高等学校における国際/キャリア教育に、海外での経験を持つ社員の知見を役立ててもらおうと、IBMは2015年10月30日、神奈川県横浜市立南高等学校で特別授業を行いました。

教育現場で求められるグローバル・ビジネスに関する実体験

横浜市立南高等学校は2015年、文部科学省が認定するスーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)に選定されました。同校は国際都市「横浜」の特性を活かし、大学や企業、国際機関の協力を得ながら、総合的な学習の時間に「TRY&ACT」と名付けた、グローバル・リーダーとして必要な素養を育むためのプログラムを実施しています。

具体的には、1年生期には「TRYグローバル」として異文化理解を促し、ダイバーシティ(同校ではグローバル・マインドと呼ぶ)を生徒たちに身に着けさせ、2・3年生期の「ACTグローバル」では貧困や資源開発、環境保全などの社会課題をテーマに、課題解決に向けたアイデアやビジネス・プランの提案等を行います。同校では今回のIBMによる授業を、調査研究活動を中心とする「TRY」から、行動を起こす「ACT」への転換点と位置付けました。それに対してIBMは、社員による社会貢献としての海外支援活動「 コーポレート・サービス・コー(Corporate Service Corps:CSC) 」を題材に、参加した社員が講義を行う授業を企画・提供しました。

「TRY&ACT」を担当されている同校企画部研究部主任の遠藤摩樹教諭は次のように説明します。「本校のSGHのプログラムは、単なる異文化交流にとどまらない、生徒自身が考え行動する力を養う実践的な内容に重きを置いています。しかし、ビジネスに関して我々教員は素人であり、実際にグローバルでビジネスを行っている企業の力が必要です。そういった意味で、IBMさんにはグローバル企業での働き方がどのようなものなのか、生の体験談を話していただきたいと期待しました」

社員が体験したCSCの活動内容を授業の題材として提供

今回講師を務めたのは、CSCの経験者3人です。CSCは、多国籍のIBM社員十数名がチームを組み、新興国に4週間赴任し、派遣先の社会課題の解決を支援するプログラムで、横浜市立南高等学校がSGHの課題として計画している内容にも通じるものです。

講義は、1年生200人を6クラスに分け、前・後半の2部制で3クラスずつ行いました。授業の冒頭では社会貢献部門の社員が、IBMは世界175カ国で業務を展開するグローバル企業であることや、企業としてダイバーシティを重視していることなどを紹介しました。その後、各講師がCSCで取り組んだ事例について、派遣国の環境や与えられた課題を紹介し、生徒自身がそこに身を置いた場合にどのように考え行動するか、演習を織り交ぜつつ講義を行いました。

講師が派遣された国は、タンザニアが2人とインドが1人。現地で与えられた課題はそれぞれ、「ドドマ国立大学を東アフリカのICTの中核的な拠点にすること」(派遣国・タンザニア)、「タンザニア空港のサービス・レベルや収益性を高めて東アフリカ全体のハブ空港とすること」(タンザニア)、「インドで広範囲に展開する職業訓練科目をよりよいものにすること」(インド)。これらの課題に対し、5、6人ずつのグループに分かれた生徒たちがそれぞれ考え、グループ・ワークを行いました。

グループ・ワークの様子1
グループ・ワークの様子2
グループ・ワークの様子3

もし自分がグローバル・チームのメンバーだったら―。
生徒たちがグループ・ワークで課題に挑戦

最初の課題は、グローバル・チームの一員となって異文化環境で仕事を進める際の課題や工夫について。「派遣前の準備期間に週に1度、世界各国のIBM社員が電話会議をすることになったが、どうすれば円滑に進められるか」という問いに対して、生徒たちはチームメンバーが居住する国ごとの時差を想像し、会議開催の時間や曜日から悩み始めます。

あるグループは「いつも同じ時間帯に設定すると、常に同じ人の負担が大きくなるので、時間は固定しない。同様にリーダーも交替制にする」と“公平さ”を重視。一方、「日時を固定した方が日程を調整しやすいし、リーダーも同じ人がやった方がいい」と“効率性”をアピールしたグループもありました。講師は、こうした意見に対して「何を重視するかでやり方は変わってくる」と解説しつつ、実際に選んだ方法について話しました。

続いて、海外に向かう時に準備するものや、調べておくべきことについての課題も、日本と異なる環境を想像してさまざまな意見が出されました。また、現地に到着してビジネスを始める際に、現状の理解や解決策を探るためにどんな調査が必要かについての課題を考えました。誰を対象に何を聞けばいいのか。また、聞くときのポイントとして講師は「皆さんがよく聞く5W1Hがこの場合も役立ちます。それを押さえて議事録も残しておけば漏れがない上、“言った言わない”のトラブルを避けることができる―これはビジネスを進める上でとても重要なことです」と強調しました。

グループ・ワークの様子4
グループ・ワークの様子5
グループ・ワークの様子6

最後に、それぞれの講師がCSCの活動を通して感じたことを振り返り、「派遣国に対する理解も深まり、一つのプロジェクトを世界各国の仲間とともにできたことに大変価値があった。皆さんには、いろんなことに興味をもってもらいたい。海外に行くことは日本のいいところを発見するためにもいい機会になる」「自分の主張と相手の意見の尊重のバランスをとることがグローバルで働くためには必要」といった呼びかけをしました。

生徒たちからは、
「初めて聞く話ばかりで面白かった。これまで海外に全く興味はなかったけれど、グローバル企業の仕事の話を聞いているうちに、いろいろな選択肢があると感じた」「国際交流といわれても漠然とした感じがしていたが、今回の授業では具体的な課題を示してもらったので、想像しやすかった」
「普段とは違う環境に投げ込まれ、提示された課題をどう解決するかということは、特定分野に限った話ではなく、参考になった。ビジネスとして具体的な解決策を考えることはすごく大事だと思う。ディスカッションをした上で、先輩からアドバイスをいただけたことも良かった」
「なぜグローバルを目指さなくてはいけないのか、必要性があまり分からない時もあった。今回、いろんな話を聞けて、少しわかってきたかもしれない」などの感想が聞かれました。

先生からは、
「多国籍の社員がチームを組んで協働する場合、どのように意思疎通を図り、どんな準備をすべきかなど、ビジネスの現場の話を聞くことができて、とても参考になりました。こうした話すべてが「本物」であり、生徒たちの心に何らかの響きがあったと思います。今後も企業とのビジネスに関するより実践的な講義を実施して、創造力のある、志の高いグローバル人材の育成につながる活動を行っていきたいと思っています。」というフィードバックを頂きました。

IBMは、今後もこうした教育現場での支援活動を継続的に行っていく予定です。

社員の声

社員の写真

自分自身の振り返りと新たな気づきが得られるとても有意義な機会
(写真左から)
GBS事業本部 サービス事業 インダストリアル・デリバリー 第2インダストリアル・ソリューション 製造ソリューショニング推進 アソシエイトITアーキテクト 畠山園子
GBS事業本部 サービス事業.ストラテジー&アナリティクス スマーターシティ マネージング・コンサルタント 江田朋昭
GBS事業本部 サービス事業 コンサルティング・サービス.GBSコンピテンシー開発 マネジャー 板倉美和

第3回ヤング天城会議