「THINK」のモットーは、1930年代までに世界中のIBMのオフィスや工場の至るところで目にするようになり、その10年間で社外からも注目を浴びるようになりました。一般の人々や自社の業務で「THINK」の使用を望むお客様から、象徴的な「THINK」のプレートを求める声がIBMに殺到しました。1948年、IBMは9,000枚の「THINK」のプレートを配布し、1960年までにはその数は2万枚に達しました。それ以降の数十年間、熱心で聡明な労働者というワトソンの進歩的なビジョンへの共感が広がるにつれて、「THINK」のプレートは一般的なアメリカ人の机でよく目にする装飾品となり、企業文化の不朽の定番となりました。
「私の考えでは、IBMが長年にわたって提供してきた典型的な価値はその考え方にあります」
IBMの歌
初期の段階から、IBMをテーマにした歌が企業文化に組み込まれてきました。例えば、“T-H-I-N-K”という歌は「Yankee Doodle(ヤンキー・ドゥードゥル)」のメロディーに合わせて歌われました。
「THINK」の普及
初期の「THINK」のプレートは、太字のチェルテナム体の大文字で白地に黒く印刷されていました。このプレートには2種類のサイズがありました。小さいものは長さが約17.5センチ、高さが約7.5センチで、壁に掛けるか、専用の木製スタンドに入れて机に置くように作られていました。
THINK誌
1935年6月に創刊されたIBMの社内向け月刊誌のTHINK誌は、オーギュスト・ロダンの「考える人」が創刊号の表紙を飾りました。この雑誌には、一流の研究者、科学者、政治家、実業家など、その時代の「考える人たち」による記事のほか、美術展の写真やワトソンSr.によるIBMの価値に関する論文も掲載されました。ワトソンは、THINK誌を社内で発行するだけでなく、お客様や社会的な著名人にも送付しました。1935年の総発行部数は約6万部であり、同誌発行の最後の10年にあたる1990年代までの累計は、65カ国で36万部に達しました。
エンディコットにある知識の5ステップ
ニューヨークのエンディコットにある技術研究所に1933年に開校されたIBM の研修用施設では、IBMの社員向けの多数の研修コースが開催されました。 ワトソンは、進歩は学習と熟考から生まれ、こうした知識豊富な社員が力を合わせることによりIBMが世界に極めて有益な影響を及ぼすことができるという揺るぎない信念を抱いていました。ワトソンは「知識の5段階」という概念を信奉していました。それは、「われわれは読む、聞く、議論する、観察する、そして考えるという過程を通じて学習しなければならない」というものでした。この5段階は、校舎の石段に刻まれています。
最初のTHINK Pad
「THINK」スローガンを浸透させるための新たな強化策として、ワトソンSr.は、文字を刻印した革表紙のメモ帳を製造して従業員に配るように手配しました。IBMはまた、このメモ帳をリクエストに応じて無料で提供し、1960年までに毎年約25万冊をお配りしました。このメモ帳は、1992年に発売されてベストセラーになったIBMのラップトップ・コンピューター“ThinkPad”の名前を思いつくきっかけとなりました。上の写真は、初代のTHINKメモ帳の復刻版です。