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IBM Rational ClearCase とCadence Design Framework II の連携

電子設計自動化ドメインにおけるClearCase

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連携の全体像

半導体業界に属している組織は、増加する製品の複雑さ、上昇する設計コスト、急激な組み込みソフトウェアの使用の伸び、容赦ないイノベーションの速度から、非常に大きな圧力に直面しています。非常によくあることですが、製品の出荷計画や、製品の予算、品質目標は達成されません。電子設計自動化に携わる組織は、ハードウェアとソフトウェアのチームを協調させる必要性と、統合されたプロセス、ツールを定義する必要性を認識しています。システムやハードウェア産業のどのような製品の成功も、製品の開発過程を通じて、いかにうまくハードウェア組織とソフトウェア組織が連携し、お互いに協調するかによるので、二つの活気ある組織をまとめることは極めて重要です。

IBM® Rational® ClearCase® は、幅広くサポートされた環境の中で高度にカスタマイズ可能なプロセスモデルを実現するために、企業レベルの拡張性、柔軟性を備えた確立された構成管理ソリューションです。Cadence Design Framework II (DFII) は、電子設計自動化の分野で広く使用されているツールです。ClearCase と Cadence DFII の連携により、電子設計自動化のドメインで、ClearCase の主要な機能を利用することができます。

電子設計自動化のエンジニアは、このソリューションを、ライブラリ、セルビュー、セルフォルダ、ファイルアセット(XML データベースを含む)、PSF、電気回路設計言語(CDL)、その他、関連成果物などの設計成果物を管理するための構成管理ツールとして使用することができます。この連携は、Open Access (OA) and Common Database (CDB) フォーマットをサポートします。組織は、開発速度をより速くし、システムを途切れなく連携し、生産性の向上、および、製品化までの時間を短縮するために、ソフトウェアとハードウェアの両方の成果物を管理するための構成管理ツールとして、ClearCase を使用することができます。

電子設計自動化における企業向けの構成管理と変更管理のためのClearCase

電子設計自動化は複雑な開発活動であり、ハードウェア設計者は工程の間、様々な課題に直面しています。主要な課題のいくつかは、大規模な設計成果物を扱うことや、遠隔地のエンジニアと共同作業することや、マージ作業、データ完全性を保つ作業、変更の追跡可能性を保障する作業を避けるために、開発活動を簡素化することです。ClearCase はこれらのニーズを念頭に置いて設計されており、ダイナミックビューやアトミック性といった機能を有して構築されています。Rational® ClearCase MultiSite® は、アトミックな複製、同期をサポートしており、データの完全性を保ち、地理的に分散した開発チームにおける協調作業を可能にします。

上記に加えて、ClearCase は、IBM® Rational® ClearQuest® と連携し、ClearQuest は、ALM スキーマを含み、ClearQuest アプリケーションライフサイクル管理(ClearQuest ALM)をサポートする強化された要求変更管理ツールです。ClearQuest ALM の上に構築された変更管理プロセスは、ハードウェアとソフトウェアの両方の機能の強化や変更を同じツールの中で追跡し、管理します。変更や機能強化は一度作られると、ハードウェアとソフトウェアのどちらで修正されたかが把握されていないことが良くあるので、このような時に特に役立ちます。

この記事では、Cadence DFII とClearCase 連携の主な利点と機能について説明します。

連携の主な利点と機能

ClearCase Cadence DFII 連携は、半導体産業の人たちが、製品の開発ライフサイクルを通じて直面する様々な課題を解決するために利用可能なキーポイントになる機能を提供します。

豊富なユーザインタフェースサポート

Rational ClearCase とCadence Design Framework II の連携は、コマンドラインインタフェースからの操作だけでなく、豊富なユーザインタフェースを提供します。連携は、Cadence Library Manager、ClearCase Work Area Manager そして、コマンドラインを通じて利用することができます。

Cadence Design Framework II Library Manager

IBM Rational ClearCase とCadence Design Framework II の連携により、設計者は設計成果物に関する設計管理操作を、設計者の設計環境であるCadence Library Managerから、統合された豊富なメニュー、コンテキストメニューを通じて行うことが可能になります。設計者は、自らの設計・開発環境から離れることなく、設計成果物を管理(設計ファイル、分類ファイルのチェックアウト、修正、チェックインなど)することができます。Figure 1 は、ClearCase と連携したCadence Library Manager のスクリーンビューを示しています。

図1. Cadence Library Manager UI

ClearCase Work Area Manager 上の豊富な機能群

ClearCase Work Area Manager は、設計者に、設計者のワークフローに最も適したフォーマットで情報を提示するインタフェースを提供するものであり、連携の主要なハイライトのひとつです。これは、ClearCase 固有の情報を表示するだけでなく、これにより、ユーザは設計管理操作を行うことができます。図1で示したように、Design Manager メニュー、または、Properties(Design Manager > Properties) のBrowse Library サブメニューから、Work Area Manager を立ち上げることができます。ClearCase Work Area Manager のユーザインタフェースのスナップショットが図2に示されています。

ClearCase Work Area Manager の主な機能:

  • 全ての設計成果物について、状態、ユーザ情報、バージョン識別子、レプリカ名、構成仕様の選択規則の詳細な表示を提供します。
  • ClearCase ビューの構成を即座に変更するために構成仕様規則を編集することができます。
  • セルビューをソース管理の状態、ユーザ、タイムスタンプ、レプリカ、バージョンに基づいて整列できるようにするために、平坦なライブラリの特長により、ライブラリの中の全てのセルビューの平坦なビューを提供します。
  • 複数のライブラリ、セル、セルビューを選択し、設計管理の操作を実行することができます。
  • Show Category フィルタを選択することで、特定の分類に列挙された設計成果物への操作を集約させることができます(例えば、Pin 分類の直下に列挙された全ての設計を列挙し、一度にチェックアウトすることができます。)
  • "Check in all checked out"オプションにより、設計者はワークスペース内の全てのチェックアウトされたファイルを一度にチェックインできます。
  • ClearCase Multisite 環境では、レプリカを通じて、現在のマスターレプリカの情報やチェックアウト情報を閲覧することができます。
  • ライブラリ、セル、セルビューに対して、バージョンツリーブラウザやヒストリーブラウザといったClearCase native ユーザインタフェースを起動することができます。
  • ライブラリ、セル、セルビューに対して、ラベルを作成し、適用することができます。
  • Library Manager の"Browse hierarchy"サブメニューにより、Work Area Manager が起動し、選択されたセルビューから参照される全てのセルビューを、階層的な書式で表示します。

ノート:
設計を開くためには、Library Manager を使わなければいけません。

図 2. ClearCase Work Area Manager UI

コマンドラインインタフェース

Table 1 に示すように、連携は基本的なソース管理操作のためのコマンドラインインタフェースを提供します。

Table 1. ソース管理を操作する基本的なコマンド
ActionCommand
Check in (includes add to source control) - gdmci
Check out gdmco
Cancel checkout gdmcancel
Show file status gdmstatus
Delete gdmdelete
Roll back gdmsetdefver
Copy gdmexport

図3は、あるセルビューについてgdmcogdmstatus コマンドの実行結果が表示されているコマンドラインインタフェースのスナップショットです。

図3. ClearCase-Cadence 連携のコマンドラインインタフェース

ClearCase ダイナミックビューにより瞬時に起動するワークスペースサポート

設計ライブラリは巨大であり、それぞれサイズも異なり、ギガバイトへ拡張される可能性もあります。設計者は、たいてい一度に、ひとつのセル、または、セルビューで作業をしますが、ワークスペースをセットアップするためにはライブラリ全体をロードする必要があります。これは、ライブラリが巨大であれば、作業のボトルネックになる可能性があります。ダイナミックビューを使用することで、設計者はワークスペースに瞬時にアクセスします。設計者が作業を行うセルやセルビューは、設計者が読み込み、書き込み操作を行うときに、動的にロードされ、同時に、設計者はライブラリ全体をローカル環境へロードする必要が無く、ライブラリ全体のビューを保持します。IP の引継ぎや、テープを引き抜く段階に関する余分な付帯的コストが発生しません。これらの利点により、迅速な開発が可能になります。

アトミックなチェックインによるデータの完全性

設計者は、ケイデンスデザインライブラリの中で最も低レベルの実体である概念図、物理レイアウトのようなセルビューで作業をします。一つのセルビューは、ファイルシステム上の共同管理集合と呼ばれる複数のファイルで構成されます。セルビューの共同管理集合は、常に一つの実体として扱われるべきです。システムの整合性やデータの完全性を保つために、これら全てのファイルのバージョン数が常に同じ状態を保つことは非常に重要です。ClearCase のアトミックチェックイン機能は、全てのチェックアウトされたファイルがチェックインされるか、または、全くチェックインされないかのいずれかを保証します。これにより、システムの整合性を保障するための取り組みや時間を省き、管理コストをより少なくします。

巨大な設計ファイルのサポート

連携は、Rational ClearCase とCadence Design Framework II の32ビット、または、64ビット環境での稼動をサポートします。チップ上の複雑システムを設計開発し、64ビットオペレーティングシステムが提供するコンピューティング能力を利用したい電子設計自動化のエンジニアは、連携の64ビットモードを有効にすることで、優位な立場に立ちます。64ビットモードサポートは、Cadence Library Manager, ClearCase Work Area Manager、そして、コマンドラインの3つインタフェース全てで利用可能です。巨大な64ビット概念設計、配置設計をサポートするために、ClearCase のダイナミックビューと連携の64ビット実行モードの組み合わせにより、設計時間を高速化し、パフォーマンスを向上させます。

地理的に分散した環境でのClearCase Multisite の使用

今日では、複雑なシステムオンチップは、特定の専門性やスキルセットを持つ様々な設計者や開発者の協調した努力が必要になります。組織は、ニッチなスキルを有効活用し、生産コストを抑え、実行時間を速くし、電子産業で競争力のある優位性を得るために、地理的に分散したチームで働くことを選択しています。全世界的に分散したチームという拡散が、複雑さを増加させています。Cadence Design Framework と企業向けソース管理ツールであるRational ClearCaseの連携は、電子設計自動化の組織がClearCase Multisite の機能を活用し、地理的に分散した開発の課題に取り組むことを助けます。

電子設計自動化に携わる組織のためのClearCase Multisite の主な利点

  • 地理的に分散した開発環境において、設計と開発は複数の場所に分散します。各場所のチームは、設計者が自分の場所のデータで作業し、複数の場所の間で同期した最新の変更で作業をするために、チーム自身のレプリカを持ちます。これにより、ネットワーク遅延を軽減し、開発を速くします。
  • 電子設計自動化の設計成果物はマージすることができません。ClearCase は、マスターシップ予約チェックアウトの概念を利用して、競合を避け、ある場所でなされた変更が他の場所の他の誰かによって上書きされることを防ぎます。
  • ClearCase Multisite の機能を効率的に利用し、潜在的な問題を避けるために、全てのレプリカの状態を監視する必要があります。ClearCase は、全てのレプリカの管理を簡単にするためにWeb ベースの管理コンソールであるClearCase Global Monitor を提供します。Global Monitor は、システムがトラブルに陥ったとき、e-mail やテキストのメッセージとして通知を送るために構成することができる強力な警告システムを提供します。

複製環境におけるマスターシップの同期的な要求を通じた設計ファイルの即時チェックアウト

上記で述べたとおり、Cadence 設計成果物はマージできないバイナリファイルです。それゆえに、設計者は、重複作業を避けるため、または、データを紛失しないために、ほとんど同じブランチで作業をします。ClearCase Multisite を使用すると、もし設計ファイルのマスターシップが遠隔地で保有されている場合、マスターシップを自らの場所へ移動するための要求をしなければならず、ファイルをチェックアウトする前に同期サイクルが終了することを待たなければいけません。しかし、マスターシップの同期的な要求(SRFM)を使用すると、設計ファイルを即座にチェックアウトし、作業を開始することが可能になりますが、その設計ファイルを再びチェックインする前には、同期が終了することを待つ必要があります。ClearCase Work Area Manager を更新することで、成果物をチェックインするためのマスターシップ権限が到着したかどうかをチェックすることができます。初期状態で、チェックアウト操作のためにSRFM は有効になっている(もし、VOBでSRFM が有効になっていれば)ので、成果物のマスターシップについて心配する必要はありません。これにより、開発における待ち時間が減り、使いやすさが向上し、時間が節約されます。

構成管理ツールを標準化することによる連携作業の削減

電子設計自動化においては、ハードウェアと組み込みソフトウェア設計の両方とも等しく重要であり、並行開発や途切れない連携が要求されます。個々の設計、および、開発チームにより使用される様々なSCMツールはローカルの要求を満たす必要がありますが、システム連携が失敗し、結果として、高い製品開発コスト、リリースの遅れにつながるかもしれません。もしハードウェア設計とソフトウェア成果物の構成管理ツールが同一であれば、リリースエンジニアにとって、たくさんの痛みが軽減されることになります。成果物のラベル付けとパッケージングがより簡単になります。全ての成果物のためにClearCase をSCM ソフトウェアとして使用することで、特定のリリースやビルドにとって障害を辿ることはもはや非常に困難な作業ではなくなります。これにより、生産性の向上、市場への出荷時間の短縮につながります。

統一されたプロセスとツールを利用することでより効率的にプロジェクトを管理する

電子設計自動化におけるソフトウェアとハードウェアのチームは、構成と障害管理のために異なるツールを使用し、異なるプロセスに従いながら、サイロで働いています。そのようなシナリオでプロジェクトを管理し、調整することは、システムの全体的な視点が欠けているので、難しいです。ClearCase とCadence の連携を使用すると、ClearCase をハードウェアとソフトウェアのために共通のSCM ツールとして使用し、ClearCase とClearQuest の連携を使用することで、製品開発サイクルを通じて、プロセスとツールの標準化と、統一化につながります。これにより、管理の間接費用、インフラコストを最小化し、このように、全体のより少ない総所有コストへつながります。

変更管理を使用した追跡可能性を提供

ClearCase とClearQuest のベース連携とCadence Design Framework II を、電子設計自動化の開発サイクルをより見える化し、コントロールするために使用することができます。Rational ClearQuest は、プロセスの自動化とレポート機能も提供します。電子設計自動化の組織は、設計変更と変更依頼を関連付けるプロセスを強化することができます。

図4 に、ClearCase とClearQuest と連携するCadence Design Framework II を示します。設計がチェックアウト、または、チェックインされるとき、連携はClearQuest の変更依頼の操作との関連付けを強制します。

図 4. ClearCase, Cadence, ClearQuest 連携ビュー

図5は、ClearQuest のレコードに関連付けられたClearCase のバージョンを示しています。

図 5. ClearQuest ウェブインタフェース

まとめ

記事で述べたとおり、ClearCase とCadence DFII の連携により、急速に変化する市場における競争力を保つための主要な機能が提供され、ハードウェアとソフトウェアエンジニア、プロセス、ツール、語彙の密な調整と協調が可能になります。ClearCase とCadence の連携,および,ClearCase Work Area Manager は,設計者に豊富なユーザインタフェースを提供します。ClearCase ダイナミックビューと64ビットサポートは、開発スピードを速め、生産性を向上します。ClearCase Multisite 機能は、地理的分散開発を助け、ClearQuest との連携は変更管理システムとの追跡可能性を提供します。組織が統合されたプロセスと、ツール群をハードウェアとソフトウェアのチームに定義可能になるので、出荷とプロジェクトの管理がより簡単になります。

訳者について

熊谷賢は、東京ソフトウェア開発研究所(TSDL)のスタッフ・ソフトウェアエンジニアで、Rational ClearCase の開発を担当しています。


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ArticleTitle=IBM Rational ClearCase とCadence Design Framework II の連携
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