分散 RAID アレイのプロパティー
分散 RAID アレイには、ドライブが障害を起こした後に冗長性を維持するために使用される再作成領域が格納されます。
これは、2 つのドライブのみを持つ分散 RAID 1 アレイを除く、すべての分散 RAID アレイに当てはまります。 システム上に使用可能なドライブが十分にない場合、分散 RAID アレイを構成することはできません。 分散型RAIDアレイは、リビルド領域がアレイ内のすべてのドライブに分散されるため、 非分散型RAIDアレイ構成におけるリビルドのボトルネックを解決します。
再作成書き込みワークロードは、単一のスペア・ドライブだけではなく、すべてのドライブにわたって分散され、アレイの再作成にかかる時間が短縮されます。 分散 RAID アレイを使用すると、障害が発生するまでアイドル状態になっている別々のドライブを使用する必要がなくなります。 1 つ以上のドライブをスペアとして割り振る代わりに、すべてのメンバー・ドライブの特定の再作成エリアにスペア容量が分散されます。 データをより高速に再作成領域にコピーすることができ、冗長性がはるかに短時間で復元されます。 また、再作成の進行中、使用可能なすべてのドライブがあらゆるボリューム・エクステントに使用されるため、プールのパフォーマンスがより一様なものとなります。 障害ドライブが取り替えられると、分散された再作成領域からドライブにデータがコピーされて戻されます。 ホット・スペア・ドライブとは異なり、読み取り/書き込み要求は、再作成領域として使用されていない、ドライブの他の部分で処理されます。 再作成領域の数は、分散 RAID アレイの幅およびメンバー・ドライブのテクノロジーに基づいています。
例えば、RAID 6 ドライブを使用する分散 RAID アレイは、2 つの並行ドライブ障害を処理できます。 障害のある 2 つのドライブが再作成された後、アレイは再び、別の 2 つのドライブ障害を許容することができます。 すべての再作成領域が使用された場合、次にドライブ障害が発生すると、アレイの機能は低下します。
RAID 5 または RAID 6 アレイと同じ数の基礎となるドライブから構成される分散 RAID 1 アレイの実効容量は、通常、後者の実効容量よりも少なくなります。 ただし、容量の面では分散 RAID 5 と 6 の方が一般的に優れており、特定のワークロードに対してはパフォーマンスの面で RAID 1 の方が優れている場合があります。
サポートされる RAID レベル
システムは、分散 RAID アレイに対して以下の RAID レベルをサポートします。
再作成領域がない分散 RAID アレイの例
- 1 アクティブ・ドライブ
- 2 データは取り替えられたドライブに直接コピーされます
再作成領域がある 分散 RAID アレイの例


アレイ幅
アレイ幅( ドライブ数とも呼ばれます) は、分散 RAID アレイ内のドライブの総数を示します。 この合計には、データ容量とパリティーに使用されるドライブの数 (分散 RAID 6 のようなパリティー・ストリップがある場合)、およびデータの冗長性を復元するために使用される 再作成領域 (存在する場合) が含まれます。
再作成領域
インプレース再作成
ストライプおよびストライプ幅
ストライプ は冗長性単位 と呼ばれることもあり、アドレス指定できるデータの最小量です。 分散 RAID アレイ・ストリップ・サイズは 256 KiBです。
ストライプ幅 は、ドライブに障害が起きた後にデータが再作成されたときに、一度に書き込むことができるデータのストリップの数を示します。 この値は、冗長性単位幅 と呼ばれることもあります。 図4では、アレイのストライプ幅は5である。
ドライブ・クラス
- ブロック・サイズ
- ドライブ・クラスのブロック・サイズを示します。 有効なブロック・サイズは、512 または 4096 バイトのいずれかです。
- 容量
- ドライブ・クラスの容量を示します。
- 入出力グループ
- ドライブ・クラスに関連付けられている入出力グループ名を示します。
- RPM 速度
- ドライブ・クラスの速度を示します。 有効な RPM 速度は、7.2 K、10 K、または 15 K のいずれかです。SSD の場合、この値はブランクです。
- テクノロジー
- ドライブ・クラスのテクノロジーを示します。 以下のテクノロジー・タイプがサポートされています。
分散 RAID アレイ内の障害のあるメンバー・ドライブを交換するために、システムは、障害のあるドライブと同じドライブ・クラスを持つ別のドライブを使用することができます。 システムは、上位ドライブ・クラスからドライブを選択することもできます。 例えば、2 つのドライブ・クラスに、テクノロジー・タイプは同じでも、データ容量が異なるドライブが含まれていることがあります。 その場合、上位ドライブ・クラスは、大きな容量のドライブが入っている方のドライブ・クラスです。
システムで使用可能なすべてのドライブ・クラスに関する情報を表示するには、lsdriveclass コマンドを使用します。 lsdriveclass コマンドの出力例では、システム上の 4 つの ドライブ・クラスが表示されます。 ドライブ クラス 2 には、744.7 GB の容量のドライブが含まれ、ドライブ クラス 3 には、1.7 TB の容量のドライブが含まれます。 ドライブの技術タイプやブロックサイズは同じですが、ドライブ・クラス3はドライブ・クラス2より優れていると考えられています
lsdriveclass コマンドの出力例
id RPM capacity IO_group_id IO_group_name tech_type block_size candidate_count superior_count total_count transport_protocol compressed
0 7.0TB 0 io_grp0 tier0_flash 4096 6 6 6 nvme no
1 20.0TB 0 io_grp0 tier0_flash 512 2 2 8 nvme yes
2 744.7GB 0 io_grp0 tier0_flash 512 2 2 2 sas no
3 1.7TB 0 io_grp0 tier1_flash 512 2 2 2 sas no
低速書き込み優先順位の設定
冗長アレイが読み取り/書き込み入出力操作を実行している場合、アレイのパフォーマンスは最も低速のメンバー・ドライブによって束縛されます。 ドライブが内部 ERP プロセスを実行する場合、SAS ネットワークが不安定であるか、アレイに割り当てられている作業が多すぎると、メンバー・ドライブのパフォーマンスが通常より大幅に低下することがあります。 このような状況では、冗長度を提供するアレイが短い割り込みを受け入れて、低速コンポーネントへの書き込みや低速コンポーネントからの読み取りを回避することができます。 パフォーマンスの悪いドライブにマップされている書き込み操作は、もう一方のコピーまたはパリティーにコミットされ、その後、良好な状況で (他の障害がない場合) 完了します。 メンバー・ドライブがリカバリーすると、メンバーが低速だった間に非同期としてマークされたストリップを書きこむバックグラウンド・プロセスによって、冗長性が復元されます。
この技法は、分散 RAID アレイの slow_write_priority 属性の設定によって制御されます。この属性は、アレイの作成時にデフォルトで latency に設定されます。 latency に設定されていると、アレイは低いメンバー・パフォーマンスの平滑化を試みるために非同期になることを許されます。 charray コマンドを使って、slow_write_priority 属性を redundancy に変更することができます。 redundancy に設定された場合、アレイは非同期になることを許されません。 ただし、アレイは、冗長なパスから低速のコンポーネントに読み取りを返すことによって、読み取りパフォーマンスの低下を回避することができます。
アレイが latency モードを使用するか、redundancy モードでコンポーネントの読み取りを回避しようとする場合、システムはドライブを定期的に評価して、ドライブが再びシステムの信頼できる部分になったかどうかを判断します。 ドライブが良好なパフォーマンスを示さない場合、またはアレイ内でパフォーマンス障害を起こす頻度が多すぎる場合、システムはパフォーマンスの低いドライブの露出が続かないように、そのハードウェアを停止させます。 システムがハードウェアを停止させるのは、ドライブのパフォーマンスが低下した別の説明を見つけられない場合のみです。
分散 RAID アレイ・メンバー・ドライブの取り替え
ドライブ上の障害 LED ライトが点灯している場合、そのドライブには障害のマークが付けられ、分散 RAID アレイでは使用されなくなります。 システムは、障害ドライブが交換されたことを検出すると、障害ハードウェアをアレイ構成から自動的に削除します。 新規ドライブが適切な場合 (例えば、同じドライブ・クラスにある場合)、システムはコピーバック操作を開始して、分散 RAID アレイで再作成領域を再び使用できるようにします。