Business Challenge story

携帯電話の老朽化対応を契機に店頭・モバイル機器の統合も視野に入れてタブレット利用を選択

1980年後半から資生堂は、販売支援や店頭サポートのためにモバイル機器やIT機器の利用に積極的に取り組んでいます。これは、市場と関係部署をできるかぎりダイレクトに結び付けたいためです。これまでに販売支援のために7,000台近くのラップトップ・パソコンを導入したり、顧客情報や販売分析のために店頭にPOS機器を導入したりしてきました。このような取り組みの1つとして、携帯電話で勤怠管理や活動報告を行ってBCの仕事の効率化を図るシステムを2002年に稼働させました。BCは店頭でカウンセリングを行い、それぞれのお客さまに合う化粧品を勧めているため、1カ月間に1、2度しか事業所に出社しません。このような勤務形態となるBCとの情報共有、実績報告、交通費精算などをリアルタイムに行う仕組みとして、資生堂は携帯電話を使ったシステムを構築しました。

しかし、10年が経過し導入した携帯電話の老朽化対応が必要になったため、資生堂は後継システムの検討を2012年春から開始しました。検討した結果、資生堂は、携帯電話よりも表示できる情報量が多いタブレットを利用していこうと考えました。また、BCが使う機器をタブレットに入れ替えるだけでなく、IT技術を使ってさまざまな店頭機器を統合できるとも考えました。資生堂 情報企画部長 兼 資生堂情報ネットワーク株式会社(以下、資生堂情報ネットワーク) 代表取締役社長 亀山満氏は次のように話します。「店頭で使う機器は、専門店、デパート、量販店でそれぞれ機種が異なり、使い方も少しずつ違います。これら異なる機種の統合とソフトウェアの共通化を図ることで、開発の生産性向上やコスト抑制が期待できると考えました。さらに店頭でタブレットを活用することで、店頭オペレーションの利便性向上も図ることが可能となります」。

Transformation

機種に依存せず、生産性が高い点を評価してIBM Worklightを採用

資生堂は店頭支援システム「ビューティー・タブレット」で使用するタブレットとしてApple社製 iPadを採用し、全国のBCを中心に貸与することにしました。しかし、実際の貸与までに解決しなければならない課題がいくつかありました。その1つは、将来にわたって有効な選別を行うために、タブレットの機種に依存しないでアプリケーションを開発したり利用したりすることでした。また、携帯電話を使った既存システムの保守期限切れとなる2013年6月までの約10カ月間でBCを中心とした11,000人にタブレットを貸与し、それまでと同様にBCの勤怠報告や活動報告を遅延なく行うことでした。

資生堂は10社近くのパートナーにプロジェクトの背景や狙いを説明し、各社からの提案内容を検討しました。そして、IBMを含めた3社からアプリケーション開発のプラットフォームとするツールの提示を受け、最終的にIBM Worklightの導入を決定しました。 IBM Worklightは単一の共通コードに基づくシンプルな方法で、Android、iOS、Windows 8などの複数のモバイル・オペレーティング環境とデバイスをサポートしています。このため、課題の1つである機種に依存しないアプリケーション開発が可能でした。また、IBM Worklightは、HTML5やJavaScriptで開発を行い、デバイスに依存するカメラ機能などのネイティブ部分は用意されているAPIを利用することで、デバイス固有言語の使用を最小限にとどめることができるため、モバイル・アプリケーションやマルチチャネル・アプリケーションを従来よりも迅速に開発できます。資生堂情報ネットワーク ネットワーク企画部長 毛戸一彦氏は次のように話します。「IBM Worklightの生産性の高さが選定ポイントの1つでした。例えば、カメラで写真を撮る機能など、入出力のインターフェースに関して必要な機能がIBM Worklightではすべて用意されています。このようなネイティブ機能を独自に開発するとトラブルの原因になります。IBM Worklightでは、HTMLやJavaScriptでアプリケーションを作るだけなので生産性の高さが期待できました」。また、亀山氏は今回の選定にはIBMへの信頼もあったと話します。「今回のプロジェクトは11,000人のBCが利用する基盤であり、失敗は許されませんでした。端末数から見れば大規模開発であり、基盤の設計はしっかりと行わなければなりません。IBMでなければできないと判断しました」。

資生堂は勤怠管理、スケジュール管理、本社と販売会社との情報共有によってBCとのコミュニケーションを高めるためのアプリケーション「Bureau(ビューロー)」の開発をIBM Worklightで開始しました。資生堂情報ネットワーク ネットワーク企画部 システム開発グループ 三浦絢也氏は次のように話します。「アプリケーションを開発するにあたって、ユーザー部門と要件を詰めながら進めなければなりませんでした。IBM Worklightは簡単にプロトタイプや画面を作り、その場で修正することができるため、ユーザー部門と一緒にタブレットの画面を見ながら要件を決めることができました。余分な手戻りがなく、ユーザー部門と具体的な画面をiPadで見ながら細かい修正は持ち帰らず、その場で修正し、すぐにiPadに反映することができるため、スムーズに仕様を決めることができました」。ユーザー部門として検討に参加した資生堂 国内化粧品事業部 事業企画部 マーケティング戦略室 参事 髙島康則氏も、IBM Worklightによって効率よく検討を進められたと話します。「それまでのシステム開発の検討では、デモ画面などをプリントアウトした紙芝居のようなものでした。今回は、実際に触りながら、このような使用性のほうが良いなど、スムーズに効率よく検討できました」。

資生堂はプロトタイプを作りながら要件を決めていく際に、使いやすさを意識して検討しました。「一部のBCの方はキーボードに対する苦手意識がかなり強いため、アプリケーションはシンプルに触って分かるようにしなければなりません。IBM Worklightはユーザー・インターフェースに関する部品も整っています。このような点もアプリケーション開発に役立っていました」(髙島氏)。「実際にBCの方々などが利用するシーンを思い描きながら、アプリケーションを開発しました。特に、通信圏内と圏外によって自動的にモードを切り替える部分は、かなり時間をかけて考えました。例えば、売り場が地下街や建物の奥まった場所にあると電波を受信できません。そのような圏外の場所でも売り場の状況を報告しなければならないことがあります。このような圏外と圏内の切り替えにもIBM Worklightはきちんと対応していました」(三浦氏)。

Benefits

店頭接客で得た情報をスピーディーに共有

資生堂はBCによるタブレットの活用を計画どおり、2013年6月から開始しました。これには、IBM Worklightの生産性の高さが大きく貢献しました。「導入後1年足らずで実施したアンケートの結果では、90%近くのBCがお客さまへの接客応対にタブレットを使用していました。この利用度はかなり高いと思っています」(毛戸氏)。タブレットの導入によって、いくつもの効果がありました。「まず、スピードです。お客さまやBCの声が、これまでよりも早くダイレクトに関係部署に伝わるようになったので、市場への反応が早くなっています」(亀山氏)。それまでの携帯電話を使ったシステムでも情報共有はできていました。しかし、携帯電話では入力しづらいなどの理由から書類による報告が多く、市場の状況が関係部署に伝わるまでに時間がかかることがありました。タブレットが導入されたことで、入力の手間が省かれ、より使いやすくなったことで、市場と関係部署との情報共有のスピードが増しました。

また、BCによるカウンセリングの質も向上しました。「BCには経験豊富な方も新人の方もいます。これまでは5年、10年と経験を積まなければできなかった提案も、ビューティー・タブレットを利用することで経験の浅い者にもある程度できるようになりました。これにより、店頭でのお客さまの満足度を高めることが可能です」(髙島氏)。さらに、膨大なページ数のマニュアルやカタログをすべて電子化して格納したことによって、材料費だけでなく物流費用も含めたコスト削減もできました。

これらの効果に加えて、BCから積極的な意見が出されるようになりました。「導入から1年が経過してBCからは、もっとお客さまに資生堂の商品を知ってもらいたい、もっと楽しく分かりやすいカウンセリングをしたい、言葉で伝えられないものを伝えたい、お客さまに向き合っている時間を増やしたいという意見が出ています。タブレットの導入には、このような意見が出てくることも狙いにありました。今、そのようになりつつあります。BCがタブレットを使ってお客さまと向き合い、話をし、商品やカタログを見せて、お客さまとのコミュニケーションをより深めることで、お客さまに満足いただける応対ができつつあります」(亀山氏)。

 

将来の展望

アプリケーションの強化とサービスの統合によって、お客さまの満足度の向上を目指す

今後、資生堂はタブレットに新たなアプリケーションを追加していき、より一層BCとのコミュニケーションやBCへのサポートを強化していこうと考えています。また、すでに社内のさまざまな部署がWeb上に展開しているコンテンツとも連携して、インターネット経由のサービスとBCによるリアルなサービスを統合していきたいとも思っています。

 

お客様情報

株式会社資生堂は1872(明治5)年に日本で初めての洋風調剤薬局として創業以来、日本の化粧品技術と文化をリードしてきています。現在、同社は、化粧品のみならずさまざまな事業において、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界89カ国で事業を展開しています。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

  • IBM Worklight

Solution Category

  • Systems Software