ITコラム

マルチクラウドはクラウドの未来である、というIBMとVMware、Red Hatらが一致するクラウド戦略。IBM Think 2019

記事をシェアする:

新野 淳一氏

著者:新野 淳一氏

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。
一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)総合アドバイザー。
日本デジタルライターズ協会 代表理事。

 

IBMのクラウド戦略において重視されているもののひとつが「マルチクラウド」の推進です(もうひとつはWatsonを中心としたコグニティブ関連でしょう)。

同社が昨年発表した「IBM Multicloud Manager」は、IBM CloudはもちろんAWS、Azure、Google Cloudなどのパブリッククラウドやプライベートクラウドを一元管理できます。また、「IBM Cloud Integration Platform」では、複数のクラウドを単一のプラットフォームとして統合し、統一したセキュリティの確保、アプリケーションのデプロイなどを可能にします。

同社が顧客として数多く抱える大手企業や公共機関などでは、単独のクラウドだけを利用するといった状況はまずありえません。オンプレミスを含む複数のクラウドやサービスを組み合わせて利用しつつ、大規模なビジネスを支えるミッションクリティカルなシステムを維持していく必要があります。

同社のクラウド戦略は、こうした顧客の状況にフォーカスしたものといえます。

先週、サンフランシスコで開催されたイベント「IBM Think 2019」のセッション「Hybrid, Multicloud by Design. Accelerating the Enterprise Cloud Journey」は、まさに同社がマルチクラウドの重要性を訴える内容となっていました。

IBMクラウドとコグニティブソフトウェアを担当するシニアバイスプレジデント アービンド・クリシュ

VMwareゲルシンガー氏「ハイブリッドこそクラウドの未来」

セッションのホスト役として登場した、IBMでクラウドとコグニティブソフトウェアを担当するシニアバイスプレジデントArvind Krishna(アーヴィン・クリシュナ)氏は、「いま始まるクラウドの第二章では、ミッションクリティカルなシステムがクラウドへ移行していくことになる」として、IBMの得意分野であるミッションクリティカルなシステムでは、これからがクラウドにおける本番なのだと指摘。

「ミッションクリティカルなデータやワークフローが、プライベートクラウドや複数のパブリッククラウドへ移っていくのだ」(クリシュナ氏)

続いてゲストとして登場したVMware CEOのパット・ゲルシンガー氏は、IBMとのパートナーシップに触れた上で「ハイブリッドクラウドこそクラウドの未来そのものだ」と語ります。

VMwareはオンプレミスをふくむあらゆるクラウドにおいてVMwareテクノロジーを基盤としたマルチクラウド環境を実現し、顧客にさまざまなクラウドの選択肢を提供しようとしています。VMwareもIBMと同様に、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドに重点を置いているのです。

ゲルシンガー氏はハイブリッドクラウドの重要性について3つの理由を語ります。

「理由の1つ目は、物理的な法則です。もし50ミリ秒のレスポンスタイムが必要な処理なのに、クラウドまで光の速さで到達するのに200ミリ秒かかるとすれば、それは大問題。データやサービスを近く(のクラウド)に置かなくてはなりません。

経済面も関係してきます。いちいち機械学習で認識するために猫の写真をクラウドへ送る必要があるでしょうか? 機械学習のトレーニングはクラウドで行うにしても、エッジにインテリジェンスがあれば経済的です。

3つ目は最も重要です。それは地域ごとに異なる規制です。特定の国や事業、規制環境では、データがその場所に存在することが求められます。自国にデータがないとだめだとか、特定の手法で存在していなければだめだといったことが決められているのです。

結局のところここに挙げた理由により、私たちは適切な場所にワークロードを置けるような環境を提供しなくてはならないのです。

そうすることで、要求されるコストやガバナンス、性能への対応などへの柔軟な対応が実現できるのです。だからこそ現在も、将来も、正しい答えはハイブリッドであり、エッジ機能が強化されればさらにその正当性が高まるのです」(ゲルシンガー氏)

IBMとVMwareは2016年2月に、IBM CloudにおいてVMware環境を提供することなどを柱とするクラウドにおける戦略的提携を発表し、昨年11月には両社でハイブリッドクラウドに関するラボを共同で設立するなど、協業を深めています

ゲルシンガー氏とクリシュナ氏は、こうした両社の協業によってイノベーションを推進していくことを観客に約束しました。

ミッションクリティカルを維持しつつクラウドへ移行していく必要がある

続いてステージに登場したのは、IBM グローバルテクノロジーサービス担当 シニアバイスプレジデントのJuan Antonio Zufiria Zatarain(フアン・ズフェリア)氏。さらにゲストとしてSAPのSAP Cloud Platform担当SVP Colleen Speer(コリン・スピア)氏とレッドハットの製品およびテクノロジー担当社長 Paul Cormier(ポール・コーミア)氏。

左から、レッドハット コーミア氏、SAP スピア氏、IBMズフェリア氏

左から、レッドハット コーミア氏、SAP スピア氏、IBMズフェリア氏


 
IBMのズフェリア氏は、クラウドの第二章において企業のワークロードがクラウドへ移行する際や、ハイブリッドクラウド環境においては、コンテナ技術が不可欠な要素だとの見解を示します。

SAPのスピア氏は、多くの企業はまだデジタルネイティブにはなっておらず、既存のミッションクリティカルなシステムを維持しつつ、迅速さや柔軟性を実現するクラウドへ移行していく必要があると指摘。

レッドハットのコーミア氏は、企業のシステムがクラウドへ移行しようとするなかで、すべてのアプリケーションをクラウド化するのは現実的ではないと気づき始めるだろうとし、だからこそ物理サーバや仮想環境なども含めたマルチクラウド的なアプローチが求められると発言。

IBMのズフェリア氏は発言を受け、標準化やオープンな環境がマルチクラウドでは大事だとし、こうしたクラウド移行時のさまざまな課題に対して、IBMとレッドハット、SAPの経験やサービス、そしてパートナーシップを基にしたソリューションが提供できるだろうと締めくくりました。

More ITコラム stories
2019年4月2日

Kubernetesを軸に再定義されつつある、新しい「クラウド対応」の意味とは

このエントリーをはてなブックマークに追加 著者:新野 淳一氏 ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。 […]

さらに読む