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SOA からコグニティブ・サービスに至るまでのサービス・コンポジションの進化を見ていく

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B2B (Business-to-Business) と B2C (Business-to-Consumer) の分野におけるテクノロジーと標準は、電光石火の速さで変化し続けていますが、その進化の過程を調査することで、私たちは重要な教訓を学ぶことができます。この記事では、サービス・コンポジション開発の進化を振り返り、それぞれのバージョンが現在の開発システムにどのように貢献したのかを明らかにします。現在、クラウド・コンピューティングやビッグデータなどのトレンド、そしてあり余るほどのコグニティブ・サービスと組み合わされたエコシステム開発といった取り組みが、サービス・コンポジションという夢を実現可能にしています。

Service Composition 1.0: 初期の SOA (Service-Oriented Architecture) と Web サービス

Web サービス、SOA (Service-Oriented Architecture)UDDI (Universal Description Discovery and Integration)、サービス・コンポジションといったテクノロジーや、これらのテクノロジーを中心とした、WSDL (Web Services Description Language)WSFL (Web Services Flow Language)SA-WSDL (Semantic Annotations for WSDL) などの標準への取り組みのことを覚えていますか? 2000年代の初めの頃、誰もがこれらのトレンドとテクノロジーを話題にしていました。ビジネス・プロセス・インテグレーションの分野で SOA と Web サービスが話題に上がらなかったとしたら、それは過去の世界に生きていたことになります。そうです、10 年という年月はインターネットの世界では長い時間なのです。

UDDI は、人々が Web サービスのビルディング・ブロックから独自のビジネス・アプリケーションを組み立てられるよう、何百もの Web サービスをホストし、そこから人々が Web サービスを発見して、統合および合成するためのテクノロジーで、世界で広く採用されることが期待されていました。しかし、UDDI が登場すると瞬く間に、企業の間ではパブリック UDDI は使いものにならないという認識が広まりました。企業は、自社の Web サービスを公開リポジトリーに配置することを望んでいなかったからです。そこで企業はプライベート UDDI という試みに踏み出しました。プライベート UDDI では、企業が公開する SOA サービスをベースに作成した Web サービスをホストして、その企業のビジネス・パートナーが発見できるようになっています。第 1 世代の一連のサービスは、いずれもエンタープライズ・ビジネス・プロセスに関わるものでした。しかし、ビジネス・パートナーのどのビジネス・システムを統合するかを完全に把握しているとしたら、何を発見して合成する必要があるというのでしょう?こうしたことから、B2B (Business-to-Business) のコンテキストでは、サービスを動的に、あるいは思いがけずに発見して合成するという概念が現実的な形になることはありませんでした。

電子データ交換 (EDI) や拡張マークアップ言語 (XML) などの標準に従うことで構文上の統合を可能にする取り組みは、役に立ったものの、セマンティックな統合を実現するまでには至りませんでした。一部の人たちは、サービス・コンポジションを可能にする上で必要なものとして、標準を作成するとともに宣言型セマンティック・アノテーションのサポート・メカニズム (SA-WSDL など) を構築する作業に、多くの時間を割きました。しかし、セマンティックな手法を適用するには、事前にオントロジーの開発に膨大な作業が必要になるため、セマンティックな手法に対する業界の支持は限られていました。発見される対象となる十分な数のサービスがなければ、構文やデータが持つ意味は、あまり重要ではなくなります。

Service Composition 1.0 の場合、対象となるサービスや有効なユース・ケースの数は、十分ではありませんでした。しかも企業には、サービスを簡単にホストしてセキュアにし、監視して収益化するのに適したメカニズムもありませんでした。ユース・ケースの定義が甘く、市場でのタイミングも悪かったことから、Service Composition 1.0 は、純粋にテクノロジー的な発想であったとしか言いようがありません。

Service Composition 2.0: マッシュアップによる、UI への統合の移行

Service Composition 1.0 に続いて、マッシュアップと Service Composition 2.0 が登場しました。これにより、複数のサービスをガラスの上で (つまり、ユーザー・インターフェース・レベルで) 結合することが求められるようになり、そのための手段としてデータ・サービスを利用して素晴らしいアプリケーションを構築して収益化する方法が採られるようになりました。このやり方は永続するかのように思われました。マッシュアップの対象とされたのは、B2B のシナリオと B2C (Business-to-Consumer) のシナリオで、この頃までにジオロケーター、気象ファインダー、不動産価格設定サービスが登場していたので、人々はこれらのサービスを組み合わせて新しいサービスを作り出すことに沸き立っていました。このコミュニティーでは、データ・レベルで統合してビジュアル・インターフェースを設計することに、より大きな重点を置くようになり、セマンティックな統合には、あまり重点を置かなくなりました。しかしそれでもやはり、専門家が予測したようなペースで、収益化が実現したり、サービスを大規模に利用できるようになったり、関連するエコシステムの開発が行われたりすることはありませんでした。企業はマッシュアップを対象として、それらがビジネス・ユーザー向けなのか、上級開発者向けなのか、それとも上級開発者がビジネス・ユーザー向けに作成したものなのか、有効なユース・ケースを定義しようと必死の努力をしました。しかしマッシュアップは、B2B のコンテキストでは軌道には乗らず、B2C の領域でわずかに成功を収めただけでした。

ここまでのサービス・コンポジションの歴史には、常に技術的な課題が付きまとっていました。それは、サービスを発見する作業を行っている間、さまざまなサービスの異なるスキーマを動的にリアルタイムで 1 つにまとめる際に、古いスキーマのマッチング問題をどのように解決するかというものです。幸い、スキーマのマッチング、セマンティックなスキーマのマッチング、オントロジー表現の標準、オントロジー・ラーニングなどにおける進化が一斉に、これらの技術的な課題に対処し始めるようになりました。

Service Composition 3.0: Cloud API の収益化

そして現在、Service Composition 3.0 の時代が到来しています。ここで話題としているのは、クラウド内に提供された SaaS (Software-as-a-Service) による API エコノミーです。私には、ちょっとしたデジャブのように感じます。SaaS は、クラウド上に存在するこの世代の Web サービスであり、PaaS (Platform-as-a-Service) と IaaS (Infrastructure-as-a-Service) 両方のメカニズムによって駆動されます。

クラウドの市場は至るところにあります。IBM、Amazon、Microsoft、HP、Salesforce、そして Oracle にはいずれもクラウド市場があり、サード・パーティーのサービスを含め、各種の SaaS サービスをホストしています。これらの企業は現在、顧客にとって非常に便利なように、クレジット・カードでサービスを購入できるようにしており、サービスの料金も API 呼び出し単位で設定しています。収益化は大きな進歩を遂げ、誰もがサービスを試すことができます。

けれども、昔ながらの同じストーリーが繰り返されているのも確かです。ほとんどの企業は、クラウドを選択し、クラウド環境の中でサービスを利用したいと思っていますが、企業のデータを他の企業のクラウドに送信することは望んでいません。企業が求めているのは、プライベート・クラウド市場であり、プライベート PaaS 環境です。しかし、プライベート UDDI では失敗した過去があります。プライベート・クラウドやプライベート PaaS 環境がそれとは違う理由は何なのでしょう?おそらく、これらのプライベート環境に関する取り組みが以前よりも成功するであろう、説得力のある理由があるはずです。

将来を形作りつつある要素

これまでの歴史を振り返ったところで、今度は将来に影響を与える要素をいくつか見ていきましょう。

クラウド・コンピューティング

クラウドは、サービスを短時間でデプロイして低コストで利用できるようにするテクノロジーであると謳われています。ソフトウェアをモジュール化してサービスとして利用するという考えは昔から存在するものですが、クラウドはこの考えを、サービス・プロバイダーとサービスの利用者にとって、経済的に実現可能なものにします。

この考えを経済的に実現する上では、Service Composition 1.0 や 2.0 でも問題ではありませんでしたが、これらの初期のオファリングは、B2B で使用可能なユース・ケースや B2B で実行可能なサービスがなかったこと、さらには B2C のサービスが必要とされる最小量に満たなかったことが原因となって、軌道に乗ることはありませんでした。B2B の世界では、顧客が利用しているビジネス・プロセスを統合することはできても、ビジネス・パートナーのサービスに (思いがけない発見と革新をもたらす) 多様性が欠けていました。また、B2C の領域では、革新的な新しいアプリケーションを導入するために利用可能な汎用のサービスが十分になかったのです。ではクラウドを、革新をもたらすプラットフォームにしているものは何なのでしょう?

ソーシャル・メディアの登場と、ビッグデータを利用可能なこと

ローマのスペイン階段を訪れたことがある読者は (あるいは、大規模な空港で足止めされた経験がある読者は)、ただ座って人々を観察するのが、どんなに楽しいことなのかご存知でしょう。人々を観察すると、わかることはたくさんあります。ソーシャル・メディアは、今の時代の地球規模でのスペイン階段のようなものです。

ソーシャル・メディアによって、人々の興味、趣味、情熱、個性、人生の出来事がわかります。私たちは、人々のニーズ、価値観、意見、感情、態度、会話、考えなどを読んだり、見たり、聞いたりしています。こうしたあらゆるデータが、これまで聞いたこともないようなペースと規模で生成されることを想像してみてください。これらのデータは、総称して「ビッグデータ」と呼ばれます。自分たちのことをデジタルで一般公開するという今までにない行為によって、まったく新しい一連のサービスが可能になります。新たなタイプの新興企業が開発しているテクノロジーやサービスは、企業が人々や、人々の好み、個性、人生の出来事、等々について、これまでは不可能だった規模で情報を得られるようにします。これらの情報を利用して、よりパーソナライズされた製品やサービスを提供する企業が次第に増えています。

コグニティブ・サービスの登場

人口知能 (AI) で長年目標とされているのは、人間のように情報を処理できるシステムを作成することです。コグニティブ・コンピューティングは、AI の一分野であり、その使命は、以下の特徴を備えたコンピューター・システムを開発することにあります。

  • 自然言語を理解する能力
  • 対話性
  • 適応性
  • 自己学習能力
  • コンテキスト依存性
  • エビデンス・ベース

コグニティブ・システムの開発を支援するために、コグニティブ・コンピューティング・サービスと呼ばれる一連のビルディング・ブロックが登場してきています。コグニティブ・コンピューティング・サービスの例としては、以下の機能を提供できるサービスが挙げられます。

  • 特定の分野に関する質問に回答する
  • テキストや画像から、個人の個性、感情、意見を推測する
  • 機械翻訳および音声テキスト変換を行う

現在、これらのビルディング・ブロックが、医療から小売、料理から投資、ファッションからデートに至るまでの多種多様な分野において、市場でのイノベーションを推進しています。そして今や、サービスをミックス・アンド・マッチして組み立てることで新しいサービスを構築することを目指す、革新的な企業をサポートするのに必要な最小限のサービスは揃っています。しかしながら、新たな素晴らしいサービスを公開するためのビルディング・ブロックがあれば、それで十分なのでしょうか?それらの新しい革新的なアプリケーションを育てるために必要なサポート・メカニズムについては、どうなのでしょう?

エコシステム開発へのフォーカス

今回は何が違うのでしょう?サービス・プロバイダーは、エコシステムを開発するのに必要なだけ時間をかけています。IBM のような企業では、エコシステム・パートナーシップ・プログラムを用意して、当初は無料でサービスを提供することで、新しい企業を育て、それらの企業による革新的なアイデアを育んでいます。新しい企業が収益を上げるようになったら、サービス・プロバイダーが収益から一定の割合を受け取るという仕組みです。このエコシステム開発モデルは、実験やイノベーションの財政的負担を軽減し、市場におけるアイデアとサービスの多様性を促進します。このような育成モデルが用意されていなければ、市場の圧力とコストの経済的側面によって、多くの企業では、革新的なアイデアを試すことを思いとどまってしまうでしょう。

私は、コグニティブ・コンピューティング・サービスの開発チームに加わった自らの経験から、エコシステム開発のメリットを実感しています。

実際のコグニティブ・コンピューティングの例

以下の例では、クラウド、ソーシャル・メディア、コグニティブ・コンピューティングの強力な組み合わせから、今までにないサービスがどのように生み出されるかを紹介します。

IBM Watson Personality Insights と IBM Watson Tradeoff Analytics

例えば、自分と家族のためにオールインクルーシブの休暇を予約するとします。家族一人ひとりの個性、好み、興味はそれぞれに異なります。また、活動は家族全体での予算内に収めなければなりません。それぞれの好みに合わせて全員を満足させることはできないため、トレードオフが必要になりますが、それでもできる限り全員に便宜を図って、しかも予算内に収めるには、どうすればよいでしょう?おそらくあなたは、さまざまな Web サイトで提供しているプランを検索して、友達、家族、旅行代理店に相談するでしょう。

誰かがあなたの代わりにすべて調査して、家族一人ひとりのニーズを考慮に入れると同時に、予算内で収まるプランをいくつか提示してくれたとしたら嬉しいと思いませんか?まさにその通りのサービスが、IBM Watson の開発者たちによって開発されています。Watson Personality Insights サービスは、家族の各メンバーの個性と旅行の好みを推測した上で、Watson Tradeoff Analytics を使用して、家族の予算内で旅行のプランを最適化します。これらのコグニティブ・コンピューティング・サービスを利用すれば、骨の折れる作業をすることなく、十分な情報に基づく意思決定を行うことができます。

IBM Watson Speech-to-Text、IBM Watson Concept Insights、IBM Watson Personality Insights

人々が特定のキャリアに自然と進もうとするのを不思議に思ったことはありませんか?あるいは、自分に最適なキャリアは何なのか、考えたことはありますか?さらには、誰かが自分の仕事に満足していないとしたら、それは、その人に向いていない仕事をしようとしているのだと思いませんか?

このような問題に対処するには、Watson Concept Insights を利用して、さまざまな分野で仕事をしている模範的な人を見つけます。そして Watson Personality Insights サービスを利用して、自分の個性と、それらの模範的な人の個性を推測します。

さらにクラスタリング手法を使って、自分に最も似ている人と、その人の職業を調べることもできます。また、Speech-to-Text Translator サービスを利用すれば、模範的な人が話した内容を、Watson Personality Insights にフィードすることさえできます。

可能性には限りがありません。限界を設けるのは、ユース・ケースだけです。以上に紹介した例の素晴らしい点は、B2C と B2B 両方の領域に適用できることです。例えば、個人がこれらのサービスを利用する場合、キャリアの選択に関する情報を得ることができます。同様に、企業がこれらのサービスを利用する場合は、従業員に対してキャリアに関するカウンセリングを行って、アドバイスすることができます。

もちろん、サービスを追加したからといって、サービスのインターフェースの構文上の統合とセマンティックな統合に関する昔からの技術的な課題に、自動的に対処されるわけではありません。これらの課題に対処しなければならないことに変わりはありませんが、この記事では、サービス・コンポジションの約束を今再び呼び起こすことが可能な上に、コンテンツが豊富でコンピューティングに関しても十分なサービスに焦点を当てています。

まとめ

Service Composition 3.0 は、1.0 と 2.0 で不可能だったことを提供することになるでしょうか?それとも、Service Composition 4.0 に夢の実現を託すことになるのでしょうか?コグニティブ・コンピューティングの原則によって、より人間に近い言葉でコンピューターを動作させるのは、正しい方向のように思えます。

開発者は、アイデアを形にして試しながら学習していく上で、クラウド・サービスによるバージョンアップの速さを有効に活用することができます。現在の Service Composition 3.0 を利用するかどうかに関わらず、継続的な改良は常に進んでいます。私たちは引き続き試行錯誤を繰り返し、それぞれの試行でより多くのことを正しいものにしていく必要があります。

これからも絶えずコグニティブを進化させ、B2B および B2C の領域を対象として革新的な AI を採用した次世代のアプリケーションを促進するための新しいレシピを考案し続けていきましょう。

そのためには、Bluemix アカウントにログインし (または無料のトライアルにサインアップして)、Watson コグニティブ・サービスを使ってみてください。その上で、この記事へのコメントをお寄せください。この話題に関する皆さんのご意見を心待ちにしています。


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  • IBM Watson Developer Cloud: この入口から新世代のコグニティブ・アプリの作成を開始してください。

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