ITコラム

テニスもラグビーもサッカーも!デジタルとの融合で進化する「スポーツテック事例8選」

記事をシェアする:

日本チームが史上初のトップ8入りを果たし、大盛況に終わったラグビーW杯2019。2020年には東京オリンピックも予定されており、スポーツへの関心が高まりを見せている。

身体を使うスポーツはアナログなイメージが強いが、業界では今、デジタルテクノロジーの活用に積極的だ。テニス、ラグビー、サッカーにゴルフなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)の先駆者がどのようにテクノロジーを活用しているのか、ビジネスのヒントに満ちた事例を8つを紹介しよう。

はてなブックマークに追加

 

テクノロジーでファンとのエンゲージメントを高めるスポーツ業界

プロスポーツの世界において、ファンとのエンゲージメントは常に重視されてきた。選手とファン、チームとファン、リーグとファン、大会とファン、さまざまな切り口でファンの心をつなぎ留める努力が重ねられてきた。かつてはテレビや新聞などのメディアを通じて、今はスマートフォンやPCを通じて。

エンゲージメントを高めるために使われる道具とともに、手法も変化している。ファンを魅了するためにはよりリアルタイムに近く、より深い情報が必要になった。そこで活躍するのがITだ。

オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドで構成されるハイブリッドクラウド環境をベースに、機械学習やAIを使ってスポーツの魅力をこれまで以上に、しかも素早くファンに届けることができるようになっている。

テニスの全米オープンや、記憶に新しいラグビーW杯2019、サッカーのFIFA W杯、ゴルフやモータースポーツのF1など、9つの先端事例を紐解くことで、テクノロジーとの融合によるスポーツとファンとの関係性の変化を見てみよう。

この記事の続き

全米オープンはハイブリッドクラウドに支えられている

観客動員数、賞金総額ともに世界トップを誇る、全米オープンテニス(USオープン)。主催する全米テニス協会(USTA)は25年以上も前から、IBMをパートナーとしてDXに取り組んできた。現在はオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド基盤を構築し、「usopn.org」を運営している。

全米オープンテニスで戦われる試合は延べ300時間以上、1コートで1日に最大6試合、最大17試合が同時に行われる。これだけの規模、密度になると、相当なファンであってもすべての試合を観戦するのは不可能に近い。そこで役立つのが、IBMのクラウドで提供されるさまざまな機能だ。

たとえばIBM Watsonを使った「AI Highlights」は、トーナメントにおいて最もエキサイティングな瞬間を特定し、ハイライト動画を自動的に作成、ファンに提供する。分析に使われるデータは、統計的な試合のデータや観客の反応、選手の表情、ボールを打つ音など多岐にわたり、かなり精度の高いハイライト動画を作成するという。

IBMのクラウドが提供するのは、試合の振り返りだけではない。「SlamTracker」はリアルタイムで試合を分析、試合動向をわかりやすく可視化することで、テニス観戦歴の浅いファンでも試合を楽しめるようになる。最新バージョンではハイライトとなるショットだけではなく、そのショットが打たれるまでのコンテクストも含めるように進化し、試合の流れがよりわかりやすくなっている。

大会全体を見渡せるアプリと、AIを活用したハイライトシーンの提供でファンとのエンゲージを深める全米オープンテニス

 
「技術を使うことそのものが目的なのではなく、AIやクラウドがUSTAの目的にどれだけマッチするのか、その目標を見失わないように長年努力を続けてきた」と、USTA関係者は語る。基盤としてIBM Cloudを中心にしたハイブリッドクラウドを選択しているのも、その目的に見合っているからだ。

大会期間中は世界中から1,000万人がUSTAのWebサイトにアクセスする。また、スマートフォンアプリを通じてアクセスするファンも多数いる。これだけのアクセスに耐える配信環境を、大会期間を中心とした特定の期間だけ用意するにはクラウドが最適だ。実際、5,000%のスパイクまで想定した設計になっており、情報にアクセスできずファンをがっかりさせることはない。

また、トーナメント期間中には多くのサイバー攻撃にもさらされる。期間中だけで2億回以上に及んだこともあるというから、ファンだけではなく世界中の攻撃者からも多くの注目を集めていることがわかる。しかしIBM Cloud用意されたセキュリティ機能は確実に効果を発揮し、ファンと攻撃者を見分けて排除している。

ラグビーW杯でもIBM Cloudが活躍

日本チームがトップ8入りを果たし、多くのファンを熱狂の渦に巻き込んだ、ラグビーW杯2019。日本開催ということもあり、これまでラグビーに興味を持っていなかった新たなファンを獲得するチャンスでもあった。

しかし日本では、ラグビーは野球やサッカーほどメジャーなスポーツではなく、ルールを知っている人も多くなかった。そこで活躍したのが、IBM Cloud上に構築されたAIアシスタント「教えて!ラガマルくん!」だ。

親しみやすいキャラクターを起用し、ラグビーについて詳しくなってもらう「教えて!ラガマルくん!」

 
ラガマルくんとは、2017年に生まれたラグビー応援キャラクター。「教えて!ラガマルくん!」では自然言語での問いかけや画像から、ラグビーについての解説を行う。テレビでラグビーを観戦しながら、気になったことやわからないことをラガマルくんに気軽に聞いてもらうことで、ラグビーに親しんでもらうことが目的だ。

サッカーW杯ではパリの映像を10秒以内にロサンゼルスでリモート編集

テニス、ラグビーとワールドクラスの大会を支える事例を紹介したが、サッカーシーンにおいてももちろんIBM Cloudは活躍している。米FOX Sportsでは、FIFA女子W杯サッカーの報道において、映像のリモート編集を実現した。

かつては開催地にスタッフや機材を送り込んでいたが、2018年にロシアで開催された男子W杯からリモート編集にチャレンジ。IBM Asperaのライブ・ストリーミング技術により、FOXの本拠地である米ロサンゼルスでほぼリアルタイムにリモート編集が可能なことを確認した。

大会開催地まで設備と人を運ぶのではなく、映像ストリーミング技術を使いリモートでほぼリアルタイムの編集作業を実現

 
2018年のトライを受けて、2019年にフランスで開催された女子W杯ではフルリモートに挑戦。2018年のトライに比べて、映像ストレージへの同時ストリーム数は倍増することが予測された。しかし、世界を結ぶIBM Cloudを基盤にすることで、フランスのパリで開催されている試合の映像を、ロサンゼルスで編集できるようになるまでのタイムラグを10秒以内に抑えることに成功する。

また、ほぼリアルタイムでの試合映像バックアップを実現。試合終了の数秒後には、未加工高画質ソースのバックアップも完了していた。W杯全体では実に合計118TB、40試合分のライブ編集用フィードをパリからロサンゼルスへ送信し、アーカイブや編集用に500TBのオブジェクト・ストレージが使われたという。

サッカーといえば、日本でもJリーグを通じて多くのファンを持つスポーツだ。数多くのチームが、技術の研鑽とファンとのエンゲージメント強化に向けて競い合っている。その1つ、清水エスパルスはスポーツビジネスに必要な仕組みのDXを進めている。

基盤となっているのは、やはりIBM Cloudだ。クラブのサイズに見合ったサイズでスタートできること、オープンで標準化され世界で通用するプラットフォームであることが、IBM Cloud選定の理由だ。

ゴルフにも、クラウドの力が注がれている

シンプルで見やすい画面で大会の進行をチェックできる。

その裏側ではIBM Cloud上に膨大なデータが取り込まれ、分析され、目的に応じて別々の場所にある複数のクラウドに送られている。マスターズとIBMはこうしたエクスペリエンスを実現するために、20年以上も最先端のデジタルテクノロジー活用パートナーとしてタッグを組んできた。

冒頭で全米オープンテニスにおけるIBM Cloud活用の話に触れたが、同じく四大国際大会の1つに数えられるウィンブルドン選手権でも、IBMは30年来のパートナーとしてDXを支えている。ウィンブルドン選手権はAIのアーリーアダプターでもあり、有益なデータを収集するためにすべてのコートに優秀なプレイヤーをスポッターとして配置し、すべてのポイントの詳細を評価して記録している。学習させるデータの精度が重要であることを十分理解しているからだろう。

放送局、スタジアムなどスポーツを楽しむ環境にも浸透するIT

スポーツの主催者ではなくても、スポーツビジネスに携わる各業界でDXが推進されている。その例として、米国のスポーツ専門テレビチャネルであるESPNと、最新設備を備えたMercedes-Benzスタジアムを紹介しよう。

ESPNは衛星放送やケーブルテレビで全米に番組を提供している。米国で非常に人気の高いアメリカンフットボールには特に力を入れており、「Fantasy Football」というスマートフォン向けアプリを配信している。アメリカンフットボール32チーム、1,900名以上のプレイヤーを分析してデータ化しており、それを元に自分だけのチームをアプリ上に作ることができるものだ。注目している選手の活躍ぶりが反映され、自分のチームの状況を友達と共有したり競い合ったりして楽しめるようになっている。

スタジアムにおけるDXは、ほかの事例とは観点が少し変わってくる。試合が開催される現場であり、一番盛り上がる場所に違いないのだが、試合のない日の活用が難しい。

それを解決しようとITを活用して取り組んでいるのがMercedes-Benzスタジアムだ。試合がある日もない日も楽しめるように、情報提供設備や娯楽エンターテインメント設備を用意して毎日ファンに門戸を開いている。そこでのファンの足跡、導線から洞察を引き出し、次なるニーズを予測するのが目標だ。これらの取り組みも、裏側で支えている。

More ITコラム stories
2019年12月6日

これからのIT基礎知識 クラウド・ネイティブという考え方 Vol.4

最終回のこのページでは、クラウド・ネイティブの代表的なアプローチであるコンテナ・オーケストレーター(ここではK […]

さらに読む

2019年12月2日

これからのIT基礎知識 クラウド・ネイティブという考え方 Vol.2

クラウド・ネイティブ基礎知識解説の連載2回目。イミュータブル・インフラストラクチャーを取り上げる。コンテナ移行 […]

さらに読む

2019年12月2日

これからのIT基礎知識 クラウド・ネイティブという考え方 Vol.1

OpenShift/Kubernetesの導入で成果をあげる道 CNCF(Cloud Native Compu […]

さらに読む