Business Challenge story

グローバル顧客の要求に対応できる、グローバルなビジネス品質の実現を目標に改革を決断

工業用プラスチックファスナーをはじめとする合成樹脂成形品の開発・製造を行い、自動車や家電、住宅設備など幅広い分野に提供しているニフコ。海外展開にもいち早く取り組み、1983年に台湾工場を設立したのを手始めに米国・欧州・アジア地域に進出し、現在、世界17カ国38拠点で事業を展開しています。

ニフコでは、創業以来一貫してお客様が抱える課題を解決する「提案型」の営業を行っており、仕事のやり方も個々の顧客に応じて最適化してきました。その結果、社内業務においては本社・拠点間の連携が弱く、グローバル経営に必要な情報の把握に時間が掛かったり不十分なケースがあり、国際競争力の強化に向けて体制を整える必要性が認識されるようになりました。

ニフコ業務改革推進部理事西江誠氏は次のように話します。

「独立系メーカーであるニフコの総製品数はグローバルで約6万点あり、取引先も多いのが特徴です。1つの顧客に対して複数の納入先があり、国によって通貨や輸送費なども異なり、製品単価はそれぞれ変わってきます。しかもグローバルで製品番号が統一されておらず、画像がなければ同一製品かどうかも判別できない場合もあり、戦略立案に必要となる顧客・商品別の売上額や購入価格も容易には調べられませんでした」

加えて、国内で使用している基幹業務システムは老朽化してきており、自社で保有するハードウェアの災害対策や変化への対応という課題もあり、更新の検討を迫られていました。

こうした課題を前に、ニフコの経営層は経営体質の強化に向けて集中的な議論を実施。中期計画に基づき、「グローバルでの顧客要求に対応できるグローバルなビジネス品質の実現」と、「老朽化した基幹システムの刷新と災害・変化への対応力の強化」の2つを柱にした『グローバル事業の基盤づくり』に取り組むことを決断しました。

ニフコには国内3工場をはじめ、本社・事業所、外注先などが多数あり、業務システムも広範囲に及びます。基幹システムの刷新を含む大規模プロジェクトの実行方法について、西江氏は次のように説明します。

「グローバル事業の基盤づくりの実現において、『可視化』『標準化』『効率化』という3つのテーマを掲げました。ニフコでは、まず可視化に取り組み、続いてグローバルでの業務基準・ルール設定による標準化、そして各拠点で効率化を図るという道筋で目標を目指すことを考えたのです」。

    Transformation

    グローバル展開を前提にSAP ERPを採用、パートナーには構築実績とプロジェクト実行力からIBMを選定

    プロジェクトは、「グローバルでシンプルに、スピーディーに、標準プロセスで進める」という目標から、「GS3(GSキューブ)プロジェクト」と名付けられました。2010年夏、ニフコは導入するシステムとパートナーの選定を行い、ERPパッケージは「SAP ERP」を、パートナーはIBMを選定しました。西江氏は次のように説明します。

    「ERPパッケージは、業務プロセスの基盤になることからグローバルで通用する製品であることを基準とし、パートナーについては、ERPシステムのグローバルでの構築実績があることと、プロジェクト実行力を基準に選定しました。当社が描く将来的なグローバル展開のイメージに対して、IBMは細部の機能に踏み込みすぎず、全体構想を提示したことが決め手になりました」

    2011年6月、専務取締役兼執行役員が推進担当に着任し、プロジェクトが正式にスタート。5カ月間かけて導入構想を策定しました。基幹業務システムの導入は3年程度かかると予想されたため、早い時期に効果が見込め社外への影響が少ない領域を先行して実施することとし、以下のような3段階で導入を実施しました。

    • 第1段階(2012年4月):経営情報の可視化、現場業務領域(出荷業務)の標準化と効率化

    まず、グローバル経営情報の可視化と、現場業務領域として出荷業務の標準化と効率化に取り組みました。「可視化」については、海外拠点のトランザクション(伝票)データを収集し、グローバル本社に導入したSAP NetWeaver Business Warehouse(SAP BW)に取り込んで整理。各拠点に極力負担をかけないよう、グローバル共通コードにて標準化、ローカル品番を変換させることで、約30拠点の経営情報をグローバルで一気通貫に見える仕組みを構築しました。「現場業務領域」については、大量の入出荷を処理する業務にQRコード(2次元バーコード)ラベルと読み取りのためのハンディ・ターミナルを導入し、基幹業務を切り替える前に新たな業務に慣れるようにしました。

    • 第2段階(2013年8月):基幹業務1 社内業務領域

    基幹業務については、切り替えのリスクを最小化するために導入を2段階に分け、まず社内で完結する業務の切り替えを実施。具体的には、内製工場や経理、金型製作、設備の業務標準化と基幹システムの切り替えを行いました。

    • 第3段階(2014年1月):基幹業務2 対顧客関係領域

    そして最終段階として、顧客と関係する領域を実施。2013年末から2014年正月にかけての1週間で、受注・出荷、売上、外製品購入など、残された基幹業務すべてを切り替えました。新基幹業務においては「標準化」を追求し、製販系業務におけるグローバルニフコ全拠点で実現すべき業務基準の設定を行いました。

    3つの段階を経て、グローバル事業の基盤づくりのテーマとして掲げたうち、『可視化』と『標準化』が完了しました。

    ニフコでは、プロジェクトを進める上で、推進体制や進捗管理に工夫をしています。社長直属のプロジェクト室を設置し、専任スタッフを置くとともに、工場や事業所ごとに、工場長・所長が「スーパー・ユーザー」を任命。経営層の強力なバックアップのもと、プロジェクトのためのスペースを設けて、必要に応じて本社予算にて、業務研修や統合テストを集中的に実施。スーパー・ユーザーは現場に戻った後、各部署で新しい業務のやり方を教えるとともに、現場の習熟度やPCの準備度合いなどを週次で報告し、進捗状況を全社で共有しました。 

    こうした取り組みについて西江氏は、「全社が変化に対応していくためには、社員一人ひとりに業務がどう変わるかを目に見えるかたちで伝えることが重要です。スーパー・ユーザーを任命することで工場や事業所全体を巻き込み、新基幹業務システムの導入機運が高まっていきました」と説明します。

    また西江氏は、基幹業務システムの切り替えを振り返り、対外的な業務を対象とする第3段階ではより不安が大きかったと明かします。しかし、第2段階の切り替えがうまく運んだことが成功体験となり、その後の切り替えをスムーズに運ぶ力になったと話します。

      Benefits

      スケジュール・予算ともほぼ計画どおりに完了。グローバル全体像の把握が容易に

      2014年1月に第3段階の切り替えが完了して以降、新しい基幹業務システムは順調に運用されています。現時点までで、下記のような効果が挙がっています。

      • 経営情報の可視化

      SAP BWの導入により、グローバル経営情報の可視化が進みました。

      「従来、各拠点の情報は送付を依頼してもなかなか集まらなかったのですが、最近では、ほぼ全拠点の売上伝票が届くようになり、全体像を把握できるようになってきました。また、顧客別や製品別といった情報の軸でのデータを見るためには、以前は情報システム部門に依頼してデータの集計・加工を行っていましたが、現在は必要な人が自身で生データをSAP BWで照会・分析し、意思決定に使えるような環境が生まれています」と西江氏。

      • デジタル・データの活用による紙の削減

      従来の基幹業務システムでは出力帳票と照会画面が全部で約1,700ありました。それに対して、新しいシステムではQRコード付きラベルや業務運用帳票だけを紙で出力、それ以外はハンディ・ターミナルで照合し、仕入れ先へはソフトコピーで送付、業務管理帳票はSAP BW上のデータを活用して、画面上で照会・分析やExcelで作成できるようにしました。また、SAP ERPのQUERYでの一括照会も使われています。その結果、帳票・画面は6分の1程度に減り、紙を大幅に削減することができました。

      • サーバーのクラウド化による、災害・変化への対応力の強化

      以前は自社内にマシンを設置し運用管理していましたが、新しい基幹業務システムはIBM幕張データセンターでエンタープライズ・クラウドとして運用されており、災害対応、処理能力の柔軟性を強化することができました。

      プロジェクト全体について、西江氏は次のように話します。

      「今回のプロジェクトでは、スケジュールも予算もほぼ当初の計画どおりに完了することができました。大規模な導入プロジェクトとしては成功したと思いますし、IBMをパートナーにして本当によかったと思っています」

      2回にわたる基幹システムの切り替え直後には数多くの障害が出ましたが、それぞれ2カ月ほどで収束しました。2年半にわたるプロジェクトを通じてプロジェクト・メンバーとスーパー・ユーザー、さらに各部署との間で円滑なコミュニケーションが図られており、障害が出ると、ニフコとIBMの双方が連携して直ちに修正を行いました。パートナーとしてのIBMについて、西江氏は次のように語ります。

      「IBMは、私たちにインタビューしながら、プロジェクトの進捗に関する計画とスケジュール、特に基幹システム周りはすべて立てて、また切り替え時については1,200余りの全作業項目を洗い出し、皆が見える形で着実に進めてくれました。『10年に一度のプロジェクト』と言ったニフコの社員がいましたが、私たちにとって恐らく20年に一度もない、経験したことのない規模です。そこで、IBMのプロジェクト・マネジメント力に期待したわけですが、それは期待を上回るものでした」

       

      将来の展望

      構築から活用へ――。データを活用して、意思決定やプロセスの改革に取り組む

      GS3プロジェクトは2014年4月から、「構築から活用へ」という新しいフェーズに入り、グローバル事業の基盤づくりの仕上げである『効率化』にも取り組んでいます。また、ニフコは今後の目標として、データベースも含めた情報の活用に重点を置いた取り組みを進めていく考えです。

      「日々着実に納品することはもちろん最重要のテーマですが、今後はデータを基に傾向を分析し、改善点を探り、改善の作戦を立てるところにも力が注げるようになっていければ」と西江氏は語ります。

      実際に、新システムでさまざまなデータを見られるようになったため、経営層を先頭に、各部署でデータを経営に生かそうという動きが起こりつつあります。

       

      今後は、データを活用して意思決定や業務プロセスを改革するなど、効果をいかに創出していけるか――。ニフコの挑戦は続きます。

       

      お客様情報

      工業用プラスチックファスナーの製造・販売を目的に1967年に創立。プラスチックの特性を生かした製品は、自動車や家電製品の軽量化や、生産ラインでの作業性の向上やコストダウンに大きく貢献している。製品のバリエーションも多岐にわたり、産業向けのみならず、住宅設備等、暮らしのシーンにも継続的に新製品を提供。アイデアをかたちにする技術・開発力を発揮し、国内業界最大手から世界No.1カンパニーへの飛躍を目指す。

       

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