Business Challenge story

整備のさらなる高品質化に向けて業務プロセスの再構築に着手

世界トップクラスの航空輸送を誇り、24時間365日の安全運航を使命とするJALにとって、整備の高品質化は終わりなき課題であり、事業基盤そのものの強化を意味します。世界のどこかで常時100機以上が運航を続けていることからも、整備の現場におけるトラブルは運航の遅れや欠航に直結しかねません。当然ながら、整備システム上のトラブルは重大なリスク要因となるため、機能面でも運用面でも、極めて高い信頼性、可用性が要求されます。

しかし、約30年にわたり手組みで構築されてきた整備システムは、どれもこの先の運用に限界が見え始めており、その数も大小含め100システムほどになっていました。しかも個別最適化されたシステムは相互連携が脆弱で、とても整備業務全体を俯瞰できる状況にはなかったのです。

そもそも同社が保有する約160機もの航空機に対し、約460基のエンジン、約50万個の装備品があり、これらの整備を適切なタイミングで実施するとなると、複雑なプロセスを伴います。もはや既存システムでは限界と判断した同社は、業務プロセスの再構築を決意し、2005年4月に「DREAM Maintプロジェクト」を発足させました。

同社整備本部 整備企画室 部長の鈴鹿 靖史氏は、「遅延ゼロ、故障ゼロが最終目標ですが、システム間の連携を人間が補おうとすると、ヒューマン・エラーの発生につながります。さらなる安全性と精度の高い運航管理を目指す上で、システム統合は必然の選択でした。ただし、単なるシステム更新ではなく、仕事のやり方を変えることが一番の目的です」と語ります。

Transformation

抜群の信頼性と柔軟性への期待から迷うことなくIBM System xを採用

個別最適から全体最適へ、さらには単なる改善ではなく改革へと踏み出した同社は、プロジェクトの発足に先立ち、1年以上前から具体的な検討を開始。システム統合を大前提に着目したのが、グローバルで航空機整備業務全般に実績のあるSAP ERPでした。業務改革を伴う大規模なプロジェクトを覚悟していた同社は、プロトタイプを作成し、導入後の活用イメージを伝える“ロードショー(社内向けデモ)”を実施。早い段階で現場の理解と賛同を得るなど、万全の体制で準備を進めていきました。こうして整備本部全体で導入への機運が一気に高まり、SAP ERPの導入が決定したのです。

一方で、基盤となるプラットフォームの選定においては、主に2つの点が重視されました。1つは“超ミッション・クリティカル”な業務を支える可用性、もう1つは確実なシステム構築です。これらの要件をもとに、コストやパフォーマンスなども含めて総合的に評価した結果、ソフトウェアにはMicrosoft Windows Server 2003とMicrosoft SQL Server 2005の組み合わせを、ハードウェアには信頼性と柔軟性への期待から、ハイエンドx86サーバーIBM System xを採用。同社JAL ITセンター マネジャーの安達 靖人氏は、その理由をこう語ります。

「同様の構成で先行導入したシステムでも、障害によるシステム・ダウンはゼロ。安定稼働にはまったく問題のない組み合わせであると確信していました。今回はそれ以上に高い可用性が求められることを考慮しても期待値は高かったですね。特にIBMSystem xについては、オープン系ミッション・クリティカル・システムでの信頼性や堅牢性、保守性、管理性を評価していましたし、コスト・パフォーマンスも高い。さらに構成変更が容易で、変化するプロジェクトの要求にタイムリーに応えられる点が決め手となりました。最小限の構成で導入し、必要に応じて能力を増強していくことで、投資の最適化にもつながります」。

IBM System xの柔軟性の高さは、その設計思想であるX-アーキテクチャーがもたらす価値の1つ。同社は過去のプロジェクト経験から、稼動後の拡張ニーズへの対応や変化への即応性だけでなく、テスト環境の構築やデータ移行など、構築段階での作業の効率化までを見込んでIBM System xを選択したのです。

Benefits

世界最大規模の整備業務システムに早くも未知数の可能性を実感

航空機整備システム「JAL Mighty」が本稼働を開始したのは2008年11月。SAP ERPの19モジュールを使用し、100種類ほどある既存システムのうち、メインとなる40システムを統合。登録ユーザー数約5,000名、ダイアログステップ数も14万 / 時間と、SAP ERPベースとしては世界最大級です。本番環境の具体的なハードウェア構成としては、SAPERPへのログオン認証を行うSAP EP用サーバーには可用性と柔軟性を兼ね備えたハイエンド・サーバーIBM System x3850を2台、SAP ERPのAPサーバーにはパフォーマンスと信頼性に優れたミッドレンジ・サーバーIBM System x3650を6台、同DB/CIサーバーには高度な拡張性を発揮するハイエンド・サーバーIBM System x3950を2台。それぞれに、あらゆるレイヤーで冗長化構成を実現しており、その他、SAP環境の運用管理ツールであるSAP Solution Manager用サーバーやBIツールのSAP Business Objects用サーバー、アーカイブ・サーバー、さらにはテスト環境などを合わせると、IBM System xシリーズ計51台が稼働しています。

稼動開始から約半年、新システムはトラブルもなく安定稼動を続けており、計画停止を含めても、その可用性の高さは期待を上回るものです。同社ITサービス企画室 経営サポートグループ マネジャーの鎌仲 義久氏は、「当初から障害がないことに加え、計画停止の極小化が目標でした。SAPアプリケーションの保守に当てる週次の計画停止も、主にセキュリティ・パッチ適用を目的とした月次の計画停止も、想定していた時間より大幅に短縮されています」と説明します。

ひとまずシステムの可用性を実証できたことは大きな成果ですが、これは最終目標ではなくスタートラインに過ぎません。同社は「JAL Mighty」によって、さらに多くの価値を手にしようとしています。第一に、システム・レベルでのコスト削減効果は絶大で、ハードウェア・コストのみでなく維持管理コストについても大幅な削減が見込まれています。また、他のシステムと監視や運用の仕組みを共通化したことで、担当者の負荷も軽減されつつあります。さらに長期的な視点で期待されるのが、本来の目的でもある業務レベルでの効果です。 「散在していた業務データの一元化により、取得できる情報の量もスピードも格段に向上し、たとえば整備履歴を予防整備に役立てるとか、在庫を最小化しつつタイムリーに部品を供給するなど、出来ることがどんどん増えています。ERPの定着化とともに整備士の意識改革が進み、少しずつ仕事のやり方が変わっていけば、自ずと整備グループ全体で品質が向上していくでしょう」と鈴鹿氏。組織としてのパフォーマンスを最大化し、収益に貢献するシステムへと育てること。これが当面の目標となりそうです。

 

将来の展望

今ある当たり前に挑戦することで夢のある新しい未来を開拓

テイク・オフに成功した「JAL Mighty」は、最終的にユーザー数を7,000名にまで増やし、周辺の約60システムを取り込みつつ、引き続き統合化を進めていく考えです。また2009年10月には、グループ整備会社を統合した「JALエンジニアリング」の設立が予定されています。こうした組織的な統合やダイナミックは変革には、変化への対応力を備えたダイナミックなインフラストラクチャーが欠かせません。これを実現するのが「JAL Mighty」であり、その基盤となるのがIBM System xです。

「JAL Mighty」は、ヒト、モノ、システムの連携により情報を価値へと変え、その活用を通じて整備の現場をインテリジェント化することで、コストの削減・リスクの管理・サービスの向上を実現していくことでしょう。さらに、これらは競争力の源泉へとつながっていきます。

プロジェクトのスローガンでもあった「“常識”への挑戦」が意味するように、空を舞台に新しい未来を切り拓いていくJALの姿は、“今ある当たり前”をもっとスマートにするための挑戦に他なりません。そして、IBM System xを基点とするダイナミック・インフラストラクチャーが、このJALの挑戦を支えていきます。

 

お客様情報

日本を代表するエアラインの1つである株式会社日本航空は、航空輸送事業および関連事業などを営む会社の持ち株会社として、これらの事業会社の経営管理ならびに附帯/関連する業務を行っています。

 

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ハードウェア

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