Business Challenge story

MRが効率よく製品知識を習得することが必要に

世界最大の製薬企業ファイザー・インコーポレイテッドは1849年に創業され、現在では世界150カ国以上で事業を展開しています。その日本法人であるファイザー株式会社(以下ファイザー)は1953年設立、国内でも50年以上の長い歴史を持っており、主にプライマリー・ケアの先生方に処方される製品を担当する「プライマリー・ケア事業部門」、主に専門医の先生方に処方される製品を担当する「スペシャリティ・ケア事業部門」、抗がん剤を担当する「オンコロジー事業部門」、特許が切れた後も長く親しまれている製品を担当する「エスタブリッシュ医薬品事業部門」の4つの事業部門で医療用医薬品事業を展開しています。

この4つの事業部門には多くのMR(医薬情報担当者)が所属し活躍していますが、MRは日中は病院を訪れて医師の診療時間終了後などに情報提供活動を行うため、その後にオフィスに戻って事務作業をしたり、研修を受講したりすると、業務効率がよくないという課題がありました。

一方、ファイザーでは「ノルバスク」、「リピトール」という主軸製品を中心にして営業活動を行ってきましたが、この2つがともに特許が切れたため管轄部門が変わり、結果としてプライマリー・ケア事業部門では中小規模の幅広い製品群を扱うこととなりました。加えてエスタブリッシュ医薬品事業部門でも、多くの後発医薬品の承認を取得しており、新製品が次々と発売されています。そのため、MRはこれらの幅広い製品について先生方にきちんと説明できるよう、常に知識を増やす必要がありました。

Transformation

スマートフォンを有効活用した、手軽な研修管理システムを検討

ファイザーでは、MRの業務効率化の一環としてスマートフォンがすでに導入されていました。ファイザー・ホールディングズ株式会社 ビジネステクノロジー コマーシャル・プラットフォームBT部 担当部長の門田 充弘氏は、「MRが稼動終了後にメールを見るためだけにオフィスに戻るのは、長時間労働のきっかけになりえます。稼動中の空き時間に、メールを処理することで業務効率を上げ、コミュニケーションを改善することを目的として、スマートフォンを導入しました。現在ではMR全員がiPhoneを携帯しています」と背景を説明します。

このような環境の中、利用者側から利便性の高いiPhoneを他の業務でももっと有効活用できないか、という声が上がるようになりました。そのひとつに、トレーニングをiPhone上で実施したいというものがありました。同社では以前から、グローバル共通のPC用の研修管理システムを活用していましたが、もっと手軽な、クイズのような教材をiPhone上で行うことで時間を有効活用したいという要望が上がり、検討を始めました。

新しい研修管理システムは、以下の3つの条件から自社のサーバーでサービスするのではなく、パブリック・クラウド・サービスの利用を考えていました。「1つ目はネットワークの制限です。当時VPN(*)がリリースされておらず、MRの利用するiPhoneは社内ネットワークに接続できませんでした。ですから論理的に別のネットワークを構築する必要があったのです」

「2つ目は、システム負荷の見積もりが困難だったことです。この研修管理システムは、必須研修ではなく、自主学習素材を想定して開発しました。ですから利用率が全く予測できませんでした。このような状態で社内でサーバーを構築すると、オーバースペックになったり逆にパフォーマンスに問題が生じたりするリスクがありますが、パブリック・クラウド・サービスを使えば、必要に応じて拡張でき効率的だと判断しました」

「3つ目として、ROIの観点があります。社内に新規にハードウェア、ソフトウェアを導入する場合は、手続きやリードタイムも必要な上、投資も大きくなりますし当然それに対するリターンも求められます。しかし、今回のようなビジネス・クリティカルではなく、活用率の事前予測も難しいケースの場合、初期に大きな投資をするのはリスクになります。パブリック・クラウド・サービスであれば小さくかつ迅速なスタートが可能になります」

「数年前ならあきらめていたかもしれませんが、今はSaaSという形式があります。そこでパブリック・クラウド・サービスを活用したSaaS型研修管理システムを導入することになりました」(門田氏)

機能とセキュリティーが選定のポイント

選定の過程では、機能面の評価と、ファイザーのセキュリティー基準に適合できるかがポイントとなり、両方の要件を満たしたIBMのパブリック・クラウド基盤「IBM SmarterCloud Enterprise」を利用することに決定。研修管理システムと研修コンテンツ作成には、ロゴスウェア株式会社の「Platon」、「THiNQ Maker」、運用サービスには日本IBMのコンサルティングサービスを採用しました。

門田氏はロゴスウェア社の製品に関して、「製品自体の完成度が高く、ユーザビリティーが良い。1種類の教材コンテンツを作成すれば、iPhone、iPad、PCすべて共通で使えることや、見やすい画面などが特長的」と評価しています。選定理由について、さらに門田氏はこう述べています。「各社のプレゼンテーションの際には、各事業部門から実際のユーザーの立場に近い担当者を招集して説明を聞いてもらいました。ロゴスウェアとIBMは、こちらの要望をしっかり理解して提案していただき、安定感がありました。今回、特にSaaSを構築しますので、社内でできることは限られています。この2社となら、我々にとってのアプリケーションやサービスのクリティカリティなどを分かっていただき、我々と近い目線で、一緒に取り組んでいけると判断しました」。懸念していたセキュリティーに関しても、「コンプライアンス部門からの情報漏洩対策への指摘もあり結果としてSAML(*)認証にも対応し、かなり入念に、強固なセキュリティー対策を講じることができました」(門田氏)と言及しています。

Benefits

導入した月から80%を超える非常に高い利用率

2011年9月から、プライマリー・ケア事業部門で、1カ月遅れて10月からエスタブリッシュ医薬品事業部門で利用を開始しましたが、サービス開始以来、非常に高い利用率を維持していると言います。「サービス開始月から、利用率は80%を超えていました。これは異例の高い数字です。通常、必須利用ではない新しいシステムを導入する場合、利用者に浸透するのに時間がかかるのが通例です。今回は自習用のシステムという位置づけで、利用促進のための活動も積極的には行っていないにもかかわらず、利用開始直後から高い利用率で驚きました。研修コンテンツを消化すると若干利用率は下がりますが、また新規にコンテンツを追加すると上がり、ずっと50%から80%程度を維持しています。非常に高い利用率と言えます」(門田氏)

サービスのレスポンスタイムが速く、操作性が良いということもあり、「空き時間を使って少しでも生産性を上げることができないかと考えていたMR側のニーズと、このサービスとがぴったり一致したのでしょう。使っていて楽しい、触っていて面白い、と高い評価を得ています」とも語っています。

また、研修コンテンツはロゴスウェア社の学習コンテンツ作成ソフト「THiNQ Maker」を使って、各事業部門で作成しています。門田氏は、「1回説明会を開催しただけで、すぐに簡単に使えるようになり、全くと言っていいほど問い合わせがありません。非常に良く使いこなせていて感心します」とその使いやすさについて述べています。

 

将来の展望

全営業を対象とした研修をリリースし、ユーザー数は2倍へ

現在、これまで利用していなかった一部の部門からも使いたいという要望があり、サービス提供の準備を進めています。「利用部門に、THiNQ Makerを入れて作ってみてください、とインストール方法を伝えてマニュアルを渡すだけで、ほとんど質問らしい質問を受けることがありません。問題なく使いこなせているようです」(門田氏)

また、社内の人財育成部門でも利用したいという要望があり、同じように簡単な説明をしてマニュアルを渡したそうですが、こちらの部門からも全く問い合わせがないそうです。

このような実態から門田氏は、「本当にリーズナブルで、運用費用も含め非常にコストパフォーマンスが良いサービスになっています。コールセンターには、リリース当初はID・パスワードなどの基本的な問い合わせ、VPNリリース後は変更後の接続方法に関する問い合わせがありましたが現在は落ち着き、サポートのコストもほとんどかかってない状況になりつつあります。リーズナブルでかつ利用率は高い、というある意味理想的なソリューションになっています」と語っています。

現在研修の内容は、基本的に三択クイズにしています。これはPlatonやTHiNQ Makerの制約ではなく、短時間でも空いている時間に学習することを想定しているためです。そのため、一問一答ですぐ解答や解説を表示し理解を定着させるようにしています。このように一問一答で学習できることも利用率が高い理由のひとつと言えるでしょう。研修の内容に関しては、製品に特化したクイズだけでなく、事前学習の教材や、営業所長用の研修素材など、幅が出てきています。

まもなく、全社共通の教育コンテンツをリリースして、全営業が利用することになる予定です。「現在、アクティブユーザーは2,000人ほどですが、3,800人程度に増えます。2倍近いユーザー数になっても、パフォーマンスは問題ないと見積もっています」(門田氏)

今後はiPad用に情報量を増やした専用コンテンツや、アジア・パシフィック地域への展開のための英語版の導入なども検討しているそうです。IBM SmarterCloud Enterpriseを基盤として、さらなるサービスの展開が期待されます。

 

用語の説明

  • SaaS

    Software as a Serviceの略で、サービス型ソフトウェアとも呼ばれる。一般にはネットワーク(インターネット)経由で必要なソフトウェアを利用する仕組み。

  • VPN

    Virtual Private Networkの略で、直訳すると仮想プライベート・ネットワーク。インターネットなどの公衆回線を専用回線のように利用できるネットワークサービス。

  • SAML

    Security Assertion Markup Languageの略で、標準化団体OASISによって策定された、XMLによる認証情報伝達技術。

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お客様情報

世界最大の製薬企業であるファイザーは、循環器系、鎮痛・抗炎症系、中枢神経系、筋骨格系、感染症、泌尿器系、眼科系、ガン、内分泌系、ワクチン、希少疾病等などの幅広い疾患分野で革新的な新薬とエスタブリッシュ医薬品を世に送り出しています。グローバルな事業展開を図り、世界150カ国以上、約10万人の社員の活動の根底には、"Working together for a healthier world"―より健康な世界の実現のために貢献する―というファイザーの揺るぎない企業理念が息づいています。

 

パートナー情報

  • Platon

    eラーニングの学習教材の配信および受講と、教材受講の履歴管理を行うためのサーバーアプリケーション。PC・スマートフォン・タブレットでの受講履歴を一元管理しているため、eラーニング本来の「いつでもどこでも学習」を実現できる。

  • THiNQ Maker

    eラーニングのクイズ・テスト教材を作成するソフトウェア。出題、解答、解説画面に画像や音声、動画を使用し、パソコンのみならず、スマートフォンやタブレットでも閲覧可能な教材を作成することができる。

 

テクノロジープラットフォーム

サービス

インダストリー

ソリューション

Solution Category

  • Global Business Services