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IBM 100年の軌跡
 

コーポレート・サービス・コー

 

20日連続の雨に見舞われた2010年5月20日、ポーランドの工業都市カトヴィツェ市のピオトル・ウスゾク(Piotr Uszok)市長は、IBM社員のグループと5時間に及ぶ会議を開始しました。市長は午前3時に起床、市内各地では浸水が起きていましたが、状況はコントロール下にあると主張しました。この会議は非常に重要だったので欠席はできませんでした。グローバル経済の下でカトヴィツェ市が競争力を高めるにはどうすればよいか、世界中から選ばれたIBMチームが助言することになっていました。後日、ウスゾク市長は、IBMに関してはコンピューター分野のリーダーという予備知識しかなかったと説明しました。今、彼はこう語ります。「IBMの別の一面も知ることになりました。それは、私たちの現代社会の問題解決につながる側面を持つということです」。

カトヴィツェ市を訪問したIBM社員は、IBMの“コーポレート・サービス・コー(Corporate Service Corps)”プログラムの参加者でした。このプログラムでは、専門的な知識・スキルを持ったIBM社員の小規模チームが、1回につき数週間にわたり、経済や社会の問題を抱える世界各地の地域社会に派遣され、支援を行います。チームの使命は、リーダー育成、および事業開発を同時に実現するという企業責任に則ったものであり、IBMにおける事業目標と社会的目標の新たな統合を象徴するものです。

2008年、IBMはGlobal Citizen's Portfolio(GCP:地球市民のポートフォリオ)の一環としてコーポレート・サービス・コーを開始しました。GCPは、21世紀において、グローバルで通用する専門家および市民としてIBM社員が活躍するのを支援する、革新的なポリシーとプログラムの集合体です。コーポレート・サービス・コーの当初の目的は、スキルを磨いて新世代のグローバル・リーダーとしての成功をもたらす体験を積むことでした。2011年の初めまでに、ベトナム、インド、ケニア、ナイジェリア、エジプト、ブラジル、ルーマニアなど、20カ国近くに及ぶ100の取り組みに1,000人以上のIBM社員が参加しました。取り組んだ課題は、地域の経済開発、起業家精神の育成、交通機関、教育、政府サービス、医療、災害復興など多岐にわたっています。

その仕事のリストを見れば、コーポレート・サービス・コーが最先端の職業訓練にとどまらない、企業が社会的責任を果たす新しい形態である理由がわかります。企業の社会的責任は、長い時間を経て大きな進歩を遂げてきました。20世紀初期であれば、企業は株主に応えていればよく、富める実業家とその企業にとって社会貢献は個人的な事柄であり、主として財政的な問題でした。一方、20世紀を通じて、賢明な企業は、社会との責任ある関係の構築を自社の立場を明らかにする重要な要素と見なすようになりました。今日では、社会との関わりがビジネスにとってますます欠かせないものになっており、組織の運営方法に関するあらゆる決定に織り込まれています。

IBMは、その歴史を通じてこの進化におけるリーダーでした。2000年代に入り、IBMは新たな形態による社会参加の先駆けとなりました。ここで重要なのは、自社のテクノロジーと社員の専門知識による直接的な取り組みによって社会に利益をもたらしていることです。それゆえ、コーポレート・サービス・コー(CSC)のモデルが平和部隊であることは偶然ではありません。「これは単なる社会貢献ではありません」と述べるのは、IBMの企業市民活動および企業業務担当のバイス・プレジデントであるスタンレー・リトウ(Stanley Litow)(2011年現在)です。「リーダー育成と事業開発を兼ねており、さらに新興国の経済発展を促すものです」

CSCは、3つの側面で価値を生み出しています。地域社会における成果は、ITとビジネスの具体的な改善であり、進歩への詳細な計画です。IBM社員における成果は、世界各国の同僚や地元の住民および役人と一緒に働くことです。これは、文化と市場に関する知識を高める好機となります。さらに、多くのIBM社員にとって人生を変える体験にもなります。社会的な取り組みを推進するように彼らを駆り立て、職業上の進路にも影響を与えます。そしてIBMは、経験豊かなリーダーを獲得し、社員を触発して、新たな市場に対する洞察を得ることになります。

このプログラムの着想は、グローバルに統合された企業になるというIBMの戦略から生まれました。多くの多国籍企業と同様に、かつてのIBMは少数の幹部役員を海外に赴任させており、その期間はたいてい1~2年でした。しかし、このアプローチはコストがかかる上、影響が及ぶ範囲が限られ、獲得されたのは従来型のスキルでした。CSCの考えは、十分に体系化されていない、さまざまなビジネス環境と文化に対する真にグローバルなものの見方とリーダーシップ技術を多数の人々に植え付けるというものです。「ハーバード・ビジネス・スクールのクリストファー・マーキス(Christopher Marquis)教授(2011年現在)が実施したCSCプログラムの評価では、CSCはその目的を果たしていると判定されました。「この種のスキルはますます重要になっています。世界のフラット化が進むにつれて、あらゆる文化の違いに対処する能力がいっそう重要になります」とマーキス教授は述べています。

CSCのポートフォリオは、2008年の立ち上げ以降、着実に拡大しました。例えば、2010年にIBMはCSCプログラムの別バージョンを作成しました。このプログラムはCorporate Service Corps Executive(CSCE)と呼ばれ、より高度な取り組みのために上級の幹部役員が配属されます。その一例が冒頭のカトヴィツェ市での取り組みです。このチームは、重要な経済開発プロジェクトで市の上級職員と一緒に仕事をします。その目的は、大都市圏を世界有数のスマートな都市にすることにあります。初期のプロジェクトでは、ホーチミン市、リオデジャネイロ、中国の成都などが対象になりました。2010年、IBMはSmarter Cities Challengeも開始しました。IBMは、2011年から2013年の3年間にわたって、CSCEレベルのIBM社員のチームを100の都市に派遣すると発表しました。対象地域の半分は新興市場であり、残りの半分は先進国市場です。

2011年現在、CSCの発想はほかの企業にも広がっています。ダウコーニング社、ノバルティス社、フェデックス社などの大企業も同様のプログラムに着手しており、2010年、米国国際開発庁(US Agency for International Development)は、IBMと協力して中小企業の参加を支援する取り組みを開始しました。1960年の開始以来、平和部隊が数世代にわたる米国人を鼓舞してきたように、コーポレート・サービス・コーは多国籍企業の間にグローバルな活動をもたらし、人々、地域経済、そして地球のために広範囲にわたる利益を生む可能性を秘めていると私たちは信じています。