件をチェックしていないために、モニタリングの精度向上が課題になっていました」(下條氏)

Transformation

大連デリバリー・センターへのBPOで負担軽減と経理処理精度向上を図る

基盤プロセス業務の革新にあたり、サントリーは「現場入力業務の負荷軽減」、「経理部門の負荷軽減」、「経理処理精度の向上」を三位一体で実現するという基本方針を立てました。そして、実現に向けて、伝票の全件精査を必須要件とした上で、コストの引き下げも目指しました。そのために、同社は沖縄など国内でのニアショアも含めて検討しましたが、最終的にはIBMが提案したBPOサービスを導入することにしました。

IBMのBPOサービスはIBM自身の業務改革経験をもとに、そこで蓄積されたノウハウやアセット、人的リソースなどをフルに活用して、顧客企業の変革を実現するものです。これによって、コスト削減にとどまらず、戦略領域へのリソース・シフトなどを行うことができます。その拠点のひとつである大連デリバリー・センターは、日本向けアウトソーシング事業の中核で、高い日本語対応能力、優れた人材の採用と能力を高める教育施策、サービス品質向上のための継続的な活動などで、顧客企業の要望に応えています。

「IBMに決めたのは、1年ほどかけて行った移行対象の絞り込みなどのコンサルティングが非常に信頼できるものであったこと、グローバルで事業を展開している企業という強いブランド・イメージを持っていること、の2つでした」と下條氏。

BPO導入の準備にあたっては、(1)業務設計とそれに基づくマニュアルの作成(2)情報システムの整備(3)オペレーション・スタッフのトレーニングに取り組みました。業務設計とマニュアル作成においては、現場から伝票要件を確実に受け取るための申請書(バウチャー)の標準化で、必須記入欄を極力減らしました。また、運用後発生する問い合わせ対応をスピーディーに処理するため、問い合わせは、ひな型を用意し、すべて電子メールで行うことにしました。さらに、IBMのコンサルタントの協力を得て、具体的な指示まで落とし込んだ、89種類・2,600ページに及ぶ業務マニュアルを作成。大連のスタッフが使いやすいように、サントリー独自の専門用語やよく使う言葉を用語集にまとめました。

また情報システムは業務フローを管理できるものを開発し、すべての伝票処理のステータスを大連の管理者と日本の経理センターが同じ画面で共有できるようにしました。これにより、状況をタイムリーに把握し、業務の遅延や滞留に対して迅速なアクションがとれるようにしています。さらに、本番前の3カ月を使い、マニュアルや情報システムによるトレーニングを実施しました。

Benefits

現場からも高い評価を受けるとともに、コスト削減と伝票の全件チェックによる精度向上を実現

こうした準備を重ねた上で、2011年6月、BPOサービスの本番運用を開始しました。作業の流れは、まずサントリー側で、各拠点に集まる得意先や取引先等の請求書等について金額や支払い要件を確認の上、大阪の経理センターに集約し、スキャニングして電子化します。大連では、そのデータに基づき、伝票入力を実施。そしてそれを別の担当者が承認をして、最後に伝票の精査・全件チェックを別の担当者が行います。大連での業務は、サントリーの経理システムをそのまま使い、すべて日本語で行っています。

運用の中で、サントリーが一番心配したのは業務品質の確保でした。そこで、入力ミスをなくして、業務品質を向上させ、問い合わせ等の業務を削減し、伝票の処理件数を増やして効率化を進めようと計画しました。

「入力ミスは、2012年に入る頃から一気に減っていきました。ミスをゼロにすること以上に重要なのは、ローコストで全件精査が可能になったために、現場レベルでの経理処理のミスを発見できるようになったことです。また、当初は多数あった問い合わせも、バウチャーやマニュアルを改善することで、現在では運用開始段階の4分の1程度にまで減らすことができています」

全体の処理件数は月1万3,000件からスタートしましたが、対象分野を販促費などに拡大し、2012年10月からはさらに新たな分野も加えて、現在では月3万5,000件を処理できる体制になっています。また、BPOの定量効果を見るために、従来、経理部門と各部門で行ってきた業務工数に、全件精査をしたと仮定した時の、いわばバーチャルな工数も加えて指数化し、コストを半分以下にすることを目指しましたが、ほぼ予定どおり推移しているといいます。

「導入以前、現場では中国でのBPOに不安を感じていた部分もありましたが、実際にやってみれば、何の問題もないことが分かりました。大連では、品質やCS(顧客満足)の改善のための活動が行われているとのことで、それが高い業務品質の基盤となっていて、安心して業務を任せることができます。現場からは『最初は戸惑ったが、慣れれば本当に便利だ』『入力が簡単になった』『請求書の表紙と明細の不一致などのミスを大連の指摘で発見できた』などの声が上がっており、非常に満足しています。さらに、マニュアルをきちんと作ったため、業務が標準化され、暗黙知を形式知にすることができました。加えて、すべての証憑について、従来は箱に詰めていたのを電子化したため、透明度が非常に上がり、不正防止にも役立つと考えています」(下條氏)

 

将来の展望

処理量をさらに拡大、要員の専門業務や海外業務などへの戦略的なシフトを図る

サントリーでは、中国・大連へアウトソーシングすることによるさまざまなリスクを想定して、対策を練り、施策を実施しています。業務品質の向上では、ミスを発見する人を縦軸、発見したタイミングを横軸にして、マトリックスを作り、3段階に分類して、発生率の目標を立てて共有し、改善活動に取り組んでいます。また、情報システムのBCP(事業継続計画)では、全国の拠点、スキャンセンター、大連デリバリー・センターのそれぞれで、代替手段を設定して、準備しています。

その上で、一番意識したのが「カントリー・リスク」です。2012年、中国で反日デモが起こりましたが、大連は大変親日的な都市で、デモも一切ありませんでした。加えて、経理処理業務もIBMのセンターで行われているため、外部からは日本企業の業務を行っていることは分かりません。

現在、伝票処理量は月初3日間でほぼ月の半分を占めており、それが、より一層の効率化を図る上での障害になっています。そこで、サントリーでは今後、社内の業務手順を見直すこと等で月末処理を減らし、伝票処理の平準化を目指していこうと計画しています。さらに、経営へのより一層の貢献も大きなテーマです。「中国では人件費が上昇しており、早晩、日本よりコストが安いというだけで、アウトソーシングを続けていくことはできなくなると思います。そのために、付加価値を持つ業務を大連で行っていく工夫をしていく必要があると思います。そして、アウトソーシングによって、浮いた要員の専門業務へのシフトや海外を含めたグループ会社へ送り出すことで、より経営に貢献できる経理部門へと飛躍していく考えです」と下條氏。

新たな価値の創造を目指して、サントリーの挑戦は続きます。

 

お客様情報

1899年設立。創業以来「やってみなはれ」精神のもとに、事業を展開、現在ではウイスキーやビール、ワインなどの酒類、ウーロン茶や缶コーヒーなどの清涼飲料、食品、健康食品・外食・花など幅広く、多彩な事業を展開している。グループ企業は206社(2012年12月31日現在)。2009年4月には、純粋持株会社制へと移行、「人と自然と響きあう」というグループ企業理念にもとづき、グローバル総合酒類食品企業として飛躍するために、世界の市場で事業基盤の強化に取り組んでいる。

 

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