1849年、農夫のJohn Bootは、薬草生物学と薬草に着目し、思い切った決断でそのキャリアを大きく転換させました。

農民だったBoot氏が身に着けていた知識と言えば、薬草を扱っていた母親から学んだことだけで、それ以外に正式な資格はありませんでした。そんなBoot氏ですが、ノッティンガムのグースゲートに薬草の販売店を開くことを思い付きました。

それから173年の間にBoots社は数々の変遷を遂げてきましたが、長きにわたる伝統を持つBootsファミリーには、一つの教えが受け継がれています。それは、お客様の健康への奉仕です。英国を代表するこちらの薬局主導の健康・美容関連小売事業主は、時代とともに進化を重ねながら、優れた顧客ケアと患者ケアを提供するという使命のもと、他の追随を許さぬ地位を築き上げています。しかし、その伝統的なブリック・アンド・モルタル(従来型ストア)のビジネスを、デジタル環境に引き継ぐことは可能でしょうか?

年間のデジタル注文は

42%以上
増加

収益は2年間で

115%以上
増加

デジタル・オーバーホールの必要性

Bootsの営業形態は薬局ですが、医療ニーズを満たすための単なるワンストップ・ショップに留まりません。Bootsは便利な商品やビューティ・グッズなど、様々な商品で買い物客のかごを満たせる場所でもあります。とはいえ、顧客のニーズを満たして今の時代に追いつくために、こちらの老舗企業はデジタル化を推進する必要がありました。

Boots社の旧バージョンのWebサイトに使用されていたeコマース・ソフトウェアには問題が生じていました。そのため、新たなタイプの顧客キャパシティーに対応するため、既存のインフラストラクチャーをアップグレードする必要がありました。顧客数は増え続けていましたが、サイトのボリューム処理能力が追いついておらず、Boots社のチームは注文のピーク・タイムを恐れるようになっていました。2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより多くの人々がオンラインショッピングを余儀なくされ、世界の消費者活動が大きく変化したことで、サイトの問題はさらに深刻になりました。

Boots社の最高情報責任者(CIO)Rich Corbridge氏は、当時の状況をこのように述べています。「私たちはピーク・タイムを恐れていました。当社のサイトはコロナ以前の世界を想定して構築されており、ピーク・タイムにサイトのバランスを取りながら稼働を続けることは難しいと認識していました。サイトを訪れる顧客はそれまでは1分間に7,000人だったのが、ピーク時には19,000人になり、まさにパンクしてしまいました。そのため、インフラストラクチャーとツール全体をアップグレードする必要があったのです」

Corbridge氏はこう続けます。「問題は『どのようにしたらBoots.comを最新のクラウドのようなプラットフォームに移行してAIを適用できるのか? 最新バージョンのWebコマースにアップグレードして、顧客をサポートするためのツールを追加するにはどうすればよいか? パンデミック前にすでにユーザー数が増加していたのに、パンデミックでさらに爆発的にユーザー数が増えたプラットフォームを安定的に稼働させるにはどうすればよいか?』ということです」

昔のBoot and Companyドラッグストア製品の広告

パンデミックによって変わる働き方

既にIBMと長年の付き合いがあったCorbridge氏と彼のチームは、IBM® コンサルティングにデジタル変革の支援を依頼しました。パンデミックの影響で人々の移動が制限されていたため、作戦指令室で対面しながら戦略を練るという選択肢はなくなりました。そのためIBM® コンサルティングの一部門であるIBM iX®のコンサルタントはBoots社のグループとの協業形態を調整し、両チームは従来とは異なる協働方法を迅速に学び取ることができました。Boots社とIBMコンサルティングの共同チームは、スタッフ、プロセス、テクノロジーを統合するため、IBM Garage Methodology(共に創る(設計)、共に実行する(構築)、共に運用する(スケール))に従いました。このGarage Methodologyは、迅速な変革を目的とする、実証済みのフレームワークです。

「IBMには、人々を結び付けるための新しい働き方がありました」とCorbridge氏は言います。「私たちは仮想プラットフォームでチームとしての関係を構築し、継続して作業に取り組みました。IBMのメンバーが、この委託業務に対する適性があるだけでなく、業務に対する考え方も適切であることが分かったため、この協業は本当によかったと思います」

当初は、今回のような大規模なプロジェクトを離れた場所から進めるのは不安でしたが、チームはこのような状況にも関わらず、すべてを完了させるために全力を尽くすことができました。IBMは仮想ワークのメリットを活かして、すぐに世界中から最適なSMEを集め、Boots社と連携させて成功を収めることができました。Corbridge氏は、自宅で比較的快適に仕事をできるという思いがけないチャンスに恵まれたことで、コラボレーター達のストレスが緩和されたと認めています。IBMとBoots社のチームはシームレスに連携し、納期を守りながら時間的な制約も遵守しました。

Corbridge氏は次のように説明します。「Boots社のITチームにとってかつてない大仕事でしたが、皆で大きな部屋に揃って着席して計画を立てることはできませんでした。その代わり、インド、中国、米国など世界中の人々と映像でつながる仮想ミーティングを実施したのです。IBMは本当に一丸となって大きな変革を起こし、最終的には期限と予算内に計画を実現してくれました」

デジタルの「心臓と肺の移植」

当面の目標は、インフラストラクチャーとその既存のプログラムをIBM Cloud®に移行することでした。両社は1年以上にわたり、Red Hat® OpenShift® on IBM Cloudコンテナ・プラットフォームを使用してデジタル環境の構築、複製、テストを連携して行ってきました。そして1年半後にようやく予行演習が終わり、サイトを公開する週末を迎えました。

既存のサイトを最新のeコマースの世界に合うように進化させることは、簡単な作業ではありません。それをたった1回の週末の間に行うことは、非常に野心的な試みでした。しかし、チームは週末の公開までに入念な準備とチェックを重ねてきたので、新しいプラットフォームの開始時に発生したインシデントはゼロ、顧客に与える悪影響もゼロでした。

「作業は、心臓と肺を同時に移植するようなものでした」とCorbridge氏はコメントしています。「私たちは、同じ週末内に”IBM Cloud inside Boots”と名付けたシステムに移行し、さらにHCL Commerce(旧称IBM Websphere Commerce)をバージョン9に移行する決断を下したのです。顧客に悪影響が出ないように、深夜に膨大な時間を割いてその作業を完了してもらうよう、多くの人に本当に無理なお願いをしました。皆が本当に一致団結してくれたおかげで、あれほどの短期間でそれが実現しました」

そして、ポストローンチのIBMとの関係によって、このコラボレーションが他の関係とは一線を画すものになったとCorbridge氏は説明します。サイトの公開に伴いプロジェクトの契約は終了したものの、引き続きIBMチームはBoots社の変革を支援しました。IBMチームはサポートを拡大し、何も見落としがないことを確認したうえで、スムーズなナレッジ・トランスファーが確実に行われるよう支援しました。

「今回IBMを主要パートナーに迎えて協働できたことで、当社のサイトにアクセスするお客様や患者の皆様には、これまでより豊富で高品質な商品をお選びいただけるだけでなく、これまでより便利なサイトにリニューアルできました」とCorbridge氏は語ります。「Bootsはこれまでどうり、実店舗でのお客様へのご奉仕を継続いたしますが、今後はオンラインでもお客様に変わらぬご奉仕をお届けできることを、お客様には実感していただけると思います。このリニューアルは、新型コロナウイルス感染症で外出の機会が減った今では、非常に重要な変革でした」

イギリス、ロンドンのメリルボーンにある店やカフェが連なる通り

全体的な成長

ついに正念場が来ました、ブラック・フライデーです。かつてはBoots社を怖がらせた最大のイベントでしたが、今では安心してその日を迎えることができました。同社のWebサイトでは、買い物かごの平均量が、チームの予測値を大きく上回りました。このサイトではちょうど1年前に深刻な障害が発生しましたが、それはもう過去の話です。Boots社の新しいインフラストラクチャーはスムーズに稼働しただけでなく、指数関数的に処理速度が速く、ピーク時には27,000人以上のサイト訪問者を滞りなく処理しました。

サイトの検索機能やパーソナライズされた機能が改善され、以前のインフラでは実現できなかった方法で製品を紹介できるようになりました。ケチャップなどBootsでは目に留められなかった商品でも、今や売り上げが急増しています。

「私たちですら誰もそれを売っているなんて知らなかったんですよ」とCorbridge氏は笑います。「何百万人もの人がケチャップを検索しているのを見て、どれほど検索能力が向上したかが分かると同時に、この予想外の出来事に非常に驚きました」

Boots社にとってもう1つの極めて重要な日、2021年12月23日の販売開始日がやってきました。同社のWebサイトにとって、これまでで最も重要な日となりました。この新しいプラットフォームの功績をCorbridge氏は次のように評価しています。「以前のバージョンやインフラでは、3分の1の成果も達成できなかったでしょう」

Boots社はデジタル・トランスフォーメーションを遂げたことで、以下のように著しい成長率を示しています。

  • 収益は年間54%以上、2年間で115%以上増加。
  • 企業の顧客基盤は45%以上拡大し、注文は年間42%以上増加。
  • コンバージョン率は年間16%以上、 2 年間で43%上昇。
  • 平均注文額は年間で8%以上、2年間で13%以上の増加。

飛躍的なパートナーシップ

Boots社のチームは、試行錯誤を重ねながらも、所期の変革目標はすべて達成したと言えるかもしれません。モダナイズされたインフラの導入によって、Boots社のデジタル拡張性とeコマース機能は無限に広がっているようです。この伝統的ブランドの次なる展開は何になるのでしょうか? 強固な基盤を持つCorbridge氏と彼のチームは、新しい支払いとチェックアウト・プロセス、新たに設計されるモバイル・アプリ、IBMが参加するデジタル・ストアの取り組みなど、いくつかの新しいプロジェクトを視野に入れられるようになりました。

「IBMは、モダナイズされた新しいインフラストラクチャとツールを提供するだけでなく、継続的に構築できる環境も提供してくれました。これは、チーム間のコラボレーションがうまくいったことの証しです。これは1回で終わるものではありません。今後も継続するものであり、今後のパートナーシップの可能性は飛躍的に広がっています」と、Corbridge氏は語っています

製品・サービス

Boots社のロゴ

Boots UK社について

1849年に設立されたBoots社(ibm.comの外部へのリンク)は、英国大手の薬局主導の健康と美容の小売業であり、Walgreens Boots Alliance, Inc.の小売薬局国際部門に属しています。この小売りチェーンは2,460店舗以上、約51,000人の従業員を抱えています。Boots社は小売薬局の世界的なリーダーであり、医薬品を調剤し、利用しすやく高品質のケアを提供することで、日々何百万人もの生活に影響を与えています。

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2022年5月

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