目次


IBM Cognos BI 10.1へのアップグレード

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1.はじめに

IBM Cognos BI は、単一のサービス指向アーキテクチャー (SOA) プラットフォームの上で、最適な意思決定を行うために必要となる様々なビジネス・インテリジェンス機能を提供する製品です。アップグレードは1 つの IT プロジェクトであり、通常綿密な計画、十分な時間、人員を要します。インストール作業の詳細については別途製品ドキュメントで詳細が確認できます。当文書では、既存のIBM Cognos 8 BI環境を最新バージョンへアップグレードするにあたり、計画段階から具体的なアップグレードのアプローチ方法、推奨事項や注意事項をまとめます。当文書の対象は主として IBM Cognos 8 BI 8.4.1 から 最新の IBM Cognos BI 10.1 へのアップグレードとします。また、ReportNet からのアップグレードやSeries 7 PowerPlay のマイグレーション、Metric Studioについても参考情報を補足しています。

当文書ではまずアップグレードのワークフローを説明します。次にアップグレードのサポート環境、アップグレードで役に立つ機能としてモデルおよびレポート仕様のアップグレードに関する情報、新しい環境でレポートを実行して同じ結果が生成されることを確認するための検証ツールであるLifecycle Manager の概要、さらにCognos 10.1 の新環境から既存の Cognos 8 環境のCognos Connection にアクセスすることも可能にするMulti-version coexistence機能の説明を行います。その後、アップグレードの複数のアプローチの紹介とそれぞれの特徴について述べます。さらに具体的なアップグレードの手順をひとつスクリーンキャプチャと共に紹介します。最後にアップグレード後の製品動作についての注意事項をまとめます。

なお当文書ではCognos 8、IBM Cognos BI 10.1をそれぞれ C8、C10.1と表記します。APARやPTFといったサポート用語については、IBM ソフトウェア・サポート・ハンドブックや文末の参考文献 に記載のリンクを参考にしてください。

2.アップグレードのワークフロー

IBM Cognos BI のアップグレードに関する全体的なワークフローについて、計画 ・実施・ 評価の全体像やそれぞれの関連性を示すとともに、アップグレードのワークフローに対する概要を説明します。

図1. アップグレード全体のワークフロー
表1. アップグレードの各段階と説明
段階説明
(1)アップグレードの計画机上でアップグレードの計画を行います。マニュアルに記載の情報の事前確認を行います。マニュアル「新機能ガイド」や「リリースノート」の他にも、「Report Authoringユーザーガイド」等の各ユーザーガイドの情報も参照してください。また、Cognos Customer Center にはアップグレードに関する情報へのリンクがまとめられています。
(2)アプリケーションの評価既存環境におけるCognos製品、その他のOSやデータベース、アプリケーションサーバー等の3rdパーティー製品の設定情報やカスタマイズされた情報を確認します。また、アップグレードの評価を行う対象のレポートなどの既存コンテンツを選定し、手順およびスケジュールを検討します。このとき、ビジネス上の観点でレポートやパッケージのアップグレードの必要性についても検討します。
あるユーザーやアプリケーション、部門において既存環境をそのまま使い続ける必要がある場合や、バックアップとしての準備を行う、あるいは計画的段階的な移行を行うといった場合には、新しい環境でのMulti-version coexistence(複数のバージョンの共存)を検討します。
マニュアル「インストールと設定」のソース環境でのアプリケーションの評価に、詳細の評価項目が記載されています。
(3)新しい環境の作成Cognos BI 10.1 のアップグレードのテスト環境を作成します。一般的にアップグレード時には、現在稼動中の旧バージョンの既存環境、新バージョンの機能検証を行うための評価環境、新バージョンを稼動させる本番環境の3つの環境が必要となります。
(4)配布プロセス、および(5)アップグレードしたアプリケーションのテストレポートなどの既存コンテンツを評価環境にアップグレードし、テストする、という一連の流れを反復して行います。移行元のシステム環境の複雑さに応じて反復作業の回数や作業工数は大きく変化する場合があります。
(6)実働環境へ移行本番環境への移行作業を行います。
アップグレードは一括で行うことも段階的に行うことも可能です。アップグレードのリスクを極小化するため、段階的なアプローチを検討します。

3.アップグレードのサポート環境

IBM Cognos BIの以前のバージョンをアップグレードする際には事前にアップグレードターゲットバージョンのサポート環境を確認する必要があります。

表2. アップグレードの前提条件
サポート環境前提条件
ソフトウェア環境ReportNet/C8とC10.1ではサポート環境に差異があります。アップグレードの際にはC10.1で使用するソフトウェア環境がサポートされていることを確認する必要があります。
参考文献に記載の以下のそれぞれのリンクを参考にしてください。
  • IBM Cognosのソフトウェア環境(全体)
  • Cognos Business Intelligence 10.1 Software Environments
サポート対象外のソフトウェア環境や仮想環境の使用における方針については、必要に応じて参考文献に記載の以下の情報を確認する必要があります。
  • Cognos Unsupported Environments Policy
  • Cognos virtualization policy
  • Virtualization Policy for IBM Software
ソフトウェア要件C10.1で使用するWebサーバ、Java Runtime Environment(JRE)、データベース、Webブラウザなどのソフトウェア要件を確認する必要があります。ソフトウェア要件はマニュアル「インストールと設定」に従います。参考文献に記載の以下のリンクを参考にしてください。
  • ソフトウェア要件
システム要件C10.1で使用するオペレーティング システム、メモリ、ディスク容量などのシステム要件を確認する必要があります。C10.1 の Graphics サービスや動的クエリーモードといった新機能を実現するために、以前のバージョンに比べて起動されるプロセスが増えています。それに伴いリソースの消費量も増える可能性があることを考慮してください。システム要件はマニュアル「インストールと設定」に従います。参考文献に記載の以下のリンクを参考にしてください。
  • システム要件
アップグレードのサポートパスC10.1はReportNet/C8のコンテンツを直接にアップグレードできるバージョンです。その他のバージョンのアップグレードのサポートパスについては参考文献に記載のIBM Cognos Supported Products のリンクからUPGRADE VERSIONを確認する必要があります。
ReportNet1.1以前のバージョンは、まずReportNet1.1(MR1~MR4)のいずれかのバージョンにアップグレードしてから、C10.1にアップグレードする必要があります。
  • IBM Cognos Supported Products

なお、64 ビット版の IBM Cognos BI 製品をインストール する場合は、あわせて参考文献に記載のリンク「64 ビット版の IBM Cognos BI 製品のインストール」をご参考ください。

4.アップグレードのアプローチ

以前のバージョンのコンテンツをC10.1にアップグレードする方法は主に以下の2通りに分けられます。

  • Content Store DB全体のアップグレード
  • 段階的なアップグレード

Content Store DB全体のアップグレード

C10.1のIBM Cognos Configurationを使用して以前のバージョンのContent Store DB全体をアップグレードできます。Cognos Configurationで以前のバージョンのContent Store DBへの接続情報の設定を完了しC10.1のサービスを最初に起動した際にはレポート仕様をアップグレードするか否かの選択ダイアログが表示されますが、このダイアログで[レポート仕様をアップグレード]にチェックを入れ、C10.1のサービス起動を続行すると、Content Store DB全体のアップグレードが行われます。この場合、アップグレードされたContent Store DBが使用できなくなりますので、C10.1のサービス起動を続行する前には、必ずContent Store DBのバックアップの有無を確認する必要があります。また、Content Store DB全体のアップグレードはC10.1上でのアップグレード処理を一度の作業で完了できますが、進捗確認の機能がないため、Content Store のサイズが大きい場合にはアップグレード処理の完了時間の予測が難しくなる可能性があります。

段階的なアップグレード

以前のバージョンのContent Store DBを活用する方法またはC10.1バージョンで生成した新規のContent Store DBを活用する方法でレポート仕様を段階的にアップグレードできます。以前のバージョンのレポートを実行すると、自動的に新しいバージョンのレポートにアップグレードされて実行されます。また、段階的なアップグレードでレポートがいつアップグレードされたかを確認するには、Report Authoring で対象となるレポートを開き、[ツール]メニューの[クリップボードにコピー]をクリックし、コピーしたレポート仕様をテキストエディタに貼り付けてRSU-SPC-0093 のメッセージを検索します。

段階的なアップグレードには、さらに (1) 以前のバージョンのContent Store DBを活用する方法と、(2) C10.1で生成した新規のContent Store DBを活用する方法のいずれかを選択することができます。

(1) 以前のバージョンのContent Store DBを活用

Cognos Configurationからのアップグレードで、[レポート仕様をアップグレード]のオプションを選択せずにC10.1のサービス起動を続行し、以前のバージョンのContent Store DBのすべてのコンテンツを移行しつつ、C10.1の最初のサービス起動時にレポート仕様のアップグレードを行わない方法です。レポート仕様は、Cognos Administration のコンテンツ管理機能、または Report Authoring や Query Studio といったレポートの作成ツールで準備が整ったコンテンツから段階的にアップグレードできます。この手順を用いた方法は次の章で詳しく説明します。

(2) C10.1で生成した新規のContent Store DBを活用

配布アーカイブのエクスポート/インポートの機能を使用して、以前のバージョンのコンテンツを移行します。レポート仕様のアップグレード実施の有無は、Cognos Administration の配布アーカイブのインポートの際に指定も可能で、ここで指定しない場合は、コンテンツ管理機能、Report Authoring や Query Studio といったレポートの作成ツールで、準備が整ったコンテンツから段階的にアップグレードできます。

5.アップグレードの手順

この章では、上記「アップグレードのアプローチ」で説明したアップグレード方法の1つである「Content Store DB全体のアップグレード」の手順を概要レベルで説明します。また、この手順はC10.1で使用するサーバは新たなサーバであり、そのサーバ内にC10.1の環境を構築することを想定しています。

通常、既存環境(C8)と新環境(C10.1)は別々のサーバへ構築することが一般的ですが、必要に応じてC8をアンインストール後に同一サーバの同一ディレクトリにC10.1をインストールする方法、あるいはC8をアンインストールせず同一サーバの異なるディレクトリにC10.1をインストールする方法も使用できます。後者の場合は Web サーバーのウェブエイリアスやポート番号が重複しないように構成します。同一サーバに C8 と C10.1 を構成する場合は、CPUやメモリ、ディスクといったリソースの問題も考慮します。

Content Store DB全体のアップグレード

1. C8のContent Store DBをRDBMSの機能でバックアップします。

2. C10.1で使用するソフトウェア環境がアップグレードの前提条件を満たしていることを確認します。アップグレードの前提条件として「アップグレードのサポート環境」の章で説明した内容に沿っていることを確認してください。

3. C10.1のサーバにCognos BI 10.1の新規インストールと環境設定を行います。この段階で使われるContent Store DBは、C10.1の新規インストールに問題ないことを確かめるために使用される一時的なDBです。Cognos Configuration上の各種URI・ポート番号の設定やウェブサーバの設定など、初期インストール時に必要な基本手順はマニュアル「インストールおよび設定ガイド」に従います。

4. C10.1のサービスを起動しIBM Cognos Connectionへの接続に問題ないことを確認します。

5. C10.1のサービスを停止します。

6. C10.1でアップグレード用で使用する新たなContent Store DBを生成します。ここではDBの名前の例としてC10CSDBとします。

7. C8でバックアップしたContent Store DBをC10CSDBにRDBMSの機能で復元します。

8. C10.1のIBM Cognos Configurationを開きます。

9. [ローカル設定]→[データアクセス]→[Content Manager] のContent StoreにC10CSDBへの接続情報を設定し、Content Store DBへの接続テストに問題ないことを確認します。

10. 設定を保存し以下のダイアログのように保存処理にエラーがないことを確認します。

 

11. IBM Cognos Configurationでサービスを開始します。また、サービスを開始するとレポート仕様をアップグレードするか否かの以下のダイアログが表示されますので、このダイアログで[レポート仕様をアップグレードする]にチェックを入れ、[はい]ボタンをクリックします。

 

12. IBM Cognos Configurationからのアップグレード処理およびサービス起動が完了するまで待ちます。

 

13. アップグレード処理の結果ログ<c10_install>\logs\upgradeLog.xmlにエラーがないことを確認します。注:upgradeLog.xmlではアップグレード結果を確認できます。xmlファイルの内容で「failure="x"」のxに0ではない数値が記録されている場合は、アップグレード処理でエラーがあったことを示します。

14. C10.1のサービスを起動しIBM Cognos Connectionへの接続に問題ないことを確認します。また、以前のバージョンの共有フォルダと個人フォルダの中身が移行されているかを確認します。

15. 以前のバージョンで以下のファイルをカスタマイズしている場合、カスタマイズしたファイルを移行します。詳細は「8.アップグレード後の製品動作に関する注意事項」に記載のそれぞれの内容を確認してください。

  • system.xml
  • cogdm*.ini
  • *.css
  • *.js

その他にC8の環境で使用した画像ファイル(*.jpgや *.png、*.gif など)、html、xml等のファイルを編集している場合はそのファイルの内容も移行先の環境のファイルに手動で反映する必要があります。

16. C10.1のサービスを再起動し、アップグレード前後の動作を検証します。レポート検証にはLifecycle Managerツールの活用を推奨します。また、レポート結果を目視で比較する際には以下の内容を中心にチェックすることを推奨します。「8.アップグレード後の製品動作に関する注意事項」を参考にしてください。

  • 表示書式
  • グラフ
  • JavaScriptの動作
  • ソート順
  • 合計値
  • レポートのレイアウト

以前のバージョンの Metrics Manager では情報の格納、整理、取得の目的で Data Store が使用されていました。これはIBM Cognos BI の Metric Store に相当するデータベースです。Metric Store は 8.x 以外のバージョンの Metrics Manager と互換性がありません。そのため Data Store を移行する場合、Data Store でバックアップを取得しておき、コンテンツをフラットファイルにエクスポートし、そのフラットファイルをC10.1環境の Metric Store にインポートする必要があります。アップグレード手順の詳細はマニュアル「インストールと設定」に記載があります。

6.アップグレードで役に立つ機能

この章では、C10.1で使用することができるアップグレードおよびマイグレーションに役にたつ機能として、以下の6つの機能を紹介します。

  • Multi-version coexistence(複数のバージョンの共存)
  • 配布アーカイブのインポート
  • コンテンツの保守
  • Framework Managerおよびレポートの作成ツール
  • Lifecycle Manager
  • Migration Tools

Multi-version coexistence(複数のバージョンの共存)

C10.1では、新機能としてMulti-version coexistenceがサポートされています。この機能により、C10.1のポータル(IBM Cognos Connection)からC8のコンテンツを直接閲覧できます。管理者は準備が整ったコンテンツから順に移行できるためアップグレード作業時の柔軟性が高まります。また、この機能はレポート仕様のアップグレードを完了するまでの間に一時的な対応として活用できます。

Multi-version coexistenceを使用するには以下の制約条件を満たす必要があります。特定のComponent Updater を入手するにはIBM Cognos サポート窓口にお問い合わせ下さい。

  • C8とC10.1は同一のドメインに所属している。
  • C8とC10.1で認証プロバイダは同一である。
  • C8とC10.1は独立したウェブエイリアスで構成されている。
  • C8は以下3つのいずれかのバージョンがインストールされている。
    • 8.3 (Component Updater 8.3.86.1045) ※8.3のFP5をインストール後に別途8.3.86.1045を適用する必要があります。
    • 8.4 (Component Updater 8.4.29.1331) ※8.4のFP2をインストール後に別途8.4.29.1331を適用する必要があります。
    • 8.4.1 (パッチ不要)

この機能を有効にするにはC8と10.1のそれぞれのバージョン環境でいくつかのパラメータの設定を行う必要があります。以下では設定手順を説明しますので参考資料(Technote#1459041)にあわせてご確認ください。

Multi-version coexistenceの設定手順 – C8側

  1. C8のIBM Cognos Administrationに移動します。
  2. [ステータス]タブ上の[システム]をクリックします。
  3. [スコアカード]の表示領域にある[システム]の右横の三角アイコン(操作)をクリックします。
  4. [プロパティを設定]をクリックします。
  5. [設定]タブに移動します。
  6. 詳細設定の[編集…]をクリックします。
  7. 以下のパラメータと値を設定します。
    パラメータ:MVC_gateway
    パラメータの意味と値の例:C10.1のCognos Configurationで設定されている Gateway URIを設定します
    例)http://<c10server>.ibm.com:80/<c10alias>/cgi-bin/cognos.cgi
  8. IBM Cognos Configurationの[ローカル設定]→[セキュリティ]→[IBM Cognos Application Firewall]の[有効なドメインまたはホスト]でCognosサーバの使用ドメイン(例:*.ibm.com)を設定します。
  9. C8のサービスを再起動します。

Multi-version coexistenceの設定手順 – C10.1側

  1. C10.1のIBM Cognos Administrationに移動します。
  2. 上記2~6と同様の手順をC10で行います。
  3. 以下2つのパラメータと値を設定します。
    パラメータ:MVC_remoteGateway
    パラメータの意味と値の例:C8のCognos Configurationで設定されているGateway URIを設定します。
    例)http://<c8server>.ibm.com:80/<c8alias>/cgi-bin/cognos.cgi

    パラメータ:MVC_remoteWebContent
    パラメータの意味と値の例:Gateway URIのエイリアスの情報を設定します。
    例)http://<c8server>.ibm.com/<c8alias>
  4. IBM Cognos Configurationの[ローカル設定]→[セキュリティ]→[IBM Cognos Application Firewall]の[有効なドメインまたはホスト]でCognosサーバの使用ドメイン(例:*.ibm.com)を設定します。
  5. C10.1のサービスを再起動します。

管理者が上記のパラメータ設定を完了した際にはC10.1のポータル上にアイコン(図2.リモートシステムからコンテンツにリンク)が新たに表示されます。また、管理者および使用者はこのアイコンをクリックし呼び出し元(C8コンテンツへのパス)を定義することでC8サーバ上の共有フォルダおよび個人フォルダを閲覧できます。

図2. リモートシステムからコンテンツにリンク

配布アーカイブのインポート

IBM Cognos Administrationのコンテンツ管理機能の1つである以下図3の[インポートの新規作成]の機能で、図4. のインポートの実行オプション[全レポート仕様を最新のバージョンにアップグレード]の項目にチェックを入れることでインポート処理中に古いバージョンのレポート仕様をアップグレードできます。

図3. インポートの新規作成
図4. インポートの実行オプション
図4. インポートの実行オプション
図4. インポートの実行オプション

コンテンツの保守

IBM Cognos Administrationのコンテンツ管理機能の1つである[コンテンツ保守を新規作成]→[レポートのアップグレードを新規作成]からレポート仕様をアップグレードできます。(図5)

図5. レポートのアップグレードを新規作成
図5. レポートのアップグレードを新規作成
図5. レポートのアップグレードを新規作成

[レポートのアップグレードを新規作成]を行う際にはアップグレードの対象となるパッケージと場所を指定することでその場所のレポート仕様をアップグレードできます。また、アップグレードのオプションで[パッケージに基づくレポート]にチェックを入れた状態で保守タスクを実行することで指定した場所のパッケージを参照している場所とは別の場所に存在するレポートをアップグレードすることも可能です。(図6)

図6. コンテンツ保守タスクの新規作成ウィザード

Framework Managerおよびレポートの作成ツール

Framework Managerのモデルとプロジェクトをアップグレードするには、C10.1バージョンのFramework Managerで以前のバージョンのプロジェクトを直接に開いてモデルの検証を終えてからそのプロジェクトを再保存する必要があります。FMモデルのアップグレード方法の詳細はマニュアル「Framework Manager User Guide」に従います。

パッケージのアップグレードについては、ユーザー側でアップグレードするか否かを選択できるレポートのアップグレード動作とは異なり、古いバージョンの配布アーカイブをインポートするタイミングまたはContent Store DB全体をアップグレードするタイミングでパッケージも自動的にアップグレードされます。

レポートのアップグレードで使用できる機能としては、上記で説明した配布アーカイブのインポート、コンテンツの保守の他にも、Cognos Configurationから最初のサービス起動時にレポート仕様をアップグレードする機能とReport Authoring、Query Studio等のレポート作成のツールから古いバージョンのレポート仕様を直接に開いてそのレポートを再保存する方法で、レポートをアップグレードできます。

Lifecycle Manager

C10.1のLifecycle Managerは、シングルユーザー用のアプリケーションで、アップグレードの移行元の環境(Source)と移行先の環境(Target)のレポートを実行し同じ結果が生成されるかを検証する機能を提供しています。また、Lifecycle Managerでは単一環境の異なる時刻のレポート実行結果を検証できるベンチマーク機能も提供しています。Lifecycle Managerはシングルユーザー用のアプリケーションとして設計されており、複数ユーザーが同時にLifecycle Manager URIに接続することはサポートされていません。Lifecycle ManagerのアプリケーションからBIサーバ(移行元の環境と移行先の環境)への接続は、それぞれ複数セッションを設定できます。

Lifecycle Manager の基本的なアーキテクチャーは以下の図7のようになります。左側の移行元の環境(ReportNet または IBM Cognos BI)と右側の移行先の環境(IBM Cognos BI)のそれぞれに対して Lifecycle Manager から接続し、両方の環境のレポートの検証および実行を行い、レポート出力の比較結果を生成します。

図7. Lifecycle Manager のアーキテクチャー

レポートの比較結果(図8. 概要ビューと図9. 詳細ビュー)は以下の図のように表示されます。図9.レポートの比較結果(詳細ビュー)は、PDF 出力におけるレポート内のテキストの比較結果を示しており、差異の部分が赤で表示されています。

図8. レポートの比較結果(概要ビュー)
図9. レポートの比較結果(詳細ビュー)

プロジェクト全体の検証結果の概要は以下の図のようにTasks Summaryの機能で確認できます。(図10)

図10. Tasks Summaryの例

詳細はマニュアル「Lifecycle Manager User Guide」をご確認ください。

Migration Tools

Cognos BI Migration Tools 10.1を使用することでSeries 7のコンテンツをC10.1へ移行できます。Cognos BI Migration Tools 10.1は、"Series 7 Version 4 INR, MR1, MR2, MR3, MR4"とPowerPlay7.5からのコンテンツ移行をサポートしていますが、一般的にはCognos BIのスペシャリストがSeries 7のコンテンツ移行のために活用するツールです。以下にてMigration Toolsの使用に関連して役にたつ情報へのリンクを紹介しますので、必要に応じて参考文献のリンクから詳細をご確認ください。

  • マニュアル「Migration Assistant Installation and Configuration 10.1.0」
  • マニュアル「PowerPlay移行および管理 10.1.0」
  • Cognos Customer Center (Migrate from Series 7)
  • Cognos Series 7v4 PowerPlay to IBM Cognos Business Intelligence PowerPlay 8.4.1 and 10.1

7.アップグレードにおける推奨事項

代表的なアップグレードの推奨事項としては、次のようなものがあげられます。

ビジネス要件の再確認

必ずしもバージョン間で同じ動作を行わないケースが出てきます。IT管理者が優先順位付けせず、エンドユーザーのビジネス要件に即した形で優先順位を明確に定義します。例えば、ワーディングや改行、位置のずれがあった場合にエンドユーザーのビジネスを遂行する上でレポートとしての意味を本当に損なうものなのか、それらの差異がユーザーのリテラシーとして吸収できるようなものであるかどうかも考慮に入れて、どのレポートを移行対象とするかの判断やその優先順位付け、ビジネスレポートとしての位置づけを明確にします。エンドユーザーの要件を再確認することで、必要な作業が明確になり、予定されたスケジュールでアップグレードを行うことができるようになります。

アップグレード専任の担当者とハードウェアの準備

アップグレードプロジェクトを行うにあたって、専任の担当者をアサインするとともに、アップグレード専用のハードウェアを準備します。

新機能および新アーキテクチャの理解

製品マニュアルを確認することで、各バージョンC8.3、C8.4、C10.1の各コンポーネントの新機能、変更された機能、サポート対象外となった機能、削除された機能、新アーキテクチャーは事前に理解しておくことを推奨します。

リリースノート

新バージョンのFixlistを確認し、必要に応じてAPARを検索することで詳細を確認します。

アップグレード関連のサイト

アップグレードに役立つさまざまな情報へのリンクが参考文献にあります。

  • Cognos Customer Center(Upgrade)はアップグレード関連のポータルで、必要な情報がまとめられています。
  • IBM Cognos v10.1 Upgrade FAQ、IBM Cognos Lifecycle Manager FAQにはよくある質問とその答え(FAQ)がまとめられています。
  • Proven Practiceにはアップグレードの情報をひとつのカテゴリにまとめられています。

新しい環境の作成

アップグレードプロジェクトのテストで使用する移行元の環境は、可能な限り本番環境と同様の設定で新たな環境を作成します。本番環境をアップグレードテスト用の環境として流用した場合、本番環境の運用に影響を及ぼさないようにテストスケジュールを作成する必要があり、アップグレードの全体スケジュールに影響する可能性があります。LDAPやActive Directory といったセキュリティプロバイダーや、DB2などのクエリーデータソースについても同様にテスト用環境を作成します。

Cognos Configuration

アップグレード前後の環境でCognos Configurationの設定情報をエクスポートしておきます。エクスポートされるファイルには、IDやパスワードといった認証情報が暗号化されていない状態で含まれますので管理に注意が必要です。また、エクスポートしたファイルは、アップグレードの障害対応時に役立ちます。

セキュリティプロバイダー

アップグレードプロジェクトの中でセキュリティプロバイダーを変更しないでください。たとえばActive DirectoryからLDAPに変更したりしないでください。もしセキュリティプロバイダーの変更を行う場合は新たに別のプロジェクトとして定義する必要があります。

Content Store

サービス開始時のContent Store DBのアップグレードでは、可能な限りデータベースのみをアップグレードすることにし、レポート仕様のアップグレードは控えることを推奨します。その後、移行後の環境に必要なレポート仕様のみを選定し、コンテンツの保守タスク等のレポートアップグレード機能を活用することを推奨します。

整合性チェック

アップグレード前後には、コンテンツの保守タスクを使用した整合性チェックを行います。

Report Authoring での検証

レポート仕様のアップグレードを行う前に、既存環境で該当レポートをReport Authoringで開き、レポートの検証を行ってレポート仕様が有効であることを確認しておきます。さらにアップグレード後にも同様にレポート仕様が有効であることを確認してください。

Lifecycle Managerの活用

機能拡張や仕様変更に伴い、アップグレードの前後でレポートの動作に違いが生じる場合があります。Lifecycle Managerを使用することで文字・数字レベルの変化は検出可能ですが、画像イメージ・図・フォント等の変化は検出できません。Lifecycle Managerを使用する場合でも、目視と合わせての実施が必要です。

8.アップグレード後の製品動作に関する注意事項

以前のバージョンのBI製品をC10.1にアップグレードした際にアップグレード後の製品動作が変わることがあります。

以前のバージョンからの仕様変更

主にC8.3バージョンからの仕様変更によりC8.2以前のバージョンをC10.1バージョンにアップグレードした際には、アップグレード後の動作が変わる可能性がC8.3以後のバージョンに比べて比較的に高いです。

参考文献に記載のマニュアル「Upgrading to IBM Cognos 8 BI 8.3: Changes in Product Behavior」ではC8.3からの動作変化に関する例やアップグレード時に発生する可能性がある問題の解決策などが記載されており、C8.2以前のバージョンからアップグレードする際にはあわせて参照してください。

その他、C10.1のマニュアルには、以前のバージョンC8.3、C8.4、C10.1で変更された機能、サポート対象外となった機能、削除された機能を各コンポーネントのマニュアルにまとめて記載していますので、あわせてご確認ください。 また、基本的には機能の変更に関する重要な情報をマニュアル上に記載していますが、詳細な仕様変更は情報を公開していないため、アップグレード後に予期せぬ問題が発生する場合もあります。

system.xml

以前のバージョンのファイルをCognos10環境にコピーする方法でsystem.xmlのパラメータをIBM Cognos バージョン 10.1 用にアップグレードできます。詳細はマニュアルの「“system.xml”ファイルの IBM Cognos バージョン 10.1 へのアップグレード」を参照します。

cogdm*.ini

バージョン間の互換性はありません。また、cogdm*.iniの編集はサポート対象外です。もし以前のバージョンでカスタマイズしている場合、カスタマイズした内容を移行先の環境のcogdm*.iniファイルに手動で反映して動作確認を行い、必要に応じて IBM Cognos サポート窓口にお問い合わせ下さい。

*.css (スタイルシート)

グローバルスタイルシート上のフォントやサイズなどのスタイル定義の変更により、グラフ、リスト、クロース集計などの各オブジェクトに対してアップグレード後のレポートの出力結果が変化する場合があります。特にレポート仕様上のプロパティから明示的なスタイル指定がない場合やユーザー環境でグローバルスタイルシートをカスタマイズしている場合、アップグレード後の出力結果は変化する可能性があります。また、cssファイルはバージョン間の互換性がありませんので、以前のバージョンでカスタマイズしている内容を移行先の環境の*.cssファイルに手動で反映する必要があります。cssファイルの移行の際には同じファイル名を持つファイルに対して上書きコピーをしないようご注意ください。また、スタイルシートに加えた変更内容を記録しておくことを推奨します。

ReportNetで使用されていたスタイルシート(“default_layout.css”)またはIBM Cognos BI スタイルシート(“GlobalReportStyles.css”)を変更した場合、アップグレード後に同じ変更を IBM Cognos BI スタイルシートに適用して、そのスタイル シートを IBM Cognos BI サーバーおよび Web サーバーにコピーします。GlobalReportStyles.css は以下の場所にあります。詳細はマニュアル「管理およびセキュリティ ガイド」を参照してください。

  • <c10 の場所>/bin
  • <c10 の場所>/webcontent/schemas
  • <c10 の場所>/reportstyles
  • <c10 の場所>/webcontent/reportstyles

*.js (インストールフォルダ内のJavaScriptファイル)

C10.1で提供されているJavaScriptファイル(*.js)の編集はサポート対象外です。また、これらのファイルにバージョン間の互換性はありません。以前のバージョンでJavaScriptファイルをカスタマイズしている場合は、カスタマイズしている内容を移行先の環境のjsファイルに手動で反映しお客様の責任において動作を検証する必要があります。*.jsファイルはComponent UpdaterのインストールおよびFix Packのインストールで既存のjsファイルが上書きされる場合がありますので、jsファイルの修正は推奨しません。

JavaScriptを使用したレポート

HTMLオブジェクトに記述したJavaScriptを含むReport Authoringのレポートはアップグレード後、正常に動作しない場合があります。対応策としては、JavaScriptの編集または削除が必要となります。以下のドキュメントにはJavaScriptの使用に関してアップグレード時に発生する可能性のある問題と解決策などが記載されています。主にC8.2以前のバージョンをアップグレードする際にはC8.3バージョンからの仕様変更により正常に動作しない可能性が高いため注意が必要です。参考文献に記載のProven Practice - Upgrading JavaScript Applicationsを参考にしてください。

セキュリティー

ReportNetおよびC8バージョンからC10.1にアップグレードした際にセキュリティに影響を与える可能性があります。例えば、以前のバージョンに存在しなかった新たな役割が存在したり、ある役割は新たな機能を持っている可能性があります。結果としてアップグレードされたシステムのセキュリティが望まれる水準に達しない可能性がありますので、マニュアル「管理およびセキュリティガイド」を参照してセキュリティの再設計を実施してください。

グラフ

レポートにグラフが含まれている場合は、仕様変更のため、比較的高い頻度で差異が発生します。特に以前のバージョンのレポート仕様上でグラフ上のフォント、サイズ等の表示書式やソート順等のプロパティを明示的に設定していない場合には差異の発生可能性が高いです。また、グラフの機能は大幅に拡張したため、以前のバージョンのままではグラフのプロパティのデフォルトの設定によっては正しく動作しない場合があるため、必要に応じてグラフのプロパティの再設定を行います。グラフがあるレポートについては全般的に確認を推奨します。なお、C8のレポートをアップグレードするのみでは、C10.1の新しいグラフ機能は使用されません。古いグラフは、別のタイプへのグラフ タイプの変換の機能を用いることにより、1 つずつ新しいグラフにアップグレードできます。C10.1の新しいグラフ機能についての詳細は、マニュアル「Report Authoring ユーザー ガイド」 のバージョン 10.1 の新機能に記載のグラフの強化を参照してください。

グラフを含まないレポートにおいても、環境やレポートの作成方法により大きな差がでる可能性があります。ソート順、表示書式、項目サイズを明示的に設定している場合、影響は小さくなります。明示的に設定していない場合でも、環境によっては影響が発生しない場合もあります。評価プロセスにおいて影響度合いを把握した上で検証対象とするレポートを決定する必要があります。なお、これらのレポートはLifecycle Managerで検出しやすいレポートです。そのため、Lifecycle Managerで多くのレポートの評価を行い、変化の発生パターンを認識する事により検証対象をより効率的に確定することが可能になります。

PDFレイアウト

ReportNetおよびC8のバージョンのレポートをC10.1に移行した際にPDFレポートのフォント等の表示が異なる場合がありますが、これはC8バージョンからPDFレポートのアウトプットイメージを極力HTMLレポートに合わせるように変更したことによる影響ですので、C10.1バージョンのレイアウトをそのまま使用するか、または必要に応じてスタイルシートの設定を変更する必要があります。

ソート順

モデルやレポート定義で明示的にソートの設定をしていないレポートは、アップグレード後に異なるソート順で表示される場合がありますが、その場合、レポートまたはレポート側でソート順を明示的に指定する必要があります。

個人用フォルダのデータ

新旧環境の認証プロバイダが異なる場合や、ネームスペースIDや基本識別名などのユーザーの検索パスが異なる場合には個人用フォルダのデータが移行されません。また、新旧環境で同じ認証プロバイダを使用する必要があります。

配布アーカイブを使用して個人用フォルダのデータを既存環境から移行する場合、個人用フォルダのデータは Content Store の全体を配布アーカイブとしてエクスポートし、新環境でインポートする必要があります。あるいは既存環境で個人用フォルダのデータを共有フォルダ以下にコピーして配布のエクスポートを作成する方法も可能です。

SDKアプリケーション

ReportNet、C8のSDKアプリケーションはC10.1で動作しない場合がありますが、これは以前のバージョンとC10.1で使用しているSDKアプリケーションは、設定や使用ライブラリが異なることが原因ですので、C10.1用にSDKアプリケーションを修正する必要があります。

Content Store DBおよびMetric Store DB

C10.1用にアップグレードされたContent Store DBとMetric Store DBは、ReportNetとC8で互換性がないため、使用できなくなります。ReportNetとC8で使用していたContent Store DBとMetric Store DBは事前にバックアップを取っておく必要があります。

StoreID

当記事を執筆時点での現在のリリースの Cognos BI では、Cognos Administration の配布のインポートを行うと StoreID が変更されます。(図11)このため、既存環境においてSDKで作成したアプリケーションなどでStoreID が使用されている場合には注意が必要となります。Content Store DB全体のアップグレードのアプローチを用いた場合、StoreID は変更されません。

図11. StoreID
図11. StoreID
図11. StoreID

エラー/警告メッセージ

アップグレード後の動作でエラー/警告メッセージが発生した場合は、メッセージの内容に合わせた詳細調査を行う必要があります。その場合、エラー番号とエラー内容を検索キーとしたIBM公開のTechnoteやProven Practiceドキュメントの検索を行うことで対応策を探す必要があります。これらのIBM公開の情報からエラー/警告メッセージを解決できない場合は、IBM Cognosサポート窓口にお問合せを行う必要があります。

分散環境

検証環境のサーバ構成を、アップグレード前の構成と同様の分散環境とすることを推奨します。 例えば、アップグレード前のサーバ構成が単一のゲートウェイ、複数のアプリケーション層コンポーネント、単一のContent Managerの場合、検証環境のサーバ構成も同様に単一のゲートウェイ、複数のアプリケーション層コンポーネント、単一のContent Managerをそれぞれインストールして分散環境を構築します。検証環境のサーバ構成がアップグレード前の本番環境の構成と異なる場合、アップグレード後の機能に関する動作検証が十分行えない可能性があります。

大規模システムの場合、作成したアプリケーションや使用方法に応じて分散環境でのパフォーマンスが変化する可能性があります。したがって、パフォーマンステストを十分な期間で行えるように計画段階で考慮しておきます。

9.おわりに

アップグレードは、1 つの IT プロジェクトであり、通常綿密な計画、十分な時間、人員を要します。アップグレードの計画時には、単純なパフォーマンスの向上のメリットのみで考慮せず、既存の環境に保存されたコンテンツの整理を行う機会であると考えてください。ビジネスにおいて真に必要となるコンテンツのみを新しい環境に移行することで、よりスマートな Business Analytics システムを構築することが可能となり、企業の競争力向上に役立てることにつながります。


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ArticleTitle=IBM Cognos BI 10.1へのアップグレード
publish-date=07252011