コマンドの説明の読み方

関連情報

それぞれのシェル・コマンドは英字順になっています。 各コマンドの説明は、いくつかのトピックに分かれており、次に続く段落に説明があります。トピックの一部 は 2 から 3 のコマンドの説明にのみ適用します。また、一部のコマンドの説明には ここで説明されていない特別なトピックが含まれていることがあります。

形式

形式 のトピックには、コマンドの形式、すなわち構文が素早く分かるように要約してあります。構文は、汎用の UNIX の使用法に適合する ように選択してあります。例えば、ls コマンドの形式は次のとおりです。
ls [–AabCcdFfgiLlmnopqRrstuWx1] [pathname …]

形式は、ユーザーがシステムに入力するコマンド行の形をとり、何を、どのような 順序で入力すべきかを示します。大括弧で囲んだ部分はオプショナルで、省略す ることもできます。正しいコマンドには、大括弧の外側の部分は、必須です。

形式は、コマンド自体の名前で始まります。コマンド名は、常に太字のフォントで示しています。

コマンド名の次にオプションがある場合は、リストが続きます。 典型的な z/OS シェル・コマンドのオプションには、ダッシュ () の後に 1 字、通常は大文字または小文字の英字が続きます。例えば 、–A または –a のようになります。
注: 大/小文字の区別は重要です。例えば、ls の形式で、–a–A は異なるオプションであり、効果も異なります。
同じコマンドでいくつかのオプションを指定する場合は、同じダッシュの後にすべてのオプション文字を置くことができます。または、1 つのダッシュの後に 1 つのオプションを置くということも可能です。または、オプションの配置の順序を換えることもできます。 例えば、以下の形式はすべて同等です。
ls -Aa
ls -a -A
ls -aA
形式行では、-a のようなオプションを太字のフォントで示します。 ls の説明では、すべてのオプションを 1 つのダッシュの後の 1 つの長いストリングで 示してあります。しかし、別の一般的なオプション形式として次のようなものがあります。
-x value
ここで –x はダッシュとその直後の 1 文字であり、value はそのオプションを使用するための追加情報を示します。例えば、次に示すのはまだソートしていない入力をソートする sort コマンドの形式です。
sort [–cmu]
[–o outfile]
[–t char]
[–yn]
[–zn]
[–bdfiMnr]

[-k startpos[,endpos]] …
[file …]

sort [–cmu]
[–o outfile]
[–tchar]
[–yn]
[–zn]
[–bdfiMnr]

[+startposition[endposition]] …
[file …]
ここには 2 つの可能性があり、sort の 2 つのバージョンのどちらが 要件を満たしているか選択する必要があったはずです。しかし、どちらを選択しても 次のオプションが用意されています。
–o outfile
このオプションは、sort コマンドに対し、どこにソート済みの出力を 保管するかを伝えます。 オプションの形式は –o で、後にスペースと outfile が 続きます。コマンド形式では、イタリック・セリフ・フォントで表されるものはすべて、ユーザーが提供する情報のプレースホルダー です。形式の説明の少し後の方で、プレースホルダーの場所に入れることになる 情報についての説明があります。sort の例で、outfile は、sort に 出力を保管させたいファイルの名前を示します。例えば、出力を sorted.dat に保管したい場合、次のように指定します。
sort -o sorted.dat
(後にコマンドの残りが続く)
sort の形式には、次の形式のオプションも含まれます。
–tchar
これも、–tchar の間にスペースがないことを除いて、今まで述べてきたものと似ています。イタリック体の char はプレースホルダーで、この場合は、任意の 1 文字を表します。sort–t オプションを使用したい場合は、次のように –t に続けて別の文字を入力します。
sort -t:

この例では、コロン (:) をプレースホルダー char の位置に使用しています。

sort 形式は、次のオプションで終了します。
[file …]

これは、1 つ以上のファイル名のリストを意味し、省略符号 (….) は、 その直前にあるものの反復を表します。上のリストは大括弧で囲まれているので、必要に応じてリストを省略することもできます。

ls の形式は次のオプションで終了しています。
[pathname …]

推測される通り、これは、ls コマンドが 1 つ以上のパス 名のオプショナルのリストで終了できることを意味しています。これと前の sort の 例との違いは何でしょうか ? パス名 (pathname で指定される) は、ファイルまたは ディレクトリーのいずれかですが、ファイル名 (file で指定される) は必ず ファイルの名前です。

コマンド行の項目の順序は重要です。 コマンド行に入力する場合、それぞれの部分はコマンド形式に現れる 順序で指定する必要があります。例外はダッシュ (–) が付いているオプションで、必ずしも形式通りの順序である必要はありません。ただし、 オプションはすべてコマンド行の正しい領域 内に入れる必要があります。例えば、以下のように指定することができます。
ls -l -t myfiles
ls -t -l myfiles
しかし、以下のように指定すると正しい結果が得られません。
ls myfiles -l -t           ***incorrect***
または
ls -l myfiles -t           ***incorrect***

などです。例えば、最後の例のように入力すると、ls は、–t をファイルまたは ディレクトリーのパス名として解釈し、コマンドはその項目の特性をリストしようとします。

特別な表記法として、 大部分のz/OS シェル・コマンドでは、 オプションをオプション以外の引数から区切るために二重ダッシュ (––) を指定することができます。 –– は、それ以上のオプションがないことを示します。したがって、実際に –t というディレクトリーがあれば、次のよう に入力できます。
ls –– –t
これにより、そのディレクトリーの内容がリストされます。

説明

説明 トピックは、コマンドが行うことについて説明します。 特に複雑なコマンドについては、このトピックは多数のサブトピックに 分かれ、それぞれがコマンドの特定の側面を扱います。

説明トピックでは、標準入力 (stdin) および標準出力 (stdout) について述べることもよくあります。 標準入力は通常、ワークステーションのキーボードであり、標準出力は通常、表示画面です。リダイレクト 処理を行うことにより、 この指定を変更できます。 リダイレクトについては、「z/OS V2R2.0 UNIX System Services ユーザーズ・ガイド」に説明があります。

シェルは、16 進数、8 進数、および 10 進数形式を以下のように区別します。
  • 0x で始まる数は 16 進数形式です。
  • 0 で始まる数は 8 進数形式です。
  • 0x または 0 で始まらない数は 10 進数形式です。

オプション

オプション』トピックでは、コマンドが使用するそれぞれのオプションについて説明しています。

『例』トピックは、多くのコマンドの説明の中にあり、z/OS シェル の使用例を示します。

提供された例を実行してみる前に、 知っておく必要があるのは、z/OS シェル が EBCDIC コード・ページ 01047 (Latin-1) を使用しているということです。 ワークステーションの キーボードから入力され、z/OS がシェルに渡した文字は、シェルが使用するコード・ページの 16 進数エンコードと同一ではありません。キーボードをカスタマイズして、これらの文字の 16 進数エンコードが シェルが使用するものと同じになるようにする必要があります。 コード・ページ変換について詳しくは、「z/OS V2R2.0 UNIX System Services ユーザーズ・ガイド」を参照してください。

環境変数

『環境変数』トピックでは、該当するものがある場合、コマンドに影響を与える環境変数のリストを示し、それらの変数が果たす目的を説明します。例えば、ls コマンドの説明には 2 つの環境変数 (COLUMNS および TZ) がリストされています。 また、COLUMNS は端末装置の幅であり、TZ にはローカル時間帯についての情報が入っていることを示しています。

ローカライズ

すべてのシェル・コマンドは、以下の特別なローカライズ変数の影響を受けます。
  • LANG
  • LC_ALL
  • LC_MESSAGES
  • NLSPATH
ローカライズ ・トピックでは、ロケール関連の環境変数がどのようにコマンドの動作に 影響を与えるかを説明しています。上記の環境変数で、ロケール情報 にアクセスすることができる ようになります。ロケール情報には、代替文字セット、代替の数値形式、通貨記号、日付と時刻の形式、および共通メッセージの国別言語翻訳など があります。ロケールは、世界中のユーザーがシェル・ユーティリティーを使いやすくする ものです。

z/OS® UNIX は、表 1 に示す IBM 提供のロケールをサポートしています。 IBM® コード・ページ 1047 を使用したユーザー作成の ロケールもサポートされます。

表 1. z/OS UNIX で提供されているロケール
国または地域 言語 ロケール名
ブルガリア ブルガリア語 Bg_BG.IBM-1025
チェコ共和国 チェコ語 Cs_CZ.IBM-870
デンマーク デンマーク語 Da_DK.IBM-277
デンマーク デンマーク語 Da_DK.IBM-1047
スイス ドイツ語 De_CH.IBM-500
スイス ドイツ語 De_CH.IBM-1047
ドイツ ドイツ語 De_DE.IBM-273
ドイツ ドイツ語 De_DE.IBM-1047
ギリシャ エリニカ語 El_GR.IBM-875
英国 英語 En_GB.IBM-285
英国 英語 En_GB.IBM-1047
日本 英語 En_JP.IBM-1027
United States 英語 En_US.IBM-037
United States 英語 En_US.IBM-1047
スペイン スペイン語 Es_ES.IBM-284
スペイン スペイン語 Es_ES.IBM-1047
フィンランド フィンランド語 Fi_FI.IBM-278
フィンランド フィンランド語 Fi_FI.IBM-1047
ベルギー フランス語 Fr_BE.IBM-500
ベルギー フランス語 Fr_BE.IBM-1047
カナダ フランス語 Fr_CA.IBM-037
カナダ フランス語 Fr_CA.IBM-1047
スイス フランス語 Fr_CH.IBM-500
スイス フランス語 Fr_CH.IBM-1047
フランス フランス語 Fr_FR.IBM-297
フランス フランス語 Fr_FR.IBM-1047
クロアチア クロアチア語 Hr_HR.IBM-870
ハンガリー ハンガリー語 Hu_HU.IBM-870
アイスランド アイスランド語 Is_IS.IBM-871
アイスランド アイスランド語 Is_IS.IBM-1047
イタリア イタリア語 It_IT.IBM-280
イタリア イタリア語 It_IT.IBM-1047
イスラエル ヘブライ語 Iw_IL.IBM-424
日本 日本語 Ja_JP.IBM-939
日本 日本語 Ja_JP.IBM-1027
韓国 韓国語 Ko_KR.IBM-933
ベルギー オランダ語 Nl_BE.IBM-500
ベルギー オランダ語 Nl_BE.IBM-1047
オランダ オランダ語 Nl_NL.IBM-037
オランダ オランダ語 Nl_NL.IBM-1047
ノルウェー ノルウェー語 No_NO.IBM-277
ノルウェー ノルウェー語 No_NO.IBM-1047
ポーランド ポーランド語 Pl_PL.IBM-870
ブラジル ブラジル語 Pt_BR.IBM-037
ブラジル ブラジル語 Pt_BR.IBM-1047
ポルトガル ポルトガル語 Pt_PT.IBM-037
ポルトガル ポルトガル語 Pt_PT.IBM-1047
ルーマニア ルーマニア語 Ro_RO.IBM-870
ロシア ロシア語 Ru_RU.IBM-1025
セルビア セルビア語 (ラテン語) Sh_SP.IBM-870
スロバキア スロバキア語 Sk_SK.IBM-870
スロベニア スロベニア語 Sl_SI.IBM-870
セルビア セルビア語 (キリル文字) Sr_SP.IBM-1025
スウェーデン スウェーデン語 Sv_SE.IBM-278
スウェーデン スウェーデン語 Sv_SE.IBM-1047
トルコ トルコ語 Tr_TR.IBM-1026
中華人民共和国 中国語 (簡体字) Zh_CN.IBM-935
台湾 中国語 (繁体字) Zh_TW.IBM-937

ロケールの詳細については、ローカライズを参照してください。

ファイル

『ファイル』トピックには、コマンドが参照する補足ファイル (コマンド行で指定されていないファイル) をリストしています。 このようなファイルは通常、コマンドが必要とする情報を提供し、コマンドは操 作中にこれらのファイルをアクセスします。ファイルが見つからない場合、コマンドはその旨のメッセージを出します。

このトピックで記述されているファイルは、一時ファイル、出力ファイル、データベース、構成ファイルなどです。

z/OS XL C/C++ ランタイム・ライブラリーは、ファイルの命名規則 // (ファイル名は正確にスラッシュ 2 つで始まる必要がある) をサポートしています。しかし、z/OS UNIX System Servicesは、この規則をサポートしていません。 この規則 (//) は、特に示されていない限り使用しないで ください (c89 コマンドの説明にあるように)。 z/OS UNIX System Servicesは、POSIX ファイル命名規則をサポートしているので、ファイル名 は、スラッシュおよびヌル文字を除く文字値のセットから選択することがで きます。

使用上の注意

『使用上の注意』セクションでは、シェルを使用するときの追加の注意事項を示します。この目的は、『注意』トピックの目的と同様です (注意を参照)。 すなわち、ユーザーが見過ごしてはならない重要な情報を提供することです。 ただし、通常、注意トピックで扱う場合よりやさしい内容を扱っています。

終了値

『終了値』トピックでは、シェルが表示するエラー・メッセージについて、その原因の説明と、そのメッセージを回避するために取ることができる処置について説明します。時には、エラー・メッセージについてさらに詳細な情報が必要となり、このトピックで、別のコマンドの説明を参照するようにお勧めする場合もあります。

このトピックには、コマンドから戻される終了状況についての情報も含まれています。この状況を テストして、コマンドに実行を要求した操作の結果を判別することができます。

制限

『制限』トピックでは、シェルの操作上の制限をリストします。 制限の一部は明示ではなく暗黙に定義されていることが多く、明示的に定義された制限より低い場合があります。

移植性

『移植性』トピックには、 以下の 2 種類の情報が含まれています。
  • 既存の UNIX システム (System V、BSD) のコマンドのバージョン の可用性
  • 業界標準との互換性、例えば、POSIX.2 ドラフト規格、または X/Open 移植性ガイド バージョン 4 (XPG4**)。

注意

注意 トピックにはユーザーにとって重要なアドバイスが入っています。 z/OS シェル関連資料の、注意 トピック は、UNIX システムに慣れている人々を対象としています。z/OS シェルは、新たな POSIX 標準に主に準拠しているため、その動作は、必ずしも対応する UNIX コマンドと一致しないことがあります。『注意』トピックでは、経験を積んだ POSIX または UNIX ユーザーが戸惑いを感じるような動作の矛盾を指摘することがあります。

関連情報

『関連情報』トピックでは、説明したコマンドに関連する情報が含まれている他のコマンドの説明を参照先として示します。例えば、head コマンドの場合、デフォルトでは、head はコマンド行に指定された各ファイルの最初の 10 行を 表示します。関連情報トピックでは、tail を参照していますが、これはファイルの最後の 10 行を表示するものです。