ブロックチェーンとシェアリング・エコノミー 2.0

開発者にとってのブロックチェーンの真の可能性

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現在、私たちはブロックチェーン・テクノロジー・サイクルの幕開けの時代にいます。ビットコインはブロックチェーンの最初の、そして最も注目すべきアプリケーションですが、それは単なる始まりに過ぎません。今や、私たちは中央当局が存在しなくてもネットワーク内で信用を提供可能にするテクノロジーを手にしています。

ブロックチェーン・テクノロジーには、あらゆる経済活動の形を変える可能性が秘められています。それほどまでにブロックチェーンが重要なテクノロジーであるのは確かなことですが、残念ながらブロックチェーンは暗号通貨であるビットコインと絡めて認識されています。そのため人々のブロックチェーンに対する発想は制限され、このテクノロジーに秘められた、暗号通貨に限られない大きな可能性を見て取れなくなっています。資本市場のプラットフォームとしてブロックチェーンを使用するという考え方にとらわれ、それ以外の用途を見つけるのは難しいと感じているのです。しかしながら、ブロックチェーンを金融サービスで利用するというのは、あくまでも 1 つの特定分野での使用事例にすぎません。ブロックチェーンには、他のあらゆる分野でも有益な使用事例があります。例えば、ダイヤモンドの取引で原産地を証明する (EverLedger など)、貴重品の加工・流通過程の管理を可能にする (Assetcha.in など)、あるいは不動産市場での貸借契約を改善する (Midasium など) といったサプライ・チェーンにおける事例などです。可能性を制限するのは、想像力以外にありません。

ブロックチェーンの全体像をさらにわかりにくくさせている原因は、標準化された用語や競合するプロジェクトがないことにもあります。ブロックチェーンという言葉を、ビットコイン・ブロックチェーンという意味で使う人もいれば、分散型台帳という意味で使う人もいます。決算用の Ripple やデータ完全性を確保する Guardtime など、プライベート・ブロックチェーン・ソリューションを提供している企業もあります。例えば、43 行の銀行からなる R3CEV というバンキング・コンソーシアムでは、プライベート・バンキング・ブロックチェーンを確立することを計画しています。

これらすべての事例の基礎となっているのは、ブロックチェーンは中央当局を介在させずにネットワーク内で信用を確保できるという点にあります。ブロックチェーンが標準化される日まで、そう遠くはないでしょう。現在、Linux が主導し、IBM と JP Morgan が参加する Hyperledger プロジェクトでは、産業界共通のオープン・スタンダードの作成に取り組んでいます。

非中央集権型の信用

農業革命以来、中央集権は経済と社会の中核的な組織化原則となってきました。人口が増加するにつれ、人々は個人、家族、氏族だけでなく、一般集団に利益をもたらす意思決定を行わなければならなくなったためです。この中央集権のダイナミクスは、経済領域でも展開されています。多数の顧客を持つ大規模な組織は、効率性の向上とコストの削減を目的に、垂直統合を行い、機能を中央に集中させる傾向があります。通信や取引に高いコストがかかる場合は、経済的集中が最も効果的な組織化原則です。しかし、このような中央集権の形は変わりつつあり、人間の組織に奥深い影響を与えようとしています。それは、インターネットによって通信コストが低くなったためです。ブロックチェーンはインターネットと同じことを、取引コストに対して行います。

ブロックチェーンは中央当局を不要にすることから、歴史上最も重要な民主化の推進力となる可能性があります。ブロックチェーンと非中央集権型の信用からなるアプリケーションは、認識されている以上に強力です。会計、法律サービス、不動産、そして e-コマースなどの業界ではいずれも、買い手と売り手との間で信用を確保することを基本とするビジネス・モデルを構築しています。古くから存在する業界では、買い手と売り手との間の信用が法制化されており、それによって参入に対して障壁を作り、新規参入者から守られるようにしています。一方、市場で中間業者として役割を果たす企業にとって、ブロックチェーンは低コストによる市場混乱を意味します。

インターネットでは、コンテンツをパッケージ化して、それをデータとして他の誰にでも送信することができます。その際、配布業者は必要ないため、コンテンツの送信に伴う通信コストはほぼゼロに削減されます。ブロックチェーンは、物理資産とデジタル資産の両方をパッケージ化し、誰にでも送信することを可能にしますが、その際に中央当局を必要としない経済インフラストラクチャーです。このインフラストラクチャーは、資産の送信に伴う取引コストをほぼゼロに削減するため、例えば家を売るにも、ブログ購読のマイクロペイメントを行うときと同じように簡単に売ることができます。従って、インターネット上の万人にとって、ブロックチェーンはスケーラブルなビジネス・モデルになります。

シェアリング・エコノミー 2.0

ブロックチェーンがより広く理解されるようになるにつれ、ブロックチェーンによって既存の業界にどのような混乱が生じるかに注目が集まってくるでしょう。e-コマース、法律サービス、および不動産業界は、ブロックチェーンをベースとした低コストのサービスのターゲットになるはずです。中間業者のなかには、信用だけでなく、さらに大きな価値を提供しているところもあります。例えば Amazon.com では、ロジスティクス、商品の推奨、翌日配達を利用することができます。その一方で、競合他社から自社を守るための署名と法律だけを提供する中間業者もあります。中間業者が必要なくなることで、一部の大手テクノロジー企業には影響が及ぶことが考えられます。他者とつながるために Uber、Airbnb、または eBay を利用するのではなく、真のシェアリング・エコノミーを先駆けるブロックチェーン・サービスを利用すれば、個人同士が直接つながり、シェアしあい、取引できるようになるからです。ブロックチェーンは、本当の意味での個人間での取引、そして本当の意味での「シェアリング・エコノミー」を実現するプラットフォームなのです。

市場混乱は刺激的な話題であり、多くのニュースで取り上げられ、多額の顧問料を集めています。しかしそれよりも重要な点は、ブロックチェーンによって新しい市場が生み出されることです。それらの市場は、従来とは異なる資産 (評判、データ、注目など) を個人が取引できる市場です。ブロックチェーンによって、あらゆるアクティビティーを小規模ながらも簡単に収益化することができます。ブロックチェーンを利用する方法はさまざまに考えられます。例えば、ブロックチェーンを利用してエネルギーを共有し、マイクログリッド環境でエネルギー・トークンを獲得するという方法があります。アドバイス・トークンを支払って 30 分間の電話コンサルティングを受けるという方法もあります。あるいは、ゲノム・データを共有してトークンを手に入れるというのはどうでしょう?データが利用されるたびに、ライセンス供与型モデルでトークンを受け取るという方法です。

まとめ

あらゆる既存の経済活動においても、まだ収益化が可能でない社会活動においてさえも、機会は膨大に広がっています。ブロックチェーンによって打ち出される展望は、まさに社会と経済の形を新たにすることに他なりません。アプリケーションを構築して実験を開始するかどうかは、開発者次第です。ブロックチェーンには、これまでよりも低価格の監査サービスや会計サービスを提供できる機会があります。多くの適法契約は標準化されているため、ブロックチェーンとスマート契約を利用して低価格の法律サービスを提供することもできます。さらに大きく考えて、選挙に利用するというのはどうでしょう?選挙にはセキュリティー、匿名性、不正防止の要件が伴うため、選挙はブロックチェーン・サービスの最高の使用事例になります。ブロックチェーンによって、さまざまな業界全体が作り変えられることになるでしょう。この分野に飛び込むには今が絶好のタイミングです。


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