オープン・ソースを巡る話題

第 3 回 developerWorks に期待する役割

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コンピューター・サイエンティストの育成

「天才プログラマー」の育成を、どういうスケールでやるか。私自身は私の、社員 50 人の小さい会社でやり続けようと思っています。そのポイントは、サイエンスの部分を完全に残しておくことと、「生まれながらのプログラマーだけを採用する」、ということです。

苫米地英人コンピューター・サイエンスをリードできるプログラマーは、100 人のうち 1 人いればいいんです。実際アメリカでも、Ph.D.レベルでコンピューター・サイエンスを目指せるくらいの人の数はここ何十年変わっていません。日本はさらに厳しくて、本来の意味でのコンピューター・サイエンスの育成プログラム自体がほとんどありません。サイエンティストがいたとしても、実際は、生まれながらのプログラマーだったからしかるべき大学へ行ったのではなく、たまたま入った大学で、成績の順番で数学科や情報科学科に入ってサイエンティストになった、という人たちが多い。本来、もって生まれた才能で選ばれなきゃならない 100 人に 1 人と、たまたま大学の偏差値と、その大学の中の成績だけで選ばれた 100 人に 1 人とでは少しズレがあり、本来はそうではないはずなんです。大学を出て 2-3年して気づいてみたら自分は生まれながらのプログラマーだ、じゃサイエンティストになりたいと思って、コンピューター・サイエンス・プログラムにアプライして、その中でまた選抜されて、というステップが一応アメリカには存在しています。そういう本来の意味におけるコンピューター・サイエンティストを育てるメカニズムは、今、日本の大学の枠組みの中ではできていないし、おそらく今後もできないでしょう。そしてこのままでは、日本のコンピューター・サイエンスは永遠にアメリカより 5年遅れてついて行くしかないと私は考えています。

それをひっくり返そうと思ったら、やっぱり私の会社のようなプログラムでやるしかありません。そしてこのプログラムは、すごく簡単なんです。目の前にぶら下げてあげる。インセンティブをつけてあげる。ただ、ぶら下げる内容は、本当にいいものを探して来なければなりません。コンピューターは今、どこにでもある。もちろんそれは、IBM が思い切って 1 万台くらい、高校生たちにパソコンを無料で配ってあげたっていい。問題は、ぶら下げるインセンティブの方です。そして彼らが「こんなものができました」と発表をする場です。場合によっては添削して、理論をしっかりと教えてあげなければなりません。

developerWorks のもうひとつの意義

そう考えると、まさにこの developerWorks などは格好の場と言えるのではないでしょうか。確かにここの目的は、ひとつには開発者のための情報フォローや情報交換の場でしょう。でも、ワトソンを持っている、大和を持っている、基礎研究をやっている IBM としては、もうひとつの役割があるんじゃないのかと思います。例えば問題を出してこれを解けとか、プログラムを持って来いとか、メニューはいろいろあるでしょう。いずれにせよ、そういう場にすることが可能なんじゃないかと考えているんです。

developerWorks は情報交換の場であるかも知れませんが、私は、情報交換ならそれほど仕掛ける必要はないのではないかと考えています。例えば今、Java が流行っているでしょう。1 社が牽引したとは言っても、要は広告宣伝をしたのであって、James Gosling がコンピューター・サイエンスティストを引っ張ったわけではない。でもちゃんと Java は流行ってるわけです。また昔、私が慶應大学の藤沢キャンパスで授業を手伝っていた頃は C を教えていましたが、今は Java を教えているらしい。そういう時代ですから、つまり、ビジネスが必要を感じるのならば、放っておいても情報は勝手に交換されるんです。情報に価値があるかないかの差であって、コンピュータ サイエンスではなく、コンピュータ ビジネスなら、手に入れる労力と手に入る情報の価値を天秤にかけ、コストが明らかに価値が上回ってると思えば、どんな方法を使ってでも情報は手に入れるものなんです。

それなら、むしろ本気で取り組むべきは、これからの人を育てることではないでしょうか。本来、プログラマー、ハッカーとして生まれて来たのに、それに気がつくことなく死んで行く人たちが大量にいて、非常にもったいないんです。確率で言うならば、東大、東工大、京大あたりのいわゆる情報系学部にも、やっぱり 100 人に 1 人しかいない。でも普通の文学部 にも 100 人に 1 人いるんです、プログラマーに生まれてくるというのは全然違う才能ですから。今はなかなかそういう人を拾い上げる場というのがないんですが、それを見出して、それを鍛え上げて、業界やサイエンスの中に投げ込んで行くというひとつの役割を、developerWorks なら果たせるんじゃないかと思います。

苫米地英人氏 略歴

生年月日
1959年 9月 7日
学歴
1981~1982年 マサチューセッツ大学コミュニケーション学部
1983年 上智大学外国語学部英語学科卒業(言語学専攻)
1993年度 カーネギーメロン大学博士(Ph.D.) 研究論文: 41 編
職歴
1985~1987年 Yale 大学大学院計算機科学科助手、Yale 大学人工知能研究所フルブライト研究員
1988~1992年 Carnegie Mellon 大学(CMU)計算機科学科研究員
1990~1991年 ATR 自動翻訳電話研究所滞在研究員
超並列処理アーキテクチャーと超並列自然言語処理を研究
1992年10月 徳島大学講師(工学部知能情報工学科) 担当科目: 情報システム工学、データベース
1993年8月 徳島大学助教授(工学部知能情報工学科) 知能情報工学輪講、並列分散処理システム等
1995年1月 株式会社ジャストシステム 本社開発本部ディレクタ、東京研・基礎研所長兼務
1996年1月 通商産業省情報処理振興審議会専門委員
 4月 ジャストシステム ピッツバーグ研究所(JPRC)取締役兼務
1998年2月 コグニティブ・リサーチ・ラボラトリィズ株式会社取締役
 3月 高度情報化支援育成事業「ネットモバイル強化型の汎用動的計算機構の設計と構築」(9 情技応第 837 号)プロジェクト代表
 11月 コグニティブ・リサーチ・ラボラトリィズ株式会社代表取締役社長
 12月 先導的コンテンツ市場整備事業「使用による課金を実現する流通・供給・再利用の高度化環境の開発」(MMCA-2005)プロジェクト代表
1999年2月 先進的情報システム開発実証事業「次世代統合型ネットモバイル オンライン スーパーの実証事業」(11 情報開・実第 128 号、2-2-103)プロジェクト代表
 4月 マルチメディアコンテンツ振興協会法務委員会委員、国際交流委員会委員兼任
 12月 家庭等の情報推進化事業「次世代動的分散共有 VM 型ホームサーバシステムの開発」(11 情技応 1373 号)プロジェクト代表
2000年4月 文部省領域研究ゲノム情報科学高度化委員会委員

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