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Serial over Ethernet デバイス・ドライバー

Request for Comments (RFC) 2217 プロトコルによってサポートされている Ethernet Device Server (EDS) を使用して、仮想シリアル・デバイスおよびテレタイプ (tty) デバイスを AIX® オペレーティング・システムで作成します。

Serial over Ethernet (SoE) デバイス・ドライバーを使用すると、Request for Comments (RFC) 2217 プロトコルによってサポートされている Ethernet Device Server (EDS) を使用して、仮想シリアル・デバイスおよびテレタイプ (tty) デバイスを AIX オペレーティング・システムで作成できます。 EDS の例として、Digi デバイスや Perle デバイスがあります。 SoE デバイス・ドライバーの機能性は、実 COM (通信) ポート (例えば、2 ポート、8 ポート、および 128 ポートの各アダプター) と似ています。

EDS は、イーサネット・シリアル・サーバーまたはイーサネット端末サーバーとも呼ばれます。 EDS は、イーサネットが接続されている外付けの IBM® 以外の機器で、この機器には、外付けモデムを接続できる 1 つ以上のシリアル・ポート (RS/232) が用意されています。 Telnet プロトコルの拡張版である RFC 2217 (Telnet 通信ポート制御プロトコル) をサポートしていれば、その EDS には互換性があります。 このプロトコルを使用することによって、EDS は RFC 2217 サーバーとして動作します。 EDS は、RFC 2217 クライアント・システムからの Telnet セッションを受け入れることができ、また受信した Telnet データを COM ポートに送信できます。 COM ポートで受信されたデータは、RFC 2217 クライアント・システムに送信されます。

さらに EDS は、シリアル・デバイスの状況の変更に関する情報を RFC 2217 クライアント・システムに送信することもできます。 RFC 2217 クライアント・システムは、EDS とのフロー制御を管理し、そのプロトコルを使用して構成情報を EDS に送信します。

AIX LPAR は、RFC 2217 クライアント・システムとして動作します。 AIX LPAR は、EDS (つまり、RFC 2217 サーバー) への Telnet セッションを確立します。 次の図は、どのように AIX LPAR が仮想シリアル・ポートで EDS との通信を行うかを示しています。

図 1. Ethernet Driver Server の構成
Ethernet Driver Server の構成

Ethernet Device Server の構成

Ethernet Device Server (EDS) には一般に、構成および管理を目的とした Web ベースのインターフェースが用意されています。 例えば、Digi PortServer デバイスの IP アドレスが 9.5.80.73 であれば、Web ブラウザーに URL http://9.5.80.73 を入力することによって、構成および管理のためのインターフェースにアクセスできます。 EDS 上のそれぞれのシリアル・ポートに、TCP ポート番号が割り当てられています。 ある特定のシリアル・ポートには、EDS IP アドレスとそのシリアル・ポートに割り当てられている TCP ポート番号 (例えば、9.5.80.73:2001) への Telnet セッションを確立することによってアクセスできます。 この Telnet セッションは、SoE ドライバーによって内部的に作成されます。

AIX LPAR を構成して仮想シリアル・ポートを作成

SoE デバイス・ドライバーは、デバイスが物理シリアル・デバイス用に作成されるときと同じように、SoE アダプター (sa) デバイスおよびテレタイプ (tty) デバイスを作成するためのセマンティクスを維持しています。

仮想シリアル・ポートを AIX LPAR に作成するには、以下の手順に従ってください (以下のコマンドを入力するか、または smit soe メニュー・オプションを使用してください)。

  1. 次のコマンドを実行して、sa デバイスを作成します。 EDS の IP アドレスを指定してください。
    # mkdev -c adapter -s pseudo -t soe -a netaddr=EDS_IP_address
    例:
    # mkdev -c adapter -s pseudo -t soe -a netaddr=9.126.88.123
    sa2 Available
  2. 次のコマンド実行して、tty デバイスを作成します。 ステップ 1 でのコマンド出力に表示された SoE adapter (sa) デバイスと、TCP ポートを指定してください。
    # mkdev -t tty -s rs232 -p sa_device -w tty_port_number -a -a port_num=TCP_port
    例:
    # mkdev -t tty -s rs232 -p sa2 -w 0 -a port_num=2002
    tty1 Available
    このコマンドで、tty デバイスが /dev ディレクトリーに作成されます。 どのアプリケーションも、新しく作成された tty デバイスを使用して、EDS 上のシリアル・ポートに接続されているターゲット・デバイスとの通信を行うことができます。
注: EDS 上のシリアル・ポートはそれぞれ、固有の TCP ポートで構成されている必要があります。また、SoE デバイス・ドライバーを使用して構成された tty デバイスはそれぞれ、この固有のポートにマッピングされている必要があります。 EDS 上の tty ポートを、AIX LPAR 上の複数の tty デバイスが共有することはできません。

非同期シリアル・デバイスにわたって tty 端末装置を移動

テレタイプ (tty) 端末装置は、ある非同期 SoE adapter (sa) シリアル・デバイス (バッキング・デバイス) から別の非同期デバイスに移動することができます。 また、同じ非同期デバイス上で、ある物理ポートから別の物理ポートに移動することもできます。 AIX オペレーティング・システムでは、tty 端末装置を移動するために、smitty とコマンド・ライン・オプションがどちらもサポートされています。
注:
  • tty 端末装置固有の構成設定 (ボー・レートや実行モードなど) が、非同期デバイスへの移動の後で変わることはありません。
  • tty 端末装置は、移動操作が進行中であるときに、アプリケーションによってオープンすることも、使用することもできません。

非同期デバイスとして、実通信ポート (PCI 2 ポート、8 ポート、および 128 ポートのアダプター) または RFC2217 準拠の通信ポート・ドライバーが考えられます。 SoE デバイス・ドライバーは、EDS の列挙型です。

tty デバイスは、PCI ベース物理非同期アダプターから別の PCI ベース物理デバイスに、PCI ベース物理非同期デバイスから SoE デバイスに (またはその逆)、またはある SoE デバイス・タイプから別の SoE デバイス・タイプに移動することができます。

SoE デバイス・ドライバーの tty 端末装置が IP アドレス 192.168.1.1 で、その SoE デバイス・ドライバーの IP アドレスを 10.1.1.1 に変更する、というシナリオを想定します。 関連付けられている tty 端末装置のすべてが rmdev コマンドの実行によって完全に削除されるまで、または関連付けられている tty 端末装置のすべてが rmdev コマンドの実行によって「defined」状態になるまで、chdev コマンドを実行して SoE デバイス・ドライバーの IP アドレスを変更することはできません。 EDS によってバッキングされている SoE デバイス・ドライバーの IP アドレスを変更するには、tty 端末装置を非同期シリアル・デバイスに移動してください。

SoE デバイス・ドライバーの IP アドレスを変更するには、以下の手順に従ってください。
  1. SoE デバイス・ドライバーを IP アドレス 10.1.1.1 で作成します。
  2. smitty または chdev コマンドを使用して、IP アドレス 192.1681.1 の SoE デバイス内の tty 端末装置ドライバーのすべてを、IP アドレス 10.1.1.1 の SoE デバイスに移動します。
  3. どの tty 端末装置も使用中ではないこと、またオープン状態ではないことを確認してください。 tty 端末装置を同じ SA デバイス上で、あるポートから別のポートに移動するには、-w フラグのオプションとして新しいポート番号を指定し、chdev コマンドを実行します。 chdev コマンドの構文は次のとおりです。
    chdev -1 <tty device> -w <destionation port number>

例えば、tty 端末装置をポート 0 からポート 1 に移動するには、次のコマンドを実行してください。

chdev -1 ttyX -w 1

tty 端末装置を、あるバッキング・デバイスから別のバッキング・デバイスに移動するには、-p フラグのオプションとしてターゲット・デバイスの名前を指定する必要があります。 chdev コマンドの構文は次のとおりです。

chdev -1 <tty device> -p <destination parent>

例えば、tty 端末装置 tty0 を SA1 シリアル・デバイスから SA3 シリアル・デバイスに移動するには、次のコマンドを実行してください。

chdev -1 tty0 -p sa2

tty 端末装置を、ある物理アダプター・デバイス (例えば PCI 2 ポート、8 ポート、および 128 ポートのアダプター) から SoE デバイス・ドライバー (RFC2217 準拠) に移動するには、-a フラグで port_num 属性として TCP ポート番号を指定する必要があります。

例えば、tty 端末装置 tty0 を SA2 シリアル・デバイスから SA3 シリアル・デバイスに移動するには、次のコマンドを実行してください。

chdev -1 tty0 -p sa3 -a 2001

tty 端末装置を、ある EDS でバッキングされた SoE デバイス・ドライバーから、別の EDS でバッキングされた別の SoE デバイスに移動するときのコマンド構文は次のとおりです。

chdev -1 <tty device> -p <destination parent>

例えば、tty 端末装置を SA1 シリアル・デバイス (EDS1 によってバッキング) から SA2 シリアル・デバイス (EDS2 によってバッキング) に移動するには、次のコマンドを実行してください。

chdev -1 tty0 -p sa2

チューナブル・パラメーター

SoE デバイス・ドライバーが使用する属性のいくつかを調整するために、以下のチューナブル・パラメーターが用意されています。
  • idle_timeout: TCP キープアライブ・プローブがデバイスに送信されるまでに、SoE デバイス・ドライバーと EDS と間の TCP 接続がアイドルである時間 (0.5 秒単位) を指定します。 この値は、TCP 接続用に SoE ドライバーによって設定されている TCP ネットワーク・オプション tcp_keepidle に対応します。 デフォルト値は 360 です。
  • probe_interval: EDS への TCP 接続の妥当性を検査するために送信される、TCP キープアライブ・パケット間の間隔を 0.5 秒単位で指定します。 この値は、TCP 接続用に SoE ドライバーによって設定されている TCP ネットワーク・オプション tcp_keepintvl に対応します。 デフォルト値は 10 です。
  • probe_count: EDS との間に確立された TCP 接続の終了前に、デバイスに送信できる TCP キープアライブ・プローブの数を指定します。 この値は、TCP 接続用に SoE ドライバーによって設定されている TCP ネットワーク・オプション tcp_keepcnt に対応します。 デフォルト値は 24 です。

一般的なエラーのトラブルシューティング

EDS または SoE デバイス・ドライバーのどちらかが正しく構成されていない場合、tty デバイスが AIX LPAR 上に作成されると、その tty デバイスの状態は DOWN または ERROR になる可能性があります。 デバイス・ドライバーが正しく構成されていれば、tty デバイスの状態は UP です。 tty デバイス状態は、問題のトラブルシューティングを行うための soestat コマンドによって表示されます。

以下の理由のために、tty デバイスの状態は DOWN である可能性があります。
  • Soe デバイス・ドライバーまたは EDS で、IP アドレスまたはポート番号が誤っている。
  • ネットワーク構成またはネットワーク・トポロジーが不適切であることが原因で、SoE デバイス・ドライバーが構成されている AIX LPAR から EDS に到達できない。
  • EDS 上の同じ TCP ポート番号を使用して、複数の tty デバイスが作成されている。
以下の理由のために、tty デバイスの状態は ERROR である可能性があります。
  • RFC 2217 モードが EDS で選択されていない。 RFC 2217 モードを構成する方法を調べるには、EDS 製造メーカーの資料を参照してください。
  • 指定された IP アドレスが EDS のアドレスではなく、SoE デバイス・ドライバーが構成されている the AIX LPAR から到達可能な他のマシンのアドレスである。
注: tty デバイスは ERROR 状態からリカバリーできず、これ以降、使用することはできません。 問題を修正した後、手動で ERROR 状態の tty デバイスを削除して tty デバイスを再作成するか、または tty を defined 状態にしてから、もう一度 available 状態にする必要があります。
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