SE関のノーツ/ドミノ徒然草

第34回 あなたには知識が見えますか?

Comments

コンテンツシリーズ

このコンテンツは全#シリーズのパート#です: SE関のノーツ/ドミノ徒然草

このシリーズの続きに乞うご期待。

このコンテンツはシリーズの一部分です:SE関のノーツ/ドミノ徒然草

このシリーズの続きに乞うご期待。

"知識"に類似した用語として"データ"や"情報"がありますが、どうもそれぞれ定義があいまいでかつ狭義で使われたり、広義で使われたりして分かりにくいものです。よくナレッジ・マネジメントなどで使われる例としては、スーパーやコンビニにあるPOSで集められる数字がデータ、その数字をグラフ化したり分析したりすることで傾向などを出すのが情報、そしてそれに経験や他の観点を加味し検討を加えて商品の置き方や仕入れなどを変えることができる判断まで持っていくのが知識、などと言われています。単純に言ってしまえば知識はよりよいビジネスなどの判断ができるところまで付加価値のついた無形の材料と言えるでしょう。

ではその知識がどんな形を実際にはとるのか。最近ナレッジ・マネジメントでポピュラーな知識の形の分類の用語が形式知、暗黙知という概念です。これらはその名前のとおり、文書化されたりして形になっている形式知、文書化されるまで体系だった整理はされていないけれど判断には役にたちそうな、人の頭に漠然としまわれている暗黙知です。

さきほどのPOSの例で言えば、販売傾向などの情報を材料に、お店の店長が過去の経験などの暗黙知をつきあわせて、『次に売れるのはこれだと』とか、『これとこれを隣に置けば売れる』とか判断できることでしょう。ここにはPOSデータをいくら数学的に分析しても出てこない、日頃からお店を観察している雰囲気の情報、たまたま話しをしたお客様の一言、アルバイト店員がつぶやいていた気づき、過去の経験の蓄積からなるなんとなくの勘のような情報なども含まれることでしょう。そしてそれをレポートにまとめて本社にでもあげればそれは一気に形式知化される事となるわけです。

前回ちょっとご紹介した、コピー機修理のエンジニア達が帰社後に談話室で自分の修理のアイデアを自慢しあっている様子を見て、それをシステム化したナレッジ・マネジメントの例がありました。このシステムを企画した人は、ナレッジ・マネジメントとしてエンジニア達のどこに知識が埋もれているか、どこで生まれ交換されているかをつぶさに行動を観察していったそうです。そこで見つかったのが価値ある暗黙知の宝庫である談話室の自慢お喋りだったのです。その暗黙知を"自慢するシステム"で形式知化してグローバルに共有することで彼らのナレッジ・マネジメントは膨大なコスト回収につながったとのことです。

いかがでしょうか。このシステムの企画をした人はまさに知識がどこで交換されていて、どこで生まれているかを的確に、形がない暗黙知レベルで見つけだしたと言えるのではないでしょうか。逆に、もしこの観察がなかったらこのシステムはどうなっていたでしょうか。修理コストの削減がその目的ですから、修理マニュアルの電子化とか、すべての修理レポート蓄積データベースとかそんな既存の情報の提供レベルで終わっていたのではとも想像できます。つまりナレッジ・マネジメントシステムを作ろうとしたときに、結果として"情報"共有や"データ"共有レベルで終わる可能性もあるわけです。

数年前にグループウェアでの情報共有がブームになりました。そのときよく見かけられたのが営業報告書の情報共有でした。ただたくさんの営業報告書システムでも、中には紙のイメージと同じ上司への事務的な報告書のシステムになったりするものもありました。また中には営業マンやマネージャーの付加価値を追加できるフィールドをフォームに増やすとともに、全営業に公開することで営業マン全体の販売能力向上に寄与したものもありました。ここまで行けばそれはナレッジ・マネジメントそのものでしょう。ここにも知識はどこにあるか、どこで生まれていて誰に与えるべきか、という知識の流れが要件定義から見えるか見えないかという問題が見え隠れしているように思えます。

ある企業の研究所では80年代の後半から早くも草の根的にディスカッションシステムが自前で開発され、研究者や開発者の間で盛んにいろいろな技術論のやり取りに使われていました。ところが90年代になってもマネージメントからは理解されず、『最近仕事もしないでディスカッションシステムでお喋りしている研究員が多い』と取締役レベルからシステム利用の規制を受けたという話もあります。研究者というまさに知識集約型の職業での、創造性のための研究者間のディスカッションの必要性は最近では疑う余地のないものと言えるでしょう。暗黙知が見えないマネージメントの下の研究者は実に不幸かもしれません。

また暗黙知に限らずとも各種の報告書、つまり中身によっては形式知の集積であるものをシステム化する場合に議論になるのが文書セキュリティーでもあります。自分の部の報告書は他の部門には役にたつはずもないし、セキュリティー上見せられるものではない、という議論もよく要件定義で聞こえてきます。そのシステムの文書が公開されたときに、そこに知識があったとしたら、いったいどんな流れ方をして、どんな使われ方をするでしょうか。それが意外に報告書システムを作る当事者に見えなかったりもします。

世の中ではグループウェア、高度な検索エンジン、ポータルサイトなどといろいろなナレッジ・マネジメントと冠した製品群が次々に販売されています。情報システム部門としても経営方針であったりするナレッジ・マネジメントを実施するために、どうしてもこのような製品を導入することに興味が向きがちかもしれません。しかしながらナレッジ・マネジメントの本質である自分達の"知識"は何か、そしてどう生まれ流れているかに思いを馳せることなくそのシステムには魂が入らないとも言えるのではないでしょうか。それはまさにナレッジ・マネジメントのシステムの企画、要件定義で重要な観点であるのは間違いないのではないでしょうか。

経営課題を解決するための情報システム。そしてそのうちの一つであるナレッジ・マネジメント。そう言えば同じように経営課題を解決するためにと、いろいろなシステムの考え方や、やり方が過去にもあり多くのものが消えていきました。ナレッジ・マネジメントという言葉が過去のそういった言葉と同じになるかどうかは、システムを作る人にまさに"知識"が見えるかどうかにかかっているような気がしています。


ダウンロード可能なリソース


関連トピック


コメント

コメントを登録するにはサインインあるいは登録してください。

static.content.url=http://www.ibm.com/developerworks/js/artrating/
SITE_ID=60
Zone=Lotus
ArticleID=339088
ArticleTitle=SE関のノーツ/ドミノ徒然草: 第34回 あなたには知識が見えますか?
publish-date=06152004