ITコラム

クラウド時代へマインドセットを変えよ【対談】

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本記事は、2019年1月にZDNet Japanにて掲載された記事です。

デジタルトランスフォーメーションの時代で勝ち残るためには、クラウドをはじめとするテクノロジーを最大限に活用しなければならない。そうした時代において、CIO は、IT 部門は、どうあるべきなのか。長らく IT 業界で記者活動に携わってきた 2 人の編集長に、今日の企業 IT を取りまく状況を俯瞰してもらう。

TECH.ASCII.jp 編集長 大谷イビザ氏:
紙媒体のアスキーのネットワークやセキュリティ関係を経て、現在はエンタープライズ IT を中心とした Web 媒体に携わっています。クラウド時代となり、インフラがコモディティとなり簡単に調達できるようになったことで、その上にあるアプリケーションを PaaS や SaaS できちんと作ろう、使おうというふうに着眼点が変わってきています。つまり、業務の現場が IT を主導して導入するという流れがここ数年確実にきています。

ZDNet Japan 編集長 國谷武史氏:
かつてエレクトロニクスの業界紙で家電流通の分野を担当していたころ、販売の中心が個人経営の店から量販店へとシフトし、業界構造が大きく変わる様子を目の当たりにしました。今のIT業界に起きているデジタル破壊にも通じる現象だったと思います。オンライン媒体に軸足を移してからは、エンタープライズ IT 分野を中心に 10 年近く取材を担当しています。

 

CIO は部分最適ではいけない

TECH.ASCII.jp 編集長 大谷イビサ氏

TECH.ASCII.jp 編集長 大谷イビサ氏

國谷: 企業では CIO(最高情報責任者)が IT の目利きとしての役割を担っています。ZDNet では CIO を主要な読者としていて、これまで何人もの CIO から話を聞きましたが、ある著名な CIO は、「テクノロジーは 手段でしかない」と話しており、テクノロジーとビジネスをどうマッチングさせリードしていくか、自分たちのビジネス課題とやりたいことを一致させていくことが大事だと語っていました。

大谷: やはり CIO は部分最適ではいけなくて、全体最適を考えないといけない。ビジネス戦略をきちんと練り、仕組みを考え、そこに最適なテクノロジーを選んでいくのが大事です。ビジネスが分かっていないと CIO はできないと思います。

國谷: 例えば、「働き方改革」の文脈を見ると、テクノロジーに関してはスマホ導入といった部分的の話が多いですよね。会社として業績を上げることなどが「働き方改革」の本質であるはずなので、「世の中の流れだから」といった消極的な姿勢のままにテクノロジーを採用したところで、本質的な目的は成し遂げられないわけです。ある業界アナリストの方が言うには、例えば、基幹業務を司るテクノロジーが ERP です。この ERP も 30 年前の仕組みのままだと、業務スピードは出ませんし、それこそなかなか変革はできないでしょう。働き方変革の中で ERP を活用してい くという視点が大事ということでした。

ZDNet Japan 編集長 國谷武史

ZDNet Japan 編集長 國谷武史

大谷: 今の話はマイクロサービスやコンテナにも通じますね。マルチクラウドが進み、コンテナ化で抽象化することで、楽にインフラを扱えるようになりました。ベンダーロックインを逃れられることもメリットです。いまクラウドでは、インスタンス、コンテナ、サーバーレスへと、コンピューターの粒度が変わってきています。特にコンテナは 2018 年にフォーカスされました。2019 年が楽しみです。

國谷: 特に 2018 年は Kubernetes が話題になり、ビジネスとテクノロジーの両面でクラウドを前提に利用していく環境の下地が整ってきたように思います。

大谷: 企業のクラウド導入を見ると、IBM が言うところの「リフト&シフト」を指向してはいるものの、「リフトしっぱなし」で停滞しているケースが見られます。クラウドに乗せただけで、クラウドの新しい技術を使っていない。スタートアップでは「インスタンスとデータベース」から、サーバーレスへと移っており、これは企業のカルチャーなのだなと腹落ちしています。新しいことにチャレンジしている文化の方がクラウドになじみやすいようです。

國谷: 先日取材した大手の半導体メーカーでは、センサーデータをいかに活用するかを真面目に考え、生産ラインの可視化からラインの全無人化までビジョンを描いています。昔ならその実現に 10 年をかけていたところを、クラウドを活用すれば数年でできるといった具合にスピードアップしています。こうした感覚を持っている企業は、大手であってもスタートアップに近いものがあると思います。

大谷: 自動車などの製造業は規模が大きいので、実現できたら波及効果は大きいでしょうね。

國谷: 昔ながらの産業界がこの 1、2 年で大きく動いてきていますよね。2019 年以降は、間違いなく大きなインパクトを与えると思います。

IoT とビックデータと AI がつながる

大谷: 製造業に限らず、最近はリーガルテックやアグリテックなどのクロステックも話題になっていますね。従来 IT を使わなかった業界がクラウド導入に踏み切っています。そうした事例を追っていて分かったのは、今後はテクノロジーだけではなく、業界独自の知識が重要になるということです。先日、通信事業者が エビの養殖を IoT で最適化するという話を聞きましたが、半分以上がエビの養殖に関する話でした。前提知識をとらえないと、センサーデータ活用の必然性が理解できないからです。AI も今後、こうした業界知識が必要になると思います。

國谷: データ活用というと、IT 業界では数年前に「ビッグデータ」という概念が出たものの実態はあまり広まらず、最近では「データレイク」という表現に置き換えられています。ビジネスで活用するためのデータを蓄積することが大事だという点がようやく市場に認知されてきたと感じます。

大谷: ビッグデータがうまくいかなかったのは解析するデータサイエンティストがまだ足りなかったからでしょうね。人は急には増やせませんから……。でも、かつてビックデータを解析するのは人間でしたが、これからは AI にやらせる。IoT とビックデータと AI がつながってきました。一方で、今は AI に学習させるためにデータが必要になってきました。

最近ではデータのパイプラインをきちんと作り、データをどこに貯め、どう解析するか、いかに楽に使えるか主戦場になってきています。IBMならIBM Cloud Private for Data や Watson Studio ですね。

國谷: データサイエンティストの意味するところも変わってくると思います。データをどう処理するかだけではなく、データの本質を理解して、どう価値に変えていくか。それができるのはビジネスの最前線を知る人です。 AI やデータカタログなど下準備の部分ができてきてい るので、これからは人や会社がやりたいことをテクノロジーで実現できるようになりつつあると思います。

大谷: 「デジタルトランスフォーメーションで、ディスラプトされないために何をするか」と考えるのは、やめるべきですね。そう考えていると、いつまでもディスラプトする側に勝てません。自らの存在価値をどう世に問うていくのかが重要ではないでしょうか。

その意味でビジネスとテクノロジーを橋渡しする媒体があったら、すごく存在価値があると思います。そういう意味では ZDNet に期待しています。アスキーはテクノロジーから積み重ねて、ビジネスを見ていこうと思っています。読者に納得感を与えたいです。

國谷: ビジネスにテクノロジーが深く関わっている現在では、変化の起点がテクノロジーになることも多いと思います。成長途上のテクノロジーを追うことは、そのテクノロジーに近い立場にいる人でも難しいことがありますが、テクノロジーが人や社会の進化に与える影響は大きく、やはりテクノロジーの出現が人や社会の変化における着火点になることが多いと思います。ZDNet でもこうした変化をしっかり追い、CIO や IT をビジネスに利用する人々にとって有益な情報をこれからも伝えていきたいと思います。

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