Business Challenge story

分析ツールの性能が新しい事業の成否を大きく左右

凸版印刷では、印刷業の一環として、クライアント企業からダイレクト・メール(DM)発送用の顧客データを預かり、DMの製作や発送代行を請け負ってきましたが、受託データの有効活用を目的とした、購買履歴など詳細データの分析をも含む顧客データベースを活用したマーケティング・サービスを、1997年より事業化しています。

当時は、DM送付対象者を直近の消費行動をベースに選定しているケースが多く、購買履歴など過去の膨大なデータを分析し、効果的に対象を絞り込もうというニーズがようやく高まってきた状況でした。多くの企業が、自前の顧客データベース・システムによるマーケティング機能を強化することに対して、コスト面から二の足を踏んでいる点に着目し、凸版印刷はいち早く、データベース・マーケティングの新事業を立ち上げました。

しかし、事業化当初はまだCRM(顧客関係管理)の概念がなく、「データを収納するメディアにオープンリールが使われていたり、文字コードや改行コードも各社それぞれだったり。そこからUNIXにデータをどうもって来るのか、といった分析以前の部分から、いろいろ苦労しました」と、情報コミュニケーション事業本部トッパンアイデアセンター ソリューション推進部 CRマーケチーム課長の渋江智一郎氏は振り返ります。

その後、顧客の個別ニーズに合わせたOne to Oneマーケティングの時代へ市場環境が変化し、CRMが注目されるようになりました。

それに伴い、凸版印刷の「データベース・マーケティング支援事業」も「TOPPAN CRMソリューション」としてデータ処理や分析の実績に裏打ちされた総合的なサービスへと発展。顧客データベースの運用代行から分析、施策立案・実施、効果検証までを一括で請け負う事業として今日に至ります。

このソリューションは、顧客接点で取得できる各種データを活用しながら、プロモーション全体を体系的にとらえ、クライアント企業と顧客との効果的・効率的なコミュニケーション活動をサポートすることを目的としています。従って、データ活用の前提となる分析ツールが事業の成否を大きく左右します。これまでに凸版印刷では、10を超える各種の分析ツールを導入して使用してきましたが、いずれも同社の仕様を満たすに至りませんでした。

Transformation

SPSS Modeler Cognos 8 BI をうまくすみ分けて活用

「TOPPAN CRMソリューション」は、顧客情報を生かして売れ筋商品の開発や効果的な販促活動をするためのデータ分析を軸足と したサービスで、次の支援領域をカバーします。

  1. マーケティング:マーケティング・リサーチから、顧客データ分析、CRM戦略立案、PDCAサイクルを踏まえた効果測定など
  2. システム構築:会員制サイト構築から、CRMデータベース構築、DM作成プログラム、顧客分析システムなど
  3. データ運用:データ・エントリーから、プロモーション用データ処理、プロモーション管理、レスポンス取得、データ・メンテナンスなど
  4. プロモーション:DM、会報誌の製作・配布から、Webを含むセールス・接客支援など

これらを実現するため、凸版印刷では二つの分析サービスを用意しています。一つは「Ruppin’」(ラッピン)、もう一つが「MagicDice」(マジックダイス)です。

「Ruppin’」は、一定期間の顧客データを預かり、現状把握・課題抽出から解決策の提案、テスト・マーケティングなどをサポートする、顧客データの分析およびコンサルテーション・サービスです。その内容は、大きく次の3つの段階に分かれています。「事前分析」では、基礎的なデータから全体構成を把握し、報告します。その結果を踏まえ、「データマイニング」(併買分析やデシジョン・ツリーなど)を実施し、目には見えない関連性などを発見する高度な分析を行います。最後にそれら分析結果をもとに「効果検証」を前提としたテスト・マーケティングを設計・実施し、顧客コミュニケーションに対する示唆を出しています。

「MagicDice」は、インターネット経由でサービスを利用できるソフトウェアの期間貸し(SaaS)形式で提供される、多数の顧客を抱える流通業やメーカー、金融機関向けのサービスです。凸版印刷は、クライアント企業から生データを預かり、容易に分析できる形式に加工し、分析用データ(キューブ)を作成します。企業は分析用データをインターネットで参照しながら、顧客の購買状況や、属性ごとなどに分析をすることができます。

購買データ、顧客データをもとに商品・販売戦略を立案するには、高度なシステム開発や運用ノウハウ、人材が必要です。また、データ分析には膨大な時間と労力を要します。その点、「MagicDice」ではシステムの新規投資を抑えることができます。また、分析結果はプロモーションのアウトプットと連動し、例えば通信販売で、ある顧客層が複数種の特定商品を同時購買する傾向があるという分析が得られた場合、カタログ掲載商品の選び方や写真の表示を改善して、より購買意欲を高めることができます。

凸版印刷では分析ツールとして、「Ruppin’」にSPSS Modelerを、「MagicDice」にCognos 8 BIを採用しました。

「SPSSもCognosも現在はIBMの傘下に入りましたが、私たちはそれ以前から両方の製品のユーザーでした。世の中では競合製品として二者択一を考える向きもあるようですが、私たちはうまくすみ分けして使っています。かれこれ15年にわたる取り組みの中で、いろいろなツールを使ってきましたが、結果としてSPSS Modeler と Cognos 8 BIに落ち着いています」と渋江氏は語ります。

さらに SPSS Modeler の採用について、渋江氏は次のように説明しています。「凸版印刷では以前はSPSSの競合製品を使っていましたが、年間レンタル料が負担となっていました。その点、SPSS製品は価格体系が異なり、導入時にパッケージ費用を払えば、翌年からは保守だけ。長い期間で考えると費用対効果が明らかに違うことも、採用の大きな要因でした」

Benefits

分析結果から施策までワンストップで展開

「SPSS Modelerの真骨頂はデータの予測やモデル構築ですが、お客様からお預かりした生データを加工したり分析できる形にするところも秀でています。GUIが整備され、多様なノードが用意されているので、高い専門性を求められる作業が簡単にできます。いろいろなユーザーの意見が反映された結果だと思いますが、利便性がどんどんよくなっています。これまでは自分で定義を書かなければいけなかったマーケティングに関するノードが増えてきたというのが実感です」と情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター ソリューション推進部CRマーケチーム 主任 太田洋芳氏は語ります。

分析サービスでは、まずは預かった生データをSPSS Modelerで分析データとして構築した後、Cognos 8 BI を使って変換して、クライアントがインターネットを通して見られるデータに加工します。

Cognos 8 BIを活用した「MagicDice」のサービスでは、クライアントがインターネットを通して、凸版印刷にあるデータにアクセスし、自分のパソコンのブラウザー上で簡単に分析を行うことができます。例えばリーセンシー(最近購入日に関する指標)と性別の関係について見たい場合、画面上で、性別とリーセンシーをドラッグ・アンド・ドロップするだけでクロス集計が可能になります。これに加えて、二十歳代で絞り込むと、二十歳代の性別とリーセンシーについての三次元の分析になります。さらに、東京の商圏に絞るなどの条件を加えて、多次元分析を行うこともできます。分析したリーセンシーの女性にプロモーションをかけたいとき、クライアントはその場で対象の顧客情報を抜き出し、簡単にアプローチすることができます。

「SPSS Modelerでデータの構築と事前分析をし、それを受けて Cognos 8 BI で加工したデータを使いながら定期集計や情報の抽出やプロモーションを実施し、その結果を回収して効果検証をする。

そのようなことをやっていると、いろいろな知見やデータがたまってきて分析を高度化したいという意見が必ず出てきます。そこでもう一度SPSS Modelerに戻って、より深い分析をするという流れになることが多くあります。つまり、Cognos 8 BIを使いながらSPSS Modelerに立ち戻って中味を改善するという流れになっています」と太田氏。

凸版印刷にとって分析サービスは手段の一つであり、目的はクライアント企業とその顧客とのコミュニケーションを支援することにあります。具体的には、カタログや情報誌、パンフレットなどのページを顧客の嗜好に合わせて自動的に選択し、製本するセレクティブ・バインディング、あるいは、顧客によって必要な媒体パックを一つのラインで個別カスタマイズして作り分けるセレクティブ・パッキングなどがあり、分析した結果を踏まえて施策に落とすところまでワンストップで展開することが可能です。

 

将来の展望

知見を高め、予測をさらに精緻化

分析の精度が高くても、結果を出さなければ意味がありません。分析結果と実際の施策の全体をいかに効率よく連携させ、効果を上げる施策に持って行くかが今後の課題です。

「プロモーション施策の効果を高めるために、自分たちなりの知見を高める必要があります。それを類型化することで、より精度の高いシミュレーションができるようになります。ワンストップで施策ができ、PDCAサイクルを回して効果検証していけば、それが知見として蓄積されていきます。DMやe-メールなどの施策により、どのくらいの顧客が店舗もしくはWebサイトにアクセスしてくれるか。

その作用反作用の情報積み重ねによって、予測の精度も高まり、今後さらに精緻化していきたいと思います」と渋江氏は結びました。

 

お客様情報

1900年に創業。印刷をベースとして、ICカードなどの証券・カード、広告宣伝用印刷物の商業印刷、生活部材品包装などのパッケージ製品、液晶用カラーフィルターといったエレクトロニクス製品など、多角的に事業領域を拡大。新しい事業を自ら開拓する「需要創造型」活動を推進している。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Solution Category

  • IBM Hybrid Cloud
    • Cognos Business Intelligence
    • SPSS Modeler