Business Challenge story

課題は新サービスへの柔軟な対応と既存システムへの影響の最小化

大和総研ビジネス・イノベーションでは金融機関のお客様向けのサービスをはじめ、通信会社、官公庁、一般企業などのお客様向けに幅広いサービスを提供しています。 証券会社向け業務システムは1985年からApplication Service Provider(ASP)サービスとして提供してきましたが、ASP事業の売り上げを伸ばし、新規顧客を開拓したいというビジネス目標に向けて、現行システムはいくつ かの課題を抱えていました。 システム刷新の背景について、ITイノベーション事業本部 副本部長の小野智彦氏は次のように説明します。

「サービス開始から20年以上が経過し、画面は更新しても、歴史を感じるようになり、お客様からもそのような指摘が多くなってきました。また、証券会社のビジネスは、従来の業務範囲からFX(外国為替証拠金取引)、ファンドラップ、Separately Managed Account(SMA)といった新サービスへの参入傾向が強まっており、新たなサービスを始めたいとお考えの証券会社様に、いかに応えていくかが課題でした。一方、既存システムへの影響や付随するコストの最小化も求められ、膨大な既存プログラムを抱えるシステムの作り変えは容易ではありませんでした」

Transformation

SOA の考え方に基づいた徹底的な仮想化とユーザー利便性の飛躍的な向上

2007年5月、大和総研ビジネス・イノベーションとIBMは、証券会社向け業務システムの刷新に関するプレス・リリースを行い、環境変化に対するシステムの拡張性や柔軟性、他システムやパッケージとの接続性の向上、既存資産の有効活用や基幹系への影響の最小化といった課題に対し、SOA(サービス指向アーキテクチャー)を採用すると発表しました。

「新規セグメント、新規顧客を開拓し、売り上げ増につなげたいという要望に対してシステムを一から作り直す場合には、要員の確保や再構築中に凍結した仕様の追いつきに膨大な作業と開発費が発生します。そして何よりも、処理が正しく行われているかを確認する作業が大変で、リスクは増大する一方になります。業務処理自体は、現行システムで正確に行われており、すべてを作り直すことは逆にデメリットしかない、と結論づけました」と小野氏は語ります。この解決策としてIBMは既存のアーキテクチャーやシステムに大きな影響を与えない仮想フロントエンドや仮想バックエンドの実現をはじめ、グループおよび外部企業との連携の必要性を提唱しました。

計画フェーズから1年半で画面とオンライン帳票を一新し、ユーザー利便性を向上させること、膨大な現行ホスト・システムに対する修正は最小限にとどめ、レガシー・トランスフォーメーションの考え方でラッピングすること、新規に再作成する機能はSOAとしての再利用を目指しサービス化すること、そしてその結果、これらを実現するマルチチャネル・トランスフォーメーション型の基盤が採用されました。

新規開発部分の移植性を考慮してLinuxを選択、開発言語にはJavaを採用

「証券業務システムはここ10年の間でも、1日の出来高は4億株弱から30億株強と、10倍近い変動を見せています。1日の中でも市場で成立した注文が戻ってくる寄り付き、引けのわずか5~10分の間に多量のトランザクションが発生します。また市場性の高い商品に対する投資家からの注文を即時に市場に届けるため、処理の高速性も求められます。証券バックオフィス・システムとして、全投資家の全保有銘柄を評価するという大量のバッチ処理への対応も必要です。このように、高速・大量処理と安定稼働といった要件を同時に満たすのは、CPU使用率が90%以上の高負荷状態 でも安定稼働し、一時的なワークロードの増大にもシステム停止せずに能力増強できるIBM System zでした」と小野氏。

IBM Rational Performance Testerによる高負荷テストでもLinux on System zの安定稼働は実証済みです。フロント、バックの接続基盤としてのMCT/CISはLinux on System zを採用し、既存の証券業務基幹系と同一プラットフォームのSystem z上に構築し、徹底的な仮想化を実現することにより物理的なサーバー数を抑えています。また、移植性の確保も目指し、開発言語にはJavaを採用しました。印刷基盤のSuper Visual Formade(SVF)※1についても、今回のプロジェクトの中でLinux on System zに対応するとともに、各印刷コンポーネントを再利用可能なサービスとして再定義し、SOA対応にしました。各機能はWebサービスとして提供され、容易に呼び出すことができます。また、必要な機能を要求に合わせて組み合わせ、処理フローを作成できるようになっています。

※1 ウイングアーク テクノロジーズ株式会社が提供する、総合帳票基盤のコア製品

Benefits

ASPサービス提供に必要な構造と機能

今回のシステム開発の中心となったのは、証券フロントシステム開発部 部長の増田哲也氏です。 「今回のシステムにおけるチャレンジとしては、ユーザー・インターフェースの一新と同時に、新規に追加したツール・バー、メッセージ機能や印刷基盤が挙げられます」と増田氏。

ブラウザーによる画面の操作性向上を目的として、ツール・バー機能を導入しました。総合メニューのツリー形式表示、ユーザーがよく使うマイ・メニューの登録、画面名や画面コードでの画面検索、個人宛メッセージのポップアップ表示、ニュース・コンテンツ閲覧、他システムへのリンク・メニューの表示などが、どの画面からでもできるようになりました。

MCT/CISは、フロントエンド・コネクター、チャネル共通論理部分、バックエンド・コネクターという構造をとることで、営業チャネルの統合を可能にするとともに、SOAの考え方に基づいて新たなチャネルや新規業務アプリケーションを柔軟かつ容易に構築できる基盤となります。また、チャネル共通ロジック部には権限管理やメッセージ機能などを配置し、認証基盤の統一化やログ管理の一元化なども実現しました。

将来的には、ここに現行の業務処理を配置することも可能であり、段階的な業務処理の再構築も可能となります。接続したいサービスを問わず、実現したい業務の選択肢を増やす、まさにASPサービスを提供するのに必要な構造と機能だと言えます。

 

将来の展望

相反する課題の克服と新システムによるサービスの拡充

2008年10月、この新システムは「Financial Plate」としてサービス・インしました。今回の刷新により、次世代の金融サービスを支えるIT基盤の条件である、「さまざまなシステムと柔軟に接続しながらも、信頼性を犠牲にしない」という相反する課題を克服し、コンサルティングとITを組み合わせた「ソリューション」の提供という新たな取り組みが始まります。例えば、イベント・ベースド・マーケティング、統合CRMやコンプライアンス・チェック、あるいは他のシステム間とのSOA連携など、柔軟なシステム連携を行いながら再利用性の高いシステムを開発します。そして、お客様が必要とするサービスを必要な分だけ、標準化されたインターフェースで呼び出してご提供できるシステムとなりました。

これからは「多数存在する、数十のユーザーから成るようなニッチなマーケットに向けたサービス」へのシフト、Web2.0、Software as a Service(SaaS)への対応や連携も求められます。

「私どもの目標実現に向けて、今後もIBMのSOAアーキテクチャー、SOAソリューション、SOA製品群に加え、エンタープライズ向けクラウド・コンピューティングである次世代エンタープライズ・データセンターなど、IBMに期待しております」と小野氏は、締めくくりました。

 

お客様情報

証券、銀行、保険などの金融機関、ならびに通信、流通などの一般事業会社のほか、官公庁、地方公共団体など、幅広い分野のお客様に対して情報システムサービスを提供しています。システムコンサルティングをはじめ、システム設計から構築、保守に至るシステムインテグレーション、およびシステムの運用、管理、改善を担うデータセンターサービス、また、それらを統合的に提供する共同利用型サービスやアウトソーシングサービスまで、ワンストップでのトータルサービスを特徴としています。

 

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