Business Challenge story

ビジネスの現状を把握するには多角的な視点の分析が必須

現在、インターネット・メディアの広告枠は、RTBと呼ばれるオークションによって取引されています。自社メディアの広告枠を売りたい「セラー」にとっては、広告収益を最大化するチャンスを得ることができます。また、広告枠を買いたいクライアント企業や広告会社などの「バイヤー」は、その時点における最適な市場価格で広告を配信することができます。

このRTBを積極的に活用し、マイクロアドは急成長を続けています。広告枠を大規模に買い付けてネット広告を配信するとともに、自らがアドエクスチェンジ(取引所)となって広告枠の販売も手掛けるようになりました。2012年9月期実績の売上高は、前年比約87%増の44億3,400万円に達しています。

こうした“勢い”をもたらす原動力となっているのが、卓越したアナリティクスです。

同社はIBM SPSSソフトウェアやIBM PureData System for Analytics(Netezza)を導入し、データ分析基盤を構築しています。広告配信技術の主流である「オーディエンス・ターゲティング」に注力しており、インターネット・ユーザーのサイト閲覧履歴を自動解析し(これは匿名情報であり、プライバシーに関わる個人情報は取得しません)、個々のユーザーの興味・関心・属性を推定して、それに対応した適切な内容の広告を配信することによって、高い広告効果を実現しています。また、株式市場のシステム・トレードのように広告枠の適正価格を自動的に算出し、0.1秒オーダーで入札して売買するアルゴリズムを開発しています。

ただし、これらの仕組みは一度作れば、いつまでも効果を上げ続けるわけではありません。実際のビジネスでの結果を見ながらPlan(計画)→Do(実行)→ Check(評価)→Action(改善)の4段階から成る業務管理プロセスであるPDCAサイクルを回し、戦略変更やアルゴリズムの修正、チューニングを図っていく必要があります。そして、ビジネス規模が大きくなるほど、また、監視対象が広がるほど、正確な状況判断や意思決定は難しくなっていきます。

「まさに、その課題を痛感していました」と語るのは、同社 京都研究所の所長を務める野口 航氏です。

「当社がRTBに踏み出した2011年には国内のPC広告のみを手がけていたのですが、2012年にスマートフォンの広告も開始しました。さらに、2013年からはグローバル展開も本格化してきています。そこで問題なのが、PCとスマートフォンの広告単価の格差、あるいは日本国内と新興国の広告単価の格差が、数倍に開くことです。全体の“平均値”をとってビジネスの現状を把握しようとしても意味がありません。要するに、多角的に数字を見なければならない必要性が高まってきました」。

野口氏は当初、Microsoft ExcelやIBM SPSS Modelerなどを使って現状把握のほか、売上急減などの問題が起こった際の原因究明に努めていました。しかし、基本的に平面的な表形式でしかデータを見ることができないそれらのツールでは小回りがきかず、フラストレーションを感じていました。

Transformation

気になる個所のドリルダウンと実データへのドリルスルーで原因究明

もっと使い勝手の良い分析ツールはないだろうか。そんな野口氏の目の前に絶妙のタイミングで登場したのがIBM Cognos Insightでした。

同社は、これまでIBM SPSSソフトウェアやIBM PureData System for Analytics (Netezza)を使ってきた経緯もあり、BIの新たな基盤としてIBM Cognos Expressに注目していました。しかし、システム・インテグレーションを要するエンタープライズ規模の同製品を、個人の“独断”で導入するわけにはいきません。

その点、IBM Cognos Insightは、わずか55,500円(標準価格、税別)で購入することができ、スタンドアロン環境でも使えるパーソナルなBIツールです。

「これくらいのコストで済むのならと、お試しソフトウェアを使う感覚でした」と野口氏は、2012年8月に気軽な気持ちでIBM Cognos Insightを導入しました。

ところが、その手応えは予想をはるかに上回るものでした。

「実は以前、オープンソースのBIツールを使ったことがあるのですが、IBM Cognos Insightの操作性の良さは、それとはレベルがまったく違いました。On-line Analytical Processing(OLAP:多次元分析)のコンセプトさえ理解すれば、あとはマニュアルなど見なくても、思考の流れに直結した直感的な操作ができるのです」と、驚きを隠しません。

実際に同社は、どんな階層構造でデータを取り扱っているのでしょうか。例えば、バイヤー視点の次元軸だけに着目しても、「進出国(5カ国)」「取引にある広告代理店(数百社)」「広告主(4,500社)」「扱っているデバイス(2タイプ)」「ターゲティング(3タイプ)」「バナー(数万)」「広告枠(数万)」といった階層があり、これらの組み合わせの数は莫大なものになります。

「これまではオークションにおける入札の勝率、配信したネット広告のクリック数や成約率などの数字が変化した場合でも、どの階層で何が起こっているのかを把握するのが困難でした。それがIBM Cognos Insightを導入した現在、気になる個所をドリルダウン(掘り下げ)していき、絞り込んだ項目から実データにドリルスルー(集計値のもとになった明細データを表示する)することで、即座に原因を究明することが可能になりました」と野口氏は話します。

Benefits

損失の発生を最小限で食い止める投資収益率は数千倍に達する

現在、同社はさまざまなKPIを日次で監視するダッシュボードを主な用途として、IBM Cognos Insightを活用しています。具体的には、次のようなダッシュボードが用意されています。

・総合ダッシュボード

日々の全社的な総合数値をチェック。主にアドエクスチェンジ(取引所)別、デバイス別、国別の状況を監視し、異常をチェックします。

・広告案件ダッシュボード

広告主や広告代理店別の配信状況のチェック。日々の配信量ランキングやターゲティング別の状況を監視するほか、アドホック(一時的)な広告主のローデータ(処理を行っていないもとのままのデータ)の出力にも活用します。

・広告枠別ダッシュボード

広告枠別のオークション状況のチェック。ある広告枠にどのバイヤーがどの程度入札しているのかを確認します。

・バイヤーダッシュボード

会社全体としてバイヤーからの買付状況のチェック。日々異常がないかチェックします。

・スマートフォンダッシュボード

スマートフォンのOS別・キャリア別・ターゲティング別のダッシュボード。

・新しい国の概要把握

新しい進出国でネット広告の配信が始まった際に、全体像を一目で確認できるアドホックなダッシュボード。

 

加えて現在では、IBM SPSS Modelerで広告枠の売買アルゴリズムを変更した際の経過観察のためにも、IBM Cognos Insightが使われるようになりました。

「例えば3社の広告主に対してテスト的に新アルゴリズムを適用した場合、1社ずつフィルターで選択しながら複数の値を多数のグラフで同時に見ることで、問題がないかどうかを一目瞭然で確認できます」と野口氏は話します。

いずれにしても異常検知に重点を置き、迅速な原因究明と対策につないでいるところに、同社におけるIBM Cognos Insight活用の特徴があります。

「入札勝率低下や局所的な売上減などの異常値を放置すればするほど、本来得られたはずの機会利益との差分が積み重なり、巨額になっていきます。可能な限り早期に手を打つことで、そうした損失を食い止めることができるのです。その意味ではIBM Cognos InsightのReturn On Investment(ROI:投資収益率。投資した資本に対して得られる利益の割合)は、数千倍に達しているといって過言ではありません」と野口氏は話します。

 

将来の展望

アナリティクス強化を目指し全社的なBI基盤の整備へ

IBM Cognos Insightを通じてOLAPの効果を実証できたことで、同社はいよいよIBM Cognos Expressの導入に向けた具体的な検討を開始しました。

そこには大きく2つの目的があります。

第1の目的は、より大規模なデータの分析です。現在、同社が展開しているプラットフォームを通じて広告配信している広告主は4,500社以上、広告配信先のメディアは数万サイト、広告を見ている利用者は月間6,000万人以上、1日の広告オークション回数は25億件を超えています。そして、そのすべての履歴データがIBM PureData System for Analytics( Netezza)に蓄積されています。

このデータをIBM Cognos Insightに取り込んで分析を行っているわけですが、スタンドアロン環境による運用では容量やパフォーマンスに限界があり、現状ではデータを選択せざるを得ない状況が続いています。

「ネット広告のビジネスにおいて、利益を出せるか出せないかの命運はデータ分析力が握っています。アルゴリズムによる広告枠の高速取引の時代に突入し、その傾向はますます顕著になっています。いま以上に多角的な視点でKPIを把握するためには、自分たちが持っているデータを最大限に活用する必要があり、IBM Cognos Expressが欠かせません」と野口氏は話します。

第2の目的は、全社的なアナリティクスの強化です。経営者やマネージャー、営業担当者など、それぞれの立場や視点に応じた分析ニーズがあり、自発的な取り組みを支えていくBI基盤として、IBM Cognos Expressへの期待が高まっているのです。

「端的に言うと、現在Microsoft Excelのピボットテーブルやマクロを使って、“力業”で行っている集計や分析を効率化したいのです。私の経験からも言えるように、自分のシナリオに沿ったキューブ(多次元データベース)を作ることで、思いどおりの分析が簡単に素早くできるようになります。また、誰かが身に付けたノウハウを簡単に共有できるようになります。そうした環境を早期に整えたいと考えています」と野口氏は話します。

同社のさらなる競争力が、新たなアナリティクスの環境から生み出されていきます。

 

お客様情報

2007年、株式会社サイバーエージェントから会社分割して設立され、ユーザー・マッチ型広告配信サービス事業を引き継ぐ。「広告を情報へ」をビジョンに、オーディエンス・ターゲティングなどの最新の広告配信技術を活用し、広告主には広告配信プラットフォームを提供し、Webサイトを持つメディアには広告枠の収益最大化プラットフォームを提供している。

 

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  • IBM Hybrid Cloud