Business Challenge story

被爆患者とその家族からの相談内容をデータ化し、被爆患者の抱える問題点を明らかにするためにテキスト分析を実施したい

広島赤十字・原爆病院がIBM SPSSソフトウェアを導入した背景には、今回の調査、分析プロジェクトの責任者である、事務部医療情報管理課の課長を務める西田節子氏が業務の傍ら通っている、広島大学大学院保健学研究科での体験がありました。西田氏は、大学ゼミの中で様々なデータ分析の方法についての講義を受け、IBM SPSSソフトウェアの存在を知ったといいます。

「それまで、データ分析については何の知識もありませんでした。しかし、中でも、質的研究に活用できるテキスト分析というものがあるのを聴いて、こんな面白いデータ分析方法があるのかと思ったのです」(西田氏)

西田氏は、被爆患者とその家族などの関係者に対する同病院のサービスの改善、ひいては、患者の生活の質の向上を目的として、何らかのデータ活用、分析を行いたいと考えました。そこで、まずは総合相談支援センターに寄せられる、被爆患者とその家族の生の声をデータ化し、テキスト分析を実施することを企画、立案しました。

総合相談支援センターは、同病院内に設置された無料の相談窓口です。1日あたり、およそ10~20件の相談があり、毎年、数千件の生の声が集まります。そもそも、被爆患者には、自己負担なしで治療を受けることができるなどの医療支援が行われています。それでも、被爆患者とその家族などから多くの数の相談が寄せられる背景には、医療費だけでなく、さまざまな生活面、精神面、経済面の悩みや問題を抱えているのではないか、そうした悩みや問題は、被爆患者本人と、その家族と非被爆者では特徴的な違いがあるのではないか、といった問題意識を西田氏は持っていました。そこで、研究初年度のテキスト分析の目的は、被爆者と非被爆者の相談内容の差異を明らかにすることにしました。

Transformation

コンサルティング・サービスを受けて、IBM SPSSソフトウェアによる分析体制を構築

当プロジェクトの実施体制は、現時点では、事務部医療情報管理課の主事、島川龍載氏が分析・データ管理の現場管理者を務め、実際のデータ分析(一部、データ入力も担当)を同課の小園菜美氏、生データの入力を同課の夏秋友紀氏が担当しています。

しかし、当初は西田氏も含めて、十分なデータ分析の知識・経験がありませんでした。そこで、西田氏はIBMに連絡を取り、大学院でその存在を知ったIBM SPSSソフトウェアの導入と併せて、ゼロから分析の体制を構築するコンサルティング・サービスを受けることにしました。

「フリーの分析ツールの場合、利用時の各種サポートやトレーニングがほとんど受けられません。自分たちだけでツールの使い方を学び、利用時に遭遇するであろう、データ分析上のさまざまな問題・課題を解決するのは困難だと感じました。そこで、ユーザー・サポート、各種トレーニングに加えて、コンサルティング、アドバイザリー・サービスも充実しているIBM SPSSソフトウェア、SPSS Text Analytics for SurveysとSPSS Statisticsを導入することにしたのです」(島川氏)

こうして、総責任者の西田氏の下、島川氏、小園氏、夏秋氏から成るプロジェクト・チームは、SPSSプロフェッショナル・サービスのコンサルタントの支援を受けて、データ・マイニングの標準プロセスである「CRISP-DM(Cross-Industry Standard Process for Data Mining)」を学ぶところから始めました。

実際のデータ分析では、まず生データをどのように作成するかが課題でした。従来、総合相談支援センターでの相談内容は、応対するソーシャル・ワーカーなどによって、手書きで記録されていました。西田氏は、データ化のために、当初、相談の様子をビデオやボイス・レコーダーで記録することも考えましたが、相談内容がプライバシーに大きく関わるものであり、倫理的な観点から、患者の同意を得られないこと、個人情報管理の問題が生じることから、これらの方法での記録を断念したといいます。

そこで、ソーシャル・ワーカーの隣で、患者や関係者が話した内容を筆記する専門の担当者をつけることにして、夏秋氏を採用しました。夏秋氏は、相談者の了解を得た上で速記者に近い形で、相談内容を方言も含め、そのまま記述します。従来のように、相談内容のポイントだけを要約して簡単に記述しないのは、筆記者の主観が入ることを避けるためです。

「夏秋さんが筆記した相談内容を、私が、随時、Microsoft Excelに入力しています。1件あたりの文字数としては、数百字程度のこともありますし、複数の相談者の場合には、8000字近くになることもあります」(小園氏)

相談者の生の声をできる限り忠実にデータ化することが、価値のあるテキスト分析の結果を得るために極めて重要だと、西田氏は判断しました。また、テキスト分析において、生データの質向上に不可欠な辞書の充実にも力を注ぎました。なお、2010年度からは、話された言葉だけでなく、その時の相談者の表情や声のトーンから、どのような気持ち(感情)なのかを判断し、「感情データ」として記録しています。

Benefits

データ分析結果をまとめたプロジェクト初年度の報告書が完成

SPSSのコンサルタントのサポートを受け、病院内の体制を整備して、データ入力のところから綿密に計画・実行されたプロジェクトの初年度は、分析内容をレポートとして結実しました。2010年度以降は、データ・マイニング・ソフトウェアのIBM SPSS Modelerを導入して、病院全体に視野を広げた分析に取り組んでいます。

IBM SPSSソフトウェアの使い勝手について、小園氏は次のように話しています。「SPSS Text Analytics for Surveysは、自然文データを分析するためのツールであり、利用目的がはっきりしているので、直感的にも操作しやすいと感じています。一方、SPSS Statistics は、あらゆる分析に使える汎用的なツールですので、操作以前のところで少し難しく感じる点がありますが、統計学などの知識を増やすことでさらに使いこなせるようになると思います」

一方、島川氏は次のように語っています。「医療向けにある程度、ツールがカスタマイズされていて、テストデータを投入したらすぐに結果がわかるように分析が迅速に行えるといいですね。時間をかけて分析モデルを完成させる前に、そもそも、どのような分析アプローチが有効かをトライアルですばやく判断できるとありがたいです」

将来の展望

各種データ分析の結果を病院の意思決定に役立てたい

広島赤十字・原爆病院では、今回のプロジェクトでIBM SPSSソフトウェアを用いたデータ分析に取り組むことにより、被爆患者の抱える問題について、これまでは病院関係者が経験や勘で理解していた内容を客観的に検証することができたといいます。また、被爆患者、その関係者の生の声から有益な知見を取り出して、現場の対応や意思決定に適用するという流れが確立しつつあるようです。

今後のプロジェクトの展望について、西田氏は次のように語っています。「被爆者を含む、当病院の患者さんやその家族に対するより良い医療サービス提供のため、当病院内外の各種データの収集・分析に取り組んでいます。当病院は数年後に改築が計画されており、今後の全体、診療科別、疾病別の患者数の増減等の予測を踏まえて、最適な病床数や各種医療機器、設備導入などの意思決定にも役立てたいのです」

お客様情報

1939年に設立された広島赤十字病院の敷地内に、1956年、原爆病院が併設され、1988年の改築工事完了後に、両病院が統合されて現在に至っている。同病院は病床数646床を有し、約1,500人のスタッフ(うち医師数143名)を擁する。(2011年5月1日現在)診療科は26を数え、中でも、「血液内科」では骨髄移植手術数で全国五指に入る実績を持つ。同病院は以前からIT化に熱心で、広島県内の600床以上の大規模病院の中では、いち早く、2004年に電子カルテのシステムを導入し、2010年には、同システムを刷新した。病院内で行われる各種検査データや、患部の画像データなどあらゆるものをデータベース化して統合管理できるようになった。また、電子カルテを操作できるPC数を院内に増やすことで、医師、看護師らが、患者のデータを容易に共有できる体制を整えている。更に2008年からは地域医療支援病院としての役割を担うために病診連携ネットワークシステムを導入するなど、地域と共存できる病院経営を目指している。

テクノロジープラットフォーム

IBM Business Analytics について

IBM Business Analyticsソフトウェアは、意思決定者が信頼できる情報 ― 正確で一貫性のある包括的な情報 ― を提供することで、ビジネスの業績改善をサポートします。ビジネス・インテリジェンス、高度な分析、財務実績と戦略管理、および分析アプリケーションからなる包括的なポートフォリオは、現状の業績に関し、ビジネスアクションにつなげることのできる明確で即時性の高いインサイトをもたらし、将来の結果を予測する能力を提供します。

豊富な業界ソリューション、実績ある手法、プロフェッショナル・サービスを組み合わせることによって、さまざまな規模の組織で高い水準のIT生産性を実現し、より大きな成果をもたらすことを可能にします。

ソフトウェア

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  • IBM Hybrid Cloud
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    • SPSS Statistics