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モノのインターネットの中ですべてのモノを接続する

IoT ネットワーキングの課題を解決するネットワーク・テクノロジーを選択する際のガイド

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モノのインターネットの中核となるのは通信です。ネットワーキング・テクノロジーによって、IoT デバイスが互いに通信することが可能になるだけでなく、クラウド内で稼働するアプリケーションやサービスとデバイス間の通信も可能になります。異種のデバイス間での通信がセキュアかつ確実に行われるようにするために、インターネットは標準化されたプロトコルに依存します。標準プロトコルでは、ネットワークの確立と管理、そしてネットワーク間でのデータ送信の際にデバイスが従わなければならないルールとフォーマットを規定しています。

私たちがネットワークについて説明するときは、通常、テクノロジーのスタックによってネットワークが構成されていると説明します。このスタックの一番下にはデバイスの物理的な接続に関連するテクノロジー (Bluetooth LE など) が位置し、スタックの上のほうにはデバイスの論理アドレス指定とネットワーク・トラフィックのルーティングに関連するテクノロジー (IPv6 など) が位置します。スタックの最上部に位置するのは、これらの層をベースに稼働するアプリケーションが使用するテクノロジー (メッセージ・キューイング・テクノロジーなど) です。

この記事では、IoT ネットワーキング向けに広く採用されているテクノロジーと標準を紹介します。また、あるネットワーク・プロトコルを他のネットワーク・プロトコルに優先して選択したほうがよい場合について説明し、IoT 内でのネットワークに関連する主な考慮事項と課題として、通信距離、帯域幅、電力使用量、断続的接続、相互運用性、セキュリティーを取り上げます。

ネットワーキングの標準とテクノロジー

開放型システム間相互接続 (OSI) モデルは、7 つのプロトコル層からなるスタックを表す、ISO 標準の抽象化モデルです。このモデルには、上から下への順にアプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層、トランスポート層、ネットワーク層、データリンク層、物理層があります。OSI モデルを構成するこれらの層の具体的な実装を単純化しているのが、インターネットの基盤となっている TCP/IP (インターネット・プロトコル・スイート) モデルです。

図 1. OSI と TCP/IP のネットワーキング・モデル
OSI モデルと TCP/IP モデルを示す図
OSI モデルと TCP/IP モデルを示す図

TCP/IP モデルでは、OSI モデルの層のいくつかをマージして、以下の 4 つの層だけを使用しています (図 1 を参照)。

  • ネットワーク・アクセスおよび物理層
    この TCP/IP 層には OSI のレイヤー 1 とレイヤー 2 の両方が組み込まれています。物理 (PHY) 層 (OSI のレイヤー 1) は、物理的に各デバイスをネットワークに接続する方法に関連します。接続には、例えば光ケーブルやワイヤーなどのハードウェアが使用されるか、Wi-Fi などのワイヤレス・ネットワークの場合は、無線 (IEEE 802.11 a/b/g/n) が使用されます。リンク層 (OSI のレイヤー 2) では、デバイスが MAC アドレスによって識別されます。このレベルでのプロトコルは物理アドレス指定に関連し、例えばスイッチがネットワーク上のデバイスにフレームをどのように配信するのかなどを規定します。
  • インターネット層
    この層は、OSI のレイヤー 3 (ネットワーク層) に対応し、論理アドレス指定に関連します。この層でのプロトコルは、IP アドレスによって識別される送信先ホストと宛先ホストの間でルーターがデータ・パケットをどのように配信するのかを定義します。IoT デバイスのアドレス指定には、IPv6 が一般的に採用されています。
  • トランスポート層
    トランスポート層 (OSI のレイヤー 4) ではエンドツーエンドの通信を焦点に、信頼性、輻輳回避、配信保証 (パケットが送信順と同じ順序で配信されることを保証) などの機能を提供します。IoT のトランスポートには、パフォーマンス上の理由から UDP (User Datagram protocol) がよく使われています。
  • アプリケーション層
    アプリケーション層 (OSI のレイヤー 5、6、7) は、アプリケーション・レベルのメッセージングに対応します。インターネット全体で広く採用されている HTTP/S は、アプリケーション層プロトコルの一例です。

TCP/IP モデルと OSI モデルは、ネットワーキング・プロトコルと各プロトコルを実装する特定のテクノロジーについて話し合う際に便利な抽象化になりますが、これらの階層型モデルにぴったり当てはまらないプロトコルもあります。例えば、ネットワーク・トラフィックのプライバシーとデータ整合性を確実にするために暗号化を実装する TLS (Transport Layer Security) プロトコルは、OSI のレイヤー 4、5、6 の 3 つの層にまたがって動作すると考えられます。

IoT ネットワーキング・プロトコル

図 2 に、IoT 内で広く採用されているネットワーキング・プロトコルの一部と、TCP/IP モデル内での対応する層を示します。

図 2. IoT ネットワーク・プロトコルと TCP/IP モデルとの対応
TCP/IP モデルと IoT プロトコルを示す図
TCP/IP モデルと IoT プロトコルを示す図

IoT 分野では、新しく登場した多くの競合するネットワーキング・テクノロジーが採用されています。TCP/IP モデルの各層に対応するテクノロジーが複数ありますが、これらのテクノロジーは異なるベンダーによって提供されているか、異なるバーティカル・マーケット (ホーム・オートメーション、医療、産業向け IoT など) を対象としていて、多くの場合は同じ標準プロトコルを実装する際の代替手段を提供します。例えば、LR-WPAN (Low-Rate Wireless Personal Area Network) を規定している IEEE 802.15.4 は、ZigBee、Z-Wave、EnOcean、SNAP、6LoWPAN などの複数の競合テクノロジーによって実装されています。

IoT 内では一般的に、インターネット接続に使用される Ethernet などのテクノロジーを適用できます。けれどもその一方で、IoT の課題に対処することを具体的な目的とした新しいテクノロジーの開発が進められています。スタックの一番下のほうにある物理的な伝送テクノロジーに目を向けると、IoT デバイスと IoT のコンテキストに特有の数多くの課題に直面します。

ネットワークの構造は、そのトポロジーで把握されます。IoT 内で最も一般的に採用されているネットワーク・トポロジーは、スター型トポロジーとメッシュ型トポロジーです。スター型トポリジーでは、各 IoT デバイスが中央のハブ (ゲートウェイ) に直接接続され、接続されたデバイスからのデータをハブ経由で上流に送信します。メッシュ型トポロジーでは、一定の範囲内のデバイスが相互に接続され、ネットワーク内のノードがシンプルなセンサー・ノード、トラフィックのルーティングも行うセンサー・ノード、あるいはゲートウェイ・ノードとして機能することができます。メッシュ型トポロジーのネットワークはスター型トポロジーのネットワークよりも複雑ですが、単一の中央ゲートウェイに依存するのではないため、障害からの回復力に優れているという利点があります。

ネットワーク・アクセスと物理層の IoT ネットワーク・テクノロジー

プロトコル・スタックの一番下のほうに対処する IoT ネットワーク・テクノロジーには、セルラー、Wi-Fi、Ethernet などの他、LPWAN、BLE (Bluetooth Low Energy)、ZigBee、NFC、RFID のような特化したソリューションもあります。

  • LPWAN
    LPWAN (Low Power Wide Area Network) とは、低電力の長距離ワイヤレス通信用に設計されたテクノロジーのカテゴリーです。したがって、ワイヤレス・センサーといった低電力の IoT デバイスを大規模に展開する環境で使用するには最適です。LPWAN テクノロジーの例としては、LoRa (LongRange physical layer protocol)、Haystack、SigFox、LTE-M、NB-IoT (Narrow-Band IoT) が挙げられます。
  • セルラー
    LPWAN NB-IoTLTE-M は、既存のセルラー・ネットワークを使用して低電力かつ低コストの IoT 通信方式を実現することを目的とした標準です。この 2 つの標準のうち、新しいほうの NB-IoT では、主に屋内で使用される膨大な数のデバイス間での長距離通信に重点を置いています。LTE-M と NB-IoT はどちらも IoT 専用に開発されましたが、長距離ワイヤレス通信には既存のセルラー・テクノロジーも頻繁に採用されています。そのような既存のセルラー・テクノロジーとしては、主にレガシー・デバイス内で使用されている 2G (GSM)、ならびに CDMA、3G、4G が挙げられますが、これらのテクノロジーは徐々に姿を消しつつあります。
  • BLE (Bluetooth Low Energy)
    BLE は、よく使われている Bluetooth 2.4 GHz ワイヤレス通信プロトコルの低電力バージョンです。近距離 (100 メートル以下) 通信用に設計されている BLE は、通常はスター型で構成され、単一のプライマリー・デバイスが複数のセカンダリー・デバイスを制御するという形をとります。Bluetooth は、図 1 に示されている OSI モデルのレイヤー 1 (PHY) とレイヤー 2 (MAC) の両方をまたがって動作します。少量のデータのバースト伝送を行うデバイスには、BLE が最適な選択肢となります。そのようなデバイスは、データを送信していない間は節電のためにスリープ・モードになるように設計されているためです。ヘルスおよびフィットネス向けウェアラブル・トラッカーなどの個人用 IoT デバイスでは、多くの場合、BLE を使用しています。
  • ZigBee
    ZigBee も2.4GHz のワイヤレス通信周波数上で動作しますが、最大通信距離が 100 メートルの BLE よりも長距離の通信に対応します。また、BLE と比べると、データ転送速度もわずかに低くなります (BLE では最大 270 kbps であるのに対し、最大250 kbps)。ZigBee はメッシュ型ネットワーク・プロトコルであり、BLE とは異なり、すべてのデバイスをバースト伝送間でスリープ・モードにできるわけではありません。スリープ・モードにできるかどうかは、デバイスがメッシュ内のどこに位置するか、そしてメッシュ内でルーターまたはコントローラーとして機能する必要があるかどうかによって決まります。ZigBee は、照明を制御するといったビルおよびホーム・オートメーション・アプリケーションを対象に設計されました。ZigBee に密接に関連するテクノロジーとしては、Z-Wave もあります。Z-Wave も同じく IEEE 802.15.4 MAC をベースとしており、同じくホーム・オートメーションを対象に設計されていますが、Z-Wave は最近パブリック・ドメインの仕様としてリリースされた、独自仕様のテクノロジーです。
  • NFC
    NFC (Near Field Communication) プロトコルは極めて近距離の通信 (最大 4 cm) に使用されます (例えば、NFC カードまたはタグを読み取り機にかざすなど)。NFC は多くの場合、決算システムに使用されますが、チェックイン・システムや、産業向け IoT アプリケーションの資産追跡におけるスマート・ラベルにも役立ちます。
  • RFID
    RFID は、無線自動識別 (Radio Frequency Identification) を表します。ID とデータが保管された RFID タグがデバイスに取り付けられて、RFID 読み取り機によって読み取られます。RFID の典型的な通信距離は 1 メートル未満です。RFID タグは、アクティブ、パッシブ、または補助式パッシブのいずれかになります。パッシブ・タグの ID は読み取り機によって受動的に読み取られることから、バッテリーを使用しないデバイスに最適です。アクティブ・タブは定期的に ID をブロードキャストし、補助式パッシブ・タグは近くに RFID 読み取り機があるとアクティブになります。Dash7 はアクティブ RFID を使用する通信プロトコルであり、産業向け IoT アプリケーション内でのセキュアな長距離通信を目的に設計されています。NFC と同じく、RFID の典型的な使用ケースは小売業および産業向け IoT アプリケーション内でのインベントリー・アイテムの追跡です。
  • Wi-Fi
    Wi-Fi は IEEE 802.11a/b/g/n 仕様に基づく標準ワイヤレス・ネットワーキングです。802.11n は最大のデータ・スループットをもたらしますが、電力消費量が多くなるという犠牲を伴うため、IoT デバイスでは電力節約を理由に 802.11b または 802.11g だけが使用されています。Wi-Fi は多くのプロトタイプと現世代の IoT デバイスで採用されています。けれども、より通信距離が長く、より電力消費量が低いソリューションが普及するようになる中、Wi-Fi はいずれ、それらの低消費電力ソリューションに取って代わられることになるでしょう。
  • Ethernet
    ローカル・エリア・ネットワーク内での有線接続に幅広く配備されている Ethernet は、IEEE 802.3 標準を実装します。すべての IoT デバイスが、固定して使用するよう意図されたワイヤレス・デバイスでなければならないわけではありません。例えば、ビルのオートメーション・システム内に設置されるセンサー装置では、Ethernet のような有線ネットワーク・テクノロジーを使用することもできます。別の有線接続手法としては、PLC (Power Line Communication) もあります。PLC は専用のネットワーク・ケーブルではなく、既存の電気配線を使用します。

インターネット層の IoT ネットワーク・テクノロジー

インターネット層 (OSL のレイヤー 3) は、データ・パケットの識別とルーティングに関連します。この層に関して IoT 向けに一般的に採用されているテクノロジーには、IPv6、6LoWPAN、RPL があります。

  • IPv6
    インターネット層では、デバイスが IP アドレスによって識別されます。通常、IoT アプリケーションのアドレス指定には、レガシーの IPv4 に優先して、IPv6 が使用されます。IPv4 は 32 ビットのアドレスに制限されるため、使用できるアドレスの数は合計で約 43 億に限られます。この数は、現在接続されている IoT デバイスの数を下回りますが、128 ビットを使用する IPv6 であれば、2128 個 (およそ、3.4 × 1038、または 340兆の1兆倍の1兆倍) のアドレスを使用できます。ただし実際面では、すべての IoT デバイスにパブリック・アドレスが必要というわけではありません。今後数年間にわたって何百億台のデバイスが IoT に接続されると見込まれていますが、その多くはプライベート・ネットワークにデプロイされることになるでしょう。プライベート・ネットワークでは専用のアドレス範囲を使用し、外部ネットワークにある他のデバイスやサービスとの通信はゲートウェイを介してのみ行われます。
  • 6LoWPAN
    6LoWPAN (IPv6 Low Power Wireless Personal Area Network) 標準は、IPv6 を 802.15.4 ワイヤレス・ネットワークを介して使用することを可能にします。6LoWPAN はワイヤレス・センサー・ネットワークによく使われています。また、ホーム・オートメーション・デバイス用の Thread プロトコルも 6LoWPAN 越しに動作します。
  • RPL
    インターネット層はルーティングにも対応します。RPL (IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks) は、低電力のネットワーク (6LoWPAN を介して実装されたネットワークなど) を介して IPv6 トラフィックをルーティングするように設計されています、RPL (「リップル」と発音) の設計目標は、ワイヤレス・センサー・ネットワークといった制約されたネットワーク内でパケットをルーティングすることです。このようなネットワークでは、すべてのデバイスに常に到達できるわけではなかったり、パケット損失量が高いか予測できなかったりします。RPL では、動的メトリックと制約事項 (エネルギー消費量や待ち時間を最小限にするなど) に基づいてネットワーク内のノードのグラフを作成することで、最適パスを計算できます。

アプリケーション層の IoT ネットワーク・テクノロジー

HTTP と HTTPS は、インターネット・アプリケーションで普遍的に使用されていますが、IoT 内でもそれは同じことで、RESTful HTTP および HTTPS インターフェースが広くデプロイされています。UDP 越しには、軽量の HTTP とも言える CoAP (Constrained Application Protocol) が 6LoWPAN と組み合わせて使用されています。さらに、MQTT、AMQP、XMPP のようなメッセージング・プロトコルも IoT アプリケーション内で頻繁に使用されています。

  • MQTT
    MQTT (Message Queue Telemetry Transport ) は、パブリッシュ/サブスクライブ・ベースのメッセージング・プロトコルです。このプロトロコルは、特に信頼性に欠けるネットワーク上のセンサーやモバイル・デバイスを対象に、帯域幅が低い状況で使用するために設計されました。
  • AMQP
    AMQP (Advanced Message Queuing Protocol) は、メッセージ指向ミドルウェア用のオープン・スタンダード・メッセージング・プロトコルです。特に注目すべき点として、AMQP は RabbitMQ によって実装されている点があります。
  • XMPP
    XMPP (Extensible Messaging and Presence Protocol) は当初、インスタント・メッセージを含むリアルタイムの人間対人間の通信用に設計されましたが、マシン・ツー・マシン (M2M) 通信向けに軽量のミドルウェアを実装する目的や、XML データをルーティングする目的で採用されるようになっています。XMPP は主にスマート・アプライアンスと組み合わせて使用されています。

この層でどのテクノロジーを選ぶかは、IoT プロジェクトの具体的なアプリケーション要件によって決まります。例えば、複数のセンサーを使用した手頃なホーム・オートメーション・システムの場合、多くのストレージや処理能力のないデバイス上にメッセージングを実装するにはシンプルで軽量のプロトコルがふさわしいことから、MQTT が最良の選択肢になります。

IoT ネットワーキングの考慮事項と課題

IoT アプリケーション内にどのネットワーキング・テクノロジーを採用するかを検討する際は、以下の制約事項を考慮してください。

  • 通信距離
  • 帯域幅
  • 電力使用量
  • 断続的接続
  • 相互運用性
  • セキュリティー

通信距離

ネットワークは、そのネットワークに接続された IoT が通常データを送信する距離という点から説明することができます。

  • PAN (Personal Area Network)
    PAN は数メートル単位の近距離通信ネットワークです。PAN では、例えば、ウェアラブル・フィットネス・トラッカー・デバイスが BLE を使用して携帯電話上のアプリと通信します。
  • LAN (Local Area Network)
    LAN は近距離から中距離の通信ネットワークであり、通信距離は最大数百メートルです。LAN では、例えばホーム・オートメーションまたは工場の製造ライン内に設置されたセンサーが、同じビル内に設置されたゲートウェイ・デバイスと Wi-Fi を使用して通信します。
  • MAN (Metropolitan Area Network)
    MAN は、通信距離が最大で数キロメートルに及ぶ長距離 (都市の規模) 通信ネットワークです。MAN では、例えば都市全体にわたって設置された数々のスマート・パーキング・センサーが、メッシュ型ネットワーク・トポロジーで接続されます。
  • WAN (Wide Area Network)
    数キロメートルの長距離通信に対応する WAN では、例えば大規模な農場や牧場全体に渡って設置された多数の農業用センサーを使って、その地所の微気候環境状態をモニターします。

ネットワークを設計する際は、IoT デバイスからのデータがそのデータを使用する場所まで到達するようにしなければなりません。したがって、使用ケースに必要となる通信距離に対応できるネットワーク・プロトコルを選択してください。例えば、数キロメートルにわたって稼働しなければならない WAN に BLE を選択することはできません。必要な距離までデータを送信するのが難しい場合は、エッジ・コンピューティングの採用を検討してください。エッジ・コンピューティングでは、データ処理を行う場所にデータを送るのではなく、分析機能をデバイスのデータに近づけます。

帯域幅

帯域幅、つまり特定の期間内に送信できるデータの量によって、IoT デバイスからデータを収集して上流に送信できる速度が制限されます。したがって、以下の要素を考慮する必要があります。

  • 各デバイスが生成するデータの量
  • ネットワーク内にデプロイするデバイスの数
  • データが常時ストリームとして送信されるのか、(ピーク期間に使用可能な帯域幅に対処する必要があるため) 断続的なバースト伝送で送信されるのか

選択するネットワーキング・プロトコルのパケット・サイズは、通常送信するデータのサイズと一致している必要があります。パケットに空のデータをパディングして送信するのは非効率的ですが、その反面、データを複数のチャンクに分割して小さい多数のパケットとして送信するとなるとオーバーヘッドが生じます。データ転送速度は常に対称的であるとは限りません (つまり、アップロード速度がダウンロード速度よりも遅くなる可能性があるということです)。そのため、デバイス間で双方向通信が行われる場合は、データ送信を考慮に入れる必要があります。ワイヤレス・ネットワークとセルラー・ネットワークは従来から低帯域幅のネットワークであるため、大量のデータを扱うアプリケーションにワイヤレス・テクノロジーが正しい選択であるかどうかを検討してください。

また、ロー・データのすべてを送信する必要があるかどうかも考慮する必要があります。1 つのソリューションとしては、キャプチャーするデータの量を減らすことが考えられます。それには、低い頻度でサンプリングするか、キャプチャーする変数の数を減らすか、あるいはデバイス上で何らかのフィルタリングを実行して、あまり重要でないデータをドロップするという方法があります。データを集約してから送信すると、送信するデータの量を削減するのに役立ちます。ただし、このプロセスは、上流の分析での柔軟性と粒度に影響を与えることになります。時間に依存するデータと待ち時間の制約があるデータのいずれにしても、常に集約とバースト伝送が適しているとは限りません。これらすべての手法は、IoT デバイスのデータ処理要件とストレージの要件を厳しくすることになります。

電力使用量

デバイスからのデータを送信すると、電力が消費されます。また、データを長距離まで送信する場合、近距離を送信する場合よりも消費電力が高くなります。電力を節約するためにバッテリーで稼働するデバイスについては、バッテリー寿命を延ばし、運用コストを削減することを考慮する必要があります。バッテリー寿命を延ばすには、デバイスがアイドル状態の間はスリープ・モードにするという方法があります。1 つの賢明な策として、まず、デバイスにかかる負荷とネットワークの状態をさまざまに変えてデバイスのエネルギー消費量をモデル化します。そのモデルを基に、デバイスの電源とストレージ容量が、採用したネットワーキング・テクノロジーを使用してデータを送信するために必要な電力量に釣り合うことを確認してください。

断続的接続

IoT デバイスは常に接続状態を維持するとは限りません。場合によっては、電力または帯域幅を節約するために、デバイスが定期的に接続するようになっていることもあります。けれども不安定なネットワークでは、接続問題によってデバイスの接続が切断される可能性もあります。周波数を共有するワイヤレス・ネットワーク上では、干渉やチャネル競合の対処といったサービス品質の問題が発生することも考えられます。

相互運用性

IoT には多種多様なデバイスが接続されることから、相互運用性が課題になりがちです。インターネット上では、相互運用性を維持するために、従来から標準プロトコルを採用するという方法が採られています。けれども IoT の場合、標準化のプロセスが急速な変化に追いつかず、まだ変更される可能性がある次期バージョンの標準をベースとしたテクノロジーがリリースされる場合もあります。そのような場合は、そのテクノロジーを取り巻くエコシステムを考慮する必要があります。つまり、そのテクノロジーが広く採用されているのかという点、オープンまたは独自仕様のどちらであるのかという点、そして利用できる実装がいくつかあるのかという点を考慮してください。

セキュリティー

セキュリティーは常に優先事項です。したがって必ず、認証、暗号化、オープン・ポートの保護を含む包括的なセキュリティーを実装するネットワーキング・テクノロジーを選択してください。例えば、IEEE 802.15.4 のセキュリティー・モデルで規定しているセキュリティー機能には、アクセス制御、メッセージ整合性、メッセージ機密性、再生保護が含まれており、この標準に基づく ZigBee などのテクノロジーは、これらのセキュリティー機能を実装します。

  • 認証
    ゲートウェイ、ユーザー、アプリケーションおよびサービスに対するデバイス・レベルでの認証をサポートする、セキュアなプロトコルを採用してください。例えば、デバイス認証には X.509 標準の採用を検討する価値があります。
  • 暗号化
    Wi-Fi を使用しているとしたら、ワイヤレス・ネットワークの暗号化には WPA2 (Wireless Protected Access 2) を使用できます。あるいは、PPSK (Private Pre-Shared Key) 手法を採用するという方法もあります。アプリケーション間の通信用にプライバシーとデータ整合性を確保するには、必ず TLS または DTLS (Datagram Transport-Layer Securit) を採用してください。DTLS は TLS をベースとしていますが、UDP を介して稼働する不安定な接続に採用されています。TLS はアプリケーションのデータを暗号化して、データの整合性を確実にします。
  • ポート保護
    ポート保護によって、ゲートウェイまたは上流のアプリケーションやサービスとの通信に必要なポートだけが、外部接続に対してオープン状態に維持されるようにします。他のすべてのポートは無効にするか、ファイアウォールによって保護される必要があります。例えば、UPnP (Universal Plug and Play) の脆弱性が悪用されてデバイスのポートが公開される可能性があるため、ルーター上の UPnP は無効にしなければなりません。

まとめ

どの IoT ネットワーキング・テクノロジーを採用するかを決める際は、全体的な妥協が伴います。ネットワーキング・テクノロジーの選択は IoT デバイスの設計に影響するだけでなく、この記事で取り上げた考慮事項のほとんどの間には依存関係があります。例えば、ネットワークの通信距離、データ転送速度、および電力消費量の間には直接的なつながりがあります。ネットワークの通信距離を拡大したり、データを送信する速度を上げるか、量を増やしたりすると、ほぼ必ずと言ってよいほど、IoT デバイスがそれらの条件の下でデータを送信する際の電力消費量が増えます。

基本的なホーム・オートメーション・プロジェクトの場合、デバイスには直接コンセントから電源供給されるため、電力に関する考慮事項はそれほど重要な選択基準ではないはずです。それよりも優先されるのは、帯域幅の制限と接続切断なので、そのようなプロジェクトには、Wi-Fi を採用できます。Wi-Fi であれば十分な帯域幅が提供されるだけでなく、一般商品化されたハードウェアを使えるため、プロジェクトを構築しやすくなります。ただし、Wi-Fi は低電力のデバイスに最適化されていないことから、バッテリー駆動型のデバイスには有効な選択にならない場合があります。

この記事では、IoT で最もよく使われているネットワーキング・プロトコルとテクノロジーの概要を説明しました。記事で取り上げた IoT ネットワーキングの課題と照らし合わせて独自の要件を検討し、IoT アプリケーションに最適なテクノロジーを見つけてください。


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