経営課題である、サービス提供のスピード向上、ITコストの削減、より一層の安定稼働、事業継続性の向上という4つの課題をすべて解消できました。特にアクティブ・アクティブ構成により、フルバックアップシステムを作るのに比べ、大幅な導入コスト削減を実現しています

—株式会社みずほ銀行 IT・システム統括第一部 部長 加藤昌彦氏,

Business Challenge story

みずほダイレクトのシステムが15年を経て複雑化

みずほダイレクトは、PCやスマートフォンなどから、残高照会や入出金明細照会、振込、振替、取引結果確認などの機能を利用できるサービスです。現在、会員数は約1000万人で、年々利用率が向上。2008年には店舗に来店する顧客とインターネットを利用する顧客の割合が逆転し、現在では1.7倍以上の差になっています。

みずほ銀行 IT・システム統括第一部 部長 加藤昌彦氏は、「近年スマートフォンからの利用率が高く、約30%がスマートフォンからの利用です。利用者の増大や新サービスの追加などに対応するために、システムの改変を繰り返してきましたが、そのためにシステムが複 雑化する中、開発のスピードを上げていかなければならないという課題を抱えていました」と話します。

インターネットを利用したサービスは、いまや各銀行の主戦場です。他行が新サービスを提供する場合に、みずほ銀行がどれだけ短期間かつ低コストで新サービスを実現できるかが重要であり、この競争に耐えられるシステム基盤を構築することが必要でした。そこで、みずほダイレクトのシステム基盤を刷新することを決定しました。

みずほダイレクトのシステム基盤の刷新にあたり、対応すべき経営課題は、大きく4つありました。1つ目がみずほダイレクトの商品やサービスの提供スピードを向上させること、2つ目がITコストを削減すること、3つ目がより一層の安定稼働を実現すること、そして4つ目が事業継続性を向上させることです。

加藤氏は、「システムに障害が発生しないことはもちろんですが、障害が発生した後の迅速な対応も重要なポイントでした。またデータセンターの被災に備えた、事業継続性の向上も不可欠でした」と話します。

    Transformation

    みずほ銀行、みずほ情報総研、日本IBMの3社で新しい技術を導入

    みずほ銀行では、2012年3月より新しいシステム基盤の検討を開始。2012年9月にIBM zEnterprise EC12とLinux、DB2を組み合わせたIBMテクノロジーの採用を決定します。

    加藤氏は、「今回採用した構成は、日本では前例がなかったので、すでに導入している米国の大手金融機関をIBMに紹介してもらい、話を聞いて、実際の運用現場を調査することで判断材料を得ることができました」と話します。

    システムの基本設計から構築、テスト、稼働までの一連の作業は、みずほ銀行、みずほフィナンシャルグループのみずほ情報総研株式会社(以下、みずほ情報総研)、および日本IBMの3社で実施。みずほ情報総研の主導のもと、IBMがシステム構築を担当し、新しいフレームワークやRDBMSの導入などではIBMがグローバルなサポート体制を確立。サービスイン時には、カナダのDB2担当者とドイツのLinux担当者が来日して万全の体制でサポートしています。

    今回、構築したシステム基盤の最大の特長は決済系システムでありながら、アクティブ・アクティブの両現用構成により導入コストを大幅に削減しながら、IBMの「高可用性災害時リカバリー(HADR)」機能とQ-Replicationを利用した耐障害性の高いシステムを構築でき、障害や災害発生時の事業継続性も向上できます。

    みずほ情報総研 常務取締役 向井康眞氏は、「アクティブ・スタンバイ構成では、片系がスタンバイ状態なので、100の能力が必要な場合に100+100のシステム資源が必要になります。アクティブ・アクティブ構成では、50+50の能力でシステムを構築できるので導入コストを半減できます」と話します。

    ただしアクティブ・アクティブ構成で、片系が止まってしまった場合には、その処理をもう一方に移して稼働するために能力が半分になってしまいます。システムを長期間復旧できない場合、半分の能力で運用し続けるのは困難なことから、CPUを活性化することで処理能力を拡張できる「キャパシティー・オンデマンド」の機能をオプションとして追加できることも重要なポイントでした。

    加藤氏は、「インターネットの世界では、アクセス数を予測することが難しく、アクセス数が急激に増えることも考えられます。そのような場合にも、ハードウェアを追加することなく、あらかじめ決められた範囲までであればCPUの活性化を行うことで能力の対応ができるので、運用していても安心感があります。また、アクティブ・アクティブ構成のセンター間でどれくらいの遅延が発生するのかがポイントでしたが、米国の金融機関を視察したときに、実際にシステム構築にかかわった担当者の話を聞けたので、安心して導入することができました。今回、構築したシステムは、レスポンスが従来のシステムより逆に早くなっています」と話します。

    また、みずほダイレクトのアプリケーションに関しては、アーキテクチャーも見直し、共通化できる部分は共通化し、使用しないモジュールは破棄することで最適化しています。みずほ情報総研 銀行システムグループ 決済・チャネル系システム事業部 事業部長 中條洋次氏は、次のように話します。

    「今回、RDBMSやアーキテクチャー、フレームワークを見直したことから、アプリケーションを抜本的に見直すことが必要でした。最終的には、7割程度のアプリケーションを作り直しています。またお客さまのサポートや会員登録などのバックオフィスで利用するアプケーションは、ほぼ100パーセント作り直しています」。

    今回、ワンストップのグローバルサポートが迅速に提供されることを評価してDB2の採用を決定しています。加藤氏は、「システムに問題が発生するとお客さまに多大なご迷惑がかかるので迅速な対応が必要です。従来のシステムでは、問題解決に時間がかかる場合があり、システムのアーキテクチャーの見直しが必要ではないかという議論がありました」と話します。

      Benefits

      IBMテクノロジーの採用で4つの経営課題を解決

      今回、古い開発フレームワークから、IBMが提供する業界標準のWACsという開発フレームワークに移行しています。新しい開発フレームワークを採用したことで、開発要員の調達が容易になり、人件費や人材育成を含む開発コストを削減できます。これにより、今後のシステム開発の生産性を大幅に向上させることが期待されます。

      また、安定稼働と事業継続性の向上に向けて、以前は本番環境とバックアップ環境を構築し、さらに開発環境を用意していたために、非常に多額のコストがかかっていました。今回、アクティブ・アクティブ構成を採用したことで、メインセンターとバックアップセンターのマシンを常時稼働できるので総保有コスト(TCO)を大幅に削減できました。

      加藤氏は、「経営課題である、サービス提供のスピード向上、ITコストの削減、より一層の安定稼働、事業継続性の向上という4つの課題をすべて解消できました。特にアクティブ・アクティブ構成により、フルバックアップシステムを作るのに比べ、大幅な導入コスト削減を実現しています」と話します。

      「ほとんどを作り直しフレームワークで標準化したことで、トレーサビリティーが大幅に向上しています。これによりお客さま対応が迅速にできることはもちろん、インシデント発生時の迅速なトレースも可能になります。経営トップからの要求をすべて満たした、すばらしいシステムを構築できたと思っています。苦労して作り直したかいがありました」(加藤氏)

      今回、約4万本のアプリケーションの作り直しを実施していますが、これだけの作り直しをすると、一般的にはさまざまな初期トラブルが発生してしまいます。中條氏は、「アプリケーションの作り直しのリスクを最小化することを目的に、IBMからさまざまなツールを提供してもらいました」と話します。

      例えば、旧システムのプログラムからの仕様書作成を支援するツールや、旧システムのプログラムと新システムの機能の差異をなくすため、新旧プログラムのテスト結果の差分チェックを行うツールなどです。これらのツールを活用することで、高品質なプログラムを短期間で開発することが可能になりました。

      中條氏は、「お客さまが利用するフロントエンドのアプリケーションだけではなく、バックオフィスでお客さまの問い合わせ対応を行うためのアプリケーションにも適応できました。バックオフィスのアプリケーションも古い仕組みでしたが、新しい開発フレームワークでウェブ化することで、保守の一元化と操作性の向上に加え将来営業店展開を容易にする基盤を実現できました」と話します。

      また加藤氏は、「みずほダイレクトの役割として、銀行の決済系システムだけでなく、マーケティングのためのオムニチャネルの1つとして活用できる基盤を実現することも必要でした。新しいシステムでは、お客さまの操作履歴のログを収集し、それを分析してマーケティングに生かす基盤も実現できました」と話します。

       

      将来の展望

      みずほダイレクトのノウハウを次のサービス刷新に生かす

      みずほダイレクトのシステム基盤刷新の成功により、スピード感のある開発が可能になりました。今後はほかのシステムへも同じシステム基盤を適用することが検討されています。

      今後の取り組みについて加藤氏は、「これで終わりではなく、今回得た知見やノウハウを、法人インターネットバンキングやテレフォンバンキングなどに適用していく計画です。特に前者は、データベースがみずほダイレクトよりも複雑なので、今回培ったノウハウは重要です。今後も最新情報やノウハウの提供も含め、グローバルのサポートをIBMに引き続き期待しています」と話します。

       

      お客様情報

      みずほ銀行では、預金業務、貸出業務、商品有価証券売買業務、有価証券投資業務、内国為替・外国為替業務、インターネットバンキング、宝くじに関する業務など、グループの総力を集結して、最高水準の金融サービスをグローバルに展開しています。

       

      テクノロジープラットフォーム

      ハードウェア

      • IBM zEnterprise EC12

      ソフトウェア

      Solution Category

    • Other
      • DB2 for Linux, UNIX and Windows
      • FSS: Banking - Back Office - Core Systems Transformation