日本IBMは、復興庁の「被災者支援コーディネート事業」を通じて、株式会社ローソン(以下、ローソン)から買い取って再生したPC 30台を東日本大震災被災地域の復興にかかわる3団体に寄贈しました。寄贈にあたっては、再生PCへのソフトウェアのインストール作業をNPO法人イー・エルダー(以下、イー・エルダーに依頼。復興庁、企業、そして、NPO法人といった、官民での連携、協力により実現しました。

震災から4年半上が経過。復興の移行を削除に合わせて、今、必要とされている支援を

東日本大震災から4年半以上が経過し、復興の状況は変化してきています。避難されている方々が当初の47万人から19万人(平成27年9月末現在)に減少する一方 、避難生活の長期化や住宅再建の本格化に伴う居住地の分散化など、新たな課題も顕在化してきています。被災地では、復興のステージに応じて、被災者の心と体の健康への支援や、災害公営住宅でのコミュニティー形成の支援といった総合的な対策が重要になってきています。
現状について、復興庁の吉田光市 統括官は次のように話します。
「『新しい東北』の創造を目指して、新たな局面を迎えつつある被災地ですが、『風化』と『風評』という2つの風との闘いに直面しています。まだまだ復興は道半ばであり、被災された皆さんにしっかりと寄り添ってさまざまな支援をしていく必要があります」

吉田光市氏の顔写真
復興庁 吉田
光市 統括官
企業においては、復興支援の継続を模索する動きがあります。
日本IBMでは、社員のボランティア活動や、東北物産を社内で販売する「企業マルシェ」の開催、復興活動を行う団体向けのプロジェクト・マネジメント研修の実施など、さまざまな取り組みを行っています。また、福祉団体や教育機関をはじめとする非営利団体に再生PCを寄贈する取り組みを2000年より行っており、延べ3,000の組織・団体にリユースPCを寄贈してきました。2014年には、中小企業の新たなIT投資を支援する「ITインフラの調達支援プログラム」をスタートさせ、企業から買い取って再生した高品質なリユースPC「IBM Refreshed PC」の一部を東北地方の復興を担う組織・団体に寄贈する施策も展開しています。

そうした中で、2014年のWindows XPのサポート切れに伴い、ローソンの社内で、ノートPCの大規模入れ替え案件が発生しました。IBMはそれに対して、PCのライフサイクルを通じたさまざまな支援を行う「PC・モバイルデバイス ソリューション」を提案。不要になったPCを買い取り、再生しリフレッシュ製品としてリユースするとともに、その一部を東北支援に生かすことを提案し、ローソンから賛同を得ました。
IBMでは再生PCの準備ができても、受け取る側のニーズや寄贈先について検討する必要がありました。

今回PCを提供したローソンも、コンビニエンスストアが地域のインフラであるという意識のもと、環境にやさしく、地域社会を元気にするための社会貢献活動を積極的に行っています。東日本大震災の発生後、避難所での仮設店舗の運営や東北産の食品の販売、募金活動など、復旧・復興のフェーズに応じた被災地・被災者のニーズにきめ細かく対応した多様な取り組みを続けてきました。
しかし、社内のすべての部門が環境保全や社会貢献に取り組めているわけではないと、同社の業務統括本部 システム基盤部 アシスタントマネジャーの阿部崇氏は説明します。
「IT部門の取り組みとしては、データセンターの電力使用量低減や、システム化による紙の使用量の削減などが思い浮かびますが、本業の中で社会貢献や環境負荷の低減に結びつく明確なテーマはなかなか見つけられません。私はIT部門の中でIT資産の廃棄処理タスク・リーダーをまかされていますが、大規模PCの入替えに伴い、多大な廃棄コストが見込まれる中、当部門としてなにかできることはないか、ずっと頭を悩ませていました」

阿部崇氏の顔写真
ローソン 阿部
崇 氏
復興庁が被災者のニーズと企業のCSR活動のマッチングをコーディネート。再生PCをパソコン教室や県外避難者への情報提供に活用

被災地では復興支援のニーズが確実にある一方、支援したいと思う企業側はその方法を見つけられずにいるという状況を受け、復興庁は両者のマッチングを図るために、2015年初に「被災者支援コーディネート事業」を発表しました。

日本IBMは、被災者支援コーディネート事業を通して、被災地で再生PCを利用するニーズがあるかどうかを問い合わせた結果、利用を希望する団体が複数あることがわかりました。最終的な寄贈先は、復興庁の推薦を受け、ローソンも加わって選定を実施。被災3県からそれぞれ1団体ずつ、「陸前高田市復興支援連絡会(岩手県)」、「NPO法人Switch(宮城県)」、「認定NPO法人たすけあいの会ふれあいネットまつど(所在地:千葉県。福島県からの避難者を支援している法人)」の3団体にそれぞれ10台ずつ寄贈されました。

復興庁で開催された贈呈式の模様1
復興庁で開催された贈呈式の模様2

 

復興庁で開催された贈呈式の模様(2015年6月17日)

今回寄贈したPCは、NPO法人イー・エルダーとの協業のもと、マイクロソフト社のMicrosoft Windows Operating SystemおよびOfficeライセンスが搭載されています。
寄贈先ではすでに活用が始まっており、仮設住宅居住者向けパソコン教室、また、県外への避難者が被災者支援関連情報を自ら検索できるようにするためのパソコン教室開催やそのための検索用、会員管理用として利用されています。

Switch
たすけあいの会ふれあいネットまつど
陸前高田市復興支援連絡会

3団体での活用風景(左からSwitch、たすけあいの会ふれあいネットまつど、陸前高田市復興支援連絡会)

ともに明日の日本を創るー。官民共同でこれまでにない社会貢献活動を実現

今回の取り組みにより、ローソンにとってはPCの適正な処分と資源の再利用が可能になり、環境負荷低減や東北の復興支援に役立てることができました。またIBMも、官民が共同することで3団体へのPC寄贈を実現できたことについて手応えを感じています。
吉田統括官は今回の取り組みを次のように振り返ります。
「今回、日本IBMの取り組みと、それに賛同したローソン、そしてイー・エルダーがそれぞれの立場で参画し、その力が合わさってこの寄贈につながったことを大変うれしく思います。復興庁では昨年度の成果を踏まえ、今年度はさらにこの再生支援コーディネート事業の体制を強化することも考えています。企業のCSR活動とのニーズのマッチング支援など、着実に今後とも進めていきたいと考えています」

復興庁が開始した「被災者コーディネート事業」は、企業のCSR活動とのマッチングにおいて、2015年7月現在11件の成果が上がっています。
日本IBMでは今後とも、社会の課題に対してIBMの技術、ノウハウ、社員のスキルを提供し、多くの協力者の皆様とコラボレーションしながら社会貢献活動に取り組んでいきます。

皆様からのコメント

ローソンの社員
左から深田裕康 氏 、高原理彦 氏、
阿部崇 氏

システム部門として被災地復興の一旦を担うことができてうれしい

株式会社ローソン

今回の再生PCの活用は、従来廃棄していたものが再生PCになることに加え、さらに被災地復興のために有効利用していただけるスキームができたことに非常に大きな意義があると考えます。
事業サポート本部 社会共生 部長 深田裕康 氏

これまで、ITシステム更改の際はIT機器をすべて廃棄していました。今回の取り組みを通じて、世の中では再生PCの利用ニーズが高いことが分かり、非常に勉強になりました。今後も可能なものがあれば役立てていき、社会や地域に少しでも貢献することができたらと考えています。
業務統括本部 システム基盤部 部長 高原理彦 氏

今までシステム部門は目に見える形での社会貢献がなかなかできなかったので、もどかしい思いをしていました。それが今回、具体的な形で被災地復興の一端を担い、寄贈先に喜んでもらえているというのは担当者としてはうれしい限りです。また、これまでどちらかというとコストの観点や、ビジネス・ニーズの目線でシステムを導入することが多かったのですが、社会や環境という新たな視点を持って考えたり、行動していくきっかけになったと感じています。
業務統括本部 システム基盤部 アシスタントマネジャー 阿部崇 氏

  • 今野純太郎氏の顔写真

    パソコンを習いたいという若者を一人でも多く受け入れたい

    特定非営利活動法人 Switch(スイッチ)

    常務理事 今野 純太郎氏

当NPOでは、2011年に障害福祉サービス事業所「スイッチ・センダイ」を立ち上げ、心に病を抱えた方々への就労支援を行ってきました。2013年には、被災地で福祉の枠で救いきれない層を支援するために「石巻NOTE」を開設しました。
その一環としてパソコン講座も行っており、今回提供いただいたPCは、その講座で使用しています。従来はPCの台数が不足しており、非常に困っていました。石巻にはパソコン講座を開いている教室があまりなかったため、パソコンを習いたいという若者を一人でも多く受け入れたいと思っています。
講座は現在、30人ほどが受講しています。もともとは、不登校や引きこもりの若者に人と触れ合ってもらうことを目的に始めた活動であるため、「パソコン教室」に足を運んでくれていることだけでも大きな進歩です。一人でも多くの子どもたちが少しでも外に踏み出せるよう、この教室に力を入れていきたいと思っています。

  • 細嶋千広氏の顔写真

    県外避難者への情報提供や心の交流の場づくりにパソコンを活用

    認定NPO法人 たすけあいの会ふれあいネットまつど

    企画広報担当 介護福祉士 細嶋千広 氏

ふれあいネットまつどは「困ったときはお互い様」の精神のもと、1998年からボランティア活動団体として誕生したNPO法人です。3.11以降、私たち市民ができることを考え、さまざまな復興支援活動を続けています。中でも、コミュニティーの再生支援を目指して仮設住宅や避難所に開いたオープンカフェ「パラソル喫茶」は、被災者の外出と仮設住宅内の近所付き合いの促進に役立っていると聞いています。
今回寄贈いただいたパソコンは、福島から県外に避難している方々への情報提供や交流の場で活用しています。千葉県松戸市では、今も250名を超える方々が避難生活を余儀なくされています。そうした方々の交流の場になればと思い、まつど東北交流サロン「黄色いハンカチ」を開きました。現在、避難者だけでなく、地元の方々との心の交流の場になることを目指しており、パソコンもその一助になるものと期待しています。
福島県の報道によると、仮設住宅も借り上げ住宅も期限を打ち切るという話も出ています。これからも一市民としてできることを追求して、避難者の皆さんの自立に少しでも役立てればと思っております。

  • 志賀真弓 氏の顔写真

    業務の効率化を力に、今後も復興支援活動を継続

    陸前高田市復興支援連絡会

    事務局長 志賀真弓 氏

当団体は、仮設住宅の自治会長さんたちの活動を支援するために発足した「陸前高田市仮設住宅連絡会」を前身とする団体です。現在はその実務を担当する現場支援員が中心となって、住民が集まる“場づくり”のサポートや、自治会が抱える課題解決の支援、市内外で支援を考える団体や個人のマッチングの促進など、住民に寄り添った活動を行っています。
今回提供いただいたPCは、支援員の日々の活動である日報や報告書の作成、住民の集まりの案内書作成・復興現場写真の紹介などに使っています。従来使用してきたPCはかなり旧型であったため、処理速度が遅い上に持ち運ぶ際にも重く、不便でした。それが非常にコンパクトになり、処理スピードが格段に向上し、業務は効率化されました。
陸前高田市では2015年9月現在、仮設住宅団地46カ所に1,500世帯が暮らしています。当初の2,000世帯からは減っているものの、仮設住宅の支援をするというニーズはまだまだ残っています。団体は今後、仮設住宅だけに特化せず、「これからの陸前高田」に必要となるサポートを続けていきます。