Business Challenge story

主目的はコスト削減ではなく廃棄物削減

タケダでは、地球温暖化問題に配慮し、医薬品が生産過程を通して環境に与える影響を最小限にするため、省エネルギー、廃棄物の削減、教育・啓蒙活動の推進などさまざまな取り組みを行なっています。

2009年秋、同社は環境経営を推進し環境に対する同社製薬本部員全員の意識を高めるため、社内にある遊休品の再利用を促進し、部門間でシェアをするシステムの検討を始めました。これは、各職場、各人が無駄を徹底的に省く習慣を通して環境経営を支援するための取り組みです。

武田薬品工業株式会社 製薬本部 環境安全用役部長の渡辺 一憲氏は「以前から定期的に不要品を集めて再利用を促進するような、キャンペーン・イベントは開催していましたが、日常的に再利用を推進するためには、システムの構築が有効であると考えました。それには、単に不要品の情報をやり取りする掲示板には留まらず、各人が継続的に意欲を持って取り組んでもらうための仕組みづくりが必要でした」とシステムの要件を語ります。

武田薬品工業株式会社 製薬本部 製薬企画部 IT企画グループ グループマネジャーの板野 隆氏は、「そこで、まずわれわれがイメージしたのは、インターネット・オークションのような仕組みです。ただし、このシステムの主目的は、コスト削減ではなく、あくまでも廃棄物削減ですので、ゼロエミッション、環境経営を主眼に置いて設計されたシステムを目指しました」と説明しています。

Transformation

興味・意欲を持って継続的に利用されるシステムを目指す

武田薬品工業株式会社 製薬本部 製薬企画部 IT企画グループ 課長代理の渡邉 祥子氏は、「社内の遊休品を仲介するシステムというシンプルなコンセプトながら、要件を満たすパッケージ製品は見つからず、開発が必要となりました。開発に当たっては、ワークロード削減、業務の効率化に直結するようなシステムではないため、開発コストを抑制することも重要な課題でした」と語ります。いかに本来の目的達成のために、日頃システムをあまり使わない生産部門のユーザーなどにも気軽にかつ継続的に使ってもらえるシステムを作るか、関連部門とも議論を重ね、苦心して業務要件を定義したそうです。その業務要件を基に数社にシステム提案依頼を実施しました。

その中で日本IBMを選定した理由を、板野 隆氏はこのように語っています。「本システムは前例がなく、各社白紙からのスタートに近いものでした。システムの主目的がコスト削減、業務の効率化ではなく環境経営支援であるということもなかなか理解されにくかったのですが、中でも一番よく弊社の趣旨をご理解いただき、ニーズに合った提案をいただいた日本IBMを選定させていただきました。コンセプトにあったシンプルな構成や、ユーザーの興味・意欲が継続する仕組みなど、要件を十分にご理解いただいた提案だったと思います」

EARTHポイントを効果的に活用

約半年の開発期間を経て2010年6月、当システムは「ネットシェアリングシステム The EARTH(以下、The EARTH)」として、本番運用が開始されました。The EARTHでは、「各部門で所有している遊休品情報を登録」し、「各部門で購入する前に要求品情報を登録」することにより、「物品提供者と物品要求者が交渉する場を提供」しています。メールや電話の交渉で双方の条件が合致すると、提供部門から要求部門に物品を配送します。遊休品を配送すると、かえって本体価格よりも配送コストの方が高くなるのでは?という懸念がありますが、「提供品の配送は、社内メールなど、事業所間の配送便を有効利用しています。ですから送料はほとんど発生していません」と渡邉 祥子氏は説明します。

The EARTHでは、継続的に利用されるために、さまざまな工夫が凝らされています。「このシステムでは仕組みを複雑にしないため、会計処理の機能は織り込まず、また本来は廃棄する物品を対象としていることから上長承認もなしとしました。固定資産となるような高額な物品については、情報交換のみをThe EARTHを通して行い、会計処理に関してはこのシステムとは独立して通常の運用で対応しています」(渡邉 祥子氏)

ウェブ・ブラウザーを起動すると必ず表示される製薬本部ポータルサイトのトップページには、The EARTHのアイコンがあり、ブラウザーを立ち上げるたびにユーザーが目にするようになっています。また、The EARTHのトップ画面には、The EARTHにおける製薬本部長のメッセージをアニメーションにしたものが掲載されています。「このアニメーションは、稼働時の1作品で終了する予定でしたが、その後も継続的に変更することでユーザーの興味を引き、今やThe EARTHのシンボル的な役割となりました。この活動の啓蒙にも一役買っています」(渡邉 祥子氏)

そしてもう1つThe EARTHトップ画面に表示されているのが、EARTHポイントです。EARTHポイントとは、物品情報登録、照会、交渉成立、配送完了(受領)の各イベント発生時にユーザーに付与されるポイントです。交渉成立時だけではなく、登録や照会の際にもポイントが付与され、トップ画面には個人の獲得ポイント数以外に、所属部門の獲得ポイント数や順位も表示されています。活動すること自体をポイント数で可視化することは、ユーザーの意欲を促しユーザーが継続利用することに大きな鍵となりました。全体の実績は逐次確認でき、月間の部門集計は月次レポートの送付で報告されています。さらに年に一度実績を評価し、貢献度の高かった部門に対しては、表彰を行う予定です。

また、要求品を登録しておくと似たような遊休品が登録された際にメールが届く近似値検索機能など、ユーザーの利便性を向上する機能も搭載されています。運用に関しては、維持管理の手間を最小限にするよう設計され、マニュアルレスのシステムを実現しています。デザイン、操作性もシンプルさにこだわり、運用開始からヘルプデスクへの問い合わせはほとんどないとのことです。

Benefits

新規購入額の5%低減という目標を導入後1年足らずで達成

稼働から1年近くたつ現在でも、The EARTHは活発に継続利用されているそうです。「EARTHポイントによる実績の可視化も奏功し、各人の意識がさらに高まったと思います」と渡邉 祥子氏。

現在ファイル、バインダーなどの事務用品が多く登録されていますが、そのほかに机・椅子などの什器、電化製品、業務用の消耗品なども登録されています。

渡邉 祥子氏は、「先日大阪工場のある会議室に行くと、机も椅子も仕様がばらばらでした。理由を聞くと『全部The EARTHで調達したから』とのこと。『なかなか新規購入させてもらえないんですよ』と笑っていました」とThe EARTHの利用が浸透している例を語ります。渡辺 一憲氏は、「でもユーザーの方は、クレームではなく半ば自慢として言っているんです。仕方なく使っているのではなく、楽しんで使って誇りに思っている。この風潮がとても良いと思います」と語っています。

「工場ではThe EARTHという言葉が定着し、『新規購入前にまずはThe EARTHで探す』という行動が日常的となりました。『The EARTHで見つけた』、『引越しの備品をThe EARTHで調達できた』といった、前向きな声をよく聞くようになりました」(渡邉 祥子氏)

今後はさらに一層の利用促進のために、ポイント2倍キャンペーンの実施、ポスターやアニメーションのアイディア募集、アンケートの実施なども検討しているそうです。

コスト削減が主目的ではありませんが、システム導入時に、前年度の製薬本部の消耗品(The EARTHで取り扱い対象となる物品)購入実績の5%低減を目標としました。渡邉 祥子氏は「スタート時には難しい目標値だと思っていましたが、予想外にも年度途中で達成することができました。什器、電化製品のような新規で購入すると高額な物品の取り引きもあり、廃棄物削減とともに結果としてコスト削減にも貢献できたと思います」と手ごたえを語っています。

2010年10月には、同社のゼロエミッション活動が評価され、平成22年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰において厚生労働大臣賞を受賞しました。渡辺 一憲氏は、「2007年度からゼロエミッションに向けた廃棄物の削減、再資源化の取り組みを推進していましたが、2009年度に当初の予定から1年前倒しで当社の目標を達成したことが評価されました。このゼロエミッション活動の一環として、The EARTHがあります」と語っています。

将来の展望

他部門への展開も検討。他社からも高い関心

現在、大阪本社 製薬本部(大阪市中央区)、大阪工場(大阪市淀川区)、光工場(山口県光市)でこのシステムを運用しています。「研究部門と生産部門では必要な備品が違いますので、単純な展開はできませんが、他部門と調整して全社での展開について検討を進めているところです」と板野 隆氏は語ります。また、「外部団体のイベントでThe EARTHについて講演したことがあるのですが、他社の方から高い関心を集めました。同業の大手製薬会社の方が、視察にいらっしゃったこともあります」(渡辺 一憲氏)と、他社からも注目を集めているそうです。

同社製薬本部で広く受け入れられたThe EARTHは、組織内で遊休品を仲介する、勘定系と独立したシステムのため、製薬業に限らず多くの企業・組織での利用が可能だと想定されています。「ほかの企業にもぜひ使っていただきたい」と渡邉 祥子氏は語っています。

お客様情報

1781年創業の武田薬品工業株式会社は、研究開発型のグローバル製薬企業として、経営哲学であるタケダイズム(誠実=公正・正直・不屈)を事業運営の根幹に据え、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」ことを目指した事業活動を行っています。

タケダが創製した医薬品は、現在、世界約100カ国で販売されています。

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