SE関のノーツ/ドミノ徒然草

第33回 ナレッジ・マネジメントは非日常にあらず

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前回触れたようにナレッジ・マネジメントは平たくは、『組織の中で知識をうまく経営に役立てる仕組み』と言えるでしょう。しかし考えてみればKM、KMと叫ばれる前から経営と大上段に構えなくとも、知識を活かした仕事を我々は現場でしてこなかったでしょうか。

営業の世界ではお客様に提案書を出すときによく見られる光景が、同じ業種の同じような提案をしている営業に提案書を見せてもらいにいくことでしょうか。提案書を一から作るのと雛型があるとではおのずからその労力は違ってきます。それにそこでのアイデアなども、まったく同じ提案書にしないまでも、自分では思いつかなかったような内容が盛り込まれることとなるでしょう。

また最近、嫌煙運動の高まりからか、かなり多くの会社に喫煙室があるようになりました。そこでの光景はどうでしょう。ただ煙草を吸っているだけでなく、雑談もさることながら仕事の話をしているではありませんか。最近やった仕事の苦労話、新しい思いつきの話、しかもそれは組織という枠を超えて、上下を超えて互いの情報交換の場にもなっているようです。そこでの情報をきっかけに実際のビジネスに活かしたという話も聞こえてきます。

システム開発の場ではどうでしょう。昔開発された大きなシステムでバグが発生しました。メインテナンス部隊は必死にそれを直そうとしますが、どうにも埒があきません。上司に相談すると、上司は昔の開発スタッフを知っていて、そのときの担当者を見つけだしてその上司にかけあって当時の開発者をついに連れてきました。彼のアドバイスがあればたちまち問題も収束するのは言うまでもありません。

ところで最近の企業では社員研修が充実しています。新入社員研修はもとより、仕事で必要な時に必要になりそうなスキルを社内外の研修に出て学んでくることはかなりポピュラーになってきたかと思います。研修などない分野を自力で学んで仕事をするときの苦労と比べたら雲泥の差と言えるでしょう。

このような日常の仕事の様子をよく観察すると、そこには仕事の生産性をあげたり、質を変えたりするのに知識が大きな役割を果たしていることに気づくでしょう。人の提案書の知識、組織や権限を越えた口頭での経験やアイデア交換での知識、システムの作った人の知識、研修で体系だった知識。これらの状況で、これらの知識が交換されなかったら、果たしてそれぞれのケースで仕事がどのように変わったでしょうか。このような知識を活かした仕事の仕方は皆さんのまわりに溢れていることと思います。ただこのように知識を仕事に活かしても、残念ながらこれらをナレッジ・マネジメントとは呼ばないでしょう。ではどんな例がナレッジ・マネジメントと呼ばれているのでしょうか。

コンサルティング会社を中心にかなりの数の企業が実施しているのが文書管理システムの構築です。提案書、成果物などあらゆる文書を人が分類、整理してシステムに蓄える。そしてそれを自由に検索し再利用する。それによって個々の利用者の文書の生産性やそれに付随する知識の利用が飛躍的に高まる。ナレッジ・マネジメントのシステムの成功例としてよく紹介されるものです。

また、あるグローバルなコピー会社ではコピー機の修理をするエンジニアが、帰社後に談話室で自分の修理のアイデアを自慢しあっている様子をみて、それをシステム化しました。修理ノウハウを自由に入れる蓄積データベース、それを整理、分類する優秀なエンジニア。これによってエンジニアの知識がグローバルに利用され、そのコピー会社は膨大な修理に付随するコストを回収できたのです。ナレッジ・マネジメントの成功事例として有名な話です。

ちょっと変わった例としては、巨大プロジェクトで文書管理をシステムできっちりやり、かつそのシステムには文書の作成者やシステムに関わった人、どこのどんな人かの情報も載せるようにしました。そのプロジェクトの終了後に緊急の問題が起きたときには、当時開発にかかわった人をそのシステムから見つけだし、ビデオコンファレンスなどでコミュニケーションを図って迅速に問題に対処するという、まさに人の頭の中にある知識を利用するというナレッジ・マネジメントの例があります。

それに最近すこし流行しはじめている遠隔教育などもあります。世界中に散らばるグローバル企業の新入社員の教育は実に頭の痛い問題です。本社でコンピューター上に教材を開発し、それをリモートでアクセスして新人教育をし、大きな効果をあげている企業があります。企業の重要な知識を効率的に配布するというナレッジ・マネジメントの例です。

このようなナレッジ・マネジメントの成功例としてあげられている事例、文書として蓄積される知識のシステム、口頭などでのノウハウという知識を入れるシステム、さらに誰がどんな知識を知っているかを記録するシステム、そしてまとまった知識を配布するシステム。このように情報技術およびそれを運用する人とシステムが有機的に稼動してナレッジ・マネジメントシステムが構成されていると言えるでしょう。

しかしながら、ふと冒頭の日常の例を振りかえれば、これらはその個人的に行っていた日常の知識の活用と実によく似ているではありませんか。文書としての提案書、口頭ベースのノウハウ交換、知識を持っている人の知識、そしてまとまった知識の配布。すべて個人的に近い形で行っていた知識の活用が、システムやそれをとりまく人間系によって運用されているのがナレッジ・マネジメントとも言えるような気がします。

別な言い方をすれば、元々個人的に行われてきた企業内での知識の活用を、よりシステマチックに、より規模の大きなものとして会社が支援をして実行すれば、それはすべて、『組織の中で知識をうまく経営に役立てる仕組み』、つまりナレッジ・マネジメントと言えるでしょう。あくまで日常での知識の活用の延長、それを組織を超えた形で増幅、拡大する、そのためにシステムを使う、そんな現在からの延長線で考えることが実はナレッジ・マネジメントの良いアプローチの一つではないかと思えてきます。

Lotusのナレッジ・マネジメントのビジネスの責任者であるMike Zismanはこう言っています。『企業内で知識活用が自然と起こっているのがナレッジ・アクシデント。そしてそれを会社の仕組みとして支え運用していくのがナレッジ・マネジメント』。日ごろ日常で起こっているナレッジ・アクシデントを種にして、それを増幅拡大し、組織として運用していくナレッジ・マネジメントが、ユーザーにとっても実に受け入れやすい考え方かもしれません。


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publish-date=08012003