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なぜ Linux on Power なのか?

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IBM による Linux への投資

おそらく皆さんは、IBM Watson についての噂を耳にしたことがあるでしょう。まだ耳にしたことがなければ、Watson はまさにテクノロジーの画期的な成果なので、このリンク先を調べてください。「The Atlantic」誌に掲載された記事の中で行われている検討内容を要約すると、Watson は 1 秒あたり最大 6000 万ページのテキストを処理することができると IBM では見積もっています。しかもこの見積もりは、プレーン・テキストによって簡潔に書かれた散文に基づいています。散文とは、まったく構造化されていないテキストのことで、現在の IT システムで処理しなければならない全情報の約 80% は、このようなテキストが占めています。驚くべき点は、Watson は、ほぼどのような形式の情報であっても理解できることで、それが誰かがしゃべった内容を書き起こしたものであろうと、誰かの手書きのメモであろうと、理解することができます。実際、Watson には学習能力があります。しかも、その学習速度はかなりの速さです。Watson は当初、「Jeopardy!」(米国のクイズ番組) の勝者と対戦するために使われていましたが、今では患者の医療診断の支援や、カスタマー・サービスの改革、シェフによる新しいレシピの考案、その他以前は克服できなかった数々の興味深い難題への挑戦などに使われるようになっています。こうした挑戦のなかには、明らかに極めて重要なものもあれば、今は単に楽しくてやりがいがあるだけでも、おそらく将来的には極めて重要になるであろうアプリケーションもあります。Watson の独特な適応能力については未知数ですが、処理可能なデータ量という点では他に並ぶものがありません。

Watson は具体的にどのような構造になっているのでしょう?革新的なアルゴリズムを駆使する一連の賢いソフトウェア・コンポーネントで構成されているのは明らかですが、基礎となるハードウェア・インフラストラクチャーについてはどうでしょう?もちろんそれは、IBM のコンピューターであり、具体的には、IBM Power Systems サーバーです。さらに具体的に言うと、Power 上で Linux を実行しています。

そこで浮かんでくるのは、Power と Linux を組み合わせて Watson を作成できるならば、この同じ組み合わせで、他にも必要なことを実行できるのではないかという疑問です。

まず始めに、IBM が Linux on Power に対してどれだけ真剣なのかについて話しておきましょう。それは、2013年 9月に Linux on Power に対して 10 億ドルの投資を表明するほどの真剣さです。この投資は、Linux とオープンソース・ワークロードのソリューションに対する投資であり、この 10 年にわたって多種多様なオープン・イニシアティブに対して行ってきた投資に加え、さらに追加で行われた投資です。知っておくべき重要なことは、これが IBM による投資というだけではなく、IBM の Power Systems ブランドからの投資でもあるということです。ただし、お金だけがイニシアチブを成功させるわけではないということに留意するのも重要です。イニシアチブの成功には、経験を積んだ人的リソースのスキルも必要です。そこで IBM は、高い意欲を持つ数多くのセールスおよび技術関連の人的リソースを、Linux と Power、およびこの組み合わせで対処できるソリューションだけに取り組むために配属しています。IBM は、ソフトウェアも数多く販売していますが、これらのソフトウェアの大半が Linux on Power 上で実行されることは確実です。さらに、このようなアプリケーションが、このプラットフォーム上で極めて効率的に実行されるように最適化されていることも、想像に難くありません。

では、詳細に目を向けてみましょう。

IBM が販売するすべての Power System サーバーで、Linux が実行されます。実際、IBM が販売するすべてのサーバーでは、Red Hat、SUSE、そして現在は Ubuntu を含む Linux が実行されます。明確にするために言っておくと、実行されるのは x86 上で実行されるのと同じ Linux で、x86 と同じソースからビルドされ、同じスケジュールで配布され、同時にサポートされる Linux です。Power 上で実行するメリットについては後で詳しく説明しますが、要は、パフォーマンス、信頼性、仮想化、価格などの基本的な概念です。IBM は、これらの基本的な概念がメリットとして魅力的であると考え、コミットしているというわけです。

IBM は、他にどのような形で Linux に投資しているのでしょう?

米国、欧州、アジアの Linux テクノロジー・センターに十分なスタッフを配置し、これらのセンターから、お客様、独立系ソフトウェア・ベンダー (ISV)、システム・インテグレーター、管理対象サービスのプロバイダーなどを対象に多数の人的リソースを提供しています。また、Linux テクノロジー・センターで提供しているサービスには、ブリーフィング、トレーニング、移植およびマイグレーションの支援、ベンチマーク、等々が含まれます。

IBM はまた、Linux で IBM Power テクノロジーを利用できるようにするためのツールとプロセスも作成しています。以下は、その一例です。

Advance Toolchain: ユーザーが IBM Power ハードウェアの機能を最大限活用できるようにする、オープンソースの開発ツールとランタイム・ライブラリー一式です。IBM でバンドル、テスト、サポートが行われています。

SDK (Software Development Kit): Eclipse をベースに、Linux および IBM の重要なツールが 1 つの GUI 環境に統合されています。この SDK には、x86 から Power にポーティングする際に、パフォーマンスの向上を可能にする変更を推奨するコード・スキャナーも含まれています (無償)。

Migration Factory: Linux にマイグレーションする際に主要な要件となるのは、このプロセスを徹底的にテストした実績を持つ、信頼できるパートナーです。IBM は、この Migration Factory を使用して、何千ものクライアントを Linux on IBM システムにマイグレーションしてきた実績があります。Migration Factory は、25 年にわたって細心の注意を払って改良されてきた、5 つのステップからなるプロセスを使用して、Linux をはじめとする任意の (サポートしている) オペレーティング・システムを実行する IBM システムに、クライアントがマイグレーションできるよう支援します。

Watson のインスラストラクチャーのベースとして選ばれたのは、Power 750 サーバーです。Power 750 サーバーは、堂々と Power Systems ファミリーの中心に位置するオファリングです。以下の図には、製品オファリングの詳細が示されています。これらのサーバーのいずれかで実行されるアプリケーションは、これらのどのサーバー上でも実行可能であることは間違いありません。

図 1 に、最近 (2014年 4月) 発表された IBM POWER8 プロセッサー・テクノロジーを示します。この記事を執筆している時点で、1 ソケットおよび 2 ソケットの小規模なサーバーが発表されました。これよりも大規模なサーバーは、後日、発表されると思われます。

図 1. IBM POWER ポートフォリオ

IBM の Power 部門は、このポートフォリオで、あらゆるお客様の要件を満たせると自負しています。以下のように、このポートフォリオには多彩なバラエティーがあります。

  • 低コストのスケールアウト・サーバー: 新しい Power System S812 および S824、IBM POWER7+ プロセッサー・ベースの Power 710 および Power 720など。
  • Linux 専用サーバー: 新しい Power System S812L および Power System S822L、最近の IBM PowerLinux 7R1 および 7R2 など。
  • ハイエンドのエンタープライズ・サーバー: Power 780 および Power 795 のような、比類のないパフォーマンスを発揮するサーバー。

もう 1 つ、触れておく価値があるのは、オープンソース・コミュニティーに対する IBM の貢献度です。読者の多くを驚かせるかもしれませんが、以下に記載しているのは、Linux にフォーカスして行われた変更数 (コントリビューション数) のリストの抜粋です。

(2005 – 2012年)

表 1. 企業による Linux へのコントリビューション
企業名変更数全体に占める割合
なし (個人) 46,982 17.9%
RedHat 31,261 11.9%
Novell 16,738 6.4%
Intel 16,219 6.2%
IBM16,0736.1%
不明 13,342 5.1%
コンサルタント 7,986 3.0%
Oracle 5,542 2.1%
学術界 3,421 1.3%
Nokia 3,272 1.2%
Fujitsu 3,156 1.2%
Texas Instruments 2,982 1.1%
Broadcom 2,916 1.1%
Linux Foundation 2,890 1.1%
Google 2,620 1.0%

出典: The Linux Foundation Releases Annual Linux Development Report

ご覧のように、IBM の Linux on Power に対するコミットメントは、Watson だけに限りません。Watson は、この分野での IBM の実力を示す好例ではあるものの、Linux と Power というテクノロジーの組み合わせが必要となるアプリケーション分野は、他にもたくさんあることは確かです。

Linux on Power は、お客様のワークロードに対処するには絶好のプラットフォームです

世界の CIO の 2013年の計略についての Gartner によるレポートに見られたいくつかの傾向を調べてみましょう。最も高いプライオリティーを置くテクノロジーについての質問に対し、トップにランクされたのは「アナリティクス」であり、続いてわずかな差で「クラウド」、そして「モバイル」の順にランクされました。アナリティクスに最も高いプライオリティーが置かれていることを裏付けるデータもあります。例えば、CIO の 83% が明確なビジョンを持った計画の中でビジネス・インテリジェンス (BI) とアナリティクスを引き合いに出しています。また、企業の 54% が、ビジネスに明確な競争上の優位性をもたらすために、アナリティクスを利用しています。「ビッグ・データ」と「アナリティクス」を支えるテクノロジーは多種多様ですが、一貫した 1 つの要件があります。それは、ビッグ・データやアナリティクス関連のアプリケーションを実行するには、そのためのハードウェアを用意する必要がありますが、そのハードウェアは一部の特性が優れていなければならないというものです。何よりもまず、これらのアプリケーションは、さまざまな点において極めて高いスループットを必要とします。具体的にいくつか挙げるならば、プロセッサー速度、メモリー帯域幅、I/O スループットなどです。また、「ビッグ・データ」と「アナリティクス」には多数のスレッドが必要であり、しかも Java への重大な依存関係もあります。一般的に言えば、ここで話題としているのは、バランスの取れた、効率的なシステムです。

多くのお客様にとって重要なその他のワークロードも見逃すわけにはいきません。例えば、e-メールやコラボレーション・ツール (ソーシャルおよびビジネスを中心としたもの) も、同じく極めて重要です。現在、e-メール・クライアントのコンポーネントは、明らかにデスクトップ PC 上のコンポーネントからモバイル端末上のコンポーネントへと急速に移行しているところですが、クライアントの形はどうであれ、それをサポートするバックエンドのインフラストラクチャーが必要なことに変わりはありません。また、これらのアプリケーションでは、セキュリティーが極めて重要になってきます。迅速にスケーリングできることや、他の多くのテクノロジーとインターフェースを取れることも重要です。最後に、他のあらゆる点と同じく、もちろんパフォーマンスも、お客様がこれらのワークロードで求めているものです。

さらに、世界中のほぼすべての大企業では、今でもエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP)、サプライ・チェーン、顧客関係管理 (CRM) などといったビジネス・アプリケーションを使用しています。そのような大企業に特有のインフラストラクチャー要件には、どのようなものがあるのでしょう?例えば、新しい環境を迅速に作成して、新しい機能をテストできる必要があります。また、システム・リソース (プロセッサー、メモリー、I/O など) を動的に調整し、(決算処理で、または需要計画に従うために) 処理がピークとなる期間に対処できる必要があります。これらのビジネス・アプリケーションには、あらゆるアプリケーションの中で最も高いアップタイム要件も伴います。そして、アプリケーションのパフォーマンスが受け入れ可能なレベルを満たす必要もあります。

最も一般的なワークロードで最も重要となるシステム要件を集めると、おそらく以下の箇条書きリストに示すような内容になるはずです (どれもが、極めてセキュアかつコストが最適化されたソリューションの要件です)。

  • パフォーマンス
  • 信頼性
  • パフォーマンス
  • スケーラビリティー
  • パフォーマンス
  • 柔軟性 (ここでは、これを仮想化と呼びます)

このすべてを、クラウド・オファリングでも確保できることを確かめましょう!

この記事のタイトルが単に「なぜ Linux on Power なのか?」となっているのは、偶然ではありません。上述のアプリケーションのすべてには、適切な実行場所が必要です。そのため、この記事では技術的な観点から、Linux を実行する Power サーバーが有力なビジネス事例となる理由を説明したいと思います。このビジネス事例には価格も含まれるので、後ほど価格についても説明しますが、まずは Power テクノロジーについてもう少し詳しく探りましょう。

Power と Intel の比較

Power は長きにわたって、ミッドレンジ・データベースのニーズを満たすのに最適なプラットフォームとなってきましたが、IT 関係者が Linux を検討するときには、ほぼ瞬時に Intel x86 プラットフォームを考えるものです。ここで、少し時間を割いて、Power と Intel の機能を調べてみましょう。Power プラットフォームには、その極めて優れた信頼性、可用性、保守性、スケーラビリティー、そして最も重要な点となっているセキュリティーが備わっていることから、IBM ではこのプラットフォームについてはかなり自信を持っています。

Power の機能を、現在の Intel サーバー製品ラインと比較すると (以下を参照)、Power の機能性と柔軟性が勝っていることがわかるはずです。その上、コストの点でも、Linux on Power は非常に魅力的です。コストについては、この後のセクションで詳しく取り上げるとして、以下の図に、Intel に勝る Power の長所のいくつかを示します。

図 2. Intel に勝る Power の長所 (一部抜粋)
図 3. Power と Intel のキャッシュおよび帯域幅の比較

サーバー・テクノロジーとしての Power には、以下のように、Intel に勝る 3 つの長所があります。

  • パフォーマンス ― POWER7+ には、最大 256 のハイパフォーマンス・コア、そして 1 コアあたり 4 つのスレッドを持つ一連のサーバーが揃っています。新たな POWER8 プロセッサー・ベースのサーバーでは、1 コアあたりのスレッド数を 8 に増やして、スレッド能力を倍増させています。Intel が販売しているシステムはこれよりも小規模で、現在のオファリングでは最大 60 コア、1 コアあたり 2 スレッドにとどまっていて、かなりの熱冷却および管理が必要になります。
  • 仮想化 ― IBM PowerVM は、セキュリティーの脆弱性ゼロを誇れる、市場で唯一のハイパーバイザーです。他に、脆弱性が皆無であると主張できる x86 ベースのハイパーバイザーはありません。PowerVM はファームウェア内に常駐するため、待ち時間が短縮され、全体的なハードウェア使用率が大幅に向上します。
  • レジリエンシー ― Power は、極めて信頼性の高いシステムである IBM メインフレームを設計したチームによって設計されており、Intel よりもはるかに高い値のアップタイムを可能にするために IBM メインフレームと同じレベルのレジリエンシーが備わっていて、年間 99.997% のアップタイムを保証しています。ここまでのアップタイムは、Intel では達成できません。Power ハードウェアは自己修復します。最も重要な更新は、Live Partition Mobility (LPM) などの機能によってダウンタイムを伴わずに適用することができます。x86 サーバーには現在、ここまでのミッション・クリティカルなレジリエンシー特性はありません。

IBM はこれまで 20 年にわたり、Power ロードマップに従って、画期的な最先端のプロセッサーおよびトランジスター・テクノロジーを生み出してきました。IBM の投資の焦点は、一貫して研究開発に置かれています。このことは、業界をリードするイノベーションという成果になって現れています。Power には、今後も明確で詳細なテクノロジーのロードマップがあります。

最新バージョンの Power チップには、暗号手法とハードウェア・トランザクション・メモリーのアクセラレーターが組み込まれています。ハードウェア・トランザクション・メモリーは、より高いパフォーマンスを実現できる能力を活かすことで、高度にスレッド化された Java ワークロードを Power サーバーが実行できるようにします。

Power は、メモリーおよびキャッシュのパフォーマンスに関しても卓越しています。1 メモリー・ソケットあたり 3 レベルのキャッシュと 2 つのチャネルにより、Power は、高度な内部帯域幅を必要とするワークロードに抜群のパフォーマンスを発揮します。

x86 サーバーの急増は、お客様に以下に挙げる問題をもたらすことになりがちです。

  • システムの管理作業および管理コストの増加
  • 過剰なエネルギー消費量と熱の問題
  • 十分でない電力インフラと冷却設備
  • ソフトウェア・コストの急増
  • 人員コストの増加
  • 不可解な故障の増加
  • 予定外のダウンタイムの増加
  • セキュリティーの低下
  • 自動化の不足、柔軟性のなさ

Power サーバーには、強化されたセキュリティー機能があり、セキュリティーの脆弱性はありません。そのため、IT 管理者は、セキュリティー侵害を原因とする以下のコストを回避することができます。

  • 既存の IT セキュリティーの強化と、それに伴う追加トレーニングの実施
  • 情報が漏洩した可能性のある人への連絡
  • 影響を受けた人のクレジットの監視
  • 金銭的損失を被った可能性がある被害者による訴訟
  • 企業/ブランドの評判へのダメージ
  • e-メールのブラックリストの作成
  • 株価への影響
  • 市場での地位を取り戻すためのコスト

価格設定

Linux に関してよく聞く通説の 1 つは、Linux は x86 や一般商品化されたハードウェアと同様の位置づけであるのに、なぜ Power 上で Linux を実行することを考えるのだろう?というものです。つまり、Power は Linux を実行するにはコストがかかりすぎるというのが、共通の認識になっています。

前述のとおり、すべての Power サーバーで Linux が実行されますが、IBM では競争力のある価格で Linux 用の信頼できるプラットフォームの選択肢をお客様に提供するために、Linux 専用のサーバーを導入しました。選択肢としては、IBM POWER7 プロセッサー・ベースの 1 ソケット、2 ソケット、4 ソケットのサーバー (IBM PowerLinux 7R1、7R2、7R4)、そして新たに加わった POWER8 の 1 ソケットおよび 2 ソケットの Power S812L モデルと Power S822L モデルがあります。以下に示す図を見てください。総取得コスト (TCA) には、サーバーのカタログ価格、仮想化、Linux オペレーティング・システムのサブスクリプションおよびサポートのカタログ価格が含まれています。これを見ると、Linux on Power サーバーの TCA 価格設定は、Intel x86 の選択肢より低いとまではいかなくても、ほとんど同等です。

図 4. IBM Power 822L の価格設定の比較 (米国ドル)
図 5. POWER7+ と Linux 用 Intel x86 の TCA 価格設定の比較

TCA の他にも、検討すべきコスト要因はあります。その 1 つとして、Power と x86 で利用できる仮想化機能を比べてみましょう。具体的には、PowerVM と VMware の比較です。図 5 から明らかなように、より柔軟で、よりスケーラブルかつセキュアな仮想化機能をお客様に提供するという点で、PowerVM のほうがより優れた機能と高い価値を提供します。PowerVM が持つこれらの長所は、お客様にどう関係してきて、コスト面ではどういう意味があるのでしょう? PowerVM では、仮想プロセッサーとメモリーを柔軟に構成することが可能であり、VM あたりの仮想プロセッサーの数を制限するのは、物理サーバーで利用できるコア数だけであることに注意してください。それとは対照的に、VMware での柔軟性は、プロセッサーおよびメモリーというリソースをシフトすることだけに限られていて、1 ソケットあたりの仮想プロセッサー数は最大 32 に固定されています。要は、PowerVM をデプロイする場合、お客様は「自分たち」のニーズに応じて柔軟にシステム構成を変更できるということです。今日の世界における、IT のニーズは流動的で変化に富んでいます。PowerVM であれば、お客様が自分たちのニーズの変化に合わせて、サーバー環境を調整することができます。しかも、PowerVM には卓越したスケーラビリティーが備わっているため、お客様は 1 台のサーバーに、さらに多くのワークロードを統合することができます。ワークロードの拡張や新規のワークロードに対応するために追加のサーバーを購入しなくても、PowerVM のお客様は、1 台のサーバー内でより多くのワークロードを実行して、システム全体の使用率を大幅に高めることができます。つまり、PowerVM では、お客様がより多くのことに、より少ないリソースで対処できるということです。物理サーバーの台数を減らせば、電力と冷却、データ・センターのラック・スペース、そして管理コストの節約になります。ソフトウェアのライセンスも主要なコスト要因です。ほとんどの商用ソフトウェア・アプリケーションでは、コア数を基準にライセンスが交付されます。より少ないコアでより多くの処理を実行できるとしたら、それは直接、IT 予算の大きな部分を占めるソフトウェア・ライセンス・コストの削減につながります。次は、セキュリティーの領域について探っていきましょう。PowerVM は、脆弱性が 1 つも報告されたことのない Power ハイパーバイザーに統合されます。これを、561 もの脆弱性が報告されている VMware と比べてみてください。複数のホストを使用するシステムの場合、ハイパーバイザーがセキュリティー関連の問題に脆弱であると、そのハイパーバイザー上で実行されるすべてのホストがリスクにさらされることになります。これは、ダウンタイムの点で、お客様のビジネスに深刻な影響を与える可能性があることを意味します。最後に、仮想化のライセンス・コストだけをとってコストを検討した場合、PowerVM のライセンス・コストは、VMWare にひけをとりません。

図 6. IBM PowerLinux の PowerVM と VMWare の比較 (米国ドル)

2013年の第 4 四半期に、IBM は、お客様にとって IBM PowerLinux をさらに魅力的な選択肢にする 2 つの追加発表を行いました。その 2 つの発表とは、Power IFL (Integrated Facility for Linux) の導入と、IBM PVU (Processor Value Unit) ライセンスが付与されたすべてのソフトウェア製品に対する PVU の削減 (Linux を実行する Power コアのすべてが対象) です。

Power IFL は、大企業において IBM AIX および IBM i のアプリケーションとデータに Linux アプリケーションをまとめて統合する、企業向け Power オファリングです。Power 770、780、または 795 サーバーを使用しているお客様は、Capacity on Demand (サーバーを停止せずに、アクティベーション・キーを使用してプロセッサーおよびメモリーといったリソースを追加する機能) を使用して、Linux ワークロード・キャパシティーを追加することができます。このオファリングは、4 コア、32 GB のメモリー・バンドルにより、32 ソケットまでスケーリング可能です。オファリングの対象とするお客様は、既存のエンタープライズ Power サーバー上で活用されていないキャパシティーが見つかる可能性がある企業です。このオファリングにより、Linux ワークロードを実行するために x86 ベースのサーバーを追加で購入しなくても、既存の Power サーバー上で使用されていないリソースを活用することができます。その際、サーバーを停止する必要はありません。お客様は、Power エンタープライズ・サーバーならではのパフォーマンス、セキュリティー、可用性を利用できると同時に、新たな低い価格で、Linux ワークロードを合理的に購入することができます。Power IFL を利用すれば、データ・センターに他の機器を追加する必要がなくなるため、商品化までの時間が短縮されることにもなります。キーを入力するだけで、必要なリソースを活用することができます。IFL を利用することで、お客様はアプリケーションとデータを確実に同じ場所に配置することができ、それと同時に待ち時間の短縮や、使用率の最大化をすることができます。

図 7. Power IFL の価格設定

もう一方の発表は、IBM Software Group PVU の削減で、PVU ライセンスが付与された (Linux を実行するすべての Power コア上で動作する) すべてのソフトウェア製品に適用されます。PVU とは、分散プロセッサー・テクノロジーにおいて交付されるソフトウェア・ライセンスを区別するために使用される測定単位です。Linux on Power の場合、IBM Software Group PVU は、1 コアあたり 70 PVU です。これは、最大規模の Power サーバーを含め、全サーバーに共通しています。これを、1 コアあたりの PVU が 100 から 200 にもなる 4 ソケットの大規模 Intel サーバーと比較してください。ソフトウェア・ライセンスは、ソリューション購入コストの中で最も大きな割合を占めるため (サーバー・コストをはるかに上回ります)、Linux on Power 上で Linux ワークロードを実行すれば、大幅なコスト削減が実現されます。

Power で Linux を実行するのはコストがかかりすぎるという通説は、もはや当てはまりません。Power は TCA 価格設定において競争力があるだけでなく、一般商品化されたソリューションよりもお客様が重んじるはずの卓越した機能を提供します。

このリンク先には、有数の調査会社である Solitaire Interglobal Ltd による、事実に基づく分析の動画があります。この動画で、Solitaire 社は x86 アーキテクチャーと IBM Power Systems を比較し、次世代のアプリケーションの基礎として IBM Power を選ぶとよい理由を説明しています。

スキル

1999年から Linux に積極的に関与している IBM は、Linux の主要な企業コントリビューターの 1 つとなっています。前述のとおり、IBM Power 部門は、Linux およびオープンソースのワークロードを対象としたソリューションの実現に向けて、さらに 10 億 US ドルを投資しました。この投資の対象には、世界各地での新しい Power Systems Linux センターおよびイノベーション・センターの開設が含まれます。Power Systems Linux センターは、世界中の Linux 開発者が利用できます。その所在地には、北京 (中国)、テキサス州オースティン (米国)、ニューヨーク州ニューヨーク (米国)、東京 (日本)、モンペリエ (フランス) があります。Linux センターでは、開発者が Linux と最新の IBM Power サーバーを使用して、新しいアプリケーションをビルド、デプロイすることができます。このセンターで利用できるリソースには、カスタマイズされたカスタマー・ブリーフィング、Linux トレーニング・ワークショップ、移植の支援、そして Power の機能を利用してパフォーマンスを最適化する方法に関する開発者向けハンズオン・アシスタンスもあります。一方、IBM イノベーション・センターは、ISV の支援を専門とする最先端の施設です。イノベーション・センターで提供されるサービスには、アーキテクチャー設計および実装のコンサルティング、移植、マイグレーション、およびテスティングのサービス、アプリケーション統合および概念実証のサポート、最新テクノロジーの専門知識の提供などがあります。

IBM の Linux on Power に対するコミットメントの一例として、IBM には、PowerLinux 上でクライアントと ISV を実現するというミッションのための専属チームがあります。さらに、IBM の Linux テクノロジー・センター (LTC) では、オープンソース・ソフトウェアの開発者からなる IBM チームが、Linux オープンソース開発コミュニティーと連携して開発に取り組んでいます。LTC は、Linux に関する技術能力センターの役割と、IBM の Linux ディストリビューション・パートナーとの技術的な連絡を行う役割を果たしています。

IBM は、その他にも数々のコミュニティー・リソースを提供しています。例えば、アプリケーションを移植できるようにするために、IBM のサポートが必要だとします。その場合、IBM には、Chiphopper プログラムという、Linux 用の IBM Systems Application Advantage オファリングがあります。このプログラムでは、お客様やお客様のチームに協力するために手配された、IBM 社内の適切なスタッフが、移植に関する潜在的な問題を評価し、移植を支援します。IBM には、Migration Factory というプログラムもあります。IBM Migration Factory では、マイグレーション・ロードマップの作成、マイグレーション作業の見積もり作成、そしてマイグレーション用にカスタマイズしたビジネス・ケースの作成を支援することができます。また、テスト用のプラットフォームが必要となった場合に、サーバーを利用できなければ、以前はバーチャル・ローナー・プログラムとして知られていた、IBM の Power Development Cloud を利用することができます。このプログラムは、IBM ハードウェアへのリモート・アクセスを無償で提供します。さらに、IBM では Linux on Power コミュニティー・ウィキも用意しています。このウィキは、Linux on Power に関して参考になる FAQ や、動画によるデモ、ベスト・プラクティス、ハウツー、そして Linux on Power フォーラムへのアクセスなどを揃えたワンストップ・ショップです。ディスカッション・ボードに投稿された質問や論点は、自動的に Linux on Power 開発チームのメンバー全員に転送されて、Linux on Power のエキスパートが持つ非常に深い技術知識を引き出せるようになっています。

IBM は付加価値をもたらす Linux on Power 専用ツールも開発しました。その 1 つが、IBM Installation Toolkit for PowerLinux です。このツールキットには、一般的なワークロードの簡易セットアップ・ツール、Linux on Power エキスパートの経験に基づくチューニング、そして信頼性、可用性、保守性、生産性を対象とした 20 を超えるツールのインストールが含まれます。その他のツールとしては、SDK、Advance Toolchain があります。これらのツールは、すべて無償で提供され、しかも Power 専用に最適化されています。

お客様、ビジネス・パートナー、ISV のいずれであるかに関わらず、IBM には、Linux on Power のニーズのすべてを支援するチームとリソースが揃っています。

お客様事例

ノースカロライナ州立大学 (NCSU) ― ビッグ・データ ― 企業が抱える実際の情報関連の問題解決を支援

この動画では、IBM のクラウドをベースに PowerLinux 上で実行される、ビッグ・データおよびアナリティクスのソリューションを利用することで、NCSU がどのようにして、影響力の大きい投資に関して企業にアドバイスできるようになったかを研究者の Michael Kowolenko 博士が説明します。

ノースカロライナ州立大学の Center of Innovation Management Studies では、複雑なビジネス問題を解決して、企業に実用的な情報を提供し、最終的な収益向上を支援する方法を学生に教えようとしていました。例として用いられたのは、多種多様な形式で、多数のデータ・ソースを利用する企業でした。

このセンターで必要になったハードウェア・プラットフォームは、大量のデータを処理することができて、非常に複雑なクエリーでも停止することなく、学生と企業が正確な出力を基に適切な意思決定を行えるようにするものです。また、コンピューター・サイエンス学部の学生たちが、簡単にシステムを実行できるようにする必要もありました。そこで選択したのが、Linux on Power です。このセンターでは、複数の IBM ソフトウェア製品 (Big Insights、Content Analytics、IBM SPSS、IBM DB2) を使用することで、企業の最終収益に影響を与える問題を学生たちが解決する能力を大幅に高めることができました。x86 プラットフォームから Power プラットフォームへ移行したことにより、72 時間から 96 時間かかっていた索引付けの実行時間が 14 時間に短縮される結果となりました。

MD Anderson でがんの診断に利用されている Watson

この動画では、MD Anderson 病院に勤める Lynda Chin 教授が、Watson を導入することで、がん患者の診断および治療を大幅にスピードアップするアプリケーションをどのようにして作成することができたかを説明しています。

テキサス州ヒューストンにある MD Anderson 病院では、現在、あらゆる種類のがんの診断と治療を支援するために、IBM Watson テクノロジーが導入されています。

Watson を使用すると、医師はこれまで夢にも思わなかったようなソースの情報とデータにアクセスできるようになります。今や、自分の診断だけに頼ることなく、世界中のソースから瞬時に情報を入手して、患者をより効果的に治療および診断できるようになっています。

Watson は、現代の医療行為における、以下の基本的な課題に対処します。

  • 高いクオリティーの医療の利用
  • 医師の不足
  • 標準化の欠如
  • アクセス・コスト
  • 非効率的な導入
  • 非効率的な情報共有と情報交換

根本的に、Watson は Hadoop クラスターであり、Linux on Power システム上で実行されます。

まとめ

この記事を読んで、Linux on Power に対する IBM の真剣な取り組みを確信していただけたことを願います。その真剣さは、このテクノロジーへの投資から明らかです。中でもとりわけ、2013年の半ばに追加で 10 億ドルの投資が確約されたことは注目に値します。この投資によって、専属で Linux に取り組む人々が新たに多数加わったり、Linux on Power を使用するアプリケーションの構築や、Linux on Power をより良いものにするための取り組みに、継続的に関与したりすることになるはずです。また、Linux と Power の組み合わせに関して広まっている通説のいくつかも一掃されたことを願います。第一に、Linux on Power は、x86 で使用されるのと同じ Linux です。第二に、Power 上で Linux を実行するとコストがかさむということはありません。実際、ほとんどのところ、総取得コストと総所有コストは、Power 上で実行したほうが低く抑えられ、これらのコストが大きく違ってくる場合もあります。最後に、Linux は x86 上で実行したほうがパフォーマンスに優れるということは決してありません。IBM POWER プロセッサーとこれを中心としたサーバー・インフラストラクチャーは、システム全体で最速のスループットを実現できる点において、他とは比べ物になりません。しかも、信頼性とセキュリティーにおいても最高レベルです。

この記事で取り上げたトピックについて質問がある場合や、詳細な情報を知りたい場合には、いずれかの著者に連絡してくださいGrace、Ann、Mark はいずれも、IBM 内に新しく結成された組織の一員であり、Power 上で実行される Linux のあらゆる側面に関して、技術大使としての役割を果たすことを主な任務としています。


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ArticleTitle=なぜ Linux on Power なのか?
publish-date=09042014