これらの平均は、より新しいデータに高い重要度を与えますが、以前のデータの影響が完全に失われるわけではありません。 スライディング・ウィンドウの方法論では、接続の存続期間全体を通じてではなく、ある時間インターバルを通じての平均を計算します。 インターバルは、指定された数の等しい時間枠から形成されます。 インターバル内の時間枠の数を指定するには、AVGSAMPMULTIPLIER を使用します。 時間枠の長さを指定するには、AVGSAMPPERIOD を使用します。 インターバルは、複数のデータ・フローを測定できるだけの長さでなければなりません。 この時間枠内に収集されるデータは、以下のとおりです。
さらに、インターバルを表す 3 つのスライディング・ウィンドウ変数があり、それらの変数を使用してスライディング・ウィンドウ平均を計算できます。 それらの変数は、それぞれの時間枠の終わりに更新されます。 それらは次のものです。
インターバルが 1 時間枠だけ移動したときは、収集したデータの最も古い時間枠を合計から減算し、最も新しい時間枠を加算することが、新しいインターバル平均を判別する 1 つの方法です。しかし、この単純な方法では、平均に対する以前の時間枠の影響がすべて失われます。 インターバル内の最も古い時間枠から収集したデータを廃棄し、その平均に及ぼす影響を完全になくす代わりに、スライディング・ウィンドウ合計から平均時間枠データが減算されます。 この方法を使用すると、最も古い時間枠データであっても、最新の平均計算に引き続き影響を (減りはしますが) 及ぼすことができます。 また、平均時間枠量を使用することにより、各時間枠の固有データを保存する必要がなくなります。 インターバル全体の合計だけを保管すれば済みます。 平均時間枠データは、時間枠が合計インターバル時間の一部分であるという事実に基づいて決定されます。 時間枠データは、現行のスライディング・ウィンドウ合計の 1/n であり、n は、インターバル内の時間枠の数です。 スライディング・ウィンドウ平均は、新しいスライディング・ウィンドウ値から導き出されます。 それぞれの時間枠の終わりに、以下の計算が行われます。
avTX = swTX * (1/n)
avRT = swRT * (1/n)
avIP = swIP * (1/n)
swTX = swTX - avTX + pTX
swRT = swRT - avRT + pRT
swIP = swIP - avIP + pRT
sliding-window round-trip average = swRT/swTX
sliding-window IP average = swIP/swTX
sliding-window SNA average = (swRT-swIP)/swTX
計算が行われた後、時間枠変数はリセットされ、次の時間枠のデータ収集が開始されます。 そのピリオドの終わりに、スライディング・ウィンドウ変数は再び新しい情報によって更新されます。 このサイクルは、接続の存続期間中、続行されます。
AVGSAMPMULTIPLIER 1 は、新しい時間枠データが追加される前に既存のインターバル・データの 100% が減算される特殊な事例です。 その結果、そのインターバルだけの平均となり、古いデータの影響は完全に無視されます。
AVGSAMPMULTIPLIER 0 は、Telnet にすべてのデータを等しく含めるよう指示する特殊な事例です。 その結果は、接続存続期間中の平均となり、これは既に入手済みです。 非常に大きな乗数を使用しても、同じような効果が得られます。
スライディング・ウィンドウ往復平均の例を以下に示します。 1 つのインターバルが 5 つの時間枠で形成されているとします。 それぞれの時間枠は 2 分です。 AVGSAMPMULTIPLIER 5 と AVGSAMPPERIOD 120 を指定します。 この例では、速い平均応答時間で始まり、その後、遅い応答時間で安定状態の値になるとします。 各時間枠について収集されるデータは、すべての応答時間の合計 (ミリ秒 (ms) 単位) と、トランザクション数 (tx) です。
時間枠 | 応答時間の合計 (ms) | トランザクション数 (tx) | 平均応答時間 (ms/tx) |
---|---|---|---|
1 | 1000 | 10 | 100 |
2 | 1650 | 15 | 110 |
3 | 2800 | 20 | 140 |
4 | 3500 | 25 | 140 |
5 | 4200 | 30 | 140 |
6 | 4900 | 35 | 140 |
7 | 5600 | 40 | 140 |
1000ms/10tx = 1000ms/10tx = 100 ms/tx
(1000-(1000*(1/5))+1650)ms/ (10-(10*(1/5))+15)tx = 2450ms/23tx = 106.5 ms/tx
(2450-(2450*(1/5))+2800)ms/ (23-(23*(1/5))+20)tx = 4760ms/38.4tx = 124.0 ms/tx
7308ms/55.7tx = 131.2 ms/tx
10046.4ms/74.6tx = 134.7 ms/tx
12937.1ms/94.7tx = 136.6 ms/tx
15949.7ms/115.7tx = 137.9 ms/tx
スライディング・ウィンドウ方式は、以前の応答時間平均の影響を引き続き組み込みます。 時間枠の数 (AVGSAMPMULTIPLIER) が大きくなるほど、古いデータが新しい平均計算に影響を及ぼし続ける時間が長くなります。 時間枠の数 (AVGSAMPMULTIPLIER) を減らすと、古いデータの強調度が低くなります。 システム管理者は AVGSAMPMULTIPLIER によって、古いデータに与える強調度を制御できます。
上記の例で、最後の 5 つの時間枠は平均応答時間がいずれも 140 ms/tx になっています。 異なる乗数の値を使用すると、7 時間枠の後に以下の結果になります。 インターバル内の時間枠の数が多いほど、古いデータの影響が大きくなることがわかります。