量子コンピューター

IBM Quantum Eagle、100量子ビットの壁を破る

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2021年11月16日、IBM Quantumは量子コンピューターの実用化に向けた技術革新である127量子ビットをもつプロセッサー「IBM Quantum Eagle」を発表しました。

今回の発表は、IBMの量子コンピューターの開発が、2020年9月に発表した「1,000量子ビットを超える量子プロセッサー IBM Quantum Condorに向けた量子技術のスケール・アップに関するハードウェア・ロードマップ」通りに進んでいることを示しています。

同時に、将来の量子データ・センターの構築につながる新しいシステム「IBM Quantum System Two」のコンセプトも発表しました。配線や極低温冷却システムなどを総合的に強化しモジュール性を高めたこのシステムは、OspreyやCondorはもちろん、さらにスケール・アップする未来のプロセッサーを搭載し実アプリケーションを運用していきます。

IBM delivers its 127-qubits Eagle quantum processor, a breakthrough in scaling quantum hardware towards practical quantum computing. (Credit: Carl De Torres of StoryTK for IBM)

クリックで拡大表示。その他の画像は、IBM Research Flickrでご覧いただけます。

127量子ビット Eagleプロセッサー

IBM Quantum Eagleプロセッサーは、量子コンピューターの実用化に向けた大きなマイルストーンであり、コンピューターの歴史における技術革新だと考えています。

Eagleは、65量子ビットのHummingbirdのほぼ2倍の量子ビットをもちますが、単に量子ビットを追加するだけではスケール・アップを実現することはできません。

量子ビットの数が1つ増加するたびに、従来のコンピューターで扱える計算量に換算して、空間の複雑さは倍以上になり、やがては従来のコンピューターの能力の限界を超えていくと考えています。IBM Quantumチームは、3Dパッケージングやこれまでに培ってきた量子プロセッサー技術を用いこの課題をクリアしました。

“ Eagleは一夜にしてならず “

IBMの長年にわたる半導体研究・開発の歴史と礎で実現したEagleにより1,000量子ビットのプロセッサー開発ロードマップが実現可能であることを示し、金融・化学といった実問題において量子優位性が享受できる日が遠くないと考えています。

IBM Quantum System Two

革新を続ける量子プロセッサーの能力をフルに発揮し、さらなるスケール・アップを支えるためには新しいシステムが必要です。

モジュール性を徹底的に追求するIBM Quantum System Twoは、拡張可能な次世代制御エレクトロニクスと高密度の極低温部品や配線などの量子システムのスケールアップに必要な要素取り込んでいます。

IBM Quantum System Twoのコンセプトは、量子コンピューターが設置される未来の量子データ・センターを想起させてくれます。


参考:IBM Quantum breaks the 100-qubit processor barrier


量子ハードウェアの性能を最大限に発揮し量子優位性を実現するためには、ソフトウェアの革新も必要です。IBMは同日、新しいプログラムミング・モデルも発表しました。古典・量子の双方を活用したこのQiskit Runtimeは、ハードウェアの革新と総合的に作用し、量子優位性を私たちの想像より早くもたらすことでしょう。

Qiskit Runtime

IBM Quantumチームは、2021年2月にワークロードの100倍以上の高速化を実現する「オープンな量子ソフトウェア・エコシステムの構築に向けたロードマップ」を公開し、5月にQiskit RuntimeをIBM Quantum Networkのプレミアム会員がIBM開発チームがあらかじめ用意したプログラムを実行できるよう1台のIBM Quantum システムで稼働しました。

現在はネットワーク上の全てのシステムで稼働しており、ユーザーはカスタム・プログラムを実施することができます。Qiskit Runtimeは量子ハードウェアに近いところで古典コードも計算することができますが、近いがゆえの制約もありました。

量子システムは古典コンピューティングと連携することにより、より広範な問題から正確なソリューションを見つけることができます。私たちはクラウド、HPC、GPUを含む古典的なオペレーションをアプリケーション・レベルで量子システムに組み合わせることにより、想定よりも早く量子優位性を実現できると考え、量子コンピューティングの能力を活用する新しい方法を継続して探究しています。

フリクションレスな開発の実現

2021年2月に発表した「オープンな量子ソフトウェア・エコシステムの構築に向けたロードマップ」でも示したように、ユーザーや開発者がハードウェア自体を意識せずに、量子コンピューティングを既存の計算資源に組み込み量子回路を実行する「フリクションレス – 摩擦のない」開発環境の実現が、量子優位性を加速すると考えています。

IBM Cloud Code Engineは、開発者がインフラストラクチャー管理などを意識することなく純粋に開発に集中できることを目的とするソフトウェアです。このIBM Cloud Code EngineとQiskit Runtimeを連携して使うことができれば、ユーザーや開発者は古典と量子の適切なコンピューティング・リソースを意識することなく使うことができるようになるでしょう。

参考:Introducing Quantum Serverless, a new programming model for leveraging quantum and classical resources

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