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クラウドと業界

第 2 回 石油/化学産業向け統合情報フレームワーク

クラウド対応業界ソリューション統合情報フレームワークの概念

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石油/化学産業における最大の課題の 1 つは、ビジネスの意思決定を伝える情報をタイムリーに利用できるようにすることです。油田やガス井戸の開発では、調査から生産までのライフサイクル全体を通して、大量の技術データおよび財務データが生み出されます。これらの情報は、意思決定を行う上で非常に重要です。操業および生産量に関するビジネス上の意思決定を適切なタイミングで行うことが、プラント、現場、そしてそこで使われる機器や投入される資産の有効性と効率性を左右するからです。けれども、ほとんどの石油/化学製品の生産操業では、ビジネス上の極めて重要な意思決定を行うために必要となる情報を入手できないか、入手できたとしてもそれまでに時間がかかりすぎます。このような問題は、環境の変化を察知してその変化に素早く適応する組織の能力として定義されるビジネス・アジリティーの障害になります。

クラウド・コンピューティングは、ビジネス・アジリティーを向上させる手段です。クラウド・コンピューティングはビジネスと IT の意思決定者の間の対話を促し、ビジネス・サービスにおける優先事項に重点を置いてクラウド・コンピューティングの強みを活かすことで、IT リソースの有効利用、運用コストの削減、ビジネス・サービスのプロビジョニング時間の短縮、ビジネス・サービス・レベルの要件を満たすための IT コストの調整といったことを目指します。クラウド・コンピューティングは、究極の仮想システムであり、自動化されたシステム管理、作業負荷分散、仮想化技術などを採り入れてもっともな形へと進化したデータ・センターの姿を実際に示すものとなっています。その一方で、クラウド・コンピューティングは各種のビジネス・モデルによって、新たなサービスやアプリケーションを顧客に提供しています。そのうち最も傑出しているのが、SaaS (Software as a Service) と PaaS (Platform as a Service) です。

IBM 石油/化学産業向け統合情報フレームワーク (Chemical and Petroleum Integrated Information Framework: C&P IIF、以下 IIF と略します) は、これまでにない独特で強力なリアルタイムの統合フレームワークです。この IIF はクラウドを利用して、企業が石油/化学産業における業務全般でより効果的な意思決定を行えるように支援します。IIF では、石油/化学産業のバリュー・チェーンに沿ったさまざまな企業の要件に対処できるように、業界標準、Web ベースの視覚化、そしてサービス指向アーキテクチャー (SOA) を使用し、Web サービス、RESTful なサービス、Java API という形で一連の API を提供することで、プロセス中心のイベント駆動型アプリケーションを開発できるようにしています。

図 1 に、クラウドを使用した IIF の新たなデリバリー・モデルを図解します。企業が IT 投資として行うハードウェアおよびソフトウェアへの投資をより有効活用する上で、クラウド・コンピューティング・インフラストラクチャーは有用です。それは、このインフラストラクチャーは個々に分離したシステムに特有の物理的な障害を克服し、システムの集合の管理を 1 つのエンティティーとして自動的に行えるようにするからです。PaaS で Web アプリケーションを作成する場合、ソフトウェアおよびハードウェアを購入して管理する複雑さも、そのために必要とされるコストもなく、迅速にアプリケーションを作成することができます。PaaS を利用することで、ビジネス・ユーザーは運用コストを最小限に減らし、生産性を向上させられるというわけです。

図 1. クラウドを使用した IIF の新たなモデル
クラウドを使用した IIF の新たなモデル
クラウドを使用した IIF の新たなモデル

ソリューションのライフサイクル管理

仮想化技術を利用することにより、クラウド・ベースの IIF ソリューションのライフサイクル管理 (クラウド対応 IIF ソリューションの最初の層) はソリューションのライフサイクル全体を網羅し、自動デプロイメント、垂直スケーリング (スケールアウトと縮小)、水平スケーリング (スケールアップとスケールダウン)、そしてソフトウェア・アップグレードに対応する弾性インフラストラクチャーを提供します。このソリューションのライフサイクルには、以下のフェーズがあります。

  • 作成: 業界のベスト・プラクティスを実践するサービス・オファリングが、迅速な再利用を可能にするためのアセットとして事前に定義されます。また、ユーザーがそれぞれの環境に応じた特別なサービス・オファリングをカスタマイズすることも可能です。例えば、ソリューション全体のトポロジーだけでなく、カスタマイズした部分的なトポロジーによって既存のソリューション環境を補完することができます。
  • デプロイメント: デプロイされるサービス・インスタンスには、必須のデプロイメント・パラメーター (ハードウェア・リソース構成、オペレーティング・システム、アプリケーション・ソフトウェア・レベルの構成など) が入力されます。サービス・インスタンスは、前のフェーズで定義されたサービス・オファリングが自動的にデプロイされることによって作成されます。
  • 管理: 弾性インフラストチャーに対し、実際の監視パフォーマンスに応じて動的なスケーリングおよび自動ソフトウェア・アップグレード機能が実行されます。クラウド環境のコンピューティング・リソースを首尾良く経済的に運用するには、極めてスケーラブルで信頼性の高い管理が不可欠です。

作成

ソリューションのトポロジーと構成を表現するサービス・オファリングは、作成フェーズで定義され、デプロイメント・フェーズでインスタンス化されます。サービス・オファリングはソリューション・トポロジー内のサービス・ノードと、サービス・ノード間の依存関係を規定します。サービス・ノードごとに、特定のソフトウェア構成パラメーター、オペレーティング・システム・レベルの構成、ハードウェア・リソースのプロパティーなどといった構成パラメーターがあります。ソリューション・トポロジー内のソフトウェアを起動およびシャットダウンする手順も、サービス・オファリングのなかで定義されます。

デプロイメント

デプロイメント・フェーズでは、事前に作成されたサービス・オファリングまたはカスタム・サービス・オファリングを実際の物理環境にプロビジョニングすることができます。当然のことながら、必要なハードウェアやその他のリソース (IP アドレスなど) は、デプロイ後の環境で使用可能であることが検証されていなければなりません。デプロイメント・プロセスで使用されるパラメーター値には、3 つのタイプがあります。まず 1 つは、ユーザーが指定する値です。これには、CPU の数、メモリー・サイズ、そしてソフトウェア構成パラメーターなどが挙げられます。2 つ目のタイプは、システムがリソース・プールから割り当てる、IP アドレスなどの値です。このタイプの値は、エンド・ユーザーがデプロイ後の環境を制御するために手動で指定することはできません。3 つ目のタイプは、制約や依存関係を表す他の従属サービス・ノードの値です。デプロイされたサービス・インスタンスは、選択されたサービス・オファリングを、必須パラメーターの値を指定してインスタンス化したものです。

管理

管理フェーズでは、実際に監視されたパフォーマンスに応じて、弾性インフラストラクチャーにおける動的スケーリングおよび自動ソフトウェア・アップグレード機能が適用されます。図 2 に示されているように、自動デプロイメント機能がビジネス・アジリティーを築く柔軟なメカニズムを提供する一方、さまざまなパフォーマンス調整の問題を解決するための 2 次元手法として、水平および垂直スケーリング・メカニズムが提供されます。水平スケーリングはスケールアップおよびスケールダウン機能を意味します。一方、垂直スケーリングとはスケールアウトおよび縮小機能のことです。

図 2. クラウド・ベースのライフサイクル管理
クラウド・ベースのライフサイクル管理
クラウド・ベースのライフサイクル管理

スケールアップおよびスケールダウンは、実行中のサービス・ノードのリソースを実際のパフォーマンス管理状況に応じて調整できることを意味します。スケールアップとは、デプロイされたサービス・ノードへの CPU やメモリーの割り当てを増やすことで、スケールダウンとは、デプロイされたサービス・ノードから、CPU またはメモリー・リソースの割り当てを減らすことです。

スケールアウトと縮小は、デプロイされたソリューション・インスタンスの実行能力を調整するもう 1 つの方法です。実際に稼働中の環境における作業負荷が増え、デプロイされたソフトウェア・クラスターへの負担が大きくなった時点で、スケールアウトを起動することができます。スケールアウトが起動されると、新しいノードがプロビジョニングされてクラスターに追加されます。これにより、コンピューティング能力が強化され、ソリューション・インスタンスのパフォーマンスが維持されることになります。縮小にはその逆の効果があります。つまり、稼動中の環境がアイドル状態になると、クラスターからメンバー・ノードの一部を解放して、リソースを別の用途に使用できるようにするということです。

アーキテクチャーとコンポーネント

クラウド・ベースの IIF ソリューションのライフサイクル管理では、以下に挙げるアーキテクチャーやコンポーネントが使用されます。

  • 管理コンソール
  • サービス・オファリング・カタログ
  • リソース・マネージャー
  • クラウド・インフラストラクチャーでサービスをインスタンス化するために使用される、プロビジョニングおよび自動化エンジン

図 3 に、クラウド・ベースの IIF ソリューションのライフサイクル管理における、主要なアーキテクチャーおよびコンポーネントを示します。

図 3. クラウド・ベースの IIF ソリューション・ライフサイクル管理における、主要なアーキテクチャーおよびコンポーネント
クラウド・ベースの IIF ソリューション・ライフサイクル管理における、主要なアーキテクチャーおよびコンポーネント
クラウド・ベースの IIF ソリューション・ライフサイクル管理における、主要なアーキテクチャーおよびコンポーネント

管理コンソール

管理コンソールは Web 2.0 ベースのユーザー・インターフェースを提供することで、管理者がさまざまなサービスのサブビュー (例えばデプロイメント・リクエスト、デプロイされた環境の監視、稼働中の環境の管理など) を一目で把握できるように支援します。

サービス・オファリング・カタログ

サービス・オファリング・カタログには、XML フォーマットで保存される既存のソリューション・トポロジーとして、最初から作成されているものと自らカスタマイズされたものが含まれます。リスト 1 に、ソリューション・トポロジーのメタデータを記載します。

リスト 1. ソリューション・トポロジーのメタデータ
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<solutiontopologies>
	<solutiontopology>
		<name>WPS Deployment Manager, WSRR, RAM + 1 WPS Custom
                  Node + DB2 + SISCO UIB Core
			+ SISCO UIB Adapters (Win2003+VMWare)</name>
		<description>WPS Deployment Manager, WSRR, RAM + 1 WPS
                  Custom Node + DB2 + SISCO
			UIB Core + SISCO UIB Adapters
                          (Win2003+VMWare)</description>
		<vmtemplates>
			<vmtemplate id="54361" name="WPS Deployment Manager,
                          WSRR, RAM">
				<properties>
					<property key="Deployment Environment
                                          Name" value="IIF-IVT" />
					<property key="Cell Name"
                                          value="IIF-IVTCell01"
                                            type="hidden"/>
					<property key="Type"
                                          value="dmgr_wsrr_ram"
                                            type="hidden"/>
					<property key="Memory"
                                          value="3072" />
					<property key="Number of CPUs"
                                          value="2" />					
				</properties>
			</vmtemplate>
			<vmtemplate id="54361" name="WPS Custom Node">
				<properties>
					<property key="Node Name"
                                          value="aygsoa32Node01" />
					<property key="Type"
                                          value="node_app_was_msg"
                                            type="hidden"/>
					<property key="Memory"
                                          value="3072" />
					<property key="Number of CPUs"
                                          value="2" />					
				</properties>
			</vmtemplate>
			<vmtemplate id="54437" name="DB2 for WPS, WSRR, RAM,
                          IIF Application, etc">
				<properties>
					<property key="Password for
                                          db2admin user" value="password" />
					<property key="Type" value="db2"
                                          type="hidden"/>
					<property key="Memory"
                                          value="2048" />
					<property key="Number of CPUs"
                                          value="1" />					
				</properties>
			</vmtemplate>
			<vmtemplate id="54438" name="SISCO UIB Core">
				<properties>
					<property key="Type"
                                          value="uibcore_oracle"
                                            type="hidden"/>
					<property key="Memory"
                                          value="2048" />
					<property key="Number of CPUs"
                                          value="2" />
                        </properties>
			</vmtemplate>
			<vmtemplate id="54439" name="SISCO UIB Adapters">
				<properties>
					<property key="Type"
                                          value="uibadpaters"  type="hidden"/>
					<property key="Memory"
                                          value="2048" />
					<property key="Number of CPUs"
                                          value="1" />					
				</properties>
			</vmtemplate>
		</vmtemplates>
		<scale>
			<out from="template_node_id@type=node_app_was_msg"
                          to="vm_dmgr_id">
			</out>
		</scale>
	</solutiontopology>
</solutiontopologies>

リソース・マネージャー

リソース・マネージャーは、デプロイメントのリソースを管理するために使用されます。管理コンソールのコンポーネントは、リソース・マネージャーを呼び出して、選択されたサービス・オファリングに基づいてリクエストされたサービスのプロビジョニングに対処するためのリソースおよびコンポーネント要件を取得します。これらの要件が決定されると、リソース・マネージャーと管理コンソールのロジック・コンポーネントは、プロビジョニング・エンジンおよび構成メタデータとのやりとりによって現在使用可能なリソースを判断し、マッピング・アルゴリズムを使用してデプロイメント・プロセスの処理を行います。

プロビジョニングおよび自動化エンジン

実装では、IT リソース・プロビジョニング・エンジンを利用して、管理コンソールが行った決定を実行に移すことができます。このプロセスでは、他のコンポーネントとは切り離して IT リソース仮想化管理の開発および保守を行うことができます。私たちは初期実装で、IBM Tivoli Provisioning Manager 製品とともに、使用可能な拡張プロビジョニング・ワークフローを採用しました。これらのワークフローは、仮想マシン・イメージを特定のタイプのハイパーバイザー・プラットフォームにデプロイしたり、特定のソフトウェア・パッケージを指定のオペレーティング・システム環境にインストールしたりするなどの基本的な機能を提供するため、ほとんどの部分を再利用することが可能です。プロビジョニング操作の制御は、管理コンソールおよびリソース・マネージャー・コンポーネントから Tivoli Provisioning Manager の Web サービス API を使用して行います。

PaaS モデルによるビジネス・プロセス環境

クラウド・ベースの IIF ソリューションのライフサイクル管理は、プラットフォームとしての IIF にとって、強力なクラウド・インフラストラクチャー層としての役割を果たしますが、石油/化学産業のアプリケーション開発者が、このようなソフトウェア・ポートフォリオに基づくアプリケーション・ロジックの複雑さに対処しなければならないことに変わりはありません。IIF はそれ自体がフレームワークであるため、クラウド内でサポートするプラットフォームは、当然、インフラストラクチャーの自動デプロイメントやサイズ変更を行うためのプラットフォームだけではありません。それよりも重要なものとして、アプリケーション開発プラットフォームもサポートします。

従来、プロセス中心のイベント駆動型アプリケーションを開発するには、一連の複雑な業務用ツールのプロセス・モデリング、コーディング、そしてテストが必要になるため、小さなアプリケーションであっても、本番環境に移すまでには時間がかかる場合がありました。Web サービス、RESTful なサービス、Java API という形での IIF 固有の API を使いこなすのは容易ではないため、迅速な製品化を阻む大きな要因となり得ます。石油/化学産業では、サプライ・チェーンの突然の変更や企業買収、そして組織構造の変化に対応するために、新しいビジネス・システムと外部サービスを迅速に統合しなければなりません。ときには、アプリケーションが IIF サービスに単純なロジックを統合すればよいだけのこともあります。その場合、複雑な Java プログラミングは必要ありません。けれども、作業負荷を減らし、効率性を高め、製品化までの時間を短縮するためには、IIF サービスにユーザー・インターフェース・コンポーネント、ビジネス・プロセス、データベース、ビジネス・イベントを統合して素早くアプリケーションを開発する別の手法が必要です。

PaaS という手段を使用して、Web 上でコンピューティング・プラットフォームを実現すれば、アプリケーションを素早く作成することが可能になります。PaaS モデルによる IIF ビジネス・プロセス環境は、IIF 開発者の作業負荷を軽減し、製品化までにかかるコストと時間の両方を削減するだけでなく、IIF インフラストラクチャーに統合するのも簡単です。この環境は、相互に関連する Web ベースの迅速なオンライン開発ツールによって形成されます。次のセクションでは、これらのツールが持つ次の 2 つの重要な特徴について詳しく説明します。

  • ミドルウェア機能 (ビジネス・プロセス、ビジネス・イベント、Web 2.0 ユーザー・インターフェース、データベースなど) を統合した視覚的なプログラミング・モデル
  • クラウド・ベースのアプリケーション・ライフサイクル管理

アプリケーション開発のための視覚的なプログラミング・モデル

通常、石油/化学産業でのアプリケーションには、装置や計測器から生成されたリアルタイムのイベントを活用して複数の現場プラントからのパフォーマンス・データを監視および統合するためのロジックが含まれています。このデータをビジネスの全体像に反映させるためには、現在のデータまたは履歴データを表示する、ダッシュボード対応のユーザー・インターフェースが必要です。

さらに、問題を診断する必要がある場合、通常は上記のイベントに対応して重要業績評価指標 (KPI: Key Performance Indicator) を計算するプロセスを起動しなければなりません。これらのプロセスによって計算された KPI も、分析のためにユーザー・インターフェースのページに表示します。以上のビジネス要件を満たすには、プロセス、イベント、ユーザー・インターフェース、およびデータベースをサポートするソフトウェア・バンドルが必要ですが、そのようなソフトウェアには当然、IIF 開発者のスキルと開発コストが必要になってきます。

そこで紹介するのが、視覚的なプログラミング・モデルです。このモデルには、数々の障害を緩和できるように上記の機能がすべて組み込まれたミドルウェアが統合されています。図 4 に示すように、Service Assembler というウィジェットは、視覚的なビジネス・プロセス・エディターとして機能します。左側のパレットでは、「Integration Elements (統合要素)」という名前のドロワーに汎用プロセスの基本構成要素が示されており、「RSM Web Services (RSM Web サービス)」、「KPI Web Services (KPI Web サービス)」、「KPI RESTful Services (KPI Restful Web サービス)」の各ドロワーには、IIF ソリューション・ランタイムですでにホストされている再利用可能な Web サービスと RESTful なサービスが含まれています。

これらのサービスは、IIF 開発者がリファレンス・セマンティック・モデル (RSM: Reference Semantic Model) と IIF ソリューションの監視対象 KPI によって操作することを目的としたビジネス・プロセスのドラフトを作成する際に役立ちます。右側のメイン・キャンバスは、ビジネス・プロセス・モデリング・ビューの役割を果たします。開発者はここで、パレットの要素を簡単なドラッグ・アンド・ドロップ操作で構成し、矢印を使って要素をリンクさせることができます。プロセスの各要素の構成パラメーターは、モデリング・ビューの下にあるプロパティー・ビューで簡単に指定できるようになっています。プログラミング言語のスキルがない開発者でも、XML、WSDL (Web Services Description Language)、XSD (XML Schema Definition)、そして Web サービス呼び出しに関する一般的な知識さえあれば、このタスクに容易に対処することができます。

図 4. 視覚的なビジネス・プロセス・エディターとしての Service Assembler
視覚的なビジネス・プロセス・エディターとしての Service Assembler
視覚的なビジネス・プロセス・エディターとしての Service Assembler

図 4 に示されている Mashup Callout は、開発者がプロセス内の特定のステップを素早くユーザー・インターフェース実装にリンクさせられるようにするための特殊な要素です。IIF では、アプリケーション開発者が複数のウィジェットごとにユーザー・インターフェース・ロジックを作成してから、これらのウィジェットをウィジェット・マッシュアップ・ソフトウェアに登録することができます。プロセスのリンク先とするウィジェットと、プロセスとターゲット・ウィジェットとの間で交換する XSD フォーマットの入出力パラメーター値の内容を指定するには、Mashup Callout 要素とそれに対応する Mashup Callin 要素を使用することができます。

データベースもまた特殊な要素です。これは、業務外のデータベース機能をプロセスに組み込みために使用します。この要素のプロパティー・ビューには、基本的なデータベース操作 CIUD (Create、Insert、Update、Delete) を視覚的な方法で挿入できるので、バックエンド・データベース接続の構成を考慮する必要も、SQL 文を作成する必要もありません。

視覚的なプログラミング・モデルは、ビジネス・イベントとプロセスとの間のリンクを強化して IIF アプリケーション要件をさらに満たすようにするために使用することもできます。Web ベースのオンライン・ビジネス・イベント・テンプレートは、XSD フォーマットで事前定義されたイベント構文をアップロードすることによって作成できるようになっています。さらに、作成したビジネス・イベント・テンプレートをビジネス・プロセスに関連付けるために、イベント・エントリーをプロセスの入力パラメーターと一致させて、イベント駆動型プロセスのパラダイムを形成することもできます。例えば、リアルタイムの装置診断データを伴う装置監視イベントは、このマシンの動作状況を検証して KPI 違反をチェックする Service Assembler から作成されたビジネス・プロセスにリンクされます。

このような PaaS モデル内で統合された IIF ビジネス・プロセス環境では、開発者がアプリケーション開発サイクルを大幅に短縮することができます。そして、この環境で作成されるビジネス・プロセスは、実行可能なフォーマットにすぐに変換できるようになっています。

クラウド・ベースのアプリケーションのライフサイクル管理

視覚的なプログラミング・モデルだけでなく、クラウド・ベースのアプリケーションのライフサイクル管理も、PaaS モデルによる IIF ビジネス・プロセス環境全体の使いやすさを高めています。

図 5. クラウド・ベースのアプリケーション・ライフサイクル管理: サービス・プロバイダーとクラウド管理者
クラウド・ベースのアプリケーション・ライフサイクル管理: サービス・プロバイダーとクラウド管理者
クラウド・ベースのアプリケーション・ライフサイクル管理: サービス・プロバイダーとクラウド管理者

図 5 に示されているように、アプリケーション・ライフサイクル管理機能には、2 つの役割があります。1 つは IIF 開発者として開発関連の業務を担当するサービス・プロバイダーの役割、もう 1 つはクラウド・リソースの割り当てを行い、サービス・プロバイダーのリクエストを許可するクラウド管理者の役割です。

アプリケーション・ライフサイクル管理は PaaS モデルに組み込まれ、同じく Web ベースのユーザー・インターフェースとして複数のウィジェットを使用します。開発者と管理者は同じログイン・ゲート・ページを共有し、サインインした後に、それぞれのロールに固有のユーザー・インターフェース・パスにルーティングされます。サービス・プロバイダーが最初に行わなければならないのは、プロセス開発で以降も利用される外部 Web サービスを登録することです。その後は、「アプリケーション開発のための視覚的なプログラミング・モデル」セクションで説明したあらゆる Web ベースのツールを使用して、IIF アプリケーションをオンラインで開発することになります。

サービス・プロバイダーは最後に、ターゲット・デプロイメント環境としてクラウド・ベースの IIF ソリューションのライフサイクル管理で保守する最適なトポロジーを選択し、その上でアプリケーション・デプロイメントのリクエストを送信します。クラウド管理者は最初にリストを見て、そのサービス・プロバイダーから送信された保留中の全リクエストを確認します。リソースの正当化が完了した後、クラウド管理者は各リクエストの承認または拒否を決定します。

  • リクエストが承認された場合、アプリケーションは選択された IIF ソリューションに自動的にインストールされ、適切な期間を置いてから機能するようになります。
  • 承認されなかった場合には、リクエストを変更できるように、該当するサービス・プロバイダーにはリクエストの拒否が通知されます。

ロール・ベースのアプリケーション・ライフサイクル管理モードは、クラウドの管理概念により適合するように、動的にアプリケーションを構成およびインストールするためのパブリッシュ/サブスクライブおよびビジネス・モデルをサポートします。

まとめ

ビジネス・アジリティーは、特にリアルタイムの情報やその他の関連するデータ・ソースの診断および交換に迅速に対応するという点で、石油/化学産業にとって極めて重要です。弾性インフラストラクチャー、PaaS、および SaaS という形でのクラウド・コンピューティング・ソリューション、そして特定のクラウドに対応した投資は、バージョンをマイグレーションして統合できるようになることを意味します。

クラウド対応の業界ソリューションを話題にした連載の第 2 回目では、クラウド・コンピューティング技術とアーキテクチャー・パターンが、石油/化学産業の能力とアジリティーを飛躍的に向上させる仕組みを説明しました。このことは、石油/化学産業と似通った要件、ビジネス・モデル、IT アーキテクチャーを持つ他の業界にも当てはまるはずです。この記事では、クラウド・ベースの IIF ソリューションのライフサイクル管理の機能と実装メカニズムを紹介し、PaaS ビジネス・モデルによるビジネス・プロセス環境がいかにしてビジネス・アジリティーを迅速にもたらすことにつながるかを説明しました。


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Zone=Cloud computing, Industries
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ArticleTitle=クラウドと業界: 第 2 回 石油/化学産業向け統合情報フレームワーク
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