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IBM 100年の軌跡
 

ストリーム・コンピューティングの実現

IBM100 The Invention of Stream Computingのアイコン・イメージ
 

2010年10月、IBMは、コロンビア大学医療センターとの共同研究プロジェクトについて発表しました。このプロジェクトは、脳に損傷を受けた患者に起こる致死的な合併症を、従来の診断法より最大48時間早く検出できる可能性がある新たな診断法に関するものでした。脳卒中や脳損傷から回復した患者によく見られる合併症として、遅延性虚血という症状があります。遅延性虚血は、脳への血流を阻害し、しばしば回復不可能な障害や死を患者にもたらします。現在行われている診断法では、医療専門家がデータを確認し、徴候を見つけたときには、多くの場合、既に症状は進行しています。

IBMでは、コロンビア大学とのコラボレーションで、IBMの「オンザフライ(処理中の)」データ分析手法である「ストリーミング・アナリティクス」の使用により、重要な洞察をこれまでよりはるかに迅速に引き出すことに成功しています。医療の専門家は、IBMのストリーム・コンピューティング・プラットフォーム、IBM InfoSphere Streamsを使用することによって、ラボ・テストや診断の読み取りを含む200以上のさまざまな種類のデータを分析し、早期の診断につながる可能性のあるパターンを見つけることができるため、遅延性虚血などの合併症に対して、これまでより迅速に治療を行うことができます。

2011年現在、世界は2006年当時の10倍機能化されています。つまり、インターネットに接続されているデバイス数は5億から1兆に跳ね上がり、毎日15ペタバイトの新しいデータが生成されています。このような私たちの社会の急速な機能化の拡大は、膨大なデータ・の流れ(ストリーム)へのアクセスが可能であることを意味します。しかし、それらのデータの分析や活用のために私たちが用いている手法は、この拡大のペースに追い付いていません。従来のデータ分析では、私たちが問題として取り上げ、検討する対象は静的なデータ・セットですが、ストリーミング・コンピューティングでは複数の連続するストリームからデータを引き出し、リアルタイムで分析することができます。そのため、ストリーミング・コンピューティングは、複雑な問題への答えをすぐに必要とする重大な状況に役立ちます。例えば、重篤な状態にある未熟児の容体を生物医学データに基づいて監視し、致死的な感染症を検知する場合などです。

「それこそ、過去2年間のスナップショットを取るのと…ライブ・ビデオ・フィードとの違いです」IBMフェローであり、IBMストリーム・コンピューティング・イニシアチブの主任研究員であるナグイ・ハリム(Nagui Halim)はそう語り、「スナップショットはある時点で凍結されています。それに対し、ライブ・ビデオ・フィードでは、色々なニュアンスを取り込めます。部屋から出ていく子どもを追いかけたり、別のものに焦点を移したり、イメージをシャープにしたりできるのです。また、将来使用するために記録しておき、不要な部分は編集して削除することもできます」と説明しています。IBMの研究員たちは、5年の歳月をかけて、ストリーム・コンピューティングのビジョンを製品に完成させました。彼らはストリーミング・システム専用の新しいプログラミング言語、IBM Streams Processing Languageまで開発したのです。

ストリーミング・コンピューティングの能力は、日夜生み出される膨大なデータの処理に頭を悩ませている、ヘルスケア、通信、公益事業、地方自治体の交通機関、国家安全保障機関など、さまざまな業種の組織の業務を改善します。

例えば、道路網のデータと、車両の位置に関するGPS(全地球測位システム)情報を基に、対話式機能を備える地図上で交通パターンをリアルタイムで再構築できます。また、マイクロチップの生産に誤りがないか、半導体の製造ラインを分析し、もし欠陥があれば、数日ではなくほんの数分で検出することもできます。あるお客様の適用事例では、InfoSphere Streamsプラットフォームを使用して、市場データに関するメッセージを毎秒500万件処理し、金融取引における意思決定の迅速化を図っています。1メッセージあたりの処理時間はわずか数十マイクロ秒です。500万件のメッセージは、量的にはシェイクスピア全集の全テキストの10倍に相当します。これを1秒足らずでストリーミングしてしまうのです。

世界がより複雑化していく中で、私たちは複雑さを理解するツールを必要としています。これまでは過去のデータにしかアクセスできませんでしたが、ストリーム・コンピューティング・システムは、現在のデータへの扉を開いてくれます。

 

このIcon of Progressに貢献したチームのメンバー:

  • ナグイ・ハリム(Nagui Halim) IBMフェロー、ストリーミング・コンピューティング主任研究員
  • ブグラ・ゲディク(Bugra Gedik) データ集中システムおよびアナリティクス担当研究員
  • ジム・ジャイルズ(Jim Giles) InfoSphere Streams開発シニア・マネージャー