記事をシェアする:

著者:佐貫 俊幸
IBM Distinguished Engineer, Technical Strategy、 IBM Research & Development – Japan, Member of IBM Academy of Technology Leadership Team.

皆さん、こんにちは。
日本IBMの研究開発部門(東京ラボ)で技術戦略を担当している佐貫です。私は、現在研究開発における重点技術領域の選定とその展開の施策立案などの業務を担っています。IBMの活動は、原子レベルのテクノロジーの研究から社会の課題解決のソリューションに至るまで非常に幅広くかつ変化も激しいので、日々新しいことに取り組む楽しさと苦労を実感しながら仕事をしています。

さて、このたびブログで日本IBMのテクニカル・コミュニティであるTEC-J (Technical Experts Council of Japan)メンバーの記事を連載することになりました。今回は、TEC-Jの代表として、このコミュニティの生い立ちや活動などをご紹介し、イノベーションを生み出し続けるIBMの企業文化の一端をお伝えします。

1. TEC-Jの概要や目的

TEC-Jは、日本IBMの組織横断的なテクニカル・コミュニティです。このTEC-Jには、現在350名以上の技術系プロフェッショナルやコンサルタントが組織や世代を超えて自主的に集まり、最新技術の調査研究に取り組み、さまざまな技術的課題を検討しています。関心のあるテーマに対して、参加メンバーが専門性を活かしながら自由に議論し、新しい知見を醸成するだけでなく、技術者のスキル向上や育成を支援することにも取り組んでいます。さらに社内だけでなく、活動成果を著作物として出版したり、お客様やお客様団体、そして大学などとも連携して、IBMの技術のリーダーシップを発揮しています。[1]

皆さんから良く「日常の業務とは別にこのようなコミュニティ活動を進めてゆくのは大変ではないか?」と問われますが、TEC-Jのメンバーはその大変さを乗り越える強いモチベーションを持っています。その理由は個々人によって異なりますが、私が思うには、根っから技術が好きであるのと共に、通常の業務では接点の無い人たちと意見を交換し、刺激しあい、人的ネットワークを広め、さらには社内外でのリーダーシップを高めることで、プロフェッショナル・リーダーとして磨きをかける格好の場になっているからだと思います。技術もビジネス環境も劇的に変化している中で、独りで出来ることには限界があります。将来を見据えて、組織や世代を超えた仲間と共にプロフェッショナルとしての自分を高めるコミュニティの重要性は益々高まると思います。

2. TEC-Jの生い立ちと背景

TEC-Jは、1999年に日本IBMのテクニカル・コミュニティとして発足しました。その母体となるのは、グローバルIBMのテクニカル・コミュニティであるIBM Academy of Technology (以下、AoT) [2]です。TEC-Jは、このAoTの日本支部として位置づけられています。

ここでAoTについて簡単に触れてみたいと思います。AoTは、IBMの全世界から選出された約900名の技術リーダーが形成するコミュニティで、四半世紀以上の歴史があります。AoTの主な役割は、IBMの経営陣に対してIBMの技術的方向付けの提言を行い、またテクニカル・コミュニティとして組織を超えたバイタリティの推進を担っています。 このAoTは、AoTメンバーが自主的にコミュニティを運営しますが、その責任者にはIBM Corporationの役員を置いており、IBMの経営に直接結びついているのが特長です。これは、AoTが単なるボランティアの組織ではなく、AoTの力を経営に活かして行こうとする戦略があるからです。組織横断形のコミュニティは、既存の体制では対応できない課題に対する能力を持つだけでなく、風通しの良い組織や社員のバイタリティの向上の効果もあるからです。例えば、そこから生まれるイノベーションの推進もそのひとつの表れです。今までAoTのメンバーが生み出した特許は1万件以上ありますが、これもメンバーが組織や地域、専門領域を超えて取り組んできた相乗効果の表れだと思います。このAoTは、各地域に支部(Affiliate)を持ち、その日本の支部がTEC-Jになります。

TEC-Jには、日本IBM所属のAoTメンバーだけでなく、サービス部門、営業部門、研究開発部門、スタッフ部門などの技術系プロフェッショナルやコンサルタントがいます。コミュニティの全体の運営はTEC-Jメンバーから選出された代表(President)、副代表(Vice President)、運営委員(Steering Committee Member)によって全体の方向性やプランを決めます。対象とするテーマの選定とその活動は、TEC-Jのメンバーが提案し、運営委員会の了承のもと、TEC-Jメンバーだけでなく関係する人を募って(あるいは、巻き込んで)進められ、その活動成果はTEC-Jメンバーだけでなく、他の国のAoTメンバーにも参照できるように展開します。

TEC-Jは、毎年春と秋の総会を開催してコミュニティ運営の方針の展開や各チームの活動成果の発表を行い、テクニカル・コミュニティ全体のコミュニケーションを図っています。また、会議だけなく、社内のソーシャルツールを活かして、メンバー間のコミュニケーションを図っています。このようなコミュニティ活動は、コラボレーションの実践の場でもあります。

後編に続く

 

[1] 佐貫、浦本、行木:「組織や世代を超えて活動するIBMのテクニカルコミュニティ文化」, IS Magazine, No.11, pp.75 – 77. (Spring. 2016)
[2] IBM Academy of Technology

More テクノロジー・リーダーシップ stories
2021年7月2日

クラウド環境でのインメモリ処理技術の役割

インメモリ技術は2010年ごろに華々しく登場し、色々な技術が登場しました。現在もオープンソースを中心に幾つかの製品が提供されています。例えば、顧客IDに紐づく顧客データをインメモリデータストアにキャッシュするというのはよ […]

さらに読む

2021年5月19日

デジタル化の促進によるセキュリティー要件の変化とコンフィデンシャル・コンピューティング

最近注目されているコンフィデンシャル・コンピューティング。これを活用しながらゼロトラストモデル上で、安心してDXを実現するための考慮点を解説します。 テレワークの普及と生産性向上のために、業務のデジタル化が進められていま […]

さらに読む