7月7日、第4期となるIBM BlueHubインキュベーション・プログラム 第1回説明会を開催しました。
「変革者によるパネルディスカッション」には、サークルイン 佐藤氏、CONCORE’S 中島氏が登壇。
iSGSインベストメントワークス 五嶋氏の進行のもと、起業時の困難や苦労について、またそれぞれの経験から参加者に向けてのアドバイスを語って頂きました。

【スピーカー】
サークルイン株式会社 代表取締役社長 佐藤 孝徳
CONCORE'S株式会社 代表取締役CEO 中島 貴春
株式会社 iSGSインベストメントワークス 代表取締役 五嶋 一人


”創業時に困ったのは、お金”

五嶋氏:

起業する前と後で、想定と違っていて苦労した点はありましたか?

佐藤氏:

私は元々VC経験があるので、やり始めたらそうなるよな、というのが事前にあり、想定の範囲内でしか基本的には起こっていません。なので想定外の困難には、実は直面していないです(笑)。

ただ6歳と4歳の子供がいて、前職を辞めるときには、ある程度の貯金があったのですが、会社を作るのに貯金を使っても、残りの貯金で2年ぐらいは暮らせるだろうと思っていました。しかし、実際には10カ月くらいでなくなってしまいました(笑)。

理由として家族の生活費はもちろんあるんですけど、次の資金調達までに会社にお金を貸し続けないといけないというのがあったりして、これが大きかったです。

その経験から、皆さんには「これぐらい貯金があればいいだろう」っていう金額の1.5~2倍の貯金をされることをお勧めします。

中島氏:

佐藤さんと同じように、こんなことが起こるだろうな、と思ってたぐらいの事しか起きていません。ただ創業して1年ちょっとなので、本当の困難というのはこれから起きてくるだろうと思っています。

私も前職は大きな会社にいたので、起業してからは、生活コスト・生活水準が、凄く下がりました(笑)。子供が生まれる年に起業したんですけど、給料を3分の1とか4分の1とかにして生活していくのは、想像よりも大変でした。


”問題の共通認識から共同創業へ”

五嶋氏:

創業時に1,2人で始めて、エンジニアがいなくて困っている、との相談を良く聞きます。
お二人の場合は、いまのような素晴らしいチームが、最初から出来ていたのでしょうか?

佐藤氏:

いました。共同創業者の土屋という者が僕の入社の2つ下なんですが、彼は元々コロンビア大学の物理学部出身で、頭が凄くキレます。

また彼と私はタイプが全然違っていて、私はバーッと喋って風呂敷を拡げていくタイプなのですが、土屋は「佐藤さんマジ勘弁してください」といいながらも(笑)、ずっとこつこつ仕事していくのが好き、というタイプです。

前職時代に北京で3年間一緒に仕事していたので、お互いに仕事のクオリティーとか、何を大事にするかとか分かっているので、自分がもう一人いるような感じで、仕事量が2倍になったと感じています。

中島氏:

私の場合は、元々全然起業という考えはなかったです。一緒にやりはじめたのが、佐藤さんと同じように仕事仲間でした。

社内システムの発注先の会社にいた人間なのですが、社内システムを一緒に作っていく中で「なんか建設系のシステムっていけてないよね」、という話になって、じゃあ作ってみようか、というところから始まりました。

そもそも最初から共同創業者を探そうとか、一緒に起業しようぜ!、というので集まってないというところで、変わっているかなと思います。

五嶋氏:

お二人とも大企業出身で、共同創業者も大企業出身ですけど、共同創業者の方を説得するのはすんなりいきましたか?またお二人ともご家族がいる中での起業で、どうやってご家族を説得されたのですか?

中島氏:

答えとしては「スっと」いきました。奥さんに関しては好きな事やれば、という感じでしたね(笑)。

事前にVCさんやスタートアップ界隈の方々に相談して、「事業としていけるんじゃないか」と意見を頂いていまして、共同創業者にそのことを話すと「じゃ、やろうか」となったので(笑)、特に説得の様な事はやってませんね。

佐藤氏:

ほぼ同じです。土屋と北京にある居酒屋で「こんなのあればいいよね」って話で盛り上がって(笑)、「じゃあ俺たちでやろう」と意気投合して始めましたので。

家族を説得する際には、前職で10年やっていて、VCも経験して数字も見れる、かつ英語も中国語もしゃべれるので、仮に3年やって大失敗してもまだ35歳で、変な借金さえ作らなければ大丈夫!、と言って説得しました(笑)。


―以下、会場からの質問―

”肌感の会うVCと出会う”

質問者1:

資金調達時に困ったこと、また資金調達を始めるにあたってのアドバイスを頂ければと思います。現在会社を登記して、プロダクトを作っている状況です。

佐藤氏:

まず、プロダクトは絶対にあった方が良いです。知り合いにお金を借りてでも作らないと、資金調達は難しいと思います。

中島氏:

私は今までのところ資金調達には困っていないのですが、それは肌感の会うVCさんと出会えた事が大きいと思います。そのままジェットコースターのように決まっていったって感じです(笑)。

その中で意識していたのは、VCさんの質問を想定し準備することです。
何人かのVCさんと会っていると、共通して聞いてくる質問があって、絶対ここ聞いてくるな、というのが何となく見えてくるので、そこだけはちゃんと整理して、曖昧に答えずに数字ベースできっちり答える、という風に意識してました。


”ユーザーの熱量を測る、伝える”

質問者2:

VCさんからはどの様な事を聞かれるのでしょうか?

五嶋氏:

会社のステージによっても違いますが、私が特に意識して見ているのは、プロダクトが「ある」、「ない」でいうと、それはある方がいい。そのプロダクトの出来というか、使っている人たちの「熱量」を見てみたいというのがあります。

例えばBtoBのソリューションで、まだたった2社しか使われてないとしても、その2社がものすごく熱心に使ってくれている、というのであれば、投資検討したいですね。

逆に、アーリーの段階で、いま何社使っているとか、使う見込み、とかいう規模の部分は、例えば20社が40社でも、2倍であることはそのとおりなのですが、これから目指す規模を考えれば、そんな20社とはか誤差でしかないし、課金してない場合がほとんどだったりするので、ぶっちゃけどうでもいいといえばどうでもいいし、熱量が高くないユーザーは広告宣伝費を詰めばお金で買えるという要素もあったりするので、アーリー段階とかではそれほど重要ではないと思います。

私はミーテイングでは、プロダクトに対して、「どうしたらユーザーさんにより大きな熱量を持っていただけるだろうか」というところに時間を割くことも多いです。そういったミーティングでは、存在しない数字をむりやり捻り出したり、見栄を張ったりしていただく必要は全然なくって、まず、使ってくれている人たちがどのくらいの熱量をもって使ってくれているかを「可視化する」というのが大事ですね。
高い熱量で使って頂けるプロダクトと、その熱量を可視化すること、まずそこにこだわり抜いて欲しいなと思います。

佐藤氏:

これだけインターネットにいろんな情報が落ちてる時代なので、最低限ちゃんと勉強してきた、っていうのを示さないといけないと思います。
どんなに多くても50個程しか質問ってないと思うので、それを想定して準備しておけばいいのかなと思います。

中島氏:

あとはシンプルに答えられるように意識しています。「誰の、何の課題を解決するのか」、ってことに関して、いざ聞かれると答えられないことが、当初はありました。 そこはしっかり時間を割いて整理し、一言で言えるようにしましたね。


”事業計画書に固執しない”

質問者3:

事業をやり始めて事業計画書とのズレが結構出てきています。お二人はどれほど事業計画書にこだわっていますか?また柔軟に変えていますか?

佐藤氏:

私は日々刻々と変えています。事業を始めて気付いたのですが、当初設定したお金を落としてくれるお客さんの課題が、微妙に想定と違う、であったり、課題の設定は合っているけれど、実際にお金を落としてくれない、という事は、結構多いように思います。
なので、日々気付きながら、確認しながら、事業計画書に固執することなく変えています。

中島氏:

私の場合は、ようやくKPIを作り始めました。最初は事業計画書と呼べるレベルのものを書いていなかったです。その時点からKPIを考えてもしょうがないかなと考えていましたので。

先程の五嶋さんの話と重複しますが、お客様にサービスを満足して使って頂いているか?というのを大事にし、この1年はサービスをどんどん広めていこうとはしませんでした。ユーザーがどれだけ熱量をもって使ってくれるかにフォーカスしてきました。

五嶋氏:

新しいものを世の中に出す時には、本当にこれが世の中で受け入れられるのか?っていうのを確認しないといけません。こういうサービスを出したら使ってもらえるだろう、というのは仮説でしかないので、まず仮説を確認するのが先ですよね。
その段階での事業計画書は仮説ベースの事業計画書なわけですから、そこにあまり縛られる必要はないと思います。


以上、30分という短いパネルディスカッションでしたが、起業家である佐藤氏、中島氏のそれぞれの体験に基づくリアルな意見、また参加者からの質問に対する五嶋氏のVCからの意見は非常に参考となったのではないでしょうか?

次回、7月19日(水)第2回説明会のパネルディスカッションの模様もお伝え致します。