オムニチャネルに不可欠な機能を備えた IBM Interact、また多種多様なキャンペーンの実行とPDCAサイクルの自動化および効率化ができるIBM Campaign。そしてそれらを迅速に実行できるインフラとしてIBM Power SystemsとIBM Flash Systemを採用しました。

—株式会社 横浜銀行 個人営業部 個人戦略企画グループ 調査役 河野 𠮷晴 氏,

Business Challenge

神奈川県内に179店舗を展開する株式会社横浜銀行(以下、横浜銀行)は、メガバンクとの競合などの理由で地域内の預金シェアに課題を抱えていました。他の地方銀行では4割を超えるケースもある地域内の預金シェアは、横浜銀行では2割、貸出金のシェアは3割にとどまっていました。お客さまの支持を得るために横浜銀行が取り組んできたのは、多様化するニーズに対応したプロモーションの展開と、それを実施するためのビッグデータの分析でした。

ビッグデータにはお客さまの属性のほか、各種の契約や商品の保有、利用するチャネル、コンタクトの結果など、多くの情報が保存されています。これを分析・解析することで、お客さまのニーズをくみ取ることができると考えたのです。結婚、出産などお客さまのイベントに合わせて最適な商品を提案する「イベント・ベースド・マーケティング(EBM)」という手法の活用も、こうした取り組みの一環でした。

しかし、これだけではお客さまの潜在的なニーズまではつかむことができませんでした。お客さまと銀行との接点(タッチポイント)や情報に行き着くまでの経路(チャネル)が、以前とは変わってきていたからです。

横浜銀行が調査機関を通じて消費者の生活様式のトレンドを調べたところ、テレビの視聴傾向は2013年から2015年までの3年間でほぼ横ばいだったのに対して、スマートフォンやタブレットの利用傾向は、どの年代でも増加していました。これに対して、ひと昔前ならある程度強いチャネルだった営業店窓口の利用については、減少の一途をたどっていました。

このように、お客さまを取り巻く環境が大きく変化しているにもかかわらず、既存の組織構造に紐づく業務分担によりチャネルごとに担当組織が異なり、それぞれにプロモーションを実行し、チャネル間での連携ができず、プロモーションに一貫性がないという課題が浮かびあがってきました。

また、EBMにおいて利用するチャネルが収益を稼ぐ営業店窓口に偏っていたために、営業店を頻繁に利用する資産運用層のニーズはくみ取れるものの、顧客の多くを占める資産形成層は営業店窓口をあまり利用しないために、ニーズをくみ取りきれないという課題がありました。

Transformation

横浜銀行が採用したオムニチャネル・システムは、リアルタイムで個々のお客さまに応じた提案ができる「IBM Interact(以下、Interact)」と、多数のキャンペーンを効果的に実行、管理できる「IBM Campaign(以下、Campaign)」。

Interactは、広告などを一定の回数以上は表示させないというような細かな配信の制御や、ウェブサイトごとにバナー表示を出しわける調整が瞬時に可能です。ルール・ベースと自動学習エンジンとを組み合わせることで、こうしたオムニチャネルの可能性を高めることが今後実現できます。

一方のCampaignは、複数チャネルにまたがるキャンペーンの一元管理を担います。これによってチャネル間の断絶を防ぎ、一貫性をもったアプローチが可能になりました。

マーケティングにおけるPDCAサイクルを自動的、効率的に回すことができるのも、Campaignの強みです。精密なセグメント設計によってキャンペーンの対象者(誰に)を選定し、最適なチャネル(どこで)や告知方法(何を)をアドバイスするほか、実施効果を測定して効果測定レポートも出してくれます。告知方法については複数の組み合わせを試して検証することもできるため、プロモーションの成功率もおのずと上がります。

キャンペーンを支えるインフラの基盤も、キャンペーン設計と同様に重視されました。高信頼のIBM Power Systems、そして高速データの処理を実現するIBM FlashSystemというプラットフォームによって、大規模なキャンペーンも支障なく展開できるようになりました。

1回の設定で即時のレスポンスが自動でできるというインバウンド領域での運用のしやすさは、ほかのマーケティング・オートメーション製品にはないもので、スピード感ある施策の実行を可能にしました。また、日本IBMは金融機関や事業会社への導入実績が豊富であり、先行事例を踏まえて最適なノウハウを提供できたという点も、開発時のみならず導入後も行内での好評価につながっています。

これだけのシステムを2年間という短期間で導入できた背景には、すでにビッグデータ活用の土台ができあがっていたことがありました。横浜銀行には2000年からデータ活用部門が存在し、現在では本部内で100名近くがデータをハンドリングしています。

また、2009年からはマーケティング専門部署が立ち上がり、より専門的な顧客分析を行うようになりました。こちらの部署は調査、コンサルティングを行うシンクタンクである浜銀総合研究所などとも協力し、情報分析の質、深さ、広さを高めています。

これに加え、行内の課題を解決するためにはプロモーション機能の拡充が必要だという機運が高まっていたことも、導入の追い風になりました。従来どおり重視する営業店窓口に加え、営業店窓口に来店しない資産形成層とのリレーション(取引)を強化するためには、複数のチャネルを俯瞰的に見て個々のお客さまが求めるアプローチを行えるオムニチャネル・マーケティングが必須だったからです。

金融機関で取引をするためにはまず口座を開く必要があり、商品をどこでも買える小売などの業界に比べると、取引開始のハードルは高くなります。さらに取引の多くはATMで現金を下ろす、入金する等といったものに限られ、営業店窓口でお客さまに住宅ローンの契約などを勧めたいと思っても、その機会がなかなかありませんでした。

こうした問題を解決するには、お客さまとの接点が多いチャネルを起点とし、そこから他のチャネルに誘導するのが有効です。横浜銀行のチャネルとして有力なのは、やはり神奈川県内にある約200店の営業店、そして1600台のATMです。このATMを接点として、近年閲覧者数を伸ばしているホームページやインターネット・バンキング、スマートフォン・アプリなどに誘導するという方法が採用されています。

IBM製品の導入によって、各チャネルで予想されるお客さまの属性や行動に応じてプロモーションの仕方を変化させられるようになりました。さらに、ATMで見た人が次にインターネットバンキングを見たときの表示までコントロールするなど、オンラインとオフラインの連携も可能となっています。

具体的には、ATMで取引をすると手数料が一定期間無料になる制度の案内や、資産形成層、若年層を中心とした新たなお客さまとの接点拡大に結び付くスマートフォン向け残高照会アプリのリリース、新たなニーズの喚起を目的とした金融商品啓発コンテンツなどのプロモーションが実施されています。

プロモーションの効果を高めるためには、表示するコンテンツの内容の充実も不可欠です。また、お客さまの消費行動とそれに伴って生じる欲求に沿ったプロモーションを展開しようとすると、コンテンツは行動や意識に応じたものをそろえる必要があります。横浜銀行ではコンテンツ・マーケティングおよびカスタマー・ジャーニーの観点から、「認知→情報収集→比較→選択→リピート」というお客さまの消費行動を意識したコンテンツ制作が行われています。

Benefits

このようなオムニチャネル・マーケティングの推進により、横浜銀行では500万人いるお客さまに対し、その行動に合わせてATM上で表示する情報を変えることができる顧客数を実施前の10倍に拡大することができました。また、クレジットカードの申し込み状況については、該当商品に未加入のお客さまに対して適切に該当商品をオファーすることにより、高いものではオファーをしなかった場合に比べて申し込みが7倍に増加するという効果が出ています。

さらに特定のイベントが発生したお客さまに対してはコールセンターからのアウトバウンドコールも実施し、ご説明さしあげたお客さまからの申込率はベンチマークの約4倍にもなりました。

今後は、社内のマーケティング部門統合を通じてさらに魅力的なコンテンツ制作とプロモーション推進を目指す横浜銀行。同時に、地銀として求められる、地域密着型の対面相談に応えるために、営業店窓口やコールセンターをオムニチャネルに組み込んでいく青写真を描いています。

さらに外部データとの接続によって、お客さまのウェブ上での行動の類型化やディープラーニングの活用を通じて、そのときのお客さまのニーズにより合致した金融商品の提案を模索しています。

 

製品・サービス・技術 情報

当事例で使用されている主な製品・サービスは下記の通りです。

  • IBM Interact
  • IBM Campaign
  • IBM Power Systems
  • IBM FlashSystem

 

当事例に関する図表を含めた詳細な情報は、下記「PDFダウンロード」よりご覧いただけます。

Solution Category

  • Watson Customer Engagement