テクノロジー・リーダーシップ

技術者コミュニティ「COSMOS Day 2020」開催レポート

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ニューノーマル時代の自分バージョンアップ

COSMOSは、テクノロジーとイノベーションの世界で活躍する「IBMの女性技術者を支援する全社横断的なコミュニティ」です。発足時の季節である秋に満開に咲くコスモスの花と、宇宙や探求をイメージして「COSMOS」と名づけられました。

「技術力を磨き」「技術で課題解決し」「物事を成し遂げた時の達成感」これが女性技術者のモチベーションを大きく左右します。そして、どのようにしてキャリアに結び付けていくか?COSMOSではこのような課題に取り組み、多くの女性技術者の支援を行っています。活動の詳細についてはCOSMOSブログをご覧ください。

著者:女性技術者コミュニティー COSMOSコアメンバー

女性技術者コミュニティー COSMOSコアメンバー

ITアーキテクト、ITスペシャリスト、プロジェクトマネージャー、リサーチャー、オファリングマネージャー、ソフトウェアエンジニア、デベロッパーアドボケイト、データサイエンティスト、UXデザイナー、CTOオフィススタッフ

 

COSMOS Day2020のメッセージ

「COSMOS Day2020」は2020年9月11日に開催し、今年はオールリモートで行われ300人以上の多くの方が参加されました。WebEXやMURAL、Slackといったオンライン・コミュニケーションツールを駆使した記念すべき会となりました。

また、今年のテーマは「ニューノーマル時代の自分バージョンアップ」です。COVID-19の環境下であっても「女性技術者のニューノーマル時代に対する不安と期待についての情報整備をしながら、ポジティブにキャリアを継続できるようエンパワーする」こと。そして2020年版「女性が活躍する会社BEST100」総合ランキング1位に返り咲いた今年だからこそ、新たな「働きがい」「働きやすさ」についても一緒に考える場として、筑波大学教授 山口香先生、日本IBM 代表取締役社長 山口明夫、そしてCOSMOSメンバーが講演しました。

AI Minutes for Enterprise(リアルタイムで音声をテキスト化)とWebEXを連携しながらのオンライン会議の様子

行木陽子 日本IBM技術理事COSMOSリーダーによるオープニングメッセージから開始した今回のイベントでは、事前にSlackで募った「キャリア」「スキルアップ」「健康管理」の3つのテーマに関する参加者コメントを、Pythonプログラムで分析した結果を共有するとともに、IBM Researchで開発したText to Speechの技術を使った会議支援ソリューションAI Minutes for EnterpriseとWebEXを連携しながら、聴覚障がい者向けの配信するというテクノロジーを駆使したイベントになりました。

行木は「新型コロナウィルスの感染拡大により社会は大きく変わり、今まで当たり前だと思っていた前提条件が通用しなくなり、全く新しい常識が生まれた。このような時代に求められるのは変化に対応できる柔軟性であり、様々な分野のスペシャリストが互いに尊重し合い、多様性を認め共感することが重要で、それがイノベーションをにつながる。」と語りました。

日本IBM 代表取締役社長 山口明夫

日本IBM 代表取締役社長 山口明夫もオンラインで参加

続いて日本IBM 代表取締役社長 山口明夫からは「私たちは技術者集団として、あくなき技術の追求をするとともに、その技術力を駆使して、業務だけではなく、社会の課題解決にも取り組んでいきましょう」さらに「COVID-19の環境にある今こそ変革のチャンス、ぜひ自ら変革し、お客様のデジタルトランスフォーメーションを支えていきましょう」という力強い言葉で締めくくられました。

特別講演:「自分を伸ばし、活かす」秘訣

特別講演では、ソウル五輪 女子柔道銅メダリスト、現筑波大学教授 山口香先生をお招きし、柔道を通して学んできた「自分を伸ばし、活かす」秘訣についてパワフルなご講演をいただきました。

現筑波大学教授 山口香先生

現筑波大学教授 山口香先生

山口香先生は、筑波大学体育系教授、日本オリンピック委員会理事、日本サッカー協会理事やコナミホールディングス株式会社社外取締役などを務められています。また、筑波大学/日本IBM/産業技術総合研究所の3機関が2016年から開始したダイバーシティープロジェクト「TIDE 」の活動など、女性研究者・技術者のキャリアを応援する様々な活動を推進されています。

1964年生まれの山口先生は6歳のころ三四郎にあこがれて柔道を開始するも、女性だからと歓迎されない時代だったとの生い立ちから、お話が始まりました。第1回全日本女子柔道選手権に13歳最年少で優勝してからは、周囲から期待される「山口香」と「実際の自分」のギャップに葛藤しながらも、筑波大学に入学してからは徐々にありのままの自分を受け入れられたそうです。

以下のような、柔道を通して学んだことを教訓をもとにお話いただきました。

  • 勝負は一度なので、仕掛けて失敗しても、仕掛けなかった後悔よりは良い!
  • 苦手な相手でも、回数を重ねれば組みしやすくなる。苦手な事こそ、引き受ける、やってみる
  • 逃したチャンスは二度とこない。チャンスの時に動ける準備を周到にしておく

また、女性技術者へのメッセージとしては

  • 後に続く人たちが選択できる道は多い方が良い。自分が歩く道は、誰かが歩く道だと心得よ!
  • 「自分らしさ」を大事にしよう
  • 「自分には価値がある」ことを忘れない!人と比べない。社会の求める基準に合わせようとしない

このような女子柔道の世界を切り拓いてきた山口先生ならではの、力強い激励を頂きました。山口先生のご講演中、Slackにはリアルタイムで参加者からの様々な感想が書き込まれ、女性・男性問わず山口先生のお話への共感メッセージが多数寄せられました。

社会が求める典型的なロールモデル像にとらわれず、自分らしさを大事に生きていくことは、これからのニューノーマル時代に柔軟に適応していくにはより一層重要であることを改めて認識しました。

ワークショップ:「キャリア」「スキルアップ」「健康管理」の3つのインプットセッション

インプットセッションの後には、MURALを利用したIBMグループ社員、また筑波大学関係者による参加型のワークショップを開催。リモートでしたが参加者の熱気に包まれ、皆さんそれぞれが自分バージョンアップのためのヒントを見つけていました。

「キャリア」――日本IBMデジタルサービス社長 井上裕美
自身のキャリアを振り返りながら、環境の変化に応じて自分自身も変化させる柔軟なキャリアの重要性について語り、COVID-19の環境下では、ライフイベントにより影響を受けやすい女性のほうが、むしろ柔軟性の高い行動がとれるといった前向きなメッセージをいただきました。

「健康づくりとレジリエンシー」――日本IBM理事 大久保そのみ
女性の健康管理をテーマに、PINK RUN(乳がん検診の啓発の社内コミュニティ)リーダーの経験からの視点や検診データなども交え、自分自身はもちろんのこと、家族の健康づくりもキャリアを考えるうえでひとつの要素として捉えるなど、具体的なアドバイスと共に語りました。

「ニューノーマル時代のスキル磨き」――日本IBMデベロッパーアドボケイト 戸倉彩
学び続ける力の獲得と定着、学び方のデジタルシフトなど、ニューノーマル時代にこそ求められるスキルについて語られました。スキルアップをプライベートにも活かすことで生まれるシナジー効果や、学びを楽しみながら自分バージョンアップを加速させようという前向きなメッセージで締めくくりました。

セッション終了後には、アウトプットの場として10チームが各テーマごとに分かれ、リモートツールを駆使したワークショップを行いました。事前に用意されたMURALのテンプレートに沿って

  1. 自己紹介(テーマを選んだ理由、悩み・課題の共有)
  2. みんなで課題解決
  3. こんなのあったらいいな
  4. もう一度自分の気持ちと状況に向き合い、明日からの自分の一歩
    のStepに沿ってワークを進め、最後に全体で内容を共有

「キャリア」をテーマにしたチームでは、COVID-19環境下でのチームメンバーとのコミュニケーションのとり方(テーマを設定したオンライン飲み会の開催)や、Trelloを私生活のToDo管理にも応用し、デジタルツール活用のハードルを下げるなど、すぐに実践できそうなアイデアが共有されました。

ライフイベントに柔軟に対応してきた女性ならではの視点で、新たなワークスタイルを模索するための活発な意見がどのチームでも交わされており、これからやってくる新たな時代の幕開けをしっかりと感じました。

MURAL上でのワークショップの成果

MURAL上でのワークショップの成果

ニューノーマル時代では、人との関わり方という点でも新たなチャレンジが必要であると考えています。山口香先生も、自分の道を切り開いて進んでいくためには、常に自分を導いてくれるメンターの存在が大きかったとおっしゃられていました。COSMOSでは、以前からメンターマッチングの企画などを実施していますが、ニューノーマル時代の今だからこそ、オンラインツールを活用した人との交流企画に取り組んでいきたいと思います。

まとめ

今年はオンライン開催ということで参加のハードルが下がり、多くの男性社員にも参加いただきました。在宅勤務により、家事・育児参加率がアップした男性社員も増えて、ニューノーマル時代の働き方は、より男女の役割に変化をもたらす転換期になると考えています。この変化を前向きに受け入れて、女性や男性技術者がますます輝きながら、仕事にも取り組める時代になっていくことを心から願っています。

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